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「完全死者蘇生魔法とはな・・・・・・」

「可能だと言うのですか、完全に死者を生き返らせる事が?」


 死者蘇生。それは今も確かにある魔法ではある。

 老衰か、バラバラに消し飛んででもしまわない限り、心臓を貫かれても蘇生可能。しかし、それも決して万能ではない。

 死んでから時間が経ち過ぎてしまえば蘇生は不可能だし、肉体の損傷が激しすぎてもムリだ。 

 しかし、あの遺跡に眠ってい死者蘇生魔法は、そういった制限がほぼ皆無なのだ。それこそ、肉体が完全消滅してしまったとしても、ブラシなどに髪の毛一本でも残されていれば、ほぼ確実に生き返らせる事ができる。それでも、流石に時間経過による蘇生が不可能になる事と、魂そのものが完全に消滅してしまっている場合は蘇生できない事は変わらないが。

 これは、ある意味でこれまでの状況を根底から覆しかねない。


「つまり、活性化で死んだ者たちも生き返らせると?」

「何人かは、既に時間経過で不可能な人たちも多いですが」


 活性化の戦いは熾烈穂極めた。戦死者の多くはそれこそ塵ひとつ残さず消し飛んでしまっている。

 これまでだったら、彼らは生き返る事なんて不可能だった。

 しかし、遺跡で見付かった蘇生魔法を使えば生き返らせる事が可能だ。

 ただし、この魔法でも生き返らせるのは死後1週間以内の内だけだ。それ以上たってしまうと、魂と肉体が完全に切り離されてしまい、繋げ直して蘇生する事が叶わなくなる。

 従来の蘇生魔法では、蘇生できるのは死後3日以内だった他のだから、蘇生可能期間も10ブう分過ぎるほど伸びている。

 問題は、魂を完全に消し去られている場合だ。或いはブラックホールなどに飲み込まれて、虚空の彼方に消し飛ばされた場合。

 流石に蘇生魔法でもなくなってしまった魂を再生する事は出来ない。それはもう、蘇生ではなくて新たな命の創造になってしまうからだ。


「しかし、それでも助けられる命があるのだな」

「私としては、その魔法が後世に伝えられずに、今まで封じられていた事が疑問なのですが」


 ファファルの疑問は最もだ。

 だけども、それはこの魔法が更なる可能性を秘めているからだろう。

 さっき、消滅してしまった魂の再生は出来ないと言った。しかし、それは現実には正解とは言い切れない。

 魂の創造はエイルたちヴァルキュリアシリーズの礼を上げるまでもなく実際に可能だ。

 つまり、魂を想像すれば魂が消滅してしまった、或いは魂と肉体が完全に切り離されたモノも蘇生可能なのだ。

 だけど、それは事実のほんの一部でしかない。


 何を言いたいかと言えば、死者蘇生魔法は突き詰めて行けば同じ人物を複数人生み出す事すら可能なのだ。 

 詰まる所、生命の創生魔法。その禁断の領域に至る事すら可能なのだ。


 実際、この魔法が封印されていた理由がまさにソレだ。

 肉体と魂の情報。その2つがあれば俺をもう1人生み出す事すら可能になる。

 肉体も魂も失って完全にこの世界から消滅してしまった死者を生き返らせると言う事は、同一人物をいくらでも生み出せると言う事なのだから、そんな禁忌が可能になる。

 だからこそ、この魔法は封印されたんだ。禁断の扉を開いてしまわない為に。


 だけども、同時にこの魔法は封印はされても存在した事を消し去られる事はなかった。

 つまりは、この魔法もまた、いずれは必要となると判断されたんだ。


 或いは、生命創生魔法。それすらも必要とする事態が来ると予想されたのだろうか・・・・・・?


 答えは出ない。

 或いは、10万年前の転生者たちも、自分自身を生み出していたのかも知れない。

 自分が複数人いれば、どれだけ激しい戦いでも生き延びられる可能性が高くなる。

 いや、何かい死んでもでも死に切らずにいられると言うべきか・・・・・・。

 そうやって戦いを切り抜けてきたのかも知れない。


「全員でなくても、生き返らせる事ができるのならば生き返らせたい。アベル殿。お願いできるか?」

「そうですね。国を、この世界を護るために勇敢に戦った同志たちなのですから」

「判りました。早速蘇生を開始しましょう」


 いや、今は考えるのはよそう。

 今は、活性化の戦いで死んでいった者たちを生き返らせる事に集中しよう。


 さて、蘇生させるとなるとまずは死亡した者たちの確認をしないといけない。その上で、バラバラになっても肉体の一部が残っていればそれを使って、肉体が完全に消滅していたなら自宅を調べてブラシなどから髪の毛を回収して、肉体情報、DNAとかそう言うのを手に入れたらそれを基にまずは肉体を復元する。

 そして、復元した肉体に魂を繋ぎ合わせる。

 肉体が試算してしまった時点で、肉体と魂の繋がりは立たれてしまっている。

 だからこそ、本来なら蘇生不可能なのだけども、死後1週間程度ならば、まだ魂はこの現実世界、事象世界に留まっているらしく、その留まっている魂を呼び込んで、新たな肉体に繋ぎ合わせる事で蘇生させる訳だ。

 この1週間と言うのが、どうしてもこの世界における蘇生魔法の有効期限の限界になるそうだ。

 1週間を過ぎると魂はこの現実世界から幽世へと移行してしまう。幽世から魂を呼び起こす事は叶わにいらしく、死後1週間を過ぎた場合、魂の創生をしない限りは蘇生は不可能で、しかも魂がまったく別の新しくつくられたモノに変わっている時点で、これは蘇生とは言えない。

 いずれにしても、破壊された肉体を新たに造り出し、その新たな肉体との間に魂の繋がりを繋ぎ直す。この時点で既に奇跡と言って良い大魔法だ。

 それ故に、当然だけどもこの魔法は魔力の消費量が半端ではなく高い。

 奇跡に見合うだけの代償が必要と言う訳だけども、Sクラスの超越者で、1日に十数回使えれば良い方だろう。

 旅を始めた頃の俺だったら、30回位で魔力が尽きていたと思う。


「これは何と、これ程までの魔力を必要とするとは、これは失伝したのも当然かも知れぬ」

「確かに、通常の蘇生魔法なら、この1万分の1の魔力も必要としませんから」


 それもあるかも知れないな。この魔法は魔力の消費量が激しすぎる。Sクラスで十数回しか使えない魔法って何だよって話だ。

 まあ、今の俺の魔力量は、旅を始めた頃とは比較にならないくらいに増えているので、1万人以上蘇生できるんだけど。

 

 ところで、蘇生した人たちなんだけども、生き返った直後はそれはもう驚いている。


「陛下? 私はいったい・・・・・・」

「どうして・・・・・、私は死んだはず・・・・・・」

「何故、生き返ったのだ・・・・・・」

「何が、いったい何が・・・・・」


 はじめはみんな一応に驚いて、その後は呆然自失。自分に何が起こったのか判らないみたいだ。

 まあ、乗っていた空中戦艦ごと爆砕した人たちもいたので、死ぬ時にこれでもう終わりだと諦めていたのが、こうして生き返ったのだから驚くなと言う方がムリだろう。


「皆。無事に蘇生が叶ってなによりである。不思議に思う者もおろうが、遺跡より発見された新型蘇生魔法によって、こうして皆を蘇生させる事ができたのだ」

「私たちが生き返れたと言う事は、他の皆も?」

「いや、犠牲になった者を全て蘇生する事は叶わん。この新蘇生魔法をもってしても、死後1週間以上経過して者や、魂を完全に消し去られてしまった者は蘇生できんのだ」


 死後1週間の壁については、遺体さえあれば、そこに魂を仮に縫い止めておく事で、1ヶ月くらいまでなら引き延ばせるらしいけど、あえてやる意味がない。そもそも遺体があるなら通常の蘇生魔法で即座に生き返らせられるのだから。

 そう言えば、どうして幽世に移行した魂を呼び起こせないのかは不明だとの事、現世と幽世を繋ぐことで魂を呼び込む研究もしていたらしいが、結局成功しなかったとの事。

 それが出来たのなら、何時の時代のどんな人物であっても好きに蘇生させる事が出来たりしたんだけど。

 詰まる所、10万年前の転生者を生き返らせる事すらも可能かと思ったんだけども、流石にそれは無理らしい。


「全員を生き返らせることができなかったのは残念だが。皆、良く生き返ってくれた。この国のために、生きとし生きる全ての者のために命をとして戦い抜いてくれた皆を我は心より誇りに思うぞ」


 生き返った人たちの相手は魔王サタンがしている。

 まあ、俺が相手をしても更に混乱するだけだし。

 結局。生き返らせられたのは4520人。初めから、戦死者全員を生き返らせるなんてできないと分かっていたけど、これが限界だ。

 ただ、今回のことでミランダ立ちにもしもの事があっても、助けられる可能性がグッと高くなった。

 勿論、そんな事にはならないでくれるのが一番なんだけども、戦場にいる以上は死の危険性は常に付きまとう。それは、俺にしたって同じことだ。

 それに、その危険性はこれから先どんどん高くなっていく。

 或いは、だからこそ10万年前の転生者たちは、生命創生魔法を求めたのかもしれないと思った。



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