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 これまでの経験上、此処でまた状況が大きく動くだろうと予想していたんだけども、こちら側に戦況が有利に傾いて10日、活性化が始まって20日になるけれども、アレ以降戦況に大きな変化はない。

 おかげで、この10日は俺もある程度休む事ができた。

 だけど、つかの間の休息もそろそろお終いだろう。

 そろそろ再び状況が動きそうだ。

 今まで状況が動かなかったのは、魔域の側も流石に、そうそう何度も状況を一変させるような切り札を投入してこれないと言う事なんだろうけど、逆に言えば、人さえあれば更に凶悪な切り札を用意する事も可能と言う事。この10日の時間は、その切り札を用意する為の準備期間だったとも言えるだろう。

 本気で、そろそろジエンドクラスの魔物が現れるのも覚悟しないといけないかも知れない。


「問題は、活性化が後どれだけ続くかか」

「後10日で1ヶ月になります。それで収束してくれれば良いのですが」


 今は戦いを有利に進められているとは言え、状況をひっくり返される可能性も十分にある。むしろ、このまま優位に戦い続けられるなんて考えは甘すぎだ。そして、劣勢に立たされた状況で数か月に及んで続くとなると、活性化の収束の前に此方が力尽きてしまう可能性もある。

 現実問題として、俺たちはまだまだ戦えるが、魔王軍の中には死者こそ少ないが、重傷を負って脱落する者がかなりの数出て来ている。

 回復魔法による治療できる人数を大きく上回る数の重傷者が連日でているので、国の医療機関もフル稼働で対応してもまだ足りない。

 それに、Sクラスの中で既に魔晶石を使い果たしてしまい、1日の戦闘継続時間が大きく減ってしまう者も出て来ている。


「過去の例から見ても、これ程の規模の活性化で、ここまで被害が少ない事はありえません。それは本当に喜ばしい事なのですが」

「今回は、これから先何が起こるか判らないからな」


 これまでの経験則からの常識なんて一切通用しない事態のオンパレードだ。

 そもそも、魔域の意思がこれ程明確な戦略を持って魔物を軍隊として統率するなんてこと自体がまずありえないし。

 一度に万を超える魔物が転移による特攻を仕掛けてくるなんて、しかも連続で途切れることなくなんて前代未聞も良いところだし。

 気が付けばレジェンドクラスの魔物が普通に出てきているし。

 数百のレジェンドクラスがその身を犠牲にして特殊な時空間を作り出してきたりするしと、ありえないような事態のオンパレードだ。


「それでも、たとえジエンドクラスの魔物が現れたとしても、ベルハウゼルとヒュペリオンで対抗できるのが救いか」

「そうですね。この2つがなければ、ゲヘナはすでに魔物に飲み込まれて消滅していたでしょうから」


 因みに、話を思いっ切りぶった切る上に、候えなくどうでも良いけど、俺とルシリスはただいま休息中。もっと言うと食事中だ。

 朝・昼・晩のどれに当たるかは不明。というか、1日に3回も食事をとっている余裕はない。

 寝る前と起きてから、1日に2回食事ができれば良いほうだ。むしろ、基本1回だ。

 そんな訳だから、ご飯の時はバリバリ食べる。

 基本はベルハウゼルで指揮を執っている形だけども、だからといった魔力を消費していない訳じゃない。

 戦況を見極めるための高度な予測演算などには相応の魔力を必要とするし、敵を補足するための未来視などの複合ロックオンにも相応の魔力が必要だ 

 それに、このベルハウゼルは乗務員全員の魔力を吸収してエネルギーに変えているのだから。もっとも、俺たちから吸収した魔力なんてすべて合わせてもたかが知れているだろうけど。

 それはともかく、戦場での唯一の楽しみが食事だ。そんな訳だから思いっきり贅沢をさせてもらっている。因みに、今日のメニューはヤマタノオロチ・スサノオの肉を使ったフルコースだ。

 50匹分を回収したため、肉はそれこそ億トン越えであるので、なくなる心配は一切ない。それよりもむしろ消費しきれるのか不安な量だ。

 それはともかく、スサノオの肉なんだが、揚げ物にするととにかく美味い。特に竜田揚げが絶品で、唐揚げよりも確実に美味しい。後カツも美味しい。それもカツ丼が最高だ。ソースカツ丼も良いが、定番の卵でとじたカツ丼がとにかく美味い。だけど、1番はメンチカツかも知れない。粗挽きにした肉から肉汁が溢れ出し、普通のカツにした時よりも更に肉の旨みが溢れ出す。

 揚げ物に合うと言ったが、ステーキやハンバーグにしてもこれまた美味い。まあ、肉の味を直に確かめるるのには、結局ステーキが最も優れた調理法だから、これはある意味当然なのだけども。

 肉を食べていると本能が騒ぎ出す野性的な味は、動物的な本能を呼び覚ますモノだった。

 その野性的な味故か、下手なソースをかけたモノよりも塩と胡椒でシンプルに焼き上げただけのモノが最も美味かった。ステーキ醤油なんかをかけたのも美味かったんだけどね。どうも肉の味を邪魔しているように感じてしまったんだよな。

 因みに、なんだかんだ言いながら俺が一番気に入ったのは筋肉の煮込みだ。

 アレは別格だった。数日間かけてじっくり煮込んだにもかかわらず、僅かに残るコリコリした食感がまた格別だった。これは絶対に酒のつまみに最適だと思ったが、酒を飲んでる余裕などないので、どんぶり飯に汁ごとぶっかけてかっ込んだ。下品だろうが何だろうが、それが一番うまい食い方なのだから問題ない。

 と言うか、作法だなんだに気を取られて、美味しい物をミスミス見逃す方が人生の損だ。

 思いっきり話が飛んでしまったが。


「とは言え、頼りすぎるのも問題なんだよな。確かに強力な力を持っているけど、それ故に頼りすぎてしまえば人が育たない」

「それが一番の問題かもしれませんね」


 そう、今話しているのは活性化の事とこれからの話だ。

 例えば、今回の戦いにしても、もしもレジェンドクラスの超越者がもっと居たのなら、仮定ではあるけれども1万人のレジェンドクラスがいたのなら、ベルハウゼルやヒュペリオンなどなくても十分に対抗出来ただろう。

 現実問題として今回の戦いでは、ベルハウゼルを投入しないで生身で戦っていたとしたら、俺個人で上げられる戦果なんてタカが知れていただろう。イヤ、それ以前に戦死していた可能性が高い。

 ライオルやファファルも、個人としては規格外の戦果を上げているが、それでも戦況を左右するほどのモノではない。

 それに、2人もやはり今回の活性化の規模に驚きを隠せないようだ。

 過去に活性化を戦い抜いてきた経験から、レジェンドクラスに至った今回は、個人で戦局を左右し得る程の戦いができると思っていたそうだが、実際には局地的な戦いに終始するしかない状況で、戦局を左右するなど不可能だったそうだ。

 つまりは、俺が生身で参戦していた場合も同じ戦果だったと言う訳だ。

 過去2回の活性化での戦いで、俺は戦況を左右するだけの戦果を上げていた。勿論、それはヒューマンの国での話で、他の種族の活性化での戦いは、比較にならない程に激しいモノなのは理解しているつもりだった。それでも、レジェンドクラスの力を得て、今回の戦いでも十分通用するだろうと思っていたのだけども、フタを開けてみればベルハウゼルがなければほとんど何も出来ないのと同じだっただろう。

 それくらい、今回の活性化は異常な程の戦力を魔物側は有している。

 そして、問題なのはコレがこれから先の当たり前になってしまいかねない事だ。

 これから起こる活性化は全てこれと同じ規模になるかも知れない。

 もしそうなったら、今回と同じようにベルハウゼルやヒュペリオンなどの10万年前の遺産を投入しなければ、これから先は対抗不可能になる。

 まあ、それでも対応可能なのは救いだろう。

 問題は、そうして10万年前の遺産に頼りながら早急に戦力を整えないといけない事だ。

 今のレジェンドクラスがたったの7人しかいない様なままじゃあ話にならない。出来る限り早急に、10万年前の遺産に頼らなく手も活性化を乗り越えられるだけの戦力。1万人を超えるレジェンドクラスを揃えなければならない。

 そして、現実問題として、カグヤの封印が破られるとされる100年後までには、その比ではないだけの戦力を育てあけていなければならない。

 そう、出来れば100年までにレジェンドクラスが数十から数百万人、ジエンドクラスも数十から、数百人は居る様になるのが望ましい。

 レジェンドクラスが7人しかいない現状から考えると、明らかに不可能としか言えない戦力の増強が必要なのだ。

 

 遺産で対応できるんだから、そんな慌てなくても大丈夫だろ?


 なんて思うかも知れないけれどもそれは甘い。

 そもそも、俺たちは今の状況では、ベルハウゼルやヒュペリオンの性能を完全に引きだせていない。

 当然だ。あれらはそもそもジエンドクラスの超絶者が使うモノなのだから。

 当然。その本当の性能を引き出すにはジエンドクラスの力が必要になる。

 実質問題として、今現在俺たちがどの程度の力を引き出せているのか判らないが、本来の力であれば、この程度の活性化なんてベルハウゼルひとつで容易く対処可能な可能性も高い。

 いくら強力な兵器があっても、それを使いこなせる者が居なければ意味はないのだ。

 そんな訳で、俺たちは早急に10万年前の遺産を使いこなせるくらいに強くならないといけない。

 

 もっとも、それだけの戦力を揃えて構えておいて、結局カグヤの封印を破らせずに済む方法が見付かって無事に何事もなく平穏が戻る可能性もあるんだけど。

 それか、或いは魔物の侵攻そのものを終わらせられる可能性も・・・・・・。

 

 まあ、どうなるかは判らない。

 それなら、今は最悪の事態、魔物に世界が滅ぼされてしまうような事が起きない様に、全力を尽くすしかないだろう。

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