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「さてと、ようやく本来の目的に戻れるな」

「遺跡探索ですね。この国の遺跡にはベルハウゼルの他にどんなものが眠っているのでしょう」


 そう。本当は俺たちは遺跡の調査に来たはずなのだ。

 まあ、活性化に巻き込まれたおかげで、事態の深刻さを改めて実感できたけどね。


「そう。今回の活性化で、10万年前の転生者たちが残してくれた遺産を大至急把握しておく必要性が出たからね。これからはまだ発掘されてない遺産の調査も同時に始めるつもりだよ。それと、ゲヘナの調査が終わったら、一度ベルゼリアに戻るつもりだ」


 こうなったら、ベルゼリアを建国した転生者の集めた遺産も確かめておかないといけない。

 これまではなんだかんだ理由を付けて後回しにして来たけど、もうそんな余裕もないだろう。

 

 しかし、いったい何が眠っているのやら?

 

 6万年前にベルゼリアの前身を築いたアスカ・シングウジは間違いなくジエンドクラスの超絶者だ。

 場合によっては、彼自身が何かトンデモナイ遺産を残しているかも知れない。

 と言うか、そう思わせるだけの布石を既に彼は撃っているんだよ。

 彼? は敢えて遺跡の上に国の首都を築いた。それも、ヴァルキュリア専用装機竜人ニーベリングの生産工場の上にだ。

 ベルゼリア国内には他にもいくつもの遺跡があるのに、あえてニーベリングの生産工場を選んだと言う事は、間違いなくヴァルキュリアの存在も知っていたのだろう。

 ついでに、6万年前ならヒューマンと他種族の関係も悪化していなかったので、世界中を旅して遺跡を周っていただろう事も予想される。

 と言うか、アスカ・シングウジの名も、前世の名前ではなくて、実は鬼人だったからこその名前の可能性だってある。

 

「アスカ・シングウジ、かつての転生者ですね。私たちもそれぞれの国のかつての転生者について調べてみるべきかも知れません」

「そうですね。過去にカグヤに至った転生者がいらっしゃるかも知れませんし、何か手掛かりを残されているかも知れません」


 確かにその通りだ。

 この10万年の間に、いったいどれだけの転生者が居たか知らないけど、その中にはカグヤにまで至った人たちも相当数いるかも知れない。

 もし居たのなら、彼らはこの世界の真実を知りそれを後世に伝えようとしたかも知れない。

 或いは、世界のために何か力を残そうと考え、遺産を残しているかも知れない。


「確かに、そちらの方も調べてみるべきだな」


 と言っても、そちらは各国、各種族に任せる事になるだろう。流石に俺たちが1つ1つ調べている時間はない。


「それじゃあ悪いけど、ルシリスたちはサタンさんたちに過去の転生者について調べるようにお願いしてくれるか、俺は、早速遺跡の方に行ってみる事にするよ」

「はい。判りました。いってらっしゃいアベルさん」


 ルシリスたちに見送られて、俺はさっそく移籍に向かうことにした。



 やって来た遺跡はまたしても魔域の中。

 まあ、魔物との戦いのために造られた施設なのだから、多くが魔域の近くにあるのは当然だし、10万年もすれば、中には魔域に埋もれてしまったものが出てもおかしくはないのだけど、それにしても多すぎる気がする。

 さて、目的の遺跡だけども、当然だけども地中深くにある。

 と言うか、地中深くに埋もれていなかったら、この前の活性化の戦いで破壊されてしまっていたかも知れない。

 そう思うのは、その埋もれている地点が巨大なクレーターになっているからだ。

 確か、もとは森林地帯だったはずだけども、今は何もかもきれいに吹き飛んで、そのあまりの破壊エネルギーにあたり一帯は完全に結晶化してしまっている。

 つまるところ水晶の巨大なクレーターが目の前にある訳だ。

 うん。ココと同じような処はそれこそこの魔域のそこら中にあるけど、こうして改めて見てみると冷や汗が出て来るね。

 まあ、いずれはと言うか、おそらくは1年もしないで元の姿に戻るだろうけど・・・・・・。

 それが魔域の理不尽なところだ。どれだけ破壊し尽されても、気が付けば元の姿に戻っている。

 それも魔素による影響だろうと予測されているけれども、正確には判らない。ただし、魔素によって回復されているのなら、活性化後に魔域の魔素をすべて吸収しているので、今回は回復に相当時間がかかるだろう。


 まあそれはさて置き、さっさと遺跡に行くとしよう。

 何時ものようにトンネルというか穴を掘り進めていく。

 その前に結晶化して水晶を回収しておく。これも後で調べてみよう。普通の水晶なのか、何か特別な水晶になっているのか興味深い。

 それにしても、このクレーター深すぎないか?

 1キロ近い深さがあるぞ。

 因みにクレーター自体の直径は500キロほどある。

 これってもしかしたら地中に埋もれていた遺跡も消し飛んでないか?

 そう不安になるけれども、100メートルほど掘り進んだら無事に遺跡があった。

 危なかった。もし埋もれていたのかもうすこし浅い地層だったら、完全に消し飛んでいたよ。

 それはともかく、いつものようにロックを解除。

 早速中に入ってみる。


「これは、要塞か?」


 まあ、遺跡のある位置からして防衛拠点のひとつだったと考えるのが妥当。

 問題は、どんな要塞かなんだけども・・・・・・。

 とりあえず、ベルハウゼルやラグナメヒルの様な空中要塞ではないみたいだけど、なにか、単なる防衛拠点とは違う気がする。

 まあそれも、中央指令室に行ってこの要塞についての情報を見付ければ判る事だ。

 そんな訳でまず向かうは指令室。

 何時もならばまずは格納庫を確認するのだけども、今回は何となくこの要塞そのものの情報を得る方が先だと思う。

 

 中央指令室はその名が示すように要塞の中心部にあった。

 普通、こういう重要な部屋などには個別のロックがかけられているモノだけど、何故かそれもない。まあ、入出する度にロックを開けなければいけないのは手間だし、特に気にする程の事じゃないかな。

 とりあえずは適当な端末を開いて情報をあさってみる。

 魔素吸収システム研究施設レセンブラ。どうやらそれがこの要塞だと思った遺跡の正式名称らしい。

 いや、実際に要塞でもあるにはあるらしい。

 元々は防御拠点として使われていた要塞をベースに、システムの開発と同時に、魔素の吸収による影響を調べる為に造られた施設だそうだ。


「やはり、魔素の吸収によって魔域の活動を抑えられるのか」


 ココにある魔素吸収システムは、当然だけどもカグヤのモノよりも小型だけども、ヒュペリオンに搭載されている物の2倍近い大きさの物だ。

 当然、魔素を吸収し魔力への変換する機能も2倍の性能を誇る。

 ただし、当然だけどもこの魔域の魔素を全て吸収・変換させられるほどの性能はない。

 と言うよりも、あえて魔域の魔素を全て吸収・変換する事のない規模に抑えているみたいだ。


「魔域の魔素を全て吸収し、魔域の活動を押さえ付ける状況を長期間続けると、確実に反動が起き、魔域の力そのものを高めてしまうか」


 要するに押さえ付けられればその反動が出ると言う事だな。

 全ての魔素を奪われれば魔域はほとんど活動できなくなる。魔物をこの世界に引き寄せる事も出来ない状況が続けば、活動する為にさらに多くの魔素をもって、奪われきれない様になろうとする訳だ。

 それなら増えた魔素の分だけまた強力な魔素吸収システムを使えば良いって事になるけど、それじゃあ完全なイタチごっこで、しかも魔域を強化し続けてしまうだけだ。


「しかも、魔素吸収システムが壊されれば、これまでとは比較にならない程の魔素に溢れた魔域が残されてしまう訳だ」


 魔域はこの世界にそれこそ何百万年の前からある。

 これからも何時までもあり続ける存在を永遠に封じ続ける事など出来るハズもなく、ただ敵を強くしてしまうだけの行為になると。


「だけど、これは有効な情報だな。つまりヒュペリオンなどは活性化時にその規模を抑える働きもあるのか」


 恐らく、ヒュペリオンやウラノスなどの装機竜人を使っていなかったら、更に激しい戦いになっていただろう。

 むしろ、もっと活用していればもっと活性化の規模を抑えられていたハズだ。

 ウラノスの魔素吸収システムをベルハウゼルの動力に直結して、魔素を吸収して、魔力エネルギーに変換して送り続けていれば、ベルハウゼルは無限動力機関を得て、エネルギーを常に回復し続けながら戦う事ができた。

 そうやって魔域から魔素をどんどん削り続けていれば、活性化の規模ももう少し抑えられたはずだ。

 とりあえず、今回は失敗したが、次からは積極的に活用すれば、これから規模がどんどん大きくなっていく事が予想される活性化にも、十分に対抗出来るハズだ。


「その為にも、魔素吸収システムの搭載機がもっと必要だな」


 遺跡を回って、見付け出さないといけない物がひとつ増えたみたいだ。



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