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「ヤマタノオロチは俺に任せてもらおう」 


 隣の魔王サタンに宣言する。


「任せて良いかな。流石に我らでは相手にすらならない」


 流石にXYランクの魔物の登場には驚いていたようだけども、それも一瞬の事で、すぐにいきなり隣に転移してきた俺に頼む。

 因みに、どうやって転移して来たかと言えば、魔王サタンの魔力を目印にしてだ。

 この転移はかなり便利だ。

 流石に数万キロも離れた位置の特定の誰かの魔力を探知するのは難しいが、数千キロ単位なら問題ないし、数万キロ単位でもレジェンドクラスの魔力なら簡単に捉えられる。詰まる所、実はレジェンドクラスの超越者ていつでも好きな時に互いの所に行き来できるんだよ。

 まあ、今はそんな話をしている場合じゃないけど。

 ヤマタノオロチ。こいつを相手に周りの被害を気にしている余裕はない。

 だからと言って、このまま全力で戦えば周辺のヒュドラも壊滅させられるだろうけど、代わりに魔王サタン以下の討伐隊も壊滅させてしまう。

 本当は、ここは俺に任せていったん退却してくれると嬉しいんだけども、そうもいかないだろう。

 それに、俺とヤマタノオロチの戦闘に巻き込まれて全滅したんじゃあ、せっかくの大量のヒュドラの素材が全て消し飛んでしまうだろうし。そうなったらゲヘナとしても大損だ。

 せっかくの良質な資源をミスミス無駄にするような真似はしないだろう。

 そんな訳で、まずはヤマタノオロチとの戦闘領域に結界を張る。

 

 しかし、何でヒュドラの大ボスがヤマタノオロチかね? 頭が一つ減っているんだけど。


 なんて考えている暇はない。一撃必殺。一瞬でケリを付ける。

 と思たのに、こっちが戦闘空間の確保のために結界を張っている隙に、ヤマタノオロチの攻撃準備が終わってしまったようだ。8つの咢かせブレスが放たれてくる。

 その1つ1つが、簡単に都市を壊滅させる凶悪なエネルギーの奔流。

 それを反射魔法でヤマタノオロチにお返しする。

 これで倒せるような軟な相手じゃないけれども、多少は動きを封じられるし、防御障壁を削る事くらいは出来るハズだ。

 その隙にアイン・ソフ・オウルを叩き込んで一気に終わらせる。

 そのつもりで魔法を展開していくが、ヤマタノオロチの行動は俺の予想を超えて居た。

 なんと、跳ね返ってきたブレスを自ら体当たりをしながら打ち砕き、そのまま俺の元に突き進んでくる。


 そう来るか!!!!


 驚愕を押し殺して全力展開した防御障壁でヤマタノオロチと正面からぶつかり合う。

 互いの防御障壁がぶつかり合い、凄まじい勢いで削り合っていく。

 そして、ヤマタノオロチの防御障壁の方が先に砕け散る。

 この瞬間。俺の勝利が確定した。


「終わりだ。アイン・ソフ・オウル」


 宣言と共にアイン・ソフ・オウルを放ち。ヤマタノオロチを打ち倒す。

 アストラル魔法によって魂そのものを消滅させられ断末魔の方向を上げる事すらなく崩れ落ちるヤマタノオロチの巨体を即座にアイテムボックスに回収して、俺の戦いは終わり。

 まだ、万の単位のヒュドラが蠢いているが、そちらは魔王サタン率いる魔人の討伐隊が相手をするべきだ。

 無論、助力を頼まれればすぐに手を貸すが。


「こっちは終わったけど、加勢は必要か?」

「不要だ。代わりに別のレジェンドクラスの魔物が居ないか警戒を頼む」


 念話魔法で尋ねてみると、即座に助力は不要との答えが返ってくる。

 ただし、確かにこの大軍を率いるレジェンドクラスがヤマタノオロチ1匹だけとは限らないので、戦闘空間を覆っていた結界を解除し、魔晶石で魔力の回復をしながら、辺りの警戒をする。

 今の所、探査魔法による索敵範囲にはES+ランク以上の反応はない。

 とは言え油断は出来ない。あのヤマタノオロチも現れるまで何の気配もなかった。XYランクの魔物が奥に控えていたのなら、討伐隊のメンバーもその気配に気づかないハズがない。

 なのに、ヒュドラたちがいきなり道を開け、悠然とその姿を現すまで誰ひとり気付かなかったのだ。

 ハッキリ言って異常以外のなにものでもない。

 まるで、突然あの場所に現れたかのようだ。

 おそらくは、実際にその通りなのだろう。

 あのヤマタノオロチは魔域の中枢近くにいながら、魔国ゲヘナに進軍する配下のヒュドラの指揮を執っていたのだ。

 そして、状況を見た転移して来たのだろう。

 そうであるなら、まだ魔域でこちらを窺っているレジェンドクラスのヒュドラが残っている可能性もある。

 それが何時転移して現れるか判らないが、警戒しておかなければいけない。

 俺は上空1万メートルから戦況を見守りながら警戒する事にする。

 戦況はヤマタノオロチが討たれた事で一気に討伐隊に傾きつつある。ヒュドラたちの東瀬威がが乱れて好き勝手に動き回る様になって、部隊としての脅威が失われているのが理由だ。その様子からは、指揮官を失って瓦解している様に見えるが、油断は出来ない。


 魔王サタンもそれが判っているのだろう。

 相手の混乱に乗じて一気に責め立てるのではなく、まずは分散していた戦力の集結を優先した。

 投入された戦力の全てを集めると、そこから一気に打って出る。

 後方からの砲撃部隊による掩護射撃を受けた突撃部隊が一気にヒュドラの群を食い破っていく。

 その破壊力はまさに魔王の一撃。

 正しく蹂躙するかのように容易くュドラを屠っていく。

 その勢いはヒュドラの増援数をはるかに上回る勢いで、1時間ほどで敵の半数を薙ぎ払ってみせた。

 凄まじい。見事の一言。


 だけど、このまま状況が決するかと思えたその時、再び事態が動く。


「来たか、やはりアレで終わりじゃなかったか」


 それまで一方的に蹂躙されていたヒュドラが、突然統制を取り戻して魔王軍に襲い掛かる。

 同時に、魔域からの転移反応を確認する。

 レジェンドクラスのヒュドラが指揮を出すと同時に此方へと出向いて来たのだ。


「しかし、勝利が見えて着て浮かれて油断した所を付くつもりなのかも知れないが、一方的にあれだけの数がやられるのを黙って見ているとは、司令官としては余り有能とは言えないな」


 いや、魔物の指揮官が有能でも困るんだけどね。

 ただ数が多いだけでなく、軍隊としての統制が取れている敵とか脅威以外のなにものでもないから。

 

 出来れば、そんな指揮官級の魔物とかいないでくれた方が助かるんだけど、とか無駄な願望を思いながら転移の兆候が見られた場所に急行する。

 問題は何が出て来るか?

 こういう展開だと、まず先に出てきたヤマタノオロチよりも強力な魔物が出てくるものだけど、これまでの戦況を見る限り、指揮官としての能力は明らかにヤマタノオロチに劣っている。

 まあ、何が出てきたとしても、即座に瞬殺しないと位置的に魔王軍が壊滅するのが確定なのは変わらないんだけどね。

 魔域からレジェンドクラスのヒュドラが転移してくるまで後1秒もない。

 だけど、こちらは既に転移地点に到達しているし、迎撃の準備も終わっている。一気に何匹も現れもしない限りは一瞬でカタをつけられる。

 意識を集中して、転移して現れた瞬間を狙い撃ち瞬殺する。

 集中力を極限まで引き上げた結果、一瞬の時間がゆっくりと流れていく中で、魔域からの転移が始まる。

 現れたのはヤマタノオロチ。2匹いのたか。

 考えるよりも早くすでに展開していた魔法を放ち瞬殺する。

 断末魔の咆哮を上げることすらなく崩れ落ちる巨体を回収しようと動こうとした瞬間、ヤマタノオロチの巨体の奥から更なる魔物が姿を現す。

 まさかこれは囮とは・・・・・・。

 完全に相手の掌の上で踊らされた格好だ。

 現れたのはヤマタノオロチ・スサノオ。全身漆黒の10キロを超える巨大などという次元を超えたバケモノだ。

 だから、その巨体がどうやったら3分の1の大きさもないヤマタノオロチの陰に隠れるとか突っ込むだけ無駄だ。

 存在としては知っている。

 同じXYランクの魔物でも、こいつはケタ違いだ。その力はジエンドクラスに限りなく近い。少なくても、周りに人がいるような状況下で戦えるような相手じゃない。


「即座に転移撤退しろ」


 ここに残るなら死が待つだけだ。

 その程度の事は言われなくても判っていると、魔王たちは俺に言われるまでもなく転移してこの場を離れていく。

 させんとばかりに動こうとするヤマタノオロチ・スサノオを牽制する。

 だが、そんな俺に対して周囲のヒュドラが一斉射を仕掛けてくる。

 その程度の攻撃ではビクともしないが、邪魔である事に変わりはない。僅かでも気を取られてしまえば、その隙を取られて確実に殺される。相手は、極限の戦いを強いる強敵。

 或いは、全力を出しても倒せないかも知れない。

 レジェンドクラスに至る時の試練。あの最後の戦い、まさに生と死を賭けた極限の戦いが思い出される。

 あの時、俺が生き残れたのは間違いなく奇跡でしかない。

 そして、おそらく今回は、あの時よりも更に熾烈な戦いを余儀なくされる。

 全くカンベンして欲しい。そんな過酷な戦いを用意してもらわなくても結構だよ。俺はバトルジャンキーじゃないんだから。

 軽口を言っている場合じゃないしそんな余裕もない。だけども、これは俺の偽らざる本音だ。確かに食べ物は至福な美味しさだし。可愛い女の子たちが俺に好意を寄せてくれるし、強力な力を持ってやりたい放題していたりするし、異世界転生を気ままに楽しんでいると言われても反論のしようがないんだけど、この命懸けの魔物との死闘はどうにかならないのかね。

 好き勝手生きれる代わりに、何時死んでもおかしくないのもどうかと思うよ。

 まあ、それも俺が選んだ道だけどね。

 そんな訳で、この戦いも勝たせてもらう。誰のためでもない。俺のために。


 そう自分自身に言い聞かせて、俺は極限の戦いに臨んだ。



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