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「キリア、あの兄たちどうにかならない?」

「ボクもどうにかしたいけど、ムリだよ」


 ディアナが少し不機嫌そうに尋ねると、キリアは困ったようにムリだと言う。

 兄たちが事あるごとに構って来るのにキリアも困惑し、その所為でキリアを取られてしまったディアナはこの上なく不機嫌みたいだ。

 まあ気持ちは判るけどね。流石にシスコンにも程があるよ。あれじゃあ半分ストーカーだよ。


「アベル、どうにかならない?」

「そこで俺に話を振られても困るんだけど・・・・・・」


 俺としては出来るだけ関わりたくないんだよ。どうしようもなく暑苦しいし。


「でも、次の国に行く時には、どうやってもあの兄たちと相対する事になる。アレはキリアをこの国においておくつもり」

「それはキリア自身が決める事だよ。キリアがこれで旅は終わりでいいと思うんなら、この国に残れば良いし、これからもみんなと旅をしたいのなら、一緒に来れば良い」

「アベルそれ卑怯」

「卑怯と言われても、実際に決めるのはキリアは本人だからね」


 いやホント、これからも一緒に居るかどうかはキリア自身が決める事だから。それについては俺も口出しできないよ。


「まあ、間違いなく、どちらを選んでも面倒な事になりそうだけどね・・・・・・」

「それは・・・・・・」

「確かに・・・・・・」


 あのシスコン兄どもは、キリアが国に残ろうが残らまいが、関係なく騒ぎを起こしそうな気がする。

 まあ、間違いなく俺たちと一緒に旅を続ける場合の方が、大騒動になるのは確かなんだけどね。


「とりあえず、俺はどうやっても最終的に相手をしなくちゃいけなくなるだろうから、その時は遠慮なくやるつもりだよ」

「あの、アベル? お手柔らかにね。兄様たちが死んじゃうから」


 そうか? あの筋肉だるまがそうそう死ぬとは思えないんだけどね。


「善処するよ。まあ、そんな訳で、いずれは相手をするつもりだけど、今の所は俺は、自分からあの筋肉だるまに係わるつもりはないから。自分たちで何とかしてくれ」

「そんなぁぁぁぁ」

「アベル酷い。もっと優しくしてくれても良いのに」


 そうは言うけどね、コッチだって色々と忙しいんだよ?

 何時まで経っても遺跡調査は俺1人でやらなきゃいけないままだし、何時の間にか転生者が大分増えて来たし、彼等の修行もシッカリ見ないといけない。それに、もうすぐ王人の転生者たちも合流するから、彼らの歓迎のためのご馳走も用意しないといけない。

 それに自分の修行だってしっかりしないといけないし、アスカ氏を見返す為に色々と準備をしておかないといけないし、科学者として、技術者として10万年前の転生者たちが残した遺産の技術の解明もしていきたい。

 やりたい事ややらないといけない事が山済みなんだよ。


「とりあえず俺から言えるのは、キリアはこのまま俺たちと一緒に旅を続けるか、国に残るかを決めて兄たちに伝えておいた方が良いって事だね。それであの兄たちがどうするかによるけど、俺の所に来たら相手をしてあげるから」

「確かに、キリアはどうするつもりなのか、早くあの兄たちに伝えた方が良い。遅くなればなるほど、絶対に面倒な事になる」

「ああ、うん。あの兄たちだもんね・・・・・・」


 ぴしゃりと断言するディアナに、キリアも顔を引き攣らせて同意しているよ。

 まあ、ここ数日のあの兄どもの暴走の被害に遭っている一番の被害者が、他でもないキリアだからね。このままだと何処までエスカレートするかと、内心で一番戦々恐々としているのは間違いなく彼女だよね。

 と言うか、このままだと本気でストーカー化してキリアを監禁しようとしかねない気がする・・・・・・。


「それにしても、前から過保護だったけどアレほどじゃなかったのに」

「うん。確かに前はアレほどひどくなかったよね」


 うん。そうだね。前からあんな変質的なくらいの愛情を妹に注いでいたんなら、間違いなく両親から鉄槌が下っているよ。と言うか、そろそろ下る頃じゃないかな?


「まあ、そろそろご両親からの鉄槌が下る頃だと思うけどね。アレは親から見てもやり過ぎだから」

「ああ、どうかお兄様たちを構成させてください。お父様、お母様」

「あの2人の鉄槌・・・・・・。無事で済めば良いけど」


 うん? 何か今、不穏な事を言わなかったかいディアナ?

 まあ、俺としてはあの筋肉の塊がどうにかなる図も想像できないんだけどね。


「そんな訳で、あの人たちの事はご両親に任せて、俺は暫くは遺跡の調査に専念させてもらうから」

「そう言えば、いくつかの遺跡はボクたちを連れて行かないで、そのまま封印してたけど、やっぱり危険なモノが眠ってたの?」

「聞きたい?」

「「止めとくよ」」


 仲のよろしい事で、見事には持って拒絶したよ。

 俺としても聞かれても困るようなモノだったんだけどね。特に、ベルセルクシリーズの生産工場は、本気でシャレにならない事になりかねない。

 まあ、1体くらい起動させてみても良いかなとか思わなくもないんだけどね。流石にいきなり暴走するとかそんな事はないハズだし。

 たださ、ついている名が不穏過ぎるんだよ。何故に狂戦士?


「そんな訳で、俺はそろそろ遺跡に行くよ。多分、帰って来る頃には、ご両親による鉄槌が下ってるだろうし、あの兄たちをどうするかはその結果次第だよ。ただ、どうなっていたにしても、キリアがどうするかは早目に伝えておいた方が良いと思うよ」


 下手をしたらついて行くとか言い出しかねないからな。

 あんな筋肉だるまの同行者なんて、9人もいらんよ。

 俺は筋肉フェチじゃないし、そもそも男になんか興味はないからね。


「それは判ってるよ」


 なにかキリアが不満そうだ。

 まあ、いくら俺が鈍くても、キリアの中でもう答なんか決まっている。このまま一緒に旅を続けるの一択な事くらいは判っている。その上で、本人としては背中を押して欲しかったんだろうけど、俺が見事に躱したからな。そりゃあ不満にもなるか。

 判ってるんなら気を使えって?

 そんなに簡単に女の子の機微に合わせて気を使えたのなら、はじめから苦労はしないよ。

 そんな訳で、俺は遺跡探索へとそそくさと逃げ出したよ。



「アベル殿、折り入って話したき議がございます」


 そうして逃げ出して帰ってきたら、筋肉だるまが待ち受けていたよ。

 なんなの? 俺には話したい事なんてないよ。

 待ち構えていたのが長男のベルゼス1人だから良かったけど、もし此処に9人全員が居たら、余りの暑苦しさに迷わず逃げ出していたよ。


「伺いましょう」

「それでは、此処ではなんですので、私の執務室で」


 ああ、やっぱりそう言う事になるのね。

 まあ、良いって言ったのは俺なんだから大人しくついて行くよ。

 ・・・・・・それにしても、身長差がおかし過ぎてなんとも言えない構図になっているよ。2メートル半は違う訳だからね。

 ベルゼスの身長は4メートルに及ぶから、王人の中でも特に大きい。ただし、個の身長もそれほど珍しい訳じゃないらしい。

 平均身長は3メートル程度だけども、当然だけどもそれより大きい人ははかなりいる。4メートルを超える人も結構いるらしいし、5メートルを超える長身の人がいた事もあるそうだ。

 5メートル越え、オーガと同じ身長か、見てみたい気もするな。


「此処が私の執務室です」


 なんて考えている内に目的地に着いたみたいだ。当然のようにドアの取っ手に届かないので、ベルゼスに開けてもらって中に入る。

 仲の様子は、うん。完璧な仕事部屋だね。実に機能的な部屋だよ。ただし、その全てがベルゼスに合わせたサイズだから、どれもこれも問答無用でデカい。


「今お茶を用意しますので、座ってお待ちください」


 勧められたソファーも、俺じゃあ飛び乗らないと座れない大きさだよ。

 とりあえず、言われたとおりに座って待っていると、本人が手慣れた様子でお茶の用意をする。自分用のは丼のような巨大なカップで、俺用のはベルゼスからしたらオモチャのような小さな普通のカップ。

 4メートルの巨体で小さなカップにお茶を注いでいる光景は何とも言えないよ。 


「どうぞ」

「ありがとう」


 出されたお茶とお茶請けのケーキをありがたく頂く事にする。

 どうでも良いけど、お茶は普通のサイズだけど、ケーキのほうは王人サイズらしくて、もの凄く大きい。ただし、味は大味なんて事はなくて、繊細で上品な甘さでとろけるくらい美味しい。


「それで要件とは?」


 一通りお茶とケーキを楽しんだ所で、早速切り出す。

 昨日まで随分と不穏な視線を浴びせてくれていたんだけども、今日はそれを感じない。どうやら両親からの鉄槌が効いているようだけども、それならなおの事なんの用なのだろう?


「単刀直入にお聞きする。アベル殿とキリアはどのような関係か?」

「大切な仲間で、可愛い弟子だけど」


 いや、いくら俺が鈍感でも、そういう事が聞きたいんじゃないってくらいは判るよ?

 判るけどさ。ほかにどう言えと?


「それだけですか?」

「まあ、婚約者候補ではあるけど、今のところ本人にその気がないみたいだからね」


 今の所、キリアはディアナと一緒に居られればそれで良いみたいだし。

 なんだろうな、とりあえず、今の所はキリアにとってディアナが一番大切?

 ディアナにとっても同じで、キリアが一番大切みたいだしね。


「ディアナ嬢ですか・・・・・・」

「そんな訳で、今の俺とキリアとの関係は、まあ友人ですかね」


 少なくとも恋人では絶対にないと断言できるよ。


「それがなにか?」

「・・・・・・・ふう。正直に言いましょう。私たちはキリアの幸せをなによりも願っています。だから、アベル殿、貴方がキリアと結婚するのなら、私たちは貴方がキリアを本当に幸せに出来るのかを確かめたかった。ですが、どうやらそれ以前の様ですね」


 想像通りの展開だったな。だけど、ベルゼスも未だにキリアがディアナにゾッコンのままとは思わなかったみたいだ。


「正直に言えば、アベル殿にはもっとグイグイとキリアに迫って欲しいところですが」

「そうは言われてもね。こっちだって大変なんだよ?」


 なんだか俺ばかり忙しい気がするし・・・・・・。

 それに、現状で既に10人も婚約者がいる状況で、コッチから更に女の子にアタックして行く勇気はないよ。


「それは判っています。そうですか、どうやら、私たちの空回りだったようですね」


 やれやれと言った感じに溜息を付くベルゼス。

 うん? ひょっとして、あのドを超えたシスコンぶりは俺がどうするかを見る為の演技?


「どうやら、兄としてキリアの門出を祝うのはまだまだ先の様ですね」


 うん。ついでに、相手の男をフルボッコにしようと考えているみたいだけど、それもまだまだ先だよ。

 とりあえず、どの超えたシスコンは演技だったみたいだけど、シスコンなのは間違いないみたいだね。



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