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 何だろう。最近、リア充に近い状況にあるような気がするのは、気のせいだろうか?

 そんなハズはないのだが、確かに、六人の美少女に美人に囲まれていれば、傍から見ればハーレム野郎のリア充かも知れない。

 と言っても、六人ともあくまで弟子な訳だし、師としての信頼は勝ち得ていると思うが、異性として見られているかは別だろう。

 彼女たちは多分、俺の事を信頼できるしとしてくらいしか見ていないハズだ。

 或いは、可愛らしい弟分だろうか?

 いずれにしろ、今の所、彼女たちと恋愛関係を築くような事は出来ていない。

 今のままでも十分に楽しいし、幸せなので特に問題も無いけれども、何と言うか、周りの目が少し今までと違ってきている気がする。


 メリアとデートした後、俺は何故か、リリア、シャリア、エイシャ、アリア、アレッサの五人とも連続してデートをする事になった。

 嬉しいし、喜んでくれていたようなので良かったのだけれども、精神的にかなり疲労困憊する羽目になった。あそこまで疲れたのは、転生後初、それこそ、魔域の活性化のただ中、死線に身を置いていた時より疲れたかも知れない。


「初デートが俺なんかでいいのか?」


 思わず聞いてしまったが、答えは、


「アベル以外なんて考えられない」


 との事だった。どういう意味だと考えればいいのだろうか?

 孤児院での一件以来、彼女たちとの繋がりが深くなった事は間違いないけれども、彼女たちが俺にどんな思いを抱いているのかはまるで分らない。

 普通に考えれば、信頼できる師、一緒に居て当たり前の仲間。そんなところだろう。

 彼女たちにとって、俺との出会いはこれ以上ない幸運だったのは間違いない。

 俺にとっても願っても無い幸運で、無理やり縁をつくったが、それも特に問題はない。

 なのだけれども、冷静に考えてみると、俺たちの関係は一体どんなものなのだろうと思わなくもない。

 一番妥当なのは、単なる師弟の関係に過ぎないというモノだろう。

 一番妥当で、実際その通りの関係のハズなのに、何か違うような感じがするのは、単なる自意識過剰か、単にそうだったらいいと思う俺の願望だろう。


 何時までも下らない事を考えていても仕方がない。

 俺は気を取り直して、メリアたちの特訓に集中する。


「アリア、援護をお願い」


 目の前では、パワードスーツに身を包んだメリアたちが、Bランクのシィ・トロールと戦いを繰り広げている。

 六人に対して、シィ・トロールは二十匹。数の上では不利だが、この程度で値を上げているようではまだまだ甘い。

 事実、右手に剣を構えて一気に距離を詰めていくシャリアを、アリアが魔道砲の弾幕で援護し、確実に敵を殲滅していっている。

 互いの連携も完璧。パワードスーツを付けてとは言え、既にBランクの魔物とも十分に戦えるようになっている。

 ちなみに、何故、態々、パワードスーツを着てBランクの魔物と戦わせているかと言えば、極めて簡単に、ランクアップ後の感覚を覚えさせておくためだ。

 B-にランクアップすれば、パワードスーツなしで今と同じだけの動きが出来るようになる。

 これまでとはケタの違う戦いの感覚を、少しでも体に馴染ませておくには、パワードスーツでの戦いか、フルエンチェントでの戦いか一番効率的だ。

 そして、どちらにも馴染んでいた方が効率は高いので、実戦訓練の中でこうして格上の魔物と戦ってもらい、ランクアップした後の感覚を掴んでもらっている。


 それにしても、彼女たちの連携はいつ見ても見事だと思う。一緒になって間もないハズのアレッサも、まるで長年共に戦って来たかのように、息を揃えて連携している。

 まあ、それはメリアたちの実力よりも、アレッサの長年の経験によるものだろうけれども、

 アレッサは常に戦場全体を視野に入れて、最適なサポートをこなしている。

 前衛に出る事が多いメリアとシャリアが、前線で孤立しない様に後衛と上手く連携させ、後衛に敵がいかないように上手く戦闘をコントロールする。

 的確な状況判断は、流石にメリアたちでは出来ないもので、アレッサが加わった事でさらにパーティーとしてのバランスが良くなって、隙も無くなっている。

 そんな事を考えている内に、最後の一匹の首をリリアが切り落とし、戦闘は終わる。


「はい。お疲れ、パワードスーツにも大分慣れて来たな。これなら、B-にランクアップしても、すぐに戦闘に慣れるだろう」


 実際の所、C+からD-にランクアップした後の戦闘の激しさの違いは、本気で深刻な問題で、ランクアップした手で慣れない戦いを強いられて命を落とす事すら少なくない。

 超一流と言われる領域は、上り詰めるだけでも大変だが、実際に生き残るのは更に困難を極めるのだ。

 特に彼女たちの場合は、急激にランクアップをしているので、戦闘の感覚を掴む必要が大きい。


「だけど、まだまだ甘いよ。メリア、突っ込むのはいいけど状況の見極めをもっと慎重にしてから、リリアは状況の見極めがまだ甘い、あの程度の攻撃を避けられない様じゃあダメだ。シャリアは熱中し過ぎると攻撃が単調になる。直さないと命取りになりかねないから注意する事」


 それに、まだまだ彼女たちの戦いには無駄も多いので、戦闘を通して見えた問題点を指摘していく。

 実戦訓練は、実際に戦っている中での問題点が浮き彫りになるので、効率では最適だ。

 命を落とす危険を減らす意味でも、実戦訓練を通じて弱点を克服していく意味し大きい。


「それじゃあ、反省点を踏まえて、もう一セットはじめ」


 だから容赦はしない。

 俺は問題点と注意事項、状況によってのアドバイスを終えると、次の為に用意していたB+の魔物、サーペンナイトを解き放ち、次の実戦訓練を始める。

 ランクも上だし、数もさっきよりも十匹ほど多い、厳しい戦いになるだろうが、スパルタと言われるほどでもないだろう。

 そろそろこの国も出る事になるし、旅の途中では訓練も余り厳しくは出来ないので、今の内にしっかりと鍛えておいた方が良いだろう。

 当初の予定とは違い随分長くいる事になった上に、散々面倒事に巻き込まれたが、彼女たちと出会え、レイルと友好を結べた事を考えれば、マリージアに来たのは大きくプラスだった。


 後はとりあえず、もうこれで本当に終わりにしてくれと言うのが本音だ。

 散々面倒事に巻き込まれたのだから、もうこれ以上はいらない。もう次の国に旅に出ようとしている所なのだから、頼むから、もう厄介事が舞い込んでこない様にと本気で思う。

 現実問題、マリージアに来てからの事件続きには、呪われているんじゃないか、或いは本当に誰かの掌の上で踊らされているんじゃないかと真剣に悩みもした。

 何か、これもまたフラグになりかねない予感もするが、本当にもう何事もなく過ぎて欲しいモノだ。


「っ疲れました・・・」


 俺が別の事を考えている内に、アッサリと実戦訓練を終えて戻ってくるが、流石に疲れたらしく、アリアはパワードスーツを脱いで大の字に寝転がる。


「はしたないっていう余裕も無いですね。これ以上は本当に無理ですよ・・・」


 アレッサですら限界の様で、倒れ込んで肩で粗く息をしている。

 何と言うか、六人とも疲れた体を少しでも休めるために、思い思いの様子で休んでいるが、そんなあられもない姿を無防備に晒さないで欲しい。

 正直、目に毒である。


「疲れたのは判ったけど、そんな所でだらけない。実戦訓練なのだから、戦いが終わっても、街に戻って安全が確保されるまでされるまでは気を抜かない」


 そう言いながら、スポーツドリンクのペットボトルをアリアの頬につける。


「あっ、ありがとうアベルくん」


 冷たさにひゃっと悲鳴を上げながら、嬉しそうに受け取って喉を潤す。

 その様子に羨ましそうな視線が集まるので、当然全員に渡していく。


「ありがとう。でも、街に戻るまで気を抜いちゃいけないのは判っっているけど、それなら訓練が厳しすぎるよ。正直、最後の一絞りまで力を振り絞ったから、もう警戒する余裕もないし、もし警戒していても、何かあっら対応できないから同じ事だよ」


 既に余力の一欠けも無い所まで消耗しているので、警戒してもどうしようもないと、訓練が厳しすぎるとがいけないとリリアが反論してくる。

 確かに、今日は何時もよりも更に厳しかったかも知れないが、


「どれだけ消耗した状況でも、咄嗟の事態に即座に反応する。それが出来るようになって初めて一人前だからな」


 別に意地悪でしごいた訳じゃない。

 極限まで戦い抜いてなお気をを抜かない、疲労の極致にある状態の危険を切り抜けられる術を身につけてもらう為だ。

 戦場にある以上、最も重要な事の一つでもある。


「それは解っていますけど、判っていても実践できるかは別問題なんですよね」

「だからこそ、経験を積んで体に覚え込ませるんだよ」


 アレッサに言わせれば、重要な事は判っていても出来るとは限らない、出来るのは一部の天才やスペシャリストだけと言いたいのだろうけど、彼女たちはこれからその一部の天才やスペシャリストのに成るのだ。


「B-にランクアップする以上、これも当然、必須事項だよ」


 B-以降のランクは超一流の領域だ。人外の領域に片足を突っ込んでいるのだから、それくらいの事が出来なくては話にならない。

 ランクアップすれば必ず必要に迫られるのだから、今からしっかりと身に付けておくに越した人はない。


「人外魔境に一直線で進んでいるのね」

「判っていたけど、私たちどうなっちゃうんだろう?」


 不安そうに漏らすが、まあ、それは諦めてもらうしかない。強くなりたいとは、彼女たち自身が望んだ事なのだから、人外魔境に足を踏み入れるのも受け入れてもらうしかない。

 それに、冒険者になる事を選んだのも彼女たち自身なのだ。戦いに身を置く以上、強くなるか死ぬかの二者択一を迫られる。

 生き残るためには、人外に片足を突っ込んででも強くなるしかないのだ。


「まあ、諦めるしかないから、気をしっかり持てとでも言うところかな? それより、そろそろ帰ろうか、帰る所まで自分で出来るようになるのが理想なんだけど、まだ難しいからね」


 何時までも戦っていたすぐ傍にいても仕方がないので、転移魔法でメリアたちと一緒にマリーレイラに戻る。

 転移魔法。或いは帰還魔法とも言うべきこの魔法は、前世のゲームでは定番中の定番。魔力の消費も少なく使い勝手の良い、使い易すぎる魔法だったが、現実ではそう簡単にはいかない。

 魔法の属性を持つ者自体が限られている上に、魔力の消費量もかなり高い。

 使うためには少なくてもD-の魔力量が必要なので、そもそも、戦闘職として力を付けている者でなければ使う事は出来ないし、C+までの魔力量では一日に数回使うのが限度なので、使いこなすためにはB-以上の魔力が必要と言う条件が付く。

 この世界でも、超絶便利な事に変わりはなく、使い手は重宝されているのだけれども、中々使い手が少ない魔法なのが転移魔法だ。

 そんな蓮井の方の適性をアリアとアレッサは持っていて、既に覚えて使えるようになっているのだけれども、戦いが終わった後に帰還の為に使う余裕はまだない。


「転移魔法での機関も、自分たちで行えるようになるのが理想なんだけど、流石にまだ無理だからね。B-になれば普通に出来るようになるから、今は気にしなくていい」

「はい。と言うかあのハードな特訓で、転移魔法分の魔力を残すなんて無理です」

「ギリギリの戦いをしていますからね。少なくても今の私たちには無理な話です」


 やれと言われても無理だと、アリアとアレッサは頬を膨らませる。

 だから、今は出来なくてもいいと言っているのだから、そんなにむくれないで欲しいのだが・・・。

 そんな姿も非常に可愛らしくて、俺としては嬉しかったりもするのだが、いや違う、何を考えているんだ、何を・・・。

 他愛無い話をしながらギルドに向かう。このところ、パワードスーツやフルエンチェント付きでBランク以上の魔物と戦っているので、彼女たちの得る報酬もこれまでとは比べ物にならない金額になっている。

 自分たちがもらっていいんですかと、彼女たちは恐縮していたが、彼女たちが討伐した魔物なのは確かなのだから、報酬を受け取る権利は彼女たちにある。

 まあ、ぶっちゃけ、いきなり一日で平均的な年収に匹敵するくらいの金額を得る様になったのだから、驚くのも戸惑うのも当然だろう

 今日の稼ぎも、一人頭で一般人の年収の倍近くになるハズだ。

 何か金銭感覚がマヒしてしまいそうだと言っていたけれども、まあ、高位ランカーになればこれが当たり前なので、今の内から慣れてもらうしかない。

 正直、高位ランカーの収入は一般人とは全く別の次元にあるので、ぶっちゃけ、場合によっては貴族や王族よりもはるかに金銭的に優位に立つことも少なくないので、その辺は慣れてもらうしかない。

 ・・・余りの大金に身を持ち崩す者も少なくないのも事実だから、その辺は気を付けてもらわないといけないし、俺も気を付けているけど、彼女たちなら大丈夫だろう。


「はい。ギルドカードへの入金終わりました。お疲れ様です。今日もご苦労様でした」


 冒険者ギルドで討伐報告を済ませ、素材の分も含めたその金額に、未だ慣れていないメリアたちは若干ひきつった笑顔を浮かべる。


「本当に、まだ慣れないわ・・・、いずれこれが当たり前になるって判っているんだけど、私たち大丈夫かしら・・・?」

「気をつけないとね。これが原因で身を窶す人もいるって言うから」


 そうならない様にみんなで気をつけようと頷き合っている。

 これまでと比べれば当然なのだけれども、今の収入などまた序の口に過ぎない事を判っているのだろうかと思わなくもない。

 彼女たちの収入はこれから更に飛躍的に伸びていくのだが・・・。


「貴方が噂のレジェンドクラス候補ね?」

「話には聞いていたけど、本当に可愛いのね」


 そんな事を考えていると後ろから声をかけられる。

 からかったり侮るような気配はない。純粋に興味津々と言った声色は、聞く者を不思議と引き付ける。


「エルフとドワーフ・・・」


 どんな相手が話しかけてきたのだろうと振り返って、楽しそうな笑顔を浮かべる二人の姿に、一瞬固まった。


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