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「よろしくお願いします」


 いや、何故にこうなった?

 キリアへの度を越えたシスコンが、実は俺がどう出るか試していたと判明した翌日。俺は何故か、ゼルゼすら9人と模擬戦をする事になった。

 いや、本当に何故に?

 因みに、対戦方法はまず1対1で9人と戦い、その後で9対1でとなる。

 妹のキリアと同じくベルゼスたちもES+ランクの実力者たちなので、まあ、それなりに有意義な戦いになるんじゃないかなとは思うけど、本当にどうしてこうなった?


「それでは、行きます」

「何時でもどうぞ」


 なんて考えている内に、まずベルゼスとの試合が始まった。

 ベルゼスはその巨体の急所だけを確実に守るプロテクター付きのボディスーツを纏い、両腕をナックルガードで武装しつつ、両手に3メートルを超える大剣を構えている。

 その構えから、純粋な剣術ではなく、体術、格闘術を織り交ぜた剣の使い手なのが判る。

 ついでに、両足を覆うブーツはゴツイ牙がはえている上に強力な魔力も帯びていて、蹴りがかなり凶悪な事になるのは間違いない。と言うか、アレはドラゴンの牙か? だとしたら相当なマジックアイテムだ。


「はあっ!!」


 さてとどう来ると観察していたら、正面から来たよ。真っ向勝負じゃあ勝ち目がない事くらい判っているハズなのに、あえてそう来たな。

 二振りの大剣で斬りかかって来るのを躱し、次の動きを待つ。

 ベルゼスとしても、何の捻りもない正面からの攻撃が通じるなんて思っているハズがない、つまり、はじめの一撃は囮で本命は次か、更にその次。

 ただし、こちらがその程度の事が判らないと思っているとしたら、そこまでだ。


「しっ!!」


 振り抜いた双剣の遠心力を利用して次の剣戟を繰り出してくる。今度は立て続けに、剣舞の様に途切れる事なく。


「うん。まず剣の腕は超一流だね。少なくとも、今の俺よりはるかに上手いよ」


 まあ、200年近く修行して来たベルゼスの剣の腕が、俺より劣っているなんてありえないんだけどね。

 さて、此処まで純粋な剣術しか見せてこないのは、当然だけど布石で、


「そして体術も超一流」


 剣術一辺倒の攻撃から、突然鋭い蹴りが飛んでくる。しかも、蹴りが弾丸や斬撃になって飛んでくるよ。うん。これはあのドラゴンブーツの効果だね。ベルゼスの戦い方に見事にフィットしているよ。

 更に、剣戟の合間にナックルガードでの打撃も加えて来る。こちらのナックルガードもヤッパリかなりの業物だね。打撃の瞬間に2メートル近いスパイクが生まれて、その間合いを一気に伸ばす。多分、あのスパイクは飛ばすことも出来るね。

 更に、大剣が振るわれるごとに斬撃が飛び始める。正しく嵐のような攻撃だ。


「だけど、その程度じゃあ届かないよ」


 その一撃一撃が、まさに必殺の威力を持っているけれども、俺には届かない。防御障壁で防ぐまでもなく、全ての攻撃を尽く避けてみせる。

 と言っても、此処まではまだ準備運動みたいなものだ。

 ベルゼスはまだ魔法を使ってきていない。この筋肉だるまがどんな魔法の使い方をしてくるのか、実は結構気になるんだけど、さてどう来るかね?


「今の自分がどこまで届くか確認したいのも判るけど、何時までも準備運動をしていても仕方がないと思うけどね」


 来ないのならこっちから行っちゃうよ? そんな意味を込めて挑発すると、瞬間、ベルゼスの空気が変わる。

 さて、いよいよ本気で来るね。 

 現実問題として、ベルゼスの実力は残念だけど今の時点でキリアに劣る。本人もそれは理解しているだろう。その上で、どう来るかが問題だ。

 今回の模擬戦の申し出は、キリアとの間にできた差を少しでも埋めたいって気持ちからも来ているんだろうしね。


「判っています」

 

 どうやら本気で来る気になったようだ。そう言いながら、魔晶石で消費した魔力を回復して行く。

 フム。ブーツやナックルガードに込められた魔力を使わないで、自分の魔力を使ってマジックウェポンの力を温存していたようだね。

 さて、ここからが本番、この後に9対1の戦いも控えているから、闘気まで使い果たしはしないだろうけど、魔晶石を使って魔力は全力で挑んで来るよね。


「それでは、行きます」


 まったく、何処までも真っ直ぐだね。ワザワザ宣言してから向かって来るんだから。だけど、その心意気は嫌いじゃない。

 さて、問題はどんな魔法を使って来るかだけど、うん? アレは次元魔法。ディメンション・カッター、いやディメンション・ソードか?

 どちらにしても、高度な次元魔法を使いこなして来るのなら、魔力や闘気の総量での実力ではキリアに劣っていても、実際の戦闘力では圧倒的に勝っているのは確実だね。使いこなしているのならだけど。


「はあっ!!!」


 気合一閃。

 瞬間、全方位からの攻撃が襲い来る。

 次元魔法による次元転移魔法の要領を応用した高位転移魔法による全周囲攻撃。更に、この領域に次元干渉を行っているので、俺は転移で逃げる事も事実上不可能。

 成程。これが全力か。さっきまでの準備運動はこちらの油断を誘うためのモノだった訳だね。

 だけど、この程度でやられるほど軟じゃないよ。

 まずはディメンション・カッターと辺りを覆う次元干渉を、同じく次元魔法で相殺する。そして他の攻撃もあえて同様の攻撃で相殺して行く。

 あえて、防御障壁で防ぐ事はしない。全ての攻撃を相殺してみせる事で、まだ防御障壁を使うまでもないぞとアピールする。

 これに対して、どう反応して来るかな?

 

「まだまだっ」

 

 今度は転移による全周囲攻撃ではなく、ベルゼス自信が突っ込んで来る。同時に圧倒的な手数による波状攻撃を繰り出してくる。

 ふむ。俺に相対するには、手数よりも一撃必殺の一撃。それくらい判っているハズなのに、あえて波状攻撃を仕掛けて来るのは、本命の攻撃から目を逸らすための目隠しか。

 と言う事は、こうして絶え間なく攻撃を繰り返しながらも、本命の攻撃の準備を続けている訳だね。

 果たしてどんな攻撃が来るかな?

 楽しみであるけど、別にそれをただ待つ必要もない


「さてと、キミも本気を出したみたいだし、俺もそろそろ攻撃をするよ」


 何時までも流しているだけじゃ模擬戦にならない。ある意味で、これからが本当の模擬戦の始まりだ。

 

 まずは、ベルゼスと同じように剣での攻撃から。剣を取り出して魔力を込めて一閃する。

 狙いも何もない攻撃だけども、その効果は絶大で、斬撃の通った後の空間が砕け散り、その余波は衝撃波となって模擬戦をしている修練場全域を覆う。

 今更だけど、修練場の周りを結界で覆ってなかったら、今の一撃で王都が壊滅してたよね。まあ、それは今までのベルゼスの攻撃だって同じだけど。

 さて、まさか今の攻撃でやられたりしてないよね?

 流石にその心配は無用として、今までと違ってこちらからも攻撃を仕掛けるけど、その中で切り札の決定打を放つ隙を見出せるかな?

 俺の隙を付けなければ、どんな攻撃も届きはしないよ?

 なんて考えながら、爆風に紛れて後ろに回ったベルゼスの攻撃を避ける。

 流石に、今の攻撃の衝撃を利用して勝負を決めに来るような無謀なマネはしないみたいだ。うん。良い判断が出来ているね。


 さてと、こっちは次は格闘技で行くよ。


 相手の攻撃に合わせて一気に距離を詰めて・・・・・・。

 こちらの動きに危険を察知したのか、高位転移魔法で即座に逃げ出す


「うん。咄嗟の危機管理も判断力も申し分ない」

「ご冗談を、今の動きに恐怖を感じない愚か者などおりませんでしょうに」


 そうかな? 

 今の攻撃は、相手の動きに合わせて放つので、ある意味どうやっても避けようがないんだけど、それに気付かないのが結構いたけどね。


 さて、剣に格闘技と来れば、次は魔法だ。


 蛍の光のよう、淡い光を無数に生み出す。さて、この魔法の真価に気が付くかな?

 と思ったら、血相を変えて光を撃ち落としていく。瞬間、一メートル程の空間に爆発が生じる。爆発した空間の外には南里影響もあたえない炸裂。


「うん。どうやら機器察知能力は超一流どころか、ほとんど本能みたいなものみたいだね」


 まさか見た瞬間にその危険性を察知するとわね。大体、見た目に騙されて一瞬警戒を緩めるんだけど。

 今の魔法は炸裂魔法で、あの光は触れた瞬間に、1メートルの範囲限定の爆発を起こす。その威力はSクラスの魔物の防御障壁も容易く砕く。

 それを、100個ほどつくり出したので、その威力は想像できるだろう。

 だけど、まさか見た瞬間どころか、魔法を発動しようとした瞬間にその脅威を感じ取るとはね。

 うん。やっぱりキミおもしろいよ。そのヤクザも裸足で逃げ出す強面はいらないけどね。


「褒めて頂いたと思って良いので?」

「うん」

「それは光栄です。しかし、残念ながら私では、アナタの隙を付く事は出来そうにないので、これより正面から切り札を出させていただきます」

「それで良いの?」

「今の私の切り札が、正面からどの程度貴方に通用するか? その情報も次の戦いのために有用ですりで」


 成程ね。どうやら、1対1ではどうやっても勝機がないと判断して、次の1対9の戦いのための情報収集に徹するつもりみたいだ。


「キミはそれで良いの?」

「もとより。1人で貴方に届き売るなどと自惚れてはいません」


 つまり、はじめから次の9人かがりでの戦いを本番と定めていた訳だ。

 その上で、1対1の戦いで自分の手の内を明かしてでも、俺との戦闘経験を積む事の方が重要だと判断したからこその、今回の模擬戦の形式と。

 うん。本当によく考えられているよ。

 さて、その上で、キミたちは俺の想定を越えられるかな?



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