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「美味しいです。でも、せっかくだから新しく入る新人さんにふるまってあげれば良かったのに」
「彼らをもてなす時にも当然ふるまうつもりだよ」
新人さんか、みんなの中ではもう、魔人の転生者たちも新しく仲間になるの確定ているみたいだね。
まあ、実際にほぼ確実にそうるだろうけど。
それよりも今はフグ刺しだ。うん。実に美味い。地球じゃ食べた事なかったんだよね実は。
フグちりも美味。実に大満足。
しかし、アンコウの刺身も負けていない。サッパリとしていながらコクの深い味わいで、更に食感がとても良い。
「これは美味い。イヤ、これは酒が進みますな」
「まさしく」
何処からか聞きつけて来たファファルとライオルが酒盛りをしている。
と言うか、2人ともまだ居たのか?
とっくに国に戻っていると思っていたんだが、まあ良いや、料理はたっぷり用意してあるから存分に楽しんでくれ。
因みに、2人はヒレ酒を片手にアンキモの酒蒸しやタコワサ、刺身なんかを楽しんでいる。
対して俺は、まずは寿司の代わりに用意した海鮮丼だ。わさび醤油をかけて一気に掻っ込む。
うん。美味い。
ついさっき手に入れたトビウオやサンマの魔物を炙ってのせたりしたらさらに美味い気も掠るけど、今回はこの世界の魚オンリーで楽しむのだ。
マグロも実に美味い。このマグロもの世界の魚で、体長50メートルを超え、その実力はSランクに至る魚だ。旅に出た直後の実力じゃ返り討ちにあっていたかもしれない強者。
当然だけど、その味は極上。特に中トロの刺身が絶品。
これまた個人的な好みだけども、俺は大トロよりも中トロが好みだ。脂の旨みとマグロの肉の旨みがちょうど良く合わさって、一番美味いと思う。
うん。次は鉄火丼だな。マグロの事を考えていたら食いたくなってきた。
「本当に美味しいです。それにしても、居世界でも普通に日本食が食べられるのは不思議ですよね」
「この世界では鬼人の料理だけどね」
レーゼ少年の言う事も最もだけど、その辺は食の文化は世界が変わっても変わらないって事なんだろう。実際、別に過去の転生者が広めたとかじゃなくて、はじめから機人の国の料理は和食だったらしいし。
「こんな美味いマグロははじめてだよな。そう言えば、俺スッポン手食べた事ないんだけど、この世界にもあるのかな?」
「確か、あるのなら食べてみたいかも知れません」
ザッシュは10代でなくなって転生したらしいから、高級食材のスッポンは食べた事がないらしい。俺も一度しか食べた事はないから、確かにあるなら食べてみたい。サナも同意した所を見ると、彼女も食べた事がないのだろうから是非とも見付けてみたい。
「スッポンか、まる鍋は良いよな。血とかはどうかと思うけど」
「唐揚げが美味しいって本当なんですかね?」
「お刺身でも食べられるって聞くけど本当なのかな?」
転生者どうでスッポンの話で盛り上がる。
どうしても高級食材の贅沢な料理なので、食べた事のないのも多いし、食べた事があってもそう何度もではない。
「スッポンてあのカメよね? 地球だったっけ、そこでは良く食べられていたの?」
「高級食材だからね。良くとは言わないけど、食べられていたよ」
どうやらミランダは、スッポンを食べた事がないらしい。と言うか、スッポンを食べる文化がないのか?
「スッポンなら、私たち鬼人の国でも食べますよ」
おお、これは朗報。ヤッパリ和風に文化を誇る鬼人の国アシュラではスッポンも食べるみたいだ。
「私たちの国でも高級食材ですけど。なにせ、体長300メートルを超える、Sランク高位の力を持つ亀ですから」
何その亀の怪獣。火を吹いたり飛んだりしそうなんだけど・・・・・・・。
因みに、どうやら魔物とこの世界のと両方いるそうだけども、どちらも同じくらいの大きさと強さらしい。でまあ、当然だけども基本的には魔物のスッポンが討伐されて食べられるそうだ。
これは楽しみだ。アシュラに行ったらスッポン狩りに励むとしよう。
「私たちも前にアシュラに行った時に食べた事があります」
「確かに美味しかったし、久しぶりにまた食べたいかも」
「それは確かに」
ユリィたちも何やら盛り上がっている。
彼女たちは幼馴染で、幼い頃は良くそれぞれの国に集まっていたらしいので、アシュラに集まった時にみんなスッポンを食べた事があるらしい。因みに鍋と唐揚げだったそうだ。刺身では食べた事がないらしくて、彼女たちも興味津々みたいだ。
「あのカメ本当に美味しいの? と言うか、そんな大きいのなんか知らないけど」
ミランダによると、ヒュマンの国の一部でもスッポンの魔物が出るらしい。ただし、そちらは体長10メートル程で、Aランク程度の力しかないそうだ。
それでも、十分過ぎる程デカいと思うけど。そして、やっぱりヒューマンはスッポンを食べないらしい。
人型と昆虫以外の魔物の肉なら大概食べるのに、何故に食べないと不思議で仕方がない。
過去の転生者も、スッポンの魔物が居るのに気が付いていたハズだし、まる鍋をつくって定着させていてもおかしくないのに。
「食べてみれば判るよ。まあ楽しみにしていれば良い」
「確かに、これで楽しみがまた増えしたよね」
ザッシュは早くスッポンが食べたくて仕方がないみたいだけど、その為だけに次の行き先を決めたりしないからな。
「スッポンがあるなら、フォアグラもあるのかな?」
「アレは特殊な飼育をしてワザと太らせてつくるらしいからどうかな」
「トリュフはありそうだけど、アレって本当に美味しいのか? 私、実はマツタケってそんなに美味しいと思わなかったのですよね」
とはレベリアの言。まあ、どちらも味ではなく香りを楽しむタイプだしね。
ついでに言えば香りの好みだって千差万別なんだから、マツタケやトリュフの香りが嫌いな人だって当然いただろうし。
と言うか、確かトリュフはユグドラシルで出てきたぞ。
トリュフのパスタを食べた記憶がある。アレはなんて言うかもの凄く芳醇な香りで、まさしく香りで食事を楽しむという表現がぴったりだった。
そんな訳で、俺的にはトリュフはまた食べたいけど、フォアグラとキャビアの方はまだ見てないけど食べたいとは特に思わない。
だってこのアンキモの酒蒸しで十分過ぎる程美味いし、キャビアなんて単に塩辛いだけって聞くし。
どこぞで、旬のアンキモはキチンと調理すればフォアグラにも勝る味だとか聞いた事があるけど、確かにこれは本当に美味いよ。コッテリと濃厚な味わいなのに少しもくどくなくて、クセもなければ嫌なにおいもまるでしない。
これは確かに酒が進むのは判るんだけども、ファファルとライオルの2人、さっきからやたらと酒を勧めてこない。
「いやアベル殿。このヒレ酒は絶品ですぞ。味わなければ損です故」
「確かに、これはまことに美味です。ドラグレーンには海がない故、気軽に楽しめないのが残念です」
成程ヒレ酒ね。いや、そう言うのがあるのは知っているけど詳しくは知らないんだよ。
それとファファルよ、別に普通に輸入すればいいだけだから問題ないだろ。いや、自分で獲って楽しめないって事か。
「本当に美味しいよ」
「そうか、それなら少し頂くかな。ただし、アリアはそれくらいにしておく事」
「ええー。もう少し飲みたい」
それは止めて置け、後で後悔するのは自分だぞ。
特に今は身内のパーティーメンバー以外もいるし、甘えん坊万歳は止めておいた方が良い。
と言うか、気が付いたら魔王までいるんだけど。
「サタン陛下も何時の間に来られたのですか?」
「おお、ルシリスに呼ばれてな。コレだけの海鮮を一度に味わえる機会はそうそう無いからな。我も楽しませてもらっておる」
そう言いながらヒレ酒を一気に飲み干す。
と言うか、既にかなり飲んでそうなんだけど・・・・・・。
そのまま酒飲みどもに混ざって行くし・・・・・・。
しばらく観察してみたら、30分足らずで一升瓶を10本以上空けてるし、うん。あそこには係わらない方が賢明だな。
「アベルさんも飲まれるんですか?」
「いや、俺はヒレ酒を一杯だけにしておくよ。それよりも飯だな」
ガッツリとご飯と一緒に楽しみたい。
どれもこれも酒のつまみにもなるだろうけど、それよりもご飯のおかずにピッタリだ。
海鮮丼に鉄火丼と来て、次は天丼と行く。エビやアナゴの天ぷらを丼ご飯の上に載せてタレをかける。うん美味しそう。と言うか美味い。
生とは違うアツアツの旨みが口の中一杯に広がるよ。
そして次はアナゴ丼だ。タレで煮込んだホクホクの身が絶品なんだよ。
「ああ美味い」
「本当に美味しそうですね」
「ああ、これは下手なうな重よりも断然うまいと思うぞ」
「そんなにですか? うん。私も食べてみたくなりました」
サナは俺が上手そうに食べているのでアナゴ丼が気になったようで、話を聞いたら食べたくなった模様。
「本当に美味しい。アナゴってこんなに美味しかったんですか」
一口食べた瞬間眼の色を変えて一気に掻っ込みだしたよ。
この子は令嬢としての教育をキッチリ受けているから、普段はこんなふうに丼を掻っ込むな事はしないんだけどね。それだけ気に入ったようだ。
俺としても、自分の好物が気に入ってもらえたのは嬉しい。
それでもって、サナがすごい勢いでアナゴ丼を完食して、更にお代わりまでするものだから他のみんなも気になったみたいで、アナゴ丼にみんな集まってくる。
「本当に美味しいです」
「身はホクホクで柔らかくて、脂が乗っていてとっても濃厚なのにしつこくない。これならいくらでも食べられるよ」
「うんそれにこれは皮が良いよ。タレの味と絡まってとっても美味しい」
「それにこのタレが、ご飯と相性抜群です」
どうやらアナゴ丼は皆にも好評のようだ。
アナゴの天丼も美味いんだけどね。俺はこの煮込んだアナゴが好きなんだよ。
そんな訳で、俺の好物も気に入ってもらえたし、大満足で海鮮尽くしを楽しめた。




