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「終わったか・・・・・・」

「その様ですね。しかし、あの大量に噴出した魔素が気になります」

「確かにな、それなら、しばらくはヒュ゜リオンと共に俺たちは此処で警戒に当たるか」


 確かに、あの魔素の噴出は気になる。今後に何の影響もなければいいのだけども。


「あの、何故にヒュペリオンで?」

「ヒュペリオンと俺たちの装機竜人には、魔素を吸収して魔力エネルギーに変換するシステムが搭載されているからだよ」


 話していなかったっけ?

 俺の発言にファファルは信じられないと驚いている。

 そう言えば、最後の決戦にヒュペリオンを呼ぶのを忘れていた。


「カグヤと同じ動力システムだよ。10万年もの間。封印を維持する魔力エネルギーを魔素から変換して確保している訳だ。ついでに、魔素をそのものを浄化してしまう事で魔域の活動自体を弱めているんだろう」


 ヒュペリオンも今回の戦いでかなりのエネルギーを使っているので、魔素をガッツリと取り込んでくれるだろう。

 と言うか、このシステムを使えば今回の戦いで修費した間瀬区の魔力も余裕でチャージ出来るんじゃ?


「うん。いけるかも、悪いけどあの魔素には今回の戦いで消費した魔石の魔力の回復に使わせてもらおう」

「そんな事が可能なのですか?」

「試してみれば判るさ」


 と言う訳で早速試してみる事にする。

 俺たちの使った装機竜人は、最後の決戦以外は動いていないので、噴き出した膨大な魔素を吸収してあっと言う間に消耗分を回復する。

 その上で、今度はシステムをベルハウゼルとラグナメヒルの動力システムにつないで、教習した魔素から変換した魔力エネルギーを送り込む。


「おお成功、成功。今回は思いっ切り赤字を覚悟していたけど、これなら何とかなりそうだな」


 赤字回避よりも、消耗したジエンドクラスの魔石の回復が出来るのが大きい。

 これから先、こんな戦いが幾度となく起こる可能性を考えると、今回の戦いでの消耗は致命傷になってしまう可能性もあったのだから、本当に良かった。

 或いは、この魔素吸収型の動力システムは、十万年前から今回の様な事態を見据えて用意されたのかも知れない。


「アベル様、ファファル様。総司令部のサタン様より通信です」

「回してくれ」


 おや、活性化も無事に終わって一息付いたハズなのにどうしたのかな?

 て考えるまでもないな。戦いが終わったのに何時までも魔域内部に留まったままの俺たちを不審に思っているに決まっている。

 と言うか報告し忘れてた。


「アベル殿、無事に活性化が収束したと言うのに、何故魔域に留まっているのか?」

「すいません。報告を忘れていました。理由は、魔物の素材の回収と、魔域の様子の調査、それと集束時に噴出した魔素の無力化のためです」

「魔素の無力化だと、そのような事ができるのか?」


 ファファルと同じ反応だな。しかし、サタン殿には前に説明したと思うけどな。


「カグヤと同じシステムですよ。俺たちの母艦であるヒュペリオンにも試験的に搭載されていて、それによって事実上無限に動けると説明したと思いますが」

「確かに聞いたが、それは単なる動力システムだと思っていた。魔素の浄化システムでもあったとは」

「活性化の終焉時に噴出した大量の魔素、アレは放置すればどんな影響を及ぼすか判りません。なので完全に浄化してしまうつもりです」


 そうすれば消費した魔石の魔力も回復できるし。


「判った。ではソチラの作業はアベル殿たちに任せる。代わりに魔域の状況の調査はこちらが引き受けよう。既に調査体の派遣準備も完了している。キミたちは魔素の浄化に集中してくれ」

「判りました」

「調査が終了し、異常がない事が確認できたら祝賀会だ。アベル殿は勿論、ファファル殿にも是非参加して欲しい」

「勿論です」


 祝賀会か、予想はしていたけどまた面倒事が舞い込んで来たな。

 まあただ魔素を吸収してしまえば良い訳じゃないし、この後の面倒事への対策も考えておかないといけないからな・・・・・・。

 何が面倒って、祝賀会もだけど、今は何よりもファファルが連れて来たリライオルについて来た研究者がさっきから血走った眼で色々と調べている事だよ。

 まあ、見た事もない未知の技術を目の当たりにした彼らの気持ちも判るんだけど、邪魔だから質問攻めにしてきたり、何やら調査用の機材を設置しようとするのは止めてくれないかな?

 まあ、この手の研究者にスイッチが入ってしまった状況で、何を言っても無駄だと思うけどね。

 これについてはどうしようかとか考えるだけ無駄かね・・・・・・。

 

 とりあえずうるさいので無視しつつ、魔素を吸収して魔力に変換して魔石の魔力を次から次へと回復させつつ、魔域の様子を見る。

 実際の所、来たと思ったらいきなり活性化が始まったので、平常時のゲヘナの魔域の様子を知らないのだけども、今は平穏そのものだ。

 活性化の終了と共に、しばらくは魔域の魔物を呼び込むゲートも閉じている上、活性化で呼び出された魔物も全て殲滅されているので、魔域の中心部にすら魔物の気配すらない。

 まあ、しばらくしたら魔物で溢れかえるのだろうけど、今は魔域獣の魔素を吸収して周っているので魔物が現れる気配すらない。

 ついでに言うと魔域の中の生態系も少し変化してきている気がする。

 もっとも、戦いの影響で大半が消し飛んでいて、植物の生えている所なんて僅かに点在しているだけだけど・・・・・・。

 魔域内部に暮らすネーゼリアの動物や昆虫類は居ない。みな、魔物の言う根源の脅威から逃げ出し、魔域内部に残るのは植物くらいだ。そして、その植物は魔域の魔素に影響されてその在り方をゆがめていく。

 魔域の中の植物は既に魔物の世界のモノに等しいようにその姿を変えているのだけども、こうして魔素を吸収していく事で植物たちからも魔素が抜けいてっているらしく、その姿を基の姿へと変え始めている。

 なかなか興味深い現象だけども、植物学なんて専攻した事もないので考えても何も判りそうもない。

 と言う訳で、現実逃避は止めて、そろそろ面倒事をどうするかを考えるとしよう。


 さて、活性化も無事に終わった訳だけども、ゲヘナは当然だけども今回の一件でとんでもない失費を必要とした。国家予算の半分は確実に消し飛んだだろうし、これから俺たちへの報酬などの支払いで更にかっつりと使う事になる。

 だけども、その出費を取り戻す方法もある。

 活性化で倒された魔物は通常時と比べてはるかに安い金額で国に引き取られることになる。活性化による国の財政破綻を防ぐための決まりである。

 しかも、今回はレジェンドクラスの魔物はおろか、ジエンドクラスの魔物の素材すらある。それらを破格の値段で手に入れられるというのだから、ゲヘナとしてはむしろ千載一遇のチャンスである。 

 出費分を取り戻すどころではない利益を上げることも余裕だろう。

 ただし、それは手に入ればの話だ。

 俺は提供するつもりだが、問題はファファルとライオルの方。

 転移集束過剰粒子砲で仕留めたジエンドクラスの魔物は、跡形もなく消し飛んでいるので素材も手に入らないが、最後に俺たち3人が装機竜人で仕留めたモノなど、シッカリと素材が残っているのも結構ある。

 そして、ファファルが3匹、ライオルが2匹仕留めている事になるので、それらの素材をどうするかは2人次第となる。

 ゲヘナとしては当然引き取りたいに決まっている。

 それに対して、ファファルは国に持つ帰りたいのが本音だ。

 ライオルは引き渡しても良いと思っているかも知れないが、一緒に来た随員にしてみれば言語道断だ。なんとしてもスピリットに持ち帰りたいだろう。

 研究素材としても、錬金術や魔工学の素材としても最高の一品。その上食材としてもし至上の一品。

 どの国も喉から手が出るほどに欲しいしななのだ。 

 当然だけども、交渉は難航するだろう。そして、当然の様に俺も巻き込まれる事になるのも目に見えている。 

 俺の分の素材は、ゲヘナに引き渡すっから後の交渉はそれぞれがしてくれと言っても無駄だろう。

 そして、祝賀会はその講師用の前哨戦になる。


「祝賀会か面倒な事になりそうだな」

「それは仕方がないかと、何せレジェンドクラスの片が3人も出席するのですから」


 ああ、そちらの方の面倒さもあるか。

 本当に、強くなればなるほどに面倒事が増すな。

 だけど、今回の件でも明らかだったみたいに、強くならないと生きていけないからな。と言うか確実に死ぬ。

「オマケにベルハウゼルとラグナメヒルの事もあるからな」

「オマケではなく、そちらこそ正しく本命では・・・・・・」


 そうなんだよな。素材の事よりも更に問題なのが、ベルハウゼルとラグナメヒルの2つの空中要塞の事なんだよ。それとファファルとライオルに貸し出した2機の装機竜人もだな。

 装機竜人については、ファファルもライオルも自分のモノにしたいと思うだろうし・・・・・・。

 まあソッチは後で本人と直接話すとして、問題は空中要塞。

 はじめは終わったら2つとも元に戻すつもりだったんだけど、これからも必要な可能性がバリバリ出てきたからな。俺自身、今は戻すべきなのかって思わないでもないけど、出したままにしておくにはあまりにも危険すぎる。

 だけど、これからの事を考えればゲヘナのドラグレーンも絶対に手元に欲しいだろうし、そうなると他の国だって黙っているハズがない。

 これから大騒動を引き起こすのが確定の事案だったりするのだ・・・・・・。

 本当にどうしようかなと、現実逃避気味に考えて、また溜息がでた。



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