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まず一番の疑問は、どうしてコレがここにある?
ゲヘナは海の魔域に接していない。この広域殲滅兵器が残されるなら、エルフの国ユグドラシルやドワーフの国レイザラムのような海の魔域に接している国だろう。
そう思ったら、この遺跡というか兵器、自由に動かせるらしい。固定兵器ではないみたいだ。
それは良いんだけどね、これ、使ったら海の生態系完全に破壊しつくさないか?
と思ったらこれはそもそも魔域内部での使用を前提に作られているらしい。
要するに、活性化などで魔域内に魔物が宇触れているのを一気に殲滅するための兵器と、ある意味でベルハウゼルとかと同じだな。ただし、これは完全に海の中、海中の魔物を殲滅するために特化した兵器だ。
ベルハウゼルやラグナメヒルに搭載されている広域殲滅兵器は、水中の魔物に対しては効果が半減する。実際、Aクラス以上の魔物ならば防御障壁で防ぐ事が可能なほどに威力は弱まってしまうらしい。
まああれば、実際には宇宙での戦闘用に開発されたものなので、それも仕方がないだろうけど、地上戦、それも海の魔域での戦いで苦戦を強いられてしまうのも事実。
それに対応するために造られたのが、この水中戦用広域殲滅兵器ミストルティンだ。
ミストルティンは水の中でのみその効力を発揮し、微細振動によって細胞という細胞を尽く破砕する。
それは良いんだけど、これが兵器ならあの入り口からの巨大なホールは一体なんだ?
と言うか、あのドーム部分に意味があるのか?
全く理解不能だがとりあえず。
「これからの事を考えると、これは確保しておいた方が良いだろうな」
ユグドラシルやレイザラムの海の魔域で活性化が起きた場合、ベルハウゼルやラグナメヒルをもってしても対抗しきれない可能性が高い。
確実にこのミストルティンが必要だ。
なにか、必要な物が必要になってすぐに出て来るように思えるのは気のせいだろうか?
まあ、気にしても仕方がないと諦めるしかないな。とりあえず、これは俺のアイテムボックスに回収しておこう。
さっさとアイテムボックスに放り込んでと、さてと、それで次はどうするか?
まだ時刻は午後2時過ぎ程度。今からならもう1つ遺跡を回れるな。
そんな訳で次の遺跡に向かう。
次はゲヘナの中心部にある遺跡、ベルハウゼルがあった湖から1000キロ程度の場所。
何か300メートルくらいの小さな山と言うか、丘があるけど、この下に埋もれているらしい。と言うか、これは確実に遺跡の上に土を持って丘にしたな。
まあ、隠し方としてはシンプルで良いけどね。島ごと海底に沈めるとか力技じゃないし。
とりあえず、サクッとトンネルを掘って行く。
20メートルくらい掘り進めたらアッサリと入口に辿り着く。
なんで掘り進めた所にちょうど入り口があるんだよと突っ込みながら、ロックを解除して中に入る。
入ってみた感じココは兵器工場だな。
これまでに何度も訪れた、装機竜人や空中戦艦の生産工場にそっくりだ。
まあ、問題は何をつくる工場かで、ついでに、ココで造られてた兵器が残っているかどうかなんだけどね。
工場の場合はまずは生産ラインの確認。それで何を造る工場か判るからね。
出来れば、装機竜人の生産工場とかの、ごく普通の工場だと良いんだけどね。
ベルハウゼルとかの空中要塞の生産工場とかは本気で勘弁してくれ。イヤ、あっても別に新しく造れる訳じゃないから害がないと言えばないんだけど・・・・・・。
さて何を造っていた所なのやらと生産ラインを覗くと、何やら巨大な兵器を造る模様。
と言うかこれは装機竜人用の携帯兵装だな。装機竜人そのモノじゃなくて、装機竜人が持つ兵器を製造する工場か。それならそんなに問題ないかな?
なんて思っていた時期が俺にもありました。
なんだコレは?
本気でシャレになってないんだけど、いったい何のためにこんなのを造ったんだ?
時間因子破砕砲。オリジン・ノヴァ。
それがこの兵器。その名の通り、攻撃対象の時間因子を破砕する。それによって、対象は時間の流れの中から完全に孤立し、時間の流れの中で生きていく事が出来なくなる。
要するに、これを受けた相手はその瞬間に時間の流れの中から切り離され、存在しない物とされてしまうのだ。つまり、攻撃を受けた瞬間に死が確定すると言っても良い。
極悪すぎる兵器だ。万が一にも誤射や敵が避けて味方に当たったりしたらどんな事になるか・・・・・・。
と言うか、跳ね返されたりしたらシャレにならない。
エイルたちヴァルキュリアシリーズの兄弟に当たるベルセルクシリーズの専用装機竜人の専用兵装らしいが凶悪過ぎるな。
うん。これはこのまま封印だな。
そもそも、ベルセルクシリーズがフリーズスリープ状態やら何やらで残っているのかどうかも判らないし、少なくても彼らが眠る遺跡に辿り着くまでは無視で良いだろう。
辿り着いたら、エイルの時と同じように、問答無用で目覚めそうな気がするけど、ベルセルクシリーズか、名前がヤバすぎるんだよな。
とりあえず今日の遺跡調査はこれで終了。
さっさと戻る事にしよう。そして、モドッて海鮮尽くしを楽しむのだ。
何をつくろうかなと早速遺跡の事から料理の事に考える事を移しながら転移で機関。
「お帰りなさいアベルさん。遺跡の方はどうでしたか?」
「うん。聞かない方が良いかな」
「そうですか」
このやり取りも既に慣れたものだ。
危険な遺跡の場合は俺が行って確認するだけになっているので、ルシリスたちも聞かない方が良いと言えばそれで納得する。
彼女たちにしたら、下手な事を聴いたらヤブヘビになる事は判りきっているからな。
「それより、色々と魚を取って来たから、今日は海鮮尽くしだよ」
「それは楽しみです。それと、それなら私も手伝いますよ。魚料理は得意なんです」
との事なので、今日は珍しくルシリスと一緒にお料理。
さて、海鮮尽くしのために獲ってきた魚をまず捌かないといけないんだけども、どれもこれもとんでもなくデカい。
だけども、王宮では当然、巨大な魚なんかをそのまま調理する事もあったりするので、例えば50メートルを超えるマグロなんかでも普通に裁けるスペースがあったりする。
そんな訳で、捌くと言うよりも解体のためのスペースで、まずはアンコウを裁いて行く。
巨大なアンコウを吊るして皮を剥いで身を切り落としていく。普通のアンコウだと骨付きの身とか結構あるけど、コレの場合は骨がデカすぎるので骨は取り除いていく。あと肝心のアンキモ。
うん、デカいね。これは単純に酒蒸しにするだけでもの凄く美味いらしい。アンコウ鍋も勿論作るけどね。
アンコウが終わったら次はハリセンボン。
まずはトゲトゲを全部取って行く。これは武器などの良い素材になるらしいので、後で冒険者ギルドにでも持ってこう。
続いて皮を剥ぐ。この皮もまたとてつもなく固い。なんでも、戦車砲を防ぐくらい頑丈らしい。本気でこの世界の魚の恐ろしさを垣間見たな。
皮を剥いだら普通にさばいていく。フグと同じ感覚で良いらしい。それとフグとは違って肝も食べられるそうだ。
続いてアナゴ。これは背開きにして骨を取り除く。この骨を取るのがなかなか難しい。しかも、アナゴ自体が大きいから、骨ももう凶器だし。
それと当然だけども、背開きにしただけじゃデカ過ぎて食べにれないから、ある程度小さく切り分けて行く。ただし、刺身にするところ以外は身と皮を一緒でが基本。
さて残るはヒラメとカレイ。これが捌くのが結構難しい。特に縁側の部分。ココは当然ながら美味しいのだけども、大きな骨から身をシッカリ取り除いていくのにはかなり集中しないといけない。
普通に4枚に分けるだけならそれほど難しくないんだけどね。
それにしても、魚料理が得意だと言っていたけど、ルシリスの出際が見惚れるほどに良い。大きさが大きさだし、1人でやっていたら3倍以上の時間がかかったよコレは。
「ありがとう。ルシリスのおかげで早く出来たよ」
「いえ。私も久しぶりに思いっ切り料理が出来て楽しいですし。こうして誰かと一緒に料理をするのも楽しいですね」
魚を裁くのは料理と言うより、解体作業だけどね。
さてと、これからが料理の本番。
まずはアンコウの肝を酒蒸しにして、鍋をつくる。それから身を唐揚げにしていく。
アンコウは鍋の肝蒸しに、刺身に唐揚げの予定。
その横でルシリスがハリセンボンを刺身にしていく。フグ刺しのテッサならぬハリセンボンのテッサ。
それに鍋、フグちりもどき。ついでに唐揚げも、フグの唐揚げは美味いらしい。揚げ物は天ぷらも。それから鍋でもう一品。刺身用よりも厚めに切った身でシャブシャブを。
それから塩焼きにしたものも。フグの塩焼きは食った事はないけど、ルシリスが当たり前の様に造っているから美味いんだろう。
アナゴは当然天ぷらに刺身。そして柔らかく煮付けて行く。これが美味いんだよ。俺が個人的にウナギのかば焼きよりも好きだったりするのね。
ヒラメにカレイは当然お刺身、昆布締めも忘れない。
そして煮付けもね。醤油にミリン、砂糖にショウガで甘じょっばく。これはもう定番だよな。
ムニエルとかをつくっても良いかと思ったんだけど、和食メニューで統一したいから止めておく。代わりに西京焼き風に焼いて行く。
さてと後はアラ汁をつくろう。
アンコウにハリセンボンにアナゴ、ヒラメとカレイのアラでアラ汁。味付けは塩で潮汁に仕上げる。
他にも、エビやカニ、貝類やイカやタコも勿論使う。これまでに狩った奴がアイテムボックスの中にたくさん入っているからね。
因みに、それらも魔物ではなくてこの世界のモノだ。今回は魔物抜くでやってみた。
「完成ですね」
「うん。それじゃあ早速、みんなを呼んで夜ゴハンとしようか」
これからは、楽しい海鮮尽くしの時間だ。




