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「やっぱりこうなったか・・・・・・」

「あの、アベルは加勢しないの?」


 加勢か、まだするタイミングじゃないね。

 ベルゼスたちはヤマタノオロチを相手に十分互角に戦えている。


 俺の誕生日も無事に終わり、そろそろベルゼスたちの試練も終わりそうかなと言う所で、ヤマタノオロチの襲撃と言うとんでもない事態が起きた訳だよ。

 それでも、1匹だけ、ただのヤマタノオロチで、ヤマタノオロチ・スサノオでなかったのは幸いだろう。

 万が一にもスサノオが現れたなら、ベルゼスたちに勝機はカケラほどもない。

 9人がかりだろうと、傷一つ付けることも不可能だった。それどころか、俺が救援に向かう暇もなく全滅させられてしまったかも知れない。


「ヤマタノオロチが現れたのは予想外だけど、彼らはまだ戦えているからね。ここで邪魔をするべきじゃないよ」

「兄様たちは勝てる?」

「さあね。ヤマタノオロチは試練で出て来るべきランクの魔物じゃないからね。9人がかりとは言え厳しいいと思うよ」


 正直、俺自身ヤマタノオロチと戦って、勝てると断言できる力を身に付けたのは、レジェンドクラスに至って半年以上たってからだと思う。

 スサノオは別格として、ヤマタノオロチもそれ程に強力な魔物なのだから。そもそも、強力な防御障壁を持っているだけでなく、それを貫いて致命傷に近い傷をつけても、圧倒的な生命力で即座に傷を塞いでしまうヒュドラ系のレジェンドクラスの魔物なんて、ほとんど反則に近いし・・・・・・。

 どうやって倒せっていうのさって言いたい相手だよ本気で。


「とりあえず、これに勝てればほぼ試練も終わりだね」

「でも、勝てなければ・・・・・・」

「その時は俺が助けるよ」


 キリアとしても不安なのだろう。それも仕方がない。それ程までに、今、ベルゼスたちとヤマタノオロチとの間で繰り広げられている死闘は壮絶なのだから。

 ベルゼスたちは、まず8人でヤマタノオロチのそれぞれの頭を相手にし、残りの1人が胴体部分に攻撃を集中させている。

 それで良い。ヤマタノオロチだけでなく、ヒュドラ系の魔物を相手にする上で最適な戦い方だ。9対1と言う数の有利を完全に活かして、確実で堅実な戦いを繰り広げている。

 だけども、それでもほんの一瞬の、僅かなミスが死に直結する事に変わりはない。ヤマタノオロチの攻撃、そのブレスは容易くベルゼスたちの防御障壁を砕く威力なのだから。 


「っ!!!」


 そう思っている矢先に、攻撃に集中し過ぎたベルゼスにほんの僅かだけども、致命的な隙が生まれる。

 ヤマタノオロチがその隙を見逃すハズはなく、必殺の一撃がベルゼスな向けて放たれる。このタイミングでは回避も防御も不可能。

 加勢するかと思った瞬間、ベルゼスが動く。

 ほとんど反射的、或いは無意識にだろう、反射魔法で襲い来る必殺の一撃を跳ね返す。

 その一撃で、ベルゼが相手をしていた頭が消し飛んだ隙に、他の兄弟の援護に入って、一気に戦局を自分たちに引き寄せる。これで、勝利は確実になったかな。


「これならっ」

「うん。ベルゼスたちの勝ちだね」


 だけど、勝機の決め手となったのがミスなのがダメだ。今回は運が良かっただけで、本来なら、アレが逆に敗因になっいた。

 本当に今回は運が良かっただけ、そして、運に頼るような戦い方はしてはいけない。

 勝利は、あくまでも自分の実力で勝ち取れなければ生き残れないのだから。

 

 最後の悪あがきとばかりに、防御障壁を残る魔力の全てを持って展開し、その隙に傷付いた体を再生し、残りの全ての力を込めた8本のブレスを放つヤマタノオロチ。

 ベルゼスたちはそのブレスに立ち向かい、反射魔法で上空に弾く。そして、既に虫の息のヤマタノオロチを確実に仕留める。

 最後の瞬間まで、決して油断はしなかった。

 それで良い。ほとんど力が残っていない様でも、魔物は死ぬまで荷をしてくるか判らない。だからこそ、確実に仕留めるまで決して油断してはいけない。

 ・・・・・・こうして、ヤマタノオロチとの死闘は無事に終わった。



「お疲れさま。無事に勝ててなによりと言いたい所だけど、ベルゼス。今回のミスはいただけないよ」

「判っています。私一人のミスで、私だけでなく全員を危機に晒したのですから」


 うん。やっぱりベルゼス自信、今回の自分のミスの危険性はしっかり理解しているみたいだね。良かったよ。コレがザッシュみたいに結果良ければすべてよしみたいに開き直っていたら、張り倒していた所だよ。

 ザッシュは何と言うかいい加減で雑な所があるから、うちのメンバーの中じゃ一番危なっかしいんだよ。アイツがこれまで死なずに済んで来たのって、全部、サナがフォローして来たからだよ。

 まあ、ベルゼスの場合は、ザッシュと違って全体の指揮する将なのだから、そんないい加減なハズがなくて当然なんだけどね。と言うか、立場的にはザッシュもそろそろその辺のところ改善しないといけないんだけど、ムリだろうね・・・・・・・。


「とは言え、九人かがりとはいえヤマタノオロチを倒せたんだから、みんな、もう力は完全に使いこなせている感じだけど」


 なんだけど、これで試練が終わるかは判らないんだよね。なにか、終わる前に更に特大の爆弾が投げ込まれる可能性がある気がするんだけど。気の所為だと良いな。


「ええ。ようやく、自分の力の本当の使い方を理解できた感じです」

「その感覚を掴めたのなら、大丈夫そうだね」


 その感覚が掴めたのなら、次に何が出て来ても、彼等だけで勝てるだろう。ヤマタノオロチ・スサノオみたいな、何をどうやっても実力的に絶対に倒せない相手じゃない限り・・・・・・。

 と言うか、本当にまさかスサノオとかでてこないよね?

 今の彼等じゃ、レジェンドクラスに至ったばかりで、見合った魔晶石を持っていないから、どうやってもスサノオなんかが出てきたら勝てないんだよ。


「はい。ヤマタノオロチ・スサノオでも出てこない限りは、なんとでもしてみせます」

「何故に、このタイミングでそんなフラグめいた事言うかね・・・・・・」


 本気で何でこのタイミング・・・・・・。

 ああ、これ出て来る。絶対に出て来る。出てこないハズがないよ。


 まあ良いよ。出てきたら俺が瞬殺するから。


「その時は、俺が瞬殺するから、キミたちは見てればいいよ」

「おや、私たちの試練ですが?」

「まだ魔晶石を用意できてないキミたちじゃ、スサノオの相手はムリだから」


 ベルゼスたち9人の全魔力を合わせたより、スサノオの魔力は強大なんだよ。と言うか、キミたちまだアストラル系魔法使えないでしょ。アストラル魔法なしで倒すのはまず無理だよ。


「試練の最中じゃ、魔石が手に入ったからって魔晶石にして魔力を蓄える訳に行かないからね」

「確かに、しかし、ヤマタノオロチ・スサノオとはそれほどまでの強敵なのですか?」

「とりあえず、キミたち全員が10個くらいは魔晶石を持っていないと倒せないかな」


 間違いなく、今の所はそれくらいの戦力差があるハズだよ。


「と言うか、噂をしている内に来たね・・・・・・」

「「「「はあ?」」」」


 うん。俺もこの展開は全く予想してなかったよ。

 まさかの、ヤマタノオロチを倒したと思ったタイミングでの、追加でのヤマタノオロチ・スサノオ。


「キミたちはもう魔力も闘気も残っていないでしょ」


 即座に臨戦態勢に入るのは良いのだけども、ヤマタノオロチを倒したばかりのキミたちじゃ戦えないよ。


「いい機会だからよく見ておくと良いよ」


 なんだろう、俺が相手をするしかない状況で出て来るとかワザとなの?

 まあ良いけどね。一撃で仕留めさせてもらうよ。

 使う魔法は当然アイン・オフ・ソウル。

 かつては、魔晶石を使って全魔力の20倍以上を込めなければ倒せなかった。

 魔力の総量ではジエンドクラスにすら匹敵する魔物、ヤマタノオロチ・スサノオはそれ程までに規格外な強敵。

 だけど、ゲヘナでの活性化の戦いを経て、一気に魔力量が増大した今なら、魔晶石を使わなくても倒す事が出来る。

 本当に自分の事ながら魔力の増加量が恐ろしすぎるんだけど・・・・・・・。


「アストラル魔法。アイン・ソフ・オウル。スサノオを倒すのなら、この魔法は必須だよ」


 この魔法が使えていれば、ヤマタノオロチとの戦いもあれ程ギリギリの物にはならなかったハズ。

 アストラル魔法は本気で戦局を左右する魔法だからね。

 それを証明するように、俺の放ったアイン・ソフ・オウルは、次元の壁を破って現れたスサノオを瞬殺した。

 そして、これで何故か、無事にベルゼスたちの試練も終了した。何か釈然としないけど、気にしても仕方がないので諦める事にする。



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