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 ヒュドラの進軍から3日、想定していた通りに魔域の活性化が始まった。

 ゲヘナは直ちに戦闘態勢に入り。俺たちもベルハウゼルを即座に起動、戦列に向かわせる事となった。


「さてと、メイン動力炉リミット解除。浮遊システム展開。ベルハウゼル起動」


 宣言と共に、湖底に沈んでいたベルハウゼルは空に浮かび上がる。


「目標座標入力。戦線に向けて発進」


 全長12キロもの巨体でありながら、ベルハウゼルの最大船速は時速30万キロを超えるが、当然だけど地上でそんな非常識な速度は出さない。


「総司令部より入電。戦線が開かれたそうです」


 こちらとの連絡役として出向ていてる魔族の通信員が戦闘が始まったと伝えてくる。


「了解。後5分で戦域に到着すると伝えろ」

「判りました」


 一度成層圏まで高度を上げた後、一気に加速した事で目標地点まで後五分足らずで到達可能だ。

 傍から見たら巨大隕石が落ちて来ている様に見えそうだけど。 


「全砲門、砲撃用意。レーゼ少年たちはグングニールに搭乗して待機。メリアたちもサポートできるように準備しておいてくれ」


 まあ、ベルハウゼルが担当する戦闘領域は、レーゼ少年たちが出て行くまでもなく、魔物が一掃されて終わりだけどな。


「目標地点到達と共に、重力ブレーキ最大展開。停止後一斉射を行う」

「了解。重力ブレーキ最大出力」


 因みに、要塞の航行はルシリスが、火器管制はシャクティ、索敵及びレーダー管制はマルグリットがしている。


「前部主砲。全砲門照準固定」

「全砲一斉射」


 瞬間、要塞前方の1万にも及ぶ要塞主砲が一斉射を行う。

 先行。あたりの全てを飲み込む圧倒的なエネルギーの奔流が放たれ、俺たちが戦線を任された2000キロの範囲の魔物は、主砲の射程内の全てが跡形もなく消し飛んだ。

 今の一撃でおよそ3億の魔物が一掃された。


「凄すぎる・・・・・・」

「確かにね。それに、一歩間違えると大参事なのも変わらないし」 


 主砲の威力が高すぎて、下手に近くに着弾させたりしたら、後方の防衛都市にまで被害が及んでしまう。


「さてと、レーゼ少年たちは出撃。主砲の範囲外からこちらに向かって来る魔物の迎撃を、ヒュペリオンも出動。一気に敵の戦列を崩してやれ」


 ここまで問答無用なのもどうかと思うけど、魔物との戦いは世界の存続が掛かっている。特に今回は何が起こるか判らない。万全を期しておくに越した事はないだろう。


「シャクティ。魔域に向けて攻撃を続行。ただし、中心部にまで影響が及ばないように注意を」

「了解しました。魔域に向けとワーム・ミサイルを掃射します」


 ワームミサイルとは、着弾点にその名の通り時空の虫食い穴をつくりだし、その場にいる者全てを次元断層に捕らえる凶悪な兵器だ。

 まあ、Sクラス上位以上になると、次元断層から無理矢理戻ってきたりするので、ザコ敵を一掃する為の兵器と言って良い。


「アベル様。サタン様より通信です」

「繋いでくれ」


 早いな。まあ、アレを見たら当然か。


「戦況はどうですか?」

「キミたちのおかげで問題ない。何事もなければ、今回は犠牲者を出すことなく切り抜ける事すら可能かも知れぬ」


 ベルハウゼルの圧倒的な火力をもって、彼たちは戦線の5分の1以上を支えている。結果、魔国の部隊は何時もよりも戦力を厚く出来る訳だ。


「それにしても、判っていたつもりではあったが想像を絶するな。まさか一撃で戦況をここまで買えるとわ」


 当然だけども、一度に3億もの数が失われた訳なのだから、他の戦線の魔物の動きも鈍る。


「俺としては、活性化の規模の違いに驚きましたけどね」


 まさか、始まったと思ったら10億を超える魔物が進行して来るとか、想像もしてなかったんだけど。

 まあ、今はまだAランク以下のザコばかりだが、それにしたって数が違い過ぎる。

 魔域の活性化がどれくらいの期間続くか判らないけど、1ヶ月を超えるようなら、現れる魔物の数は兆どころ京の単位にまで行くかも知れない。

 実際、他の戦線でも、空中要塞や空中戦艦から砲撃やミサイルが途切れることなく続いていて、戦線が開かれてからまだ10分足らずなのにも拘らず、既に討伐数は10億の単位に及びそうだ。

 まあ、その内の半数は俺たちが討伐しているけど。


「いや、今回の活性化は150年前のモノと比べても、明らかに規模が大きい。カグヤの封印が破られようとしているからか」

「或いは、何かが起きようとしているのか、まあ、それもいずれ判るでしょう」


 とりあえず確かなのは、ベルハウゼルを引っ張り出して置いて良かったって事だ。


「Sクラス反応5000接近。接触までおよそ20秒」


 と話している内に戦局が動いたみたいだ。Sクラスの魔物が本格参戦してきたようだ。


「すいません。戦況が動いたようなのでこれで、迎撃。反物質砲掃射」

「撃破を確認。ですが、再びSランク反応。今度は1万を越えます。また、ベルハウゼル周辺に転移反応多数」


 即座に撃破するけど、それで魔物の侵攻が弱まるなんて事はない。当然だけども、次々と波状攻撃を仕掛けてくる。


「ポイントF5・1から7・8までに対消滅爆雷を掃射。防御フィールド最大展開。迎撃戦用意」


 こちらに向かってくる魔物の群を殲滅し、転移で防御フィールドの目前に現れた魔物の迎撃に移る。

 しかし、迎撃よりも早くほぼすべての魔力を込めたのではないかと思われるような攻撃が放たれる。

 防御フィールドがすべて防ぎ、無効化するが、全力で展開した防御障壁が一気に削られている。これは、もしも最大出力で展開していなかったら、破られていたかも知れない。

 代わりに、近距離迎撃用の兵装で次々と撃ち落とされていく。

 これは、完全な特攻だな。

 やられるのを前提に、全ての力を最初の一撃に込めてこちらを削りに来た。と言う事は・・・・・・。


「転移攻撃の第二波が来るハズだ。警戒を、それと防蟻フィールドを最大出力で再展開」


 個人的には気に入らない戦法だが、有効である事も確かだ。

 実際、次から次へと転移を繰り返して来る魔物への対応で、次第に手一杯になってきている。


「流石に、転移をここまで使われるのは想定外だな」

「ここまで明確な戦術をもって、こちらを落としに来る魔物ははじめてです」


 魔物と言うよりも、魔域そのものの意思だろう。活性化でこの世界に送り込まれた魔物は、全て魔域の管理下に置かれて駒として使われる。

 その魔域の意思が明確に俺たちを、と言うよりもベルハウゼルを落としに来ている。

 まあ、こちらに戦力が集中すれば、それだけほかの戦線には余裕ができ、被害を抑えられるようになるんだが、さすがにそろそろ手を打たないと限界を超えそうだ。


「ベルハウゼル微速前進。次の転移攻撃を迎撃後、全部手法を一斉射。サタン殿に前進すると連絡を」


 しかし、判っていたけど、転移戦法を敵に使われると恐ろしく厄介だな。

 魔王軍も転移を用いた戦法で多大な戦果を挙げているようだし、自分たちが使うにはこれ以上ないくらい便利な魔法だからな、逆に敵に使われると面倒なことこの上ない。

 と言うか、ベルハウゼルだから持っているけど、万の単位のエスランクの魔物を王都近くにいきなり転移させられたりとかしたら、いくら魔王でも対応しきれないんじゃないか?

 まあ、さすがにコッチにこれだけの数を回していながら、さらにほかの戦域でも転移を使った作戦を執るのは無理だと思うけど。


「ベルハウゼル微速全身開始」

「敵転移攻撃を撃破。前部主砲掃射します」

「魔王様より入電。了解。そちらの判断に任せるとの事です」


 まあ、ココで止めろと言われても止める訳にもいかないんだけどね。

 前進したことで、掃射した主砲は毎期の中心部近くにまで到達し、そこまでに在ったすべてを薙ぎ払う。


「続いてベルハウゼル転移。元の位置に戻る」


 微速前進とはいえ、元居た位置から1000キロ近くは前進している。

 そこから転移で一気に元に位置に戻り、戦線を張りなおす。

 転移戦法は非常に過ぎれた戦略だ。敵が使ってくるのなら当然こちらだって使う。と言うか、これだけ便利なものなんだから相手が使って来たら厄介どころか危険なのは常識だ。当然、それに対する対策だって研究し尽くすに決まっている。

 転移封じなどその最たるモノだ。


「さて、ここまでは順調だけど、問題はこれからだな」


 活性化はいつまで続くか分からない。

 それに対して、ベルハウゼルで戦線の一角を担当することになっている以上、俺たちは此処で迎撃を続けないといけない。

 何時終わるかもしれない戦場で、24時間、永遠と闘い続けないといけない訳だ。

 ハッキリ言って、気が狂ってもおかしくないと思う。

 まあ、そうならないためにシフトは交代制で、きちんとローテーションを組んでいるけどね。

 でも、確実にシフト通りにいかなくなるんだろうな。

 俺にしか対応しきれない事態が起きてたたき起こされる未来が見える。


「できればこのまま何事もなく終わって欲しいが、まあ、ムリだよな」


 魔物の側が転移を使った戦略を使ってきている時点で、すでに何事もなくとは言えないし・・・・・・。


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