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「そう、そのまま続けて」


 アメの後のムチじゃないけど、俺はさっそく新たな転生者の少年たちの修行に取り掛かっている。

 若いのに全員D以上の実力を持っていた彼らを、まずは1週間でAランクまで引き上げるつもりだ。それにしても、レーゼ少年とかもそうだったけど、やっぱりみんなヒューマンと比べて若くして強いよな。

 多分、俺が手に入れた10万年前の転生者が残した古文書と同じ物を手にしていたら、彼らは既に俺より強くなっていたと思う。

 と言うか、別にひとつしか本が残されていない訳じゃないし、同じ物が他にたくさんでもあるハズなのに、今のところ俺以外に本を見付けた転生者が居ないのはどうしてだろう?


「魔力の循環は全ての基本だからね。コレの上達は強くなるための絶対条件だよ」

「知りませんでした。基本中の基本だから、はじめに覚えるし、覚えたらそれ以降トレーニングなんてしてきませんでしたから」

「ボクも」


 まあ、わざわざトレーニングをしなくても、実戦で魔法を使い続けていれば自然と上達していくから、あえて鍛えるまでもないと思われているのかも知れないけど、魔力量の増強や、魔法の発動スピードのアップなど、実戦で生死を分けるかも知れない重要な強化が出来るので、やっておくに越した事はない。


「まあ魔力の循環は、魔法を使っていれば自然と上達していくからね。あえて修行を重ねる人も少ないかも知れないけど、これをやっていると、魔法の発動スピードとかが全然違ってくるからね。やっておいて損はないよ」

「それにしても、ボク、もっと厳しい修行を覚悟していたんですけど」


 グレストくんの言葉に、自分たちのトレーニングをしながら、コッチの様子を見ていた皆が苦笑しているのが判る。

 

「今は基本の基本だからね。大変なのはこれからだよ」

「そうなんですか?」

「じゃあ次の段階に行ってみる? 大変なのが良く判るよ」


 そんな訳で、まずは最年長のグレストくんに次の修行をやってもらう事にする。

 やるのは当然、自分の魔力の倍以上の俺の魔力の制御だ。


「今から俺の魔力を肝の中に送るから、それを制御して魔法にして使ってみてごらん」

「はい。頑張ります」


 張り切っていたグレストくんだけど、俺の魔力が送り込まれた瞬間に一気に余裕がなくなる。


「こっこんな・・・・・・。こんな魔力を制御しろなんて・・・・・・」

「魔力の循環の修行を思い出してごらん。魔力の制御には循環が一番効率的だよ」


 俺のアドバイス通り、グレストくんは全身に魔力を循環させながら制御をし始める。

 今回、グレストくんに送り込んだ魔力はおよそ彼のモノの3倍。自分の魔力の3倍もの量だ、それが全身を循環することによって体中を刺激していく。


「さあ、次はその魔力を全部使って一番得意な魔法を使ってみよう。キミは何の魔法が一番得意かな?」

「・・・・・・はい」


 体中に溢れ返っている魔力を魔法に変換していく。今まで経験したことのない魔力量だからてこずっているようだけども、時間をかけて魔法を完成させる。


「ファイヤーボール」


 放たれたのは炎球。30センチ程に凝縮されたそれは、込められた膨大な魔力量ゆえだろうか、太陽に匹敵する熱量を持っていた。

 既に単なる炎球とはかけ離れた、全く別の魔法になっていた。


「はいお見事。無事に成功したね」

「無事にって、これ失敗したらどうなるんです?」

「心配しなくても意識を失って倒れるだけだよ。命の危険とかはないから大丈夫」


 俺の言葉に、グレストくんだけじゃなくて他の4人もなんとも言えない顔をしている。


「それじゃ、次はアリシエルだね」

「あの、お手柔らかにお願いします・・・・・・・」


 そんなこと言われても、送り込む魔力量を減らすつもりはないけどね。

 こうして、1日目の修業は阿鼻叫喚のうちに始まった。



「これがレジェンドクラスの、アベルさんの修行・・・・・・」

「ボクたち、よく生きているよね・・・・・・」


 1日目から命の危険があるような無茶はしてないって。まあ、今日1日の修行でかなり参ってしまったようだけどね。毎度の事なのでもういちいち気にしないよ。


「ボクたちの時も同じでしたよ。多分、アベルさんは1週間でAランクまで鍛え上げるとか、そんな無茶なこと考えているから、とんでもないハードに修行になるよ」


 経験者は語るとばかりのレーゼ少年の追い打ちに、グレストくんたちは撃沈。

 そんな彼らの心の安らぎ、今日の晩ごはんのメニューは中華にしてみました。

 まずは主食としてエビチリをかけた餡かけチャーハン。それにおかずはマーボー豆腐に青椒肉絲。トンポウロウと言う皮付きの豚バラの煮込み。野菜を取るのに棒棒鶏と回鍋肉も、春巻きに餃子に、焼売にフカヒレスープ。

 白いご飯が食べたいならそちらも用意してあるのでご自由にと言うと、死んだように動かなかったグレストくんたちがスゴイ勢いで食べ始める。

 まずは餡かけチャーハンを一気に食べ尽して、続けてどんぶりにご飯をよそって。トンポウロウを乗せる。今回は半熟卵も用意してあるからそれも一緒。ガツガツと丼を食べながら青椒肉絲何かにも手を出していく。

 うん。毎度ながらスゴイ食欲だな。

 俺も修行をはじめてしばらくたってからだけどこんな時期があったよ。

 要するに、エネルギーを消費し尽しただけじゃなくて、一気に成長しようとするからだがエネルギーを欲していて飢餓状態になっている訳だ。

 いくら食べても満足できない状態だね。食べた先から消化されて吸収されていくんだけど、それでも全然足りないんだよ。

 まあ、この状態になったって事は、グレストくんたちが無事に成長期にはいた証拠だ。 

 これなら、1週間でAランクまで鍛え上げるのも大丈夫だろう。


「あの、なんだかいくら食べてもお腹一杯にならないんですけど、私たちどうしちゃったんですか?」


 なんて聞きながらも食べる手は止めない。と言うか止まらないのに、エアリエルは恥ずかしくなったのか赤面してしまっている。


「君たちは今日の修行で一気に成長したからね。その分のエネルギーを体が欲しているんだよ。だから、成長が落ち着けばその食欲も落ち着くから心配しなくていいよ」


 と言っても、強くなればなるほど食べる量は増えていくんだけどね。俺なんか、普通に今の彼らの倍以上食べるし。

 それにしても、判っていたけど食べるペースが速いよね。 

 餡かけチャーハンなんて1人あたり20人前は用意していたのに瞬殺だし、トンポウロウも1トン以上用意したのにもう半分くらいなくなってるよ。

 因みに、トンポウロウは2時間くらい煮るんじゃなくて蒸し煮にする料理。

 まあ、人数が人数だしね。

 当然だけどグレストくんたちだけじゃなくて、俺たちも一緒に食べている訳だし。

 問題は、量が量だから料理を毎日作るのが大変って事だよ。まあ、城に泊まっている時は王宮料理人の作った物を食べるしホテルに泊まっている時はホテルで食べるんだけどね。その度に調理場が戦場になっているらしいよ。

 俺たちだけで何千人分食べるか判らないしね。

 何時もの仕事に加えて、俺たちの分を何千人分も用意しないといけないんだから、どれだけの料理人でも大変だよね。気にしないけど。


「私たちも通った道よね」

「あの時は慌てたわよね」

「何か何時もお腹が減っている感じなんだもん」


 とはメリアにリリアにアリアの3人。まあ気持ちは判るよ。特にキミたちは女の子だから、こんなに食べて太ってしまわないかとか気にしてたしね。

 太るどころかいくら食べてもやせてしまう状態だったんだけどね。


「そうだ、明日からは少し実戦的な修行もするつもりだから」

「あの、実戦的ってどんな・・・・・・?」

「俺との模擬戦」


 瞬間、グレストくんたちがが声にならない悲鳴を上げる。と言うか、驚き過ぎて言葉もでなかったようだ。何かもう気絶してしまいそうな感じだよ。


「そんな、死んでしまいますよ・・・・・・」

「模擬戦なんだから全力でやる訳じゃないよ。ただし、キミたちは死ぬ気で挑んでもらうけどね」


 これは相手の力を正確に計る力を養うための修行でもある。

 戦いにおいて何が重要かと言えば、自分が勝てるかどうかを正確に判断できるかだ。

 魔物との戦いは存亡を賭けた命懸けの壮絶な死闘だ。だからこそ、勝てない魔物相手に挑むなんて愚かな真似はしないのが基本。

 確実に勝てる相手を狩って行くのが常識だ。

 だからこそ、今の自分の力と相手の力を正確に計れる力が必要になる。

 全ての魔物のランクとを正確に把握していればそれも必要ないんだけど、それも割と無理だし、てっ言うか魔物の種類がいったいどれだけあるのか判らないし・・・・・・。

 現状確認されているだけでも、10万種は居るらしいけど。

 10万種もの魔物を全て覚えて、目の前の魔物はどんな魔物か判断するのはかなり無理があるだろ。

 それに、年に数例新種の魔物が確認される場合もあるらしいし・・・・・・。

 そんな訳で、相手の実力を即座に判断できる能力は生き残るために必要不可欠なんだよ。


「それに、実戦では絶対に体験できない、勝ち目のない実力がかけ離れた格上の相手に、全力で戦いを挑む経験は、キミたちにを確実に成長させてくれるよ」


 まあ、同時に逃れられない死の恐怖を味わう事になるんだけどね。


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