303
「ひょっとして、キミたちはラゴルゼ王から詳しく話を聞いていないのかな?」
「話って何ですか?」
「どうしてキミたちが呼ばれたかとか、転生者がどんな意味を持つかとかだけど」
思いっきりきょとんとしているし、これは全く聞いていないね。
おーおい、ラゴルゼ王よなにしているの?
「その様子だと、この世界で転生者が持つ意味も知らないみたいだね」
「転生者の持つ意味ですか?」
本気で初めから説明しないといけないみたいだ。
「どうやら、まず初めに事情を説明しないといけないみたいだね。キミにだけ話しても仕方ないし、全員集まってもらうよ。キミたちがここに呼ばれた理由をシッカリと説明するからね」
そんな訳で、カレーやラーメン、牛丼とかに夢中になっている残りの14人を呼んで説明する事にする。
と言うかだよ、何気なくドラゴンカレーを大皿でガッツリ食べてるラゴルゼ王よ。これって本来なら貴女の仕事だよね?
何を我関せずで美味しそうにカレーを食べ尽そうとしているかな?
貴方が食べた量だけで、普通に4人家族が一生遊んで暮らしていけるくらいの額になるんだけど?
まあ良いや、気にするだけムダだね。
と言うか、おそらくだけど絶対にワザとだし。
「まずはじめに、キミたちを転生者だと見分けるのに使ったこの本。コレは10万年前の転生者たちが残した物なんだ。そして、こうして転生者が居た証拠が残っている事からも明らかな様に、この世界には、はるか昔から数え切れない程の転生者が余れているんだ。俺たちも、その1人と言う事だね」
他にも、6万年前に転生して、人工冬眠でこの時代に来たアスカ氏が居る事を伝えると、みんな流石に驚いたみたいだ。
「そして、キミたちももう薄々は理解しているだろうけど、俺たち転生者がこの世界に生まれる理由は、魔物との戦い、この世界の存亡を賭けた戦いのため」
これはもう確定。転生者は、ただ戦う為だけにこの世界に生まれる。
「そして、この世界では、10万年周期で世界の存亡を賭けた決戦が起きる。それが、ちょうど今で、俺たちはその戦いのためにこの世界に生まれたんだよ」
これについては、本気で勘弁して欲しいっていうのが、俺の本音なんだけどね。何故に、そんな壮絶な戦いの中心にいなければならないのかね。
既に、参加しないなんて選択肢は存在しないし。
戦いに負けてしまえば、ネーゼリアそのものが、世界そのものが滅んでしまうので、戦って勝つ以外に生き残る方法がないからね・・・・・・。
10万年前の転生者たちがカグヤに、戦わなくてもいい方法を残してくれている可能性に期待したいけど、流石にそれも望み薄だろうしね。
「つまり、私たちは世界の存亡を賭けた戦いに参加する為に、集められたって事ですか・・・・・・?」
「今のところは、そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるかな」
「どういう事ですか?」
気丈に振る舞おうとしているみたいだけども、自分たちが多々戦う為だけにこの世界に産み落とされたと聞いて動揺しているみたいだ。
この世界に生まれてからこれまでで、既に他界の中に身を置いていたとしても、自分たちがただ戦う為だけに存在している時かされれば動揺するのも当然だけども、それを決めるのは、俺たち自身でもあるんだよ。
「ゲヘナの活性化の戦いの事はもう聞いているよね? あの戦いでも明らかな様に、決戦の予兆は既に現れている。だけども、実際にカグヤの封印が破られて真に決戦が始まるまでには、まだ100年は猶予があるんだ。だから、今は準備期間。力を蓄える時なんだよ」
同時に、この間に力を蓄えられなかったら、その時点でもう終わりなんだけどね。
「だから、キミたちは俺と引き合わされたと言っても良い。今の内に強くなっておかないと、キミたちは死んでしまうからね」
「そうですか・・・・・・」
「それともう一つ。転生者は10万年前の転生者たちが残した遺跡に入る事が出来る。逆に、転生者でなければ遺跡に入る事は出来ないんだ。そして、10万年前、そう、10万年周期の決戦を切り抜けた転生者たちが残した遺跡には、当時の強力な兵器が眠っているんだ。同じ戦いを挑む事になる俺たちへのプレゼントとしてね」
現実問題として、この遺産がなければこれからの戦いに昇さんなんて全くないんだよと説明すると、これまでとはまた違った動揺が彼女たちを襲ったみたいだね。
「この遺産が問題なんだよ。これからの戦いには必要不可欠な兵器ではあるけど、同時にそれらは強力過ぎて、迂闊に外に出したら社会を混乱させてしまう。下手をしたら、社会を崩壊させてしまうかも知れない」
俺たちが使っている空中戦艦ヒュペリオンも、10万年前の遺産で、これだけでレジェンドクラスの超越者すら容易く倒せるし、国を亡ぼす事だって可能だと伝えると、脅かし過ぎたのか怯えてしまった。
「そして、転生者は遺跡からそんな危険な遺産を自由に持ち去る事が出来る。つまり、転生者はそんな危険な遺産を自分の物にしてしまう事が可能なんだよ。そして、もしも2万年前、ヒューマンの統一をし、世界征服を企んだ愚か者みたいに者に、遺産が渡ったらどんな事になるか」
本気で、2万年前の事は、とんでもないバカな転生者が遺産を手にしなかった事が唯一の救いだった。
もしも、ヒュペリオンの様な遺産を手に入れていたら、本当にどれ程の惨事になっていたか・・・・・・。
「だから、転生者を一所に集めて監視しておくって意味もあるんだよ」
「そちらの理由は、確かに納得できます」
と言うか、俺が余り暴走しない様に、他の転生者たちにストッパーの役割を期待しているみたいな気もするんだけどね。
「さて、一応は一通り話したけど、その上でキミたちはどうする? 俺たちと一緒に来るかい?」
「既に、他に選択肢はないんじゃないですか?」
「そうでもないよ。あくまで俺たちと一緒に来るかどうかは、キミたちの自由だからね」
まあ、ここまで話した以上、既にこの子たちに選択肢なんかないに等しいのは確かだけどね。戦いが避けられない以上、この子たちが生き残るためには強くなるしかないんだから。
「でも、俺は一緒に来た方が良いと思うよ。キミたちも転生者に生まれた時点で、戦いは避けられない。それなら少しでも強くなった方が良いからね」
「アベルさんについて行けば、強くなれるんですか?」
「俺を含む。ここに居る全員が証明だよ」
レーゼ少年たちも実はもうSクラスに成ってるしね。そのおかげで、と言うかその所為で、ゲヘナでの活性化の戦いの時は大変な目に遭ったらしいけど・・・・・・。
「そして、戦いが避けられない以上。戦いのためだけの道具になってしまわない為にも、強くなるべきだよ」
「戦う事が避けられないのなら、どちらにしても同じでは?」
「それは違うね。キミたちがなんの為に戦うかも含めて、全てはキミたち次第なんだよ」
戦いそのものは避けられないけれども、なんのために戦うかを決めるのは戦う当人。それだけは間違いない。
「確かに、この世界に俺たちを戦う為に転生させられた。だけど、その中で何を思い、どう生きるかは自由なんだよ」
「どう生きるかですか?」
「そう。俺は世界を見て回るのと、世界中の美味しいモノを食べるのがとりあえずの目標かな」
「確かに、この世界には地球とは比べ物にならないくらい、美味しいモノがあふれてますからね」
そう。そうなんだよ。特に甘いモノがスゴイ。前世ではそんなにスイーツ好きじゃなかったんだけど、こっちに来てからは完全に魅力にハマってしまったよ。
鬼人の国の和菓子なんて、たまにシオンが取り寄せたのを分けてもらうんだけど、もう本当に絶品。くどさが一切ない上品なあんこの甘さが、全体を調和して本当に美味しい。
因みに、今のところの一番の好物は、草大福。ヨモギ餅の風味とあんこの相性が抜群なんだよ。
「確かに俺たちは戦いを避けられ位。だけど、逆に言えば、戦う使命さえ果たしてさえいれば、後はどう生きるのも自由なんだよ。だからこそ、自由に生きる為に力を付けるべきなんだ。死んでしまったら、本当にそれでおしまいだからね」
俺の言葉に考え込むベルナデットちゃん。
戦いが避けられないのなら、その運命に負けないだけ強くなってしまえば良い。余りにも単純な真理。
「判りました。私は、ベルナデット・リオーレントはアベルさんと共に行きます」
ベルナデットちゃんは迷わず決めたみたいだね。さて、残りの14人は?
「ボっ、ボクも一緒に行く」
「わたしもっ。それが最善だと思うから」
「うん。だって私たちは強くなるしかないんだから」
「それに、レーゼくんたちみたいな、私たち以外の転生者も一緒だし」
「そうさ。強くなればいいんだ」
思い思いに意気込んでいるみたいだけど、どうやら、全員一緒に来るって事で良さそうだね。
間違いなく、後で後悔すると思うけど・・・・・・。
とりあえずは、キミたち、自己紹介してくれない?




