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 さてと、偉そうに何は語って見た所で、とりあえずはこの活性化を無事に切り抜けられなければそもそも話にならない。

 なんだけども、どうもそれが怪しくなってきている。

 より正確に言えば、俺がこの活性化を乗り越えられるか怪しくなってきている。

 

 活性化が始まって20日が経ったころから、想定していた通りに再び魔物が新たな動きを見せ始めた。

 ぶっちゃけて言うと、ベルハウゼルにこれまで以上の戦力を集中し来たのだ。

 もう、絶え間ない波状攻撃とかそんな次元じゃない。いったいどれだけの数の魔物が押し寄せて来続けるのか、数えるのもバカらしくなってくる。

 間違いなく、この10日間で殲滅した魔物の数は、その前の20日間で討伐した魔物の倍以上にのぼるだろう。 

 しかも、俺たちに敵が集中している中でも、他の戦線に投入される魔物の数も減ってはいないのだから始末に悪い。むしろ、少しづつ増えてきているそうだ。

 正確に数の統計を取った訳ではないけれども、既に活性化での魔物の討伐数は億を超えて兆に届こうとしているだろう。イヤ、もう超えているか・・・・・・。

 始まる前は、相手が例え何十兆の居ようと全て殲滅してみせると意気込んでいたのだけども、実際にその数を相手にすると本気でウンザリする。


「グラビティ・バースト発動。周囲の敵を一掃後解除、と同時に仰角四十℃に向けて反物質ミサイルを掃射」


 それでも、覚悟していたジエンドクラスの魔物はいまだに登場していないので、なんとかなっているけど、本気で、この状況でもしもジエンドクラスの魔物が現れたらどうしようもないよ。

 本気で、ジエンドクラスの魔物が現れたら確実に終わりだと理解させられるほどに追い詰められている。

 そして、活性化が始まって1ヶ月が経過し、その可能性は日増しに高まっている。

 

 残念な事に、まだ活性化が終わる気配は微塵も見られないし。その兆候も何一つない。


 要するに、このまままだしばらくは活性化は激しさを増していき、襲い来る魔物も強くなっていくと言う訳だ。

 実際、転移攻撃をしてくるSクラスの魔物の数もはじめの4倍近くになっているし、レジェンドクラスの魔物なんて既に10万匹以上倒している。

 何とかベルハウゼルの運用も慣れて来て、効率的に戦える様になってきたから何とか持っているけど、だからこそ、この強力な兵器を本当に全く使いこなせていないんだと、本当の意味で思い知らされた。


「右舷方向より感、敵長距離魔道攻撃来ます」

「防蟻フィールド最大展開」


 長距離からの魔法攻撃。しかも1万以上のSクラスの魔物による複合魔法だ。その威力は単に1万の魔物が一斉に攻撃してきたモノとは比較にならない程に高い。

 しかも、この長距離砲撃をしてくるSクラスの魔物たち、どうやら一度攻撃をしたらすぐに魔域の中心部に戻り、魔力を回復させてから再び攻撃をしてくるというサイクルを確立しているらしい。

 面倒なので倒してしまいたいのだが、距離があり過ぎる上に、他の魔物の迎撃に手一杯なのもあって手がなかなか出せない。

 本当に面倒だ。。

 しかも、一撃の威力がシャレにならないほど高いので、シッカリと対応しないとベルハウゼルですら無傷ではいられない。


「再び、長距離魔法攻撃来ます」

「ワーム・デバイス展開。跳ね返せ」


 なので、その攻撃をたまに利用させてもらっている。

 代わりじゃないけど、たまにこちらの攻撃も跳ね返せサルから油断できないんだよな。

 本当に、一瞬たりとも気が抜けない。


 さて、そんな緊迫した状況下にある訳だけども、それに対して当然だけども、何も手を打たないでいる訳じゃない。

 敵戦力の過剰さを鑑みて、状況次第ではベルハウゼルと同じ空中要塞をもう一つ投入するつもりだ。

 要するに、これまでの遺跡調査で見付けた10万年前の空中要塞を、もうひとつ持ってくるつもりなのだ。

 その為に、今サナに動いてもらっている。

 10万年前の遺跡は、転生者じゃないと入れないからね。

 それに、動かすにはそれなりの人員も必要なので、その辺りの交渉なんかもやってもらっている。

 

 これで、ベルハウゼルと同等の戦力の空中要塞がもうひとつ戦線に加えられる事になる。

 因みに、要塞の総指揮官はファファルにやってもらうつもりだ。彼は戦況を読み取って的確な指揮を執る事に優れた名将なので、すぐに俺よりも上手く使いこなしてくれるだろう。


 そんな訳で、何が起こっても問題ないように保険をかけている訳だから、何が起ころうと問題はない訳だけども、いい加減に執拗な魔物の襲撃がウザったい。


「しつこい。縮退対消滅砲で魔域そのものを消し去ってやりたくなるぞ」

「落ち着いてくださいアベルさん。そんな事をしたらゲヘナが滅んでしまいます」

「ドラグレーンも無事じゃすまないと思うよ」


 いや、流石にホントにやったりしないって・・・・・・。

 信用ないな俺。

 まあ、完全に自業自得の気がしなくもないのはどうしてかな。


 だけど、ある意味では良い案かも知れないとも思うんだけどね。

 事象の地平面を崩壊させ、消滅させてしまう縮退対消滅砲は、消し去った魔域が存在したと言う事実そのものを無かった事にする。

 つまり、縮退対消滅砲で魔域を消滅させれば、そこに魔域があったと言う事実そのものが無かった事になるのだ。

 つまり、はじめから存在していなかった魔域が無くなっただけであり、魔域の討伐とは違い、魔物が溢れ出して来る事もない。

 と言うか、この兵器で魔物の世界を消滅させてしまえば良いのにと思うんだが、10万年前にやらなかったって事は出来ない理由があるんだろう。


「地上で使ったりすれば、星が崩壊してしまわないと、アベル様が仰っていたではありませんか。そのような危険に賭けに出なくても、この戦いは勝てるはずです」


 通信員から本気の懇願を受けてしまった。彼女は俺のこと余り良く知らないから、冗談が通じなかったようだ。


「冗談だから心配しないで」


 何故に俺が世界を滅ぼさなければならない。


「魔域中心部に高魔力反応。これはレジェンドクラスの魔物を大きく上回っています」


 なんて思っていたら、いきなりの凶報が飛び込んでくる。

 このタイミングで、レジェンドクラスを大きく超える魔力反応ね。間違いなく、ジエンドクラスの魔物が現れようとしているな。


「サナに打電。即座に空中要塞ラグナメヒルを起動。本戦域に急行するように。ベルハウゼルは直ちに魔域内部に突入。可能ならばこの世界に現れると同時に̪仕留める」


 ジエンドクラスの魔物なんか日常で好き勝手に暴れ回られたりしたら、本気で星が崩壊してしまいかねない。そこまではいかなくても、ゲヘナが崩壊してしまう可能性がある。

 一撃で国をひとつ跡形もなく消し去る力を持った相手だ。本気で即座に討伐しなければどれだけの日買いが出るか判らない。

 ベルハウゼルは一気に時速30万キロまで加速し、その巨体と速度で、周辺の魔物を圧殺しながら魔域に突入する。

 毎期中枢に到達すると即座に停止。停止したベルハウゼルに魔物が殺到して来るが、そんなのはどうでも良い。自動迎撃システムを作動させて尽く殲滅して行く。

 問題は毎期中枢の状況。

 巨大な。直径100キロを超える漆黒の球体がある。

 これまでに幾度となく見てきたモノだが、今回のは余りにも大きすぎる。

 そして、漆黒の球体にヒビが入り始めている。


「ワーム・デバイス展開。処方全砲門発射準備。ワーム・デバイスを収束モードに移行」


 ベルハウゼルの主砲全てを掃射し、ワーム・デバイスを使って集束する。縮退対消滅砲に次ぐ、強力な破壊兵器たる転移集束過剰粒子砲。

 その一撃で、現れると同時に仕留める。

 

 そして、漆黒の球体が粉々に砕け散る。

 瞬間。世界が震える。全てを否定し滅ぼす力の体現。

 それは全長1000キロを超える巨大なヘビだった。

 ウロボロス。無限を意味する自らの尾に喰らい付くヘビを思い起こす。


「転移集束過剰粒子砲発射」


 そいつは、現れた瞬間からこちらを捉えている。明確に俺たちを敵として認識している。

 だからこそ、何かされる前にに倒さなければいけない。

 要塞主砲全2万5000が一斉に放たれ、その砲火の全てがワーム・デバイスに飲み込まれる。そして全エネルギーが1つに収束され、存在するに明らかに過剰な粒子の収束体となる。

 それは自己崩壊をしながら周囲にある全てを飲み込んでいく。

 全てを飲み込む破壊の奔流がウロボロスに当たると思われた瞬間。巨大な咢から放たれたブレスが、集束過剰粒子砲と衝突する。

 現れた瞬間を狙ったけど、やはり反応されたか。

 それでも、攻撃を避けられるよりははるかに良い。

 2つの圧倒的な力の奔流の激突が空間を歪ませていく。そして相殺されていく。

 だけども、その程度の事は想定内だ。


「転移集束過剰粒子砲、第2射撃て」


 ウロボロスはブレスを放っている状態なので動けない。つまり、完全に2つの力の奔流がさう殺されしきる前にもう一度攻撃すれば、確実に仕留められる。

 卑怯だろうが何だろうが、確実に仕留められるならどんな手段でも使う。

 そして、生物としてありえない程のウロボロスの巨体は、圧倒的な破壊の奔流の中にカケラも残さず消えていった。




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