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「魔域中枢部に高魔力反応。これまで以上の数値です」

「これは、終焉の予兆とみて良いのかな」


 2回の魔域の活性化、その終わりの時の反応と同じだ。 

 ただし・・・・・・。


「ベルハウゼル魔域中心部に突入。ファファルに打電。ラグナメヒルも直ちに魔域中心部に突入せよ。それからライオルにもだ。ゲイボルグに搭乗し魔域中心部に向かえと伝えろ」


 今回は間違いなく、ベルハウゼルだけじゃあ対応しきれない。

 下手をしたら、10を超えるジエンドクラスの魔物が現れるかも知れない。


「ファファル様より通信です」

「回せ」


 ファファルの方でも当然、状況が動いたのは確認済みだろう。


「アベル殿これは?」

「状況から見て、活性化が終わろうとしているんだろう。ただし、最後の大物が確実に出て来る。おそらくはベルハウゼルだけでは対抗しえない」

「ベルハウゼルとラグナメヒル。それに私たちの装機竜人も必要になりますか」

「それでも、まだ足りない可能性もあるがな」

「そこを乗り越えてこそでしょう」

「そうだな。そちらもすぐに準備に取り掛かってくれ」

「はい」


 通信が切れた所を思はず一つ溜息が漏れる。


「ベルハウゼルの指揮をミランダに任せる」

「了解。と言ってもかなり不安なんだけど」


 大丈夫、大丈夫。何事も諦めが肝心だよ。どの道いずれはジエンドクラスの魔物を相手にするのもごく当たり前になるんだろうし。


「そんな未来なんて願い下げなんだけど、間違いなくそうなりそうで怖過ぎよ」


 おっと、心の声が漏れてたようだ。

 まあ、これが始まりに過ぎないのは確かだろうからな。これから先の活性化はこれが基本になりそうだし。


「まあ、なんとかなるだろ」


 気休めにもなっていないが、心で負けていたんじゃ話にもならないのも事実だ。

 俺は急いで転移で格納庫へと飛び、俺が使うために用意していた機体に乗り込む。

 装機竜人ウラノス。ギリシャ神話の天空神の名を冠する機体。

 出来ればコレを使う事態にはなって欲しくなかったんだけど、今更だ。それよりも問題、ほとんどぶっつけ本番でどこまで動かせるか、戦えるかだ。

 それと、この機体の性能を何処まで引き出せるか・・・・・・。

 普通に使えれば、ジエンドクラスの魔物とも対等に戦えるはずだけども、出来れば一撃必殺で倒したいところだ。

 今の所、ジエンドクラスの魔物現れていると言っても、一番弱いαランクの魔物だけだ。Ωランクの魔物なんかが現れたらそれだけで終わりだっただろうから助かるけど・・・・・・。

 

「だが、いづれは高位ランクの魔物も出て来る」


 いづれはΣやΛランクの魔物が現れる可能性もある。

 いや、今まさに現れる可能性すらある。

 そして、もし万が一にも表れたとしたら勝てるのだろうか? 


「それでも、負ける訳にはいかない。アベル・ユーリア・レイベスト、ウラノス出撃する」


 既にベルハウゼルとラグナメヒルは魔域中心部に到達している。ライオルのゲイボルグもだ。ファファルのガイオラも出撃した。

 これで戦力は整った。ラグナメヒルの指揮はファファルの副官が執るそうだ。彼の右腕とも言える優秀な人物だそうだから、問題はないらしい。

 

 さて、今は目の前の巨大な漆黒の球体に集中しよう。

 大きい。魔域中枢をスッポリと覆い尽くし、成層圏を通り越して宇宙にまで届いているであろう巨大な球体。光も通さない完全な黒。

 その球体に白いヒビが入る。


「来るぞ」

「判っています」

「任されよ」

「各員砲撃用意」

「転移集束過剰粒子砲発射準備」


 ジエンドクラスの魔物の出現に備えてそれぞれ戦闘準備に入る。

 俺はウラノスを通してアイン・ソフ・オウルを展開する。ウラノスはほぼ生身と変わらない魔力伝達スピードで魔法を展開する。

 更に、内蔵された動力システムは容易くジエンドクラスの魔物を倒せる規模の魔法を複数生み出しえる。

 俺はもうひとつアイン・ソフ・オウルを発動させ。2つの魔法を展開させて待つ。


 恐ろしいな。


 ウラノスの性能に思わずそう漏らしていた。

 もっと早くこの機体を使っていれば、或いは今回の活性化、こんなに苦労する事なく、それこそ容易く終わらせる事すら出来ていたかも知れない・・・・・。 

 そんな風にすら思えてしまう。

 同時に、俺が戦力の出し惜しみをしなければ、もっと犠牲者を減らせたのにとの後悔も押し寄せて来る。

 そんな事、今は考えている場合じゃないと判っているのにだ。


 まったく、やっぱり俺は戦いには向いていないな。


 そんな事を考えている内に状況が動く。

 漆黒の球体が砕け散り、ジエンドクラスの魔物が姿を現す。その数10。

 こちらは空中要塞2に装機竜人3。

 それぞれ2匹ずつ倒す計算だ。


 相手が動く前に決める。

 即座に展開していた2発のアイン・ソフ・オウルを放つ。

 俺の標的は以前にも現れたウロボロスとでもいうべき巨大なヘビとダーク・フェンリルとでも呼ぶべき巨大な漆黒の狼。

 放たれたアイン・ソフ・オウルはその2匹に直撃する。

 どうやらこちらに気付く前に仕掛けられたみたいだ。

 いや、違う。オレ、ファファル、ライオルの攻撃は通っているのに、ベルハウゼルとラグナメヒルの攻撃が防がれている。

 どうやら、魔物たちは現れた瞬間から2つの空中要塞を警戒して集中していたようだ。そのおかげで6匹は倒せたが、代わりに4匹が残ってしまった。

 

「攻撃を集中させろ。反撃のスキを与えるな」


 残りの4匹に攻撃を集中させるが、一歩遅い。

 全長1000キロに達しようとする漆黒のドラゴンがブレスを放とうしていてる。

 あのブレスが放たれたらどんな被害が出るか・・・・・・・。

 そう思い更にその向かう先を確かめて更に青ざめる。あのブレスが向かう先にあるのはゲヘナの首都。

 やらせるかと思うが、今からじゃあ間に合わない。

 ドラゴンのブレスが放たれ、そして、それを転移集束過剰粒子砲が迎え撃つ。


「ミランダか」

 

 2つの破壊の奔流はぶつかり合い、互いに相殺されていく。

 今ならっ。

 俺は急いでアイン・ソフ・オウルを展開し放つ。

 ブレスを放ったまま動けないドラゴンは何の抵抗も出来ずにアイン・ソフ・オウルにその魂を貪られる。

 そして、同時にラグナメヒルの砲撃がもう1匹を消し去る。

 これであと2匹。

 続いてライオルのゲイボルグが魔道障壁を最大展開して魔物に突っ込む。

 最大速、時速300万キロでの特攻。自らを弾丸とした一撃が、10キロを超える巨人の心臓を貫きそのまま首を跳ね飛ばす。

 残り1匹。

 残ったのは正しく悪魔と言うべき魔物。羊のような角を持ち、悪魔の翼を五対その背に持ち、数多の自訴をその身に刻み込んだ存在。

 悪魔王とでも評するに相応しいような魔物。

 これまでのジエンドクラスの魔物が、ありえない程の巨躯であったのに対して、精々20メートル程度しかない、その事が逆に不安を誘う。

 だけど、そんな事を気にしている暇はない、相手が何かする前に倒さないといけない。

 全員が同じ思いだったのだろう、5つの砲火が悪魔王に集中する。

 これで終わりだ。いくら何でもこの攻撃は避ける事も防ぐ事も出来ないハズだ。


 そんな確信は、次の瞬間に崩れ落ちる。

 悪魔王は何でもない様に無造作に、俺たちの攻撃全てを消し去った。


 ありえない。

  

 などと驚いている暇はない。

 どうやったかなど考えている暇もない。ただし、遠距離攻撃の無効化なんて反則級の能力を持っている可能性もある、その場合、このまま此処で攻撃を続けるのは無意味だろう。

 現に、再び放たれた転移集束過剰粒子砲の攻撃を悪魔王は当然のように消し去り、無効化した。

 それなら、直接攻撃で倒す。

 俺と同じ事を考えたのだろう、ファファルとライオルも悪魔王へと突き進む。そして、俺たちを援護するようにベルハウゼルとラグナメヒルは砲撃を続ける。

 例え攻撃が効かなくても、相手を釘付けにする事は出来るかも知れない、そうでなくても、ほんの少しでも動きを封じられるかも知れない。

 そして、必要なのはその一瞬。

 俺たちは時速300万キロの速度で、自分自身を弾丸にして悪魔王に突っ込む。

 下手な攻撃をしている暇はない。それなら、自分自身を弾丸にした方がはやい。問題は転移で逃げられる事だが、ベルハウゼルとラグナメヒルの攻撃を無効化する為に集中しなければならないのか、転移もしないし攻撃もして来ない。

 それが罠である可能性は否定できない。

 それでも、そんな事で躊躇っている余裕はない。この悪魔王は、他の9匹に比べて明らかに強い。或いは上位クラスの魔物である可能性すらある。

 そんな相手に暴れられたらどうなるか・・・・・・。


 絶対に倒す。そんに思いと共に悪魔王へと突撃し、瞬間、展開された防御障壁によって全ての破壊エネルギーが消失させられる。俺だけじゃない、ファファルとライオルの攻撃もだ。

 3機の装機竜人、それもジエンドクラスの魔物とも対等に戦えるはずの機体の全エネルギーを集中した攻撃で防御障壁すらも破れないのかよ。


 ふざけるな。


 だがそれがどうした。俺は相手が動くよりも早く即座にゼロ距離で最大魔力のアイン・ソフ・オウルを放つ。防御障壁の再展開などしている暇はない。

 この状況なら、遠距離攻撃を無効化することも出来ないハズだ。イヤ、これはもう既にゼロ距離攻撃、砲撃じゃあない。

 瞬間、放たれた奔流は消滅させられる事なく防蟻障壁と衝突し、そして打ち砕くとともに消滅する。

 相打ち、相殺かよ。だがそれで十分だ。

 防蟻障壁が破られた瞬間、ライオルのゲイボルグがその魔力を全て剣の集束させ心臓を貫き、同じく全魔力を剣に収束させたファファルのガイオラが首を斬り落とす。

 瞬間。魔域中心部、その中心地点から凄まじい魔素の奔流が起き、同時に果てる事無く続いていた魔物の出現が終わった。

 2か月近くに及び続いた、魔域の活性化が終わった瞬間だ。



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