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「何時か、絶対に仕返ししてやる・・・・・・」

「気持ちは判りますけど・・・・・・」


 アスカ氏による地獄のシゴキは、2時間に及んだよ。

 ・・・・・・そして、その間に俺は都合30回死んだ。

 冗談じゃなくて、アスカ氏に真っ二つに切り裂かれて死にまくったよ。

 冗談じゃないよ。なにあの地獄。俺だって、みんなから散々勘弁してとか、厳しすぎるって言われてきたけど、それだった決してみんなが修行で死ぬような事は一度もはなかったんだよ。

 それが、アスカ氏は躊躇いもなく殺しに来たよ。何アレ? 

 まさか、模擬戦で相手を殺すのくらい当然とでもいうの?

 と言うか、この世界に来て初めて死んだよ。

 これまで、どんな絶望的な戦いにも勝って、死なずに来たのに、アスカ氏にアッサリと殺されたよ。

 ついでに、致命傷ではないけど、腕や足を切り落とされたり、お腹を半ば切られたりした回数は50回を超える。うち20回は、即座に回復する間もなく、次の攻撃で殺されたよ。


「アレは絶対に模擬戦じゃない。単なるイジメだよ」

「それは確かに・・・・・・」


 これは誰にも異論を挟ませないよ。生き返らせる事が出来るからって、模擬戦で相手を躊躇いもなく殺しまくるとかどうかしている。アレは断じて模擬戦なんかじゃない。


「それとも、6万年前はアレが普通だったとでもいうのかね? それなら、俺ももう少し厳しくしないといけないけど」

「それだけは止めてくださいっ」


 不穏な空気を察したのか、ティリアが必死になって止めてくる。

 そこまで必死にならなくても良いと思うんだけどね。単に、厳しい修行で命を落とすのもごく普通なら、生き返らせる事が出来るのだから、過労死を厭わないくらい厳しい修行をするべきなのかなって思っただけだよ。


「そんなに必死にならなくても良いんじゃないかな?」

「必死になりますよ。アスカ様の所為で、アベル様の修行がこれ以上厳しくなるなんて・・・・・・」


 何かティリアが、もう本当に涙目になってしまっているんだけど、コレって俺が悪いの?

 いや、悪いのはアスカ氏だよね?

 間違いなく、悪いのはアスカ氏のハズだ。


「まあ良いや。あの人のやり方をマネしても良い事なさそうだし。なにより、当分はあの人と係わりたくないし」

「アスカ様なら、しばらくは書庫に籠って歴史を学ばれるそうですから。恐らく1週間は出てこられないのでは?」


 それは助かる。じゃあ、その間にさっさと旅に戻るとしよう。


「それじゃあ、今の内に次の目的地に行くとしようか」

「次ですか?」


 アスカ氏と会った事で、コッチでの目的は果たしたからね。


「次は王人の国アレストリアに向かうよ」


 王人の国アレストリア。王人の平均身長は3メートルを超えるらしいので、中々面白い国なのは確定だろう。



「キリアの御両親に合うのも久しぶりだね」

「そうだね。でも多分、まずは兄たちが待ち受けていると思うよ」


 そんな訳で、アスカ氏が書庫から出て来る前に、一路王人の国アレストリアへと向かっている訳だけど、キリアの御両親。つまり王人の王と王妃には2回ほど会っている。

 父であり王であるラゴルゼ・フル・デウス・アレストリアは、340センチに及ぶ長身で、鋼の様な筋肉を全身に身に纏った、間違いなく体重は300キロに達するような人物だった。それでいて、粗暴な感じのない知的な人物である。

 対して母のキリアラント・メル・デニス・アレストリア王妃は、280センチと、キリアよりは大柄で、なんと言うか、ボン・キュ・バンと、もの凄い迫力の肉体美が目に毒に人だった。

 アレで、キリアを含めて10人の子持ちなのだから、スゴイ。


「お兄さんがいるのか」

「ボクは末っ子。上に9人兄がいる」


 因みに、一番上の兄とは180歳離れているそうだ。つまり、長男は現在200歳?

 そろそろ、王位についても良い年頃だと思うけど。


「兄たちはボクに甘いから、多分、男が一緒に居るのが許せないと思う」

「それは、9人そろって極度のシスコンと言う事かな?」

「うん。前にボクに婚約の話が出た事があったんだけど、兄たちが潰したんだ」


 いや、それはどうなんだ?


「ホントは、旅に出るのも反対だったみたい。このまま、国に居ようとか言い出すかも」

「それは面倒臭そうだね」


 3メートル越えのむさくるしい男9人に文句を言われる光景が思い浮かぶんだけど。

 余りの暑苦しさに、思わず張り倒してしまうかも知れないよ。


「出来れば、何事もなければいいんだけどね」

「それはムリだと思うよ」


 うん。俺もムリだと思うよ。少なくても、キミの9人の兄の相手はしなくちゃいけなさそうだし。



「愛しのキリア。良く帰って来てくれたね」

「キリアが居ない日々は、実に味気ないものだったよ」

「キリアの好きなスイーツを取り揃えているんだ。これから一緒にお茶にしよう」

「旅の間の事を話して欲しいな。活性化にも遭遇したと聞いた時には、心臓が止まるかと思ったよ」

「メリールもキリアに会いたがっている。後で私たちの所に来てくれよ」

「キリア、無事で良かったよ。余りボクたちに心配をかけないでくれよ」

「こうして可愛いキリアにまた会えて、本当に嬉しいよ」

「やはりキリアが居ないと、日々の暮らしに華やかさが欠けてしまう」

「うむ。やはりこの国にはキリアが居ないとな」


 判っていたつもりだけど暑苦しいよ。

 3メートルを超える筋肉だるまが9人。キリアの所に殺到しているけど、アレって押し潰されて島はないか?

 まあ、今のキリアがその程度でどうにかなるとは思わないけどね。

 今のキリアはES+ランク。度に手た当初の俺よりも強くなっている。この調子なら、キリアも何かのキッカケがあればすぐにでもレジェンドクラスに成るのは確実。


「お兄様たち落ち着いて、とりあえずただいまだけど、まずはアベルに挨拶しないと失礼だよ」

「おおそうだったな。久々に会ったのでついな」


 いや、俺はキミたちみたいなゴツイ筋肉だるまに挨拶されても嬉しくないんだけど。


「失礼しました。私はキリアの兄でこの国の王太子、ベルゼス・ラウ・リゼル・アレストリアと申します」

「アベル・ユーリア・レイベスト。よろしく」


 ベルゼスは3メートルどころか、4メートル近い巨人だ。しかも、ボディビルダーも真っ青な筋肉に全身が覆われていて、ヤクザも裸足で逃げ出す強面。燃える様な深紅の髪は腰に届くほどに長く、それをひとつに纏めているのだけども、鋭い三白眼と合わせて余計凶悪に見える。


「まずは王宮に参りましょう。両親もお待ちしていますので」

「うん。よろしく」


 出来れば行きたくないんだけどね。この国では出来れば普通のホテルに滞在したいよ。

 と言うかキミたち、その突き刺すような視線。まさか気付いてないと思っているの?

 言いたい事があるならハッキリ言ったらどうかな?

 そうすれば、俺としても相応の対応を取らせてもらうよ。

 そう思って何時でも来いって待ち構えているのに、ベルゼス以外は挨拶以降は無言を貫いてる。いったい何なのとイライラして来たところで、城に到着。

 うん。本気でデカいね。王人たちの建築物はまず、一階ずつの高さが普通の倍はある。

 当然なんだけどね。ヒューマンの建築物の天井までの高さが、平均して大体3から4メートルくらいなら、王人の建築物の天井までの高さは、6メートルから8メートルくらいある。

 そのくらいないといろいろ不便なんだろうけどね。ベットだって倍の大きさがないとそもそも寝られないし。


「おお、良く来てくださったなアベル殿」


 なんて考えている内に王の執務室に到着。

 因みに、ドアの取っ手が大体2メートルを超えた高さにあるので、俺だと背伸びをしても届かない事が判明。


「キリアも良く無事に戻りましたね。ゲヘナでの活性化の戦い。見事戦い抜いたとの事。私たちとしても鼻が高いです」

「父様。母様。ただいま戻りました。これから戦いが激しさを増していく中で、レジェンドクラスやジエンドクラスの魔物をこの目で見る事が出来たのは幸運だと思います」


 幸運ね。まあ、生き残れたのは確かに幸運だと思うよ。下手をしたらその殺気と重圧だけで死んでいた可能性もあったから。

 と言うか、ベルハウゼルでジエンドクラスの魔物と戦っていた時、耐え切れずに気絶してしまった人が何人もいたんだよ。主にAクラスくらいの研究者たちだったんだけどね。

 間違いなく、ベルハウゼルが魔物からの殺気や、魔力や闘気の暴風による重圧を和らげてくれていたのに、耐え切れずに気を失ってしまったんだよ。

 もし、ベルハウゼルによって緩和されてなかったら、間違いなく死んでいたね。と言うか、俺だって耐えられたか判らない。

 下手をしたら、何も出来ないまま、殺気に当てられただけで全滅していた可能性だっある。

 それくらいギリギリの戦いだったんだけどね。


「一応聞きますけど。この国に活性化の兆候は?」

「ない。我が国では活性化は30年前に起こったばかり。まだしばらくは起こらないハズなのだが、そうも言い切れなくなっ来ておるのか」

 

 30前に起きているのね。それなら、普通なら少なくても後100年は大丈夫なはずだけど、どうも油断できないんだよな。


「それなら、俺たちはまずは遺跡の調査に専念させてもらいますから、転生者について調べてもらえますか?」

「それについては既に調査を開始してある。既に判っているだけで、10人の転生者が我が国に居るようだ。あともう少しすれば、調査も完了し、正確な人数が判るだろう」


 最低でも10人は確定か。


「そうだお父様。せっかく戻っんだし。きょうはボクがみんなの晩ごはんをつくるよ。アベル直伝で、料理の腕も凄く上がったから楽しみにしていて」


 俺が面倒を見る事になるんだろうなとか考えていると、何故か、キリアが家族に手料理を振る舞うと言い出した。

 いや良いんだけどね。久しぶりの家族団らんだし。

 だけど、そんな事してるから、兄たちがシスコンになってしまったんだと思うよ?

 現に、両親じゃなくて9人の兄たちが大喜びしているし。

 それと、何事もなければ1ヶ月半程度で次の国に行くの判っているのかね?

 もの凄くメンドウだけど次の国に行く時にはこの兄たちと大騒ぎになるの確定だと思うのは気の所為かな?



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