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 謎の空中城塞隼人については、ラゴルゼ王たちと話し合いの結果、無事に鬼人国へのお土産として俺のアイテムボックスに保管される事になった。

 ベルゼスたちの修行も順調で、キリアたちが文句も言わずに、懸命に強くなろうと努力を続けている様子に感化されたみたいだ。 

 そして、いよいよ王人の転生者たちとの対面の時だ。

 出来れば、ベルゼスみたいにゴツイのは勘弁して欲しい。


「アベル殿、この者たちが、其方と同じ転生者だ」


 紹介されたのは7人の少年と8人のの少女たち。一番年上の子でも12歳くらいかな? 一番年下の子は8歳くらいかも知れない。

 

「はじめまして。俺は、レジェンドクラス冒険者のアベル・ユーリア・レイベスト。地球からの転生者だよ」


 とりあえず挨拶してみたんだけども、どうにも反応がよろしくない。どうも、警戒されているみたいだ。

 一番年上の女の子、12歳くらいなんだけども、既にBランクの実力がある。王人の生まれとは言え、転生者がこの歳でそこまでの力を身に付けているのは驚きだけど、残念だけど、キミじゃあ俺には勝てないよ?


「これは、随分と警戒されてしまってるみたいだね」

「すまないなアベル殿。こちらの不手際だ。少し強引に集めてしまったのが悪かったようだ」


 成程ね。でも、王命で直々に集められるなんてよっぽどの事だって事くらいは理解しているハズだけどね。 


「ラゴルゼ王。私たちは何故この場に呼ばれたのですか?」

「それは、アベル殿たちと引き合わせるためよ」

「さっきも言った通り、俺もキミたちと同じ転生者だからね」


 俺が転生者なのは、さっき言ったハズなんだけどな。どうも、余り良く聞いてなかったみたいだな。

 それだけ警戒していたと言うか、怯えていたのかも知れないな。


「・・・・・・どうして、私たちが転生者だと?」

「コレで判断したらしいよ」


 転生者を見付け出すのに使われているのは、実は俺が持っているのと同じ、10万年前の転生者たちが残した古文書。日本語で書かれたこれを見せて、反応を見て確かめているらしい。

 反応だけかと思うかも知れないけど、その時の動揺とかだけでなく、様々な反応から判断するので、確実に見極められるらしい。


「それはっ」

「この前見たでしょ? コレは日本語で書かれているから、転生者じゃなきゃ読めないからね」


 と言うか、どうして転生者でないと読めないのかが未だに謎なんだけどね。

 ネーゼリアに来た転生者同士が、普通に使ったりしていたハズだし、星のアーカイブ。アカシック・レコードに既に記憶されていてもおかしくないハズなんだけど。


「ボクたちも、同じ様にそれを見せられて、転生者だと判断されました」

「この世界での転生者の役割を考えると、一緒に居た方が良いと判断されて、ボクたちはこうして集められているみたいだよ」

「純粋な戦力として、アベルさんの元で鍛え上げるのも目的みたいだけどね」


 レーゼ少年たちが自分たちの時を思い出すように話しかける。

 歳も近いし、いきなりな状況に困惑している少女たちに親近感を持ったみたいだ。彼らも、はじめはかなり困惑して、狼狽えていたからね。

 ここは、彼らに任せた方が良さそうかな?


「とりあえず、今日は転生者同士の顔見せの場だよ。だからそんなに困惑しなくても良い。パーティーの用意もしてあるから、まずは楽しむ事だね」


 状況が判らないままじゃあ楽しめないだろうけど、その辺は、レーゼ少年たちがフォローしてくれるだろう。

 それに、自慢じゃないけど俺の料理の腕もかなり上がっていて、最高の食材を使っているのもあって、彼らが今まで食べた事もない美味しさなのは確かだからね。

 一口食べてしまえば、不安も吹き飛んで、食べるのに夢中になっちゃうだろうしね。


 餌付けと全く変わらないけど、このあたりはもう仕方ないって割り切ってる。


 彼らももう気が付いていると思うけど、この世界は転生チートでどうにかなるほど甘くはない。それこそ、努力に努力を重ねて強くならないと、あっと言う間に死亡エンドに一直線。

 まあ、戦闘職につかなければ問題はないんだけども、転生者の多くは、狙った様に貴族の、代々騎士の家系に生まれたりするかに、戦いに身を置かずにいるのはほぼ不可能なんだよね。

 俺もそうだし、ザッシュやサナもしかり、レーゼ少年たちもそうだしね。 

 多分、この子たちも同じだと思う。

 それが判っているから、レーゼ少年たちは彼らが気になるんだろうね。

 そんな訳だから、あの子たちの事はとりあえず、レーゼ少年たちに任せておけば大丈夫。


「うわあっ。美味しいぃぃぃぃ」

「こっ、こんな美味しいのはじめて食べたよっ」

「顔合わせのパーティーでこんなご馳走なんて・・・・・・・」


 うん。どうやら用意した料理を気に入ってくれたみたいだね。それと、やっぱり一番人気はカレーみたいだ。カレーの大鍋の前に行列が出来ているよ。

 何気に、レーゼ少年たちも幸せそうに食べてるし。

 まあ、普通のカレーならともかく、ドラゴンカレーはつくるのが大変で面倒だし、滅多につくらないからね。


「こうして久しぶりにカレーを食べると、他の日本の味も食べたくなるよね」

「うん。ボク、ラーメンが食べたい」


 うん。シッカリと食べ物につられて、困惑も緊張も解けたみたいだね。

 それから、ラーメンならちゃんと用意してあるよ。カレーと並ぶ日本の国民食と言われてたからね。そこは外せないでしょ。


「ラーメンも用意してあるから、後で食べると良いよ。あと、他に何か食べたいものはある?」

「それじゃあ、ボクは牛丼」

「それも用意してあるよ。他にも、天丼にカツ丼。親子丼に海鮮丼と、丼物は一通りそろえてあるよ」


 因みに、ラーメンはつくった後、そのまま時間停止の状態になっているので、食べ始めるまで麺が伸びる事は一切ない。

 あと、フライドチキンやハンバーガーなんかは、王人の国でもよく食べられるので注文のリストには上がらなかった。


「本当に美味しいです。私、こんなに美味しいものはじめて食べました」

「気に入ってくれてなによりだよ。つくった甲斐があるよ」

「えっ? コレアベルさんがつくったんですかっ?」


 どうやら、俺がつくったとは夢にも思わなかったみたいだ。本気で驚いてるね。


「そんなに驚く事かな?」

「だって、アベルさんは冒険者で、料理人じゃないですよね?」

「そうだけど?」


 うん。俺は料理人になったつもりはないよ。と言うか、余り出番がないけど、家には専属の料理人がちゃんといるからね。

 まあ、その専属料理人であるクマーラは、他種族の国に行くなんて恐れ多いって事で、今も用意した自分の店で張り切って料理をしているけどね。

 まあ、ほとんど使わない拠点とは言え、きちんと管理してくれているんだからそれで良い。


「どうして冒険者のアベルさんが、料理人よりも料理が上手なんですか?」

「さあ? まあ慣れ?」


 事あるごとに料理をするハメになるから、もう慣れとしか言いようがないかな。


「事あるごとに俺が料理しなきゃならなくなるから、知らない内に上手くなってたのは確かだね」

「だって、アベルさんの料理は絶品ですから」

「いや、俺は料理人じゃないから。褒められても困るんだけど」

 

 と言うか、美味しいモノが食べたいなら、自分でつくれるようになればいいのに、何故に俺に料理させようとするかね?

 実の所、ドラゴンカレーとかの、10万年前の転生者たちが残したレシピでしかつくれない料理は、今の所レジェンドクラスの俺にしかつくれなかったりするんだけどね。

 こればかりは、クマーラたち本職の料理人にレシピを渡しても、つくれなかったりするんだよ。要するに、高度な魔道具などの生産に、相応の実力が必要なのと同じで、一部の料理を作るには相応の実力がなければならないなんて、おかしなルールがあったりするみたいなんだよね。


「なんだか意外です。若くしてレジェンドクラスにまで至った、ヒューマンの新星。たった一人で、これまでの世界の在り方を覆した若き戦神。そんな風に話ばれる人だから、もっと恐ろしい人だと思っていました」

「いや、そんな風に呼ばれてるなんて知らないんだけど・・・・・・」


 なんだ? その中二病臭いのは? そんな風に呼ばれているの俺?


「そうなんですか?」

「そんな中二病臭い呼ばれ方をされているのを知っていたら、なんとしても止めているから」


 本気で、いまさら中二病を発症するつもりはないよ。 


「まあ、アベルさんは2万年もの間、関係が断絶していた、ヒューマンと他種族との関係に、大きな変化をもたらした張本人で、それ以外でも、ゲヘナでの活性化の戦いとか、色々と話題になる事をやっているから、注目されるのも当然だし、そんな風に呼ばれるのも仕方ないと思うけどね」

「俺は別に、注目されたくないんだけどね・・・・・・」


 問題は、アスカ氏を除いて、転生者の中で俺が今の所は一番強い事なんだよな。その所為で、何かにつけて俺が注目される事になる。

 ザッシュとか、他の転生者たちがとっととレジェンドクラスに至ってくれれば、俺への注目もかなり減るハズなんだけど、今の所まだまだムリそうなんだよね。


「あのところで、アベルさんが私たちと同じ転生者なのは判りましたけど、だからと言って、どうしてワザワザ私たちとなんか、顔見せをする必要があるんですか?」

「どうしてって、言ってしまえば、キミたちが俺の弟子候補だからだよ」


 それ以外の理由なんてないと言い切ってしまっても良い。

 

「弟子候補って、どうしてそんな事になるんですか?」

「どうしてって、キミたちが転生者だからだけど」


 それこそ、本当にそれ以外の理由なんてない。


「気持ちは判るけど、諦めた方が良いよベルナデットちゃん」

「諦めろだなんて・・・・・・」


 今更だけど、王人の転生者の中で一番年上のこの少女は、ベルナデットと言うらしい。

 うん。そう言えばまだこの子たちから自己紹介を受けてないね。

 それにしても、今の所は前途多難みたいだけど、この子たちは俺たちの仲間になるのかね?


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