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「さて、ミランダの試練も無事に終わったし、次はアスカ・シングウジの残した遺跡の調査だよ」


 ミランダ自身半信半疑だったみたいだけど、あの後一応、丸一日かけて試練が終わった事を確認して、今は盛大にパーティーの最中だったりする。

 ミランダの要望で盛大に開かれたお祝いの席には、どう言う訳か他のレジェンドクラスも勢揃いしている。

 ミミールなどしれっとしながらもの凄い勢いで用意した料理を食べ続けているけど、気にしない方が良い。と言うか気にしたら負けだよ。

 そんな訳で、呼びもしてないのに来たメンバーについてはガン無視を決め込んで、これからの活動について確認する事にする。


「そう言えば、その遺跡は何処にあるのですか?」

「やっぱり、ご先祖様が残したのがどこにあるのかは気になる?」

「それは当然です」


 確かにね、ティリアとしたら気にするなと言う方がムリだろう。


「場所はそんなに遠くはないよ。と言うか、この真下さ」

「「「「はい?」」」」

「「「「「どういう事?」」」」」


 俺の答えに疑問符が乱舞する。うん。気持ちは判るよ。俺も初めて知った時は同じ様に思ったからね。


「だから王都の真下。正確には王都の地下に眠っている十万年前の遺跡のさらに下にあるんだよ」


 ホントに良くやってくれるよ。まさか、遺跡の下に更に遺跡があるなんて誰が思うんだよ?


「それはまた、予想もしない所に・・・・・」

「でも、確かに隠すにはもってこいの場所だよ。まさか、遺跡の下にもう1つ遺跡があるなんて、誰も思わないし」


 本当によく考えてあるよ。それに、アスカ・シングウジは建国と共にここを王都に定めたらしいから、間違いなく自分が残した遺跡を護る意図があったんだと思うしね。

 この国の王都が、建国以来場所を変えていない理由も間違いなくこれが理由だろうし。


「言い伝えでは、アベル様にお渡ししたご先祖様のメッセージ。アレをこれまでに誰かに手渡した事はないそうです。だから、私たちが始めて、その遺跡に立ち入る事になるハズです」


 ティリアも、自分の遠い先祖がいったい何を残したのか、興味津々みたいだ。

 と言うか、彼女は転生者の血族なんだよな。6万年も前だからもの凄く遠いけどね。

 それに、この世界にはこれまでに数え切れない程の転生者が生まれているんだから、その血族もそれこそいくらでも居るだろうし、例えば、俺の先祖に転生者がいたとしてもおかしくはなかったりするしね。

 その辺りはいちいち気にしても仕方がないかな?


「そうなるかな? ああそうだ。今回は俺だけで先に確認に行ったれしないで、みんなで一緒に行くからよろしく」

「えっ? どうしてですか?」

「どうしてって、たとえその遺跡に何が眠っていても、今回は全員で行くに決まっているからだよ」


 むしろ、全員で行かないなんて選択肢があるとでも?

 仲間になってまだ間もない、グレストくんたちやレーゼ少年たちには、チョット刺激が強過ぎるかも知れないけどね。

 そこは、キミたちも転生者なんだからと諦めてもらうしかない。

 うん。転生者に生まれたのが運の尽き。しかも、俺もだけどこんな時代に生まれてしまったんだから本気でついてないよ。


「うん、諦めようね。遺跡に眠っているモノ次第で、場合によってはそのまま、カグヤに行く可能性だってあるんだから」

「そのままですか?」

「そうだね。今までは、ヒュペリオンがあってもまだ俺たちの実力が足りないから、カグヤへ至ろうとはしなかったけど、これから行く遺跡に眠る遺産、それから真実次第では、すぐにでもカグヤまで行く必要が出て来るだろうからね」


 ヒュペリオンじゃ無理でも、ベルハウゼルとかなら行けそうな気もするけどね。

 問題は、カグヤの方が俺たちを迎え入れてくれるかかな?

 立ち入るにはまだ力不足だとかで、門前払いされたらどうしようかね。いや、その時は力を付けて出直すしかないんだけどね。

 立ち入るための最低条件が、ジエンドクラスになる事ならまだ満たしてないんだよね俺たち。まあ、いずれ誰かがなるだろうから問題ないよね。


「そんな訳だから、早速行こうか?」

「もうですか?」

「もうだよ。これ以上後回しにしても仕方がないしね」


 そんな訳で、問答無用でみんなを連れてまずは、以前にも行った10万年前の遺跡に転移する。そこから地下にトンネルを掘り進めて行って、5000メートルほど掘り進めてて出来たのがアスカ・シングウジの残した遺跡。

 何時もの様に、周りを結界魔法で覆ってから周りの土を取り除いて、遺跡の全貌を明らかにしてみるけど、見た目は何だろう? 巨大な倉庫みたいな感じかな。


「あそこが入り口だね。早速行こうか」


 正しく正面入り口には、大型トラックも楽々入れる大きな入り口のスライドドアが付いている。

 さて、その脇には10万年前の遺跡と同じような端末が付いているので、早速捜査してみると、ロック解除の問題もなくアッサリとドアが開かれる。


「開いた」

「だね。それじゃあ早速中に入ろうか」


 と言っても、誰も中に入ろうとしないんだけど・・・・・・。

 仕方なく俺がまず入ると、後から恐る恐る入ってくる。いや、何故にまず俺が入るまで誰も入らないかな?


『10万年前周期の戦いに臨む転生者たち。俺たちよりもはるかに過酷な運命を背負いし者たち。キミたちのために、俺はこの遺跡を造った。もっとも、俺が残せるものは10万年前の転生者たちがキミたちのために残したものと比べれば微々たるものに過ぎないが、それでも、君たちの助けにはなるハズだ』


 唐突に、誰かの声が響く。いや、アスカ・シングウジの残したメッセージで間違いないだろう。


『さて、キミたちがまず知りたいのは、この世界の情報だろう。君たちが望む全てを知りえるとは思わないが、私がこの世界で知り得た情報は、正面の電算室に全て保管してある。まずはそれを確認すると良いだろう

「どうやら、コッチの事は全部お見通しみたいだね」


 まあ当然かな。

 それに、此処に来たのは何よりも情報が欲しいからなのは間違いない。

 カグヤの事。魔物の世界の事。10万年前周期の戦いの事。そして神の事に、10万年前の転生者たちの事、知りたい事が山のようにある。

 そんな訳だから、言われたとおりに早速電算室とやらに入る。


「随分と広いですね」


 ティリアが中を見渡して思わず呟く。

 確かに拾い、俺たちも何時の間にか大人数になってしまっているけれども、全員入ってもまだまだ余裕がある。多分、体育館くらいありそうだ。

 で一番奥にあるのが、此処が電算室と言われる所以だろう。10メートル四方はある巨大なコンピューター。所謂スパコンとかかな。確実に学校の教室丸々より大きいよなコレ。高さを考えると2倍か3倍くらいありそう。


「あの中に、お目当ての情報が入っているのかな」


 それしか考えられないけどね。

 ここに来て、まさかその辺の端末の中に全部情報が入れられているとかはないだろう。

 この中に、いったいどんな真実が残されているんだろう。そう思いながら電源を入れる。


『転生者反応を確認。封印より6万年が経過している事を確認。これより蘇生プログラムを開始する』


 すると、予想もしないアナウンスが流れ始める。

 そして、スパコンだと思っていたものから突然カプセルが出て来る。このカプセルは・・・・・・。


「コールドスリープの人工冬眠カプセル?」


 正しく人工冬眠のためのカプセルだ。当然ながら、中には人が眠っている。

 誰だ? などと考えるまでもないだろう。これは、彼は・・・・・・。


『蘇生シークエンス終了。覚醒を確認。ハッチを開放する』


 そのアナウンスと共に、カプセルのハッチが開かれる。


「無事に起きられたと言う事は、6万年の人工冬眠に成功したようだな」


 そして、人工冬眠カプセルから出てきた人物は感慨深そうにそう呟く。


「ひとつ聞きたいのだけど、キミはアスカ・シングウジで良いのかな?」

「そうだよ。6万年後の転生者くん」


 ヤッパリか。

 どうやら、アスカ・シングウジはこの遺跡で6万年前からコールドスリープで眠り続けていたようだ。何の為にそんな事をしたのかは判らないけれども。


「それにしても、無事に起きられて良かったよ。保険に頼らなくて済んだのは何よりかな」

「保険とは?」

「なに、簡単な事だよ。論理の上では可能でも、実際に6万年もの人工冬眠から目覚められる保証はなかった。場合によっては、俺は眠ったまま目を覚まさない可能性もあった。だから、保険としてこのコンピューターの中に俺の人格をコピーしておいたのさ。人工冬眠からの蘇生に失敗した場合の保険としてね。こうして俺が無事に目覚めなかったなら、この中の俺が目覚める事になっていた」


 つまり、これはスパコンではなく、アスカ・シングウジがこの時代まで眠りにつくためのベットだったと?

 そして、この中には彼の人格のコピーと予備の体も眠っているんだろう。

 こうして無事に人工冬眠から目覚められなかったときに、自分の代わりに目覚めるクローンが。


「俺たちはこの世界の真実に少しでも近付くためにココに来たんですけど、まさか貴方に会う事になるとは思いませんだしたよ。アスカ・シングウジ」

「だろうね。だけど俺はどうしても、この時代に辿り着きたかったんだよ」


 何処までも真摯な瞳で、アスカ・シングウジはは俺を貫いた。


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