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さて、タイムトラベルのための施設であるけれども、この施設が何のために存在するかといえば、勿論、歴史改変のためである。
うん。ある意味で鉄板だよね。第2次大戦前のドイツに行ってヒットラーを暗殺するとか、歴史の流れを大きく変えてしまおうというの。
まあ、歴史改変についてはタイムパラドックスで不可能だとか、変革した歴史を辿るもうひとつの世界を造るだとか色々と言われいてるけど、本当のところはどうなんだか・・・・・・。
もしかしたら、この施設によって歴史が変えられたもうひとつのネーゼリアが無数に存在していたりするのだろうか?
答えは判らない。
だけど、ひとつだけ確かなのはこの施設は確かにタイムトラベルを可能にするらしい事。
この施設を使って実際に過去へと行った事があるそうだ。
ただし、何のためにどの時代に行ったのかは不明。
そこで歴史を変えたのかも不明。
そして何故、歴史を遡るタイムマシンを造ったのかも不明。
判らない事だらけである。
こうなったら、これを使って10万年前の、これが造られた当時に行って、造った転生者に直接聞いてみようかとか、危険な発想が湧いて来るんだけど・・・・・・。
流石に、10万年も前に行けるかは判らない。
しかし、二ゆえにタイム無マシンなんてSFの代表格みたいな物が出て来るかね。
必要だから造ったんだと思うけど、本当に10万年前の転生者たちはやりたい放題し過ぎだと思うよ。
「しかし、これは歴史を変えられるって事なのか?」
いや、それはないか、もし本当に歴史改変が可能なのなら、10万年前、カグヤによる封印に至るまでの戦いをやり直すことも出来たはずだ。
その戦いで、転生者の中にも多くの死者が出とらしい、もしも歴史を遡ってやり直せるなら、犠牲者のでない戦いをもう一度したはずだ。
いや、自分が居る時代には戻れないのか?
同一人物が2人いる矛盾を避けるために自分の居る時代には戻れない?
それもあるのかも知れない。
「しかし、これは本当にどうしたものかね」
これも俺だけでどうするか考えるには荷が重い。みんなで一緒に考えてもらうとしよう。
そんな訳でさっさと戻る。
「ただいま。遺跡の調査は無事に終わったよ」
「そうですか、それで、どんな遺跡だったんですか?」
「うん。歴史を遡る。タイムマシンだったよ」
因みに、元の時代に戻る以外で未来には行けない模様。というよりも仕様と言うべきか?
「タイムマシンですか?」
「うん。どれくらいの過去に行けるのかは判らないけどね」
「またとんでもない物ですけど、私たちに行ってしまって良いのですか?」
「むしろ、俺1人でどうこう出来るような代物じゃないよ」
本気で、俺1人でどうするか考えるのには荷が重すぎる。
「あの、それで、それを使えば具体的にどんな事が出来るんですか?」
とはメリア。まあもっともな質問だよな。
「うん。これを使えば過去に行って歴史を変える事が出来る。例えば、2万年前に行って、ヒューマンを統一して、ヒューマン至上主義なんか立ち上げて、他種族に戦争吹っ掛けたバカを張り倒して、大陸統一を阻止すれば、ヒューマンと他種族との関係の断絶も起きなかった事になる訳だ」
後は、メリアたちの居た孤児院の不正を過去に行って正したり、或いは同じく過去のエクズシス帝国に行って、ノインたちを不正に奴隷に仕立て上げていたバカどもを抹殺してしまえば、彼女たちが奴隷にさせられていたと言う事実そのものを消し去ることも出来る。
しかし、その場合は俺たちと彼女たちが出会った事実も待たなくなってしまう可能性もある。
彼女たちが俺たちに出会った事実もなくなってしまうかも知れない。
或いは、ノインが生まれてきた事もなくなってしまうかも知れない。
歴史を変えるとはつまりそう言う事だ。それだけの危険性が存在する。
「それが解った上で、使うかどうかなんだよ」
俺が歴史を変えるとはどういうことかを説明すると、みんな黙ってしまう。
「SFの物語じゃあ、割と簡単に歴史を変えていたりするけど、実際にはそう簡単な話じゃないんですね」
まあそれはそうだ。ひとつの歴史を変えた事で、その後にどんな影響が出るのか予想もつかない。カオス理論のバタフライ効果ではないけど、まったく別の歴史を辿って完全に別の世界に変わってしまう可能性だって否定できない。
「そんな訳だから、俺としては余程の事がない限りは封印したいんだけど」
「そうですね。私も自分が生まれないのは嫌です」
ノインにしても、自分の生い立ちに思う事はあっても、だからといってこの世界に生まれないかも知れないなんて許容できないだろう。
余りにもリスクが高すぎる。
「私も使うべきじゃないと思う。けど、10万年前の転生者たちは、いったい何の為にそんな物を造ったんだろう」
その疑問はもっともだ。アリアがウンウンとうなって考えているが、いくら考えても答えは出ないと思う。
「まあ、造られたのにも残されたのにも、何かしら意味があるんだろうけど、今はそれを知る術もないしな」
知った後で、もっと早く使っておけば良かったと後悔するかもしれないけど、それこそ先の事なんて誰にも判りはしない。
そんな訳で、タイムマシンは封印となった。
2万年前のバカを張り倒して歴史を変えるのはぜひともとの思いもあるけど、その結果どんなふうに歴史が変わるのかわからない以上、迂闊な事はできない。
「それじゃ、次の遺跡を調べてきますかね」
話が済んだところで次の遺跡に行くことにする。
魔人の転生者たちと会った後は、彼らの修行にかかりっきりになるのは判っているし、今の内にできるだけ多くの遺跡の調査を終わらせておきたい。
そんな訳で、次の遺跡に来たんだけども、場所はまたしても海の底。
と言っても、この遺跡は元々海底に造れらていたらしい。
海底施設か、いったいどんな遺跡なのやら・・・・・・。
因みに、場所はさっきの遺跡から北に3000キロほど。
いつものように海底を目指していく。さっきと同じように、途中で海の魚に目が移る。
海底付近で体長20メートルはある巨大なアナゴを見付ける。
うん。デカいね。ここまでデカいと大味になりそうだけど、その味は極めて繊細で上質なのは既に確認済み。何故かと言えば、活性化の後の祝賀会にこのアナゴの料理が出ていたから。
つまり、目の前のアナゴはあの祝賀会にも出されるほどの極上の一品という事。
俺としては、天ぷらもいいけどアナゴ丼にしたい。
そんな訳で確保。できればもう何匹か欲しいなと思ったらいた。
そちらもシッカリ確保。
うん。実は俺、前世はアナゴが好物だったんだよ。ウナギよりもアナゴのほうが好きたったくらい。
これは割と珍しいと思うけど、江戸前の本格的なアナゴは本気で美味いよ。
なんて前世を思い出しながら、久しぶりのアナゴ尽くしにホクホクしていると、海底にヒラメとカレイを発見。
地球にも、座布団カレイなんて言われる、大きいと1メートルを超えるカレイがいたらしいけど、こっちのヒラメとカレイの大きさは桁が違う。
どちらも、明らかに50メートル近くあるんだけど・・・・・・。
本気でSクラスの魔物と変わらない大きさだよ。しかも、実力もSクラスの魔物と変わりないみたいなんだけど・・・・・・。
うん。海の生物恐るべし。
アナゴもヒラメもカレイも、さっき捕ったアンコウやハリセンボンと同じこの世界の魚だ。それが魔物と同じ強さを持っているのだからこれいかに。
とりあえず、美味しく頂かせてもらいますということで確保。
ついでに、宇もの中の戦力を減らしてしまった償いじゃないけど、海の魔物も仕留めていく。A・Bランクの魔物を500匹ほどと、Sクラスの魔物を10匹ほど。
2メートル程のドビ魚のような魔物が群で居たので、それを仕留めて300匹ほど、後5メートル程のサンマの魔物も群で仕留めてこっちは200匹ほど。
Sランクの魔物は100メートル近いマグロ。食い応えがありそうなんてレベルじゃない。
後で美味しく頂くか、冒険者ギルドに卸すかね。流石に食いきれら量じゃないし、イヤ、そうでもないか?
とりあえず漁が終わったところで遺跡に向かう。遺跡はさっきのと同じドームのような形だけども、もとから海底に造られていたことを考えれば、この形は自然だろう。
ロックを解除して早速中に、因みにロックは竜宮城を離れる時にウラシマが受け取ったのは?
玉手箱か、何か微妙に嫌な予感がするんだけど・・・・・・。
気のせいと言う事にして中に入ってみると、何もない広大なホールが広がっている。
200メートルはあるドームの中には何もない。広大なホールになっているだけ。いったいどういう事だ?
地下に続く階段やエレベータも見当たらないし、天井のドームの屋根が丸々見えるので、二階なんかもない。
どういう事かと思いながらドームの中心まで行くと、いきなり床が下降し始める。どうやら中心部がエレベーターになっていた模様。そして200メトールほど降って止まる。
このパターンは何度かあった。此処は遺跡自体が兵器だわ。
予想通り、そこは兵器の中央管制室。
この遺跡は、海の魔物を殲滅する為に造られた広域殲滅兵器だ。




