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 さて、遺跡の調査の方も順調に進み、今日はいよいよ魔人の転生者との対面の日だ。

 遺跡の調査については、後少しで終わる所まで来ているけど、当然の様にいくつかとんでもない遺跡があったりもしたから、順調と言えるかは疑問だったりするんだけどね。

 新たな転生者を歓迎するご馳走は既に全部作り終えている。

 会った後につくり始めたんじゃ時間がかかるからね。今回は顔合わせをしたらそのまま歓迎会に移行だ。

 まあ、彼らが俺たちと一緒に行きたいかどうかは判らないけどね。すでに魔王サタンから拒否権はないって通達されているだろうし、諦めて修羅の道を共に行こうではないか。


「待たせたな。この者たちが其方らと同じ転生者たちとなる」


 なんて思っていると魔王自ら転生者を連れてきた。

 それは良いんだけども、5人とも俺より年下みたいなんだけど?


「彼らが?」

「そうなる。他にも転生者と思われる魔人もいたようだが、彼には今はこの国を出ているのでな、今のゲヘナにいる転生者は彼らだけだ」


 成程、他にも転生者候補はいるらしいけど、彼らは好きに出歩いていて国にはいないらしい。

 それにしても、まさか全員俺より年下とは思わなかった。一番年上の子でも12歳くらいか? 多分、最年少の子は10歳に満たないだろう。

 男の子が2人に女の子が3人。因みに、最年長の子と最年少の子が男の子だ。


「はじめましてみんな。俺はレジェンドクラス冒険者のアベル・ユーリア・レイベスト。地球からの転生者でもある」


 まずは俺が挨拶するとみんな驚いてみせる。


「本当に、アベルさんも転生者なんですね」

「そうだよ。サタン陛下に聞いていなかったかな?」

「聞いてはいたけど信じられなくて、あっボクはグレスト・レーゼリトです」


 驚いたように訊ねてきたのは最年長の子で、俺が重ねて言うとようやく納得したのか今度はキチンと挨拶をしてくる。うん。礼儀正しい子だな。


「はじめまして、アリシエル・ローゼルハです」

「その、エアリエル・メーゼロットです」

「本当に私たち以外にも転生者がたくさんいたんですね。私はサーレル・フレーゲッシュです」

「あの、ボクはナクトロット・ロージリックです」


 と残りの子も挨拶してきてくれる。

 微妙に人見知りなのかオドオドしている子もいるけど、みんな良い子そうだな。

 後、女の子3人はルシリスと同じ黒地に金糸の模様が入ったドレスをを着ているけど良く似あっている。男の子のほうは黒い軍服姿のような恰好をしているけど、こちらも良く似合っている。因みに、どちらも間人の正装らしい。魔王がその軍服ぽいのを着ているのを見たことないんだけどね。


「うんよろしく。今俺たちのパーティーには15人の転生者がいる。キミたちを加えて20人になる訳だ」

「あの、その事なんですけど、本当にボクたちはアベルさんたちと一緒に旅をするんですか?」


 あっやっぱりそう簡単には納得できないか。


「その予定だよ。転生者は一緒にいた方がいろいろと都合が良いからね。それに、君たちを鍛えるのにもその方が効率が良い」

「鍛えるですか、この前の魔域の活性化の戦いには参加しませんでしたけど、ボクも魔物との戦いを経験していますから、この世界じゃあ、戦いは避けられないのは判っているつもりです」


 まあ、戦いが避けられないといっても、普通に平和に暮らしている人も多いんだけどね。

 それでも、聞いたところによると彼らは全員貴族の生まれらしいので、生まれた時点ですでに戦いを避けられない運命にある。


「キミたちも、この前の活性化の戦いの話は聞いているだろう。これから戦いはもっと激しくなっていく。その中で生き残るためには力が必要だ。そして、俺ならばその力をキミたちに授けられる。だからこそ、俺たちと一緒にいるのがキミたちにとっても最善だと思う」


 貴族に生まれた以上、冒険者になるか国に仕官して騎士となるかのどちらかしか選択肢がないのだから、今の内に力を付けておくべきだ。そうしなければ彼らを待っているのは死だけなのだから。


「もっとも、キミたちは転生者だから10万年前の遺跡に入る事が出来る。なら、国に仕えて遺跡への案内人となるのも手かもしれないけど、そちらはサタン陛下次第かな」

「アベル殿、我は10万年前の遺跡を私的に使うつもりは毛頭ないし、国の為を思えばこそその様な暴挙を犯すつもりも無い。まあ、ジエンドクラスの食材の貯蔵庫が出てくればその限りではないかも知れんが」


 それは仕方がないと思うよサタン陛下。ぶっちゃけ、それについては俺も人の事とやかく言えないし。


「とりあえず、この世界で生きる以上は強くなっておくに越した事はない。それに、他の転生者たちと交流できるのも魅力だと思うよ」

「あの、少し考えさせてください。話は聞いていたのですけど、やっぱりまだ決心がつかなくて」

「それで良いさ。とりあえず、キミたちとの出会いを記念してご馳走を用意しているから、まずはそちらを楽しんでくれ」


 多分、それで決心も付くと思うけどね。

 そんな訳でこの日のために用意したご馳走の所に案内するんだけど、当然の様に魔王サタンもついて来る。それと何故かまだ、ファファルとライオルの2人が居る。

 帰れよお前らと思うんだけど、コッチの事などまるっきり無視して好き勝手食べてるし。

 いや、飲んでるが正解か・・・・・・。

 前回と同様に魔王も加えてすさまじい勢いで酒を飲んでいる。結局前回は3人で日本酒と言うか清酒を200本以上飲んだらしいけど、今回は更に飲みそうだな。

 3人で一升瓶を200本以上空けるとかどんだけだよと思うけど、いちいち驚いていたらやってられない。と言うか、竜人に鬼人にドワーフの酒飲み3種族だったら、3人でその倍くらい普通に飲むらしいし。気にするだけ無駄だ。


「うわあ。これすごく美味しいです」

「それはファンタジーの定番、ドラゴンステーキだよ」

「ドラゴンステーキ!! これがですかっ!!」


 うん。やっぱりドラゴンステーキを用意しておいて正解だったな。5人とも目を輝かせて食べてるよ。

 まあ、とてつもなく美味しいから当然なんだけどね。


「ほかに何かリクエストがあれば聞くけど?」

「あの、それなら私カレーが食べたいです」


 カレーかなるほど。ゲヘナ料理にカレーはないしな。

 というかカレーは俺の生まれたベルハウゼルとか、ヒューマンの国々じゃ割とよく食べられているけど、ほかの種族の国じゃそれほど一般的な食べ物でもないらしいんだよ。

 何故にそうなったのかがまったく判らないんだけど。

 まあ、とりあえず彼らにしたら転生しても前世とそんなに変わらない食事ができたわけだけど、何故かカレーだけが食べられない状況だった訳なんだから、同じ転生者にあったチャンスを逃す手はないよな。


「カレーね。了解」


 そんな訳で俺はアイテムボックスから作り置きのカレーを出す。

 たまに無性に食べたくなるからね。作り置きしてストックしてあるんだよ。

 因みに、取り出したのはドラゴンカレーだ。具材はドラゴンの肉と玉ねぎだけのシンプルな物。これをご飯にかけて完成なんだけども、このカレーの場合はご飯も特別せいじゃないといけない。そうじゃないとドラゴンの肉のご飯が負けてしまうからね。


「カレーだ。何年ぶりだろう」

「私、転生してからカレー食べるのはじめてだよ」


 ドラゴンステーキよりもカレーの魅力が勝ったらしい。みんな我先にとカレーに群がる。

 何か涙を流して食べてるんだけど・・・・・・。

 久しぶりのカレーはそんなに嬉しいか?


「うまいよ。これだよ。これがカレーだよな」

「おいしい。おいしいよ・・・・・・」

「ああカレーだ、カレーだよ」

「これもすごく美味しい。ボクこんなに美味しいカレーを食べたのはじめてだよ」

「さっきのステーキもそうだけど、どれもこれも美味しすぎるよ。私こんなに美味しいモノ今まで食べた事ないよ」


 まあドラゴンカレーですから。前世の専門店のカレーも裸足で逃げ出す美味さだよ。

 どれもこれも美味しい料理なのは、まあ素材が並みじゃありませんから。正直、今回使った食材だけで数十億リーゼはするしね。

 いや冗談抜きで、下手したらもっとするかも知れないし、その辺は流石に秘密だけど。

 いくらかかったか知ったらドン引きするどころか卒倒しちゃいそうだしね。ドラゴンカレーなんて確実に一杯で500万リーゼはするし・・・・・・。

 10万年前の転生者秘蔵のレシピで造られたカレーは伊達ではないんだよ。必要なスパイスを集められたのもほとんど奇跡に近いし・・・・・・。


「それはアベルさんがつくったからですよ。今回は私もお手伝いしましたけど、本当にアベルさんはプロの料理人顔負けですから」


 それを言ったらルシリスだってそうだと思う。実際、魚料理じゃルシリスに勝てる気が一切しない。

 

「コレ、アベルさんがつくったんですか?」


 おや、驚いてる。

 だけど当然か、自分たちとそんなに年も変わらない俺が、世界有数の実力者になっているだけじゃなくて、料理も出来るとは思わなかっただろうしね。


「スゴイです。アベルさん!!」


 ワオ、コッチこそそんな純粋な瞳で尊敬の眼差しを向けられるとこそばゆいんですけど。

 とりあえず、彼ら5人は俺たちの仲間になるって事で良さそうだ。

 決め手は確実にカレーだね。


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