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 さて、あれから2週間たって、今日はティリアの誕生日当日。

 この2週間、なんと奇跡的に何事もなく平穏に過ごすことができた。

 おかげで、穏やかな気持ちでティリアの誕生日を心から祝うことができる。

 そして、ベルゼリア城で開催されるティリアの誕生日パーティーには文字通り世界中から人が集まっている。

 ヒューマンの国の王族だけでなく、当然のように各種族の王族が駆けつけている。

 うん。確かにこれは盛大にやらないとティリアが恥ずかしい思いをしていたね。

 その中に、このパーティーが終わった後に行く予定の、魔人の国ゲヘナの魔王。サタン・クレス・ゲヘナの姿もあるので声をかけておく事にする。


「久しぶりですね魔王サタン殿」

「おお、アベル殿か久しいな」


 それにしても、魔王サタンていうのもそのままというかスゴイ名だよな。まあ、この世界には紙に反逆した堕天使にして悪魔王の伝説なんてないけど。


「実はこの後はゲヘナに向かう予定ですので、よかったらご一緒しませんか?」

「ほう。ではお言葉に甘えようかな」


 こちらとしても娘さんを預かっているからね。相応の対応を取らないといけない。


「それで、娘とはどうですかな?」

「残念ながらまだ、そういった関係にはありませんよ。ルシリスは今のところまだ恋愛とかに興味はないみたいですし、ここのところ怒涛の展開が続いて、俺の方も忙しくてそんな余裕もなかったですし」


 実際。忙しかったのは事実だ。だから、何人かの誕生日をスルーしてしまったのも仕方がない事だったんだ。

 そんな風に言い訳してみるけど、スルーされた方には通用しないよね・・・・・・。

 これは、確実に何か償いをしないとダメだよね。いったい何が良いか想像も付かないんだけど。しかも、ここで選択を間違えると更に最奥な事になりそうな気がするし。


「それは残念。我が娘ながら、未だに色恋に関心すらないとわ」

「彼女たちの場合、立場的に仕方がない気もしますが」

「それは勿論わかっているが、魅力的な男性が目の前にいて意識すらしないとなるとな。親としても心配になってしまう」


 果てして俺が異性として魅力的かは、ハナハダ疑問だけどね。


「まあ、今は世界の命運をかけた戦いに挑もうとしている時。あの子としても、色恋に現を抜かしている場合ではないと思っているのかも知れませんが」

「今からそんなに気を張っていたら、身が持たないと思いますけどね」


 実際にカグヤの封印が破られるだろう時まで、まだ100年以上ある。実質問題としてまだ準備期間中の今から、そんなに気を張っていたんじゃ持たない。


「確かにな。まあ、そのあたりの事はアベル殿にお任せしよう」


 完全に俺とルシリスの距離を縮めさせたいのがまる分かりだけど、別に文句を言うようなことでもない。

 魔王サタンはよろしくななどと言うと、ヒューマンの各国代表たちと話をするために離れていく。

 実際。これは各種族との関係改善、国交正常化に向けての良い機会だ。

 この機会にいろいろと取り決めなども話し合って欲しいものだ。


「おおこれはアベル殿。お久しぶりです」


 なんて考えていると、ライオルが声をかけてきた。

 こいつももうレジェンドクラスの一角をなすんだから、こういう席にいて当然なんだけども、まだ何となく違和感があるんだよな。

 まあ、それは当の本人も同じみたいだけど。


「まだ久しぶりって程じゃないだろ。それにしても、少し見ない内にずいぶん強くなったみたいだな」

「これもアベル殿のおかげです」


 いや、俺は関係ないだろ。

 それにしても、本当に見違えるように強くなっている。次に手合わせした時には、俺も手加減する余裕はなくなっていそうだ。


「それにしても、キミも来るとは思わなかったよ」

「私もレジェンドクラスに名をつなれる身なれば、公式の場にもしっかり損化しなければなりますまい。もっとも、今までそんな機会はなかったので、緊張していますが」


 成程ね。まあ、こいつもこれからはしっかり獣人の代表として活動するようになるだろう。

 それについては、特に心配ないだろう。


「そういえば、先ほどファファル殿にお会いしました。あの方もアベル殿の指導を受けてレジェンドクラスに至れたと喜んでおりました」


 ファファルの場合は、脳筋タイプじゃなければ、もっと早くレジェンドクラスになれてたハズなんだけどね。ホントにこのライオルといい、どうして脳筋が湧くかね?


「しかしあの方は凄いですな。私も強くなったつもりでしたが、先にレジェンドクラスに至っておきながら、ファファル殿に及びませぬからな。もっと精進しなければなりませぬ」


 まあね。ファファルの場合、俺もガチでやらないと負けるかもしれないし。脳筋が治ったファファルはマジで反則じみた強さだよ。

 て言うか、実は俺もさっき会ったんだけど、明らかに前よりも強くなってたし・・・・・・。 

 これ冗談じゃなくて、次に会った時には俺より強くなっているの確定だろ。


「まあアイツは、次に会う時には俺より強くなってそうだし」

「それ程ですか」

「そう驚くほどの事じゃないだろ。オマエだって、努力次第で俺より強くなれるだろうぜ」


 脳筋の成長速度を考えるとありえなくもない。


「まあ、俺もそう簡単に追い抜かせたりはしないけどな。オマエにも、当然ファファルにも」

「望むところであります。何時か、アベル殿を超える力を手に入れてみせるであります」

「それは楽しみだ」


 何気にこのバカ、気楽に話せて楽しいかも知れない。

 それはさて置き、ファファルの方は100年後までにほぼ確実にジエンドクラスに至っているだろうけど、このバカはどうかね?

 何気に、阿多の前の様に至ってそうなんだよな・・・・・・。

 俺はどうかね?

 まあ、レーゼ少年とか転生者の大半が、ジエンドクラスに至ってるだろうから、俺もその中にいる可能性もあるんだよな。

 何気に、俺が最終的に一番弱くなってる可能性も否定できないけど・・・・・・。

 それならそれで構わないけどね。そうなれば、カグヤの封印が破られた時のための対策、或いは破られた後の戦いの責任者みたいな立場にならずに済むし。

 なにか、何時の間にか責任やらなんやらが俺に集まって来ていて勘弁して欲しいんだよホント。

 それらから解放されるなら、むしろ万々歳だ。


 なんてくだらない事考えてないで、そろそろティリアの元に戻るか。

 このパーティーの主役は当然ティリアだけども。だからこそ、その隣には俺がワンセットでついていないといけない。

 ずっと一緒に居なければいけない訳じゃないけど、余り長時間離れているのも問題だ。

 そんな訳でさっさとティリアの元に行くけど、正直言って、こういう駆け引きみたいなのは面倒だ。

 前世では一般庶民の大学生に過ぎなかったから、そう言う駆け引きとか配慮とかとは無縁だったんだけど、今はそうはいかない。

 と言うか、全ての種族のお姫様と事実上婚約関係にあるんだから、政治的駆け引きとかと無縁でいられるハズがない。

 まあ、あくまで俺に求められるのは力と、遺跡の調査なので、実際に政治の舞台に引きずり込まれる事はないんだけどね。それでも、無縁ではいられなくて、俺自身の行動とか発言とかにも気を使ったりしないといけないんだよ。

 まあ、可愛いティアラの横にいれば良いだけだから、今回は不満もないけどね。

 そのティアラはすぐに見つかる。

 クリスタルスパイダーシルク製のドレスに身を包んだ姿は本当に可憐だ。


「1人にしてゴメン」

「いえアベル様。流石にパーティーの間中ずっと一緒に居るのは無理がありますから」


 まあそうなんだけどね。トイレとかに行ったりとかもあるし。

 と言う社交の場でもあるパーティーはほぼ一日がかりで行われるから、その間ずっと一緒てのは物理的にムリだよ。

 しかし、冷静に考えと、何だってこんなパーティーなんかしてるんだろうな?

 確か、去年のティリアの誕生パーティーの時に、来年以降はこんな派手な祝いの席を用意したりとかはしないとかそんな話だった気がするんだが?


「それにしても、こんな社交の道具としての誕生日では祝いにならない気がするがな」

「それは王族として仕方のない事です。アベル様にも、去年に引き続きご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「別にティリアが謝る事じゃないさ」


 謝るべきはベルゼリア王だろう。イヤ、だから父に代わって謝っているのか?


「本当は父も、去年に引き続きアベル様にご迷惑をおかけするのは出来ればしたくなかったのですが、他の種族との国交の回復や、ヒューマンの国家間でのパワーバランスの調整のために、どうしてもこの場を設けざるおえなかったようでして」

「ああ、そっちが本命な訳ね。言ってくれれば良かったのに」


 確かに、現状の状況を打開するための場としては最適だろう。


「現状のヒューマンの国々のパワーバランスは、酷く危うい均等の上に成り立っています。長い間いくつもの国に分裂し続けて来たヒューマンですが、一部にはこれを機にひとつに纏まるべきだと主張する者もいます」

「それは難しいと言うより、無理だと思うけど」

「はい。ですが一部には、ひとつに纏まったヒューマンの国で主導兼を握ろうと画策する者も居ます」


 ああ、やっぱりそう言う駆け引きとか、政治闘争とかも既に始まっているのね。

 知らなかったのかよって? 

 知らないよ。全くもってカケラも興味ないし。


「今は水面下のやり取りに過ぎませんが、このまま放置しておけば、下手をすればヒューマン全体を巻き込む、大きな戦火の火種にすらなりかねません」

「その可能性もあったか」

「ですので、父上は今回、この場を持ってヒューマンのこれからについて、ある程度結論を出したい様なのです」

「つまり、ひとつの国に纏まるか、それとも今のままの枠組みで行くかを決めると」


 まず、ひとつの国に纏まるのはムリだと思うけどね。

 それよりも、俺としては前世の国連の様な機関をつくった方が建設的だと思う。

 と言うか、なんでヒューマンの国々の代表が集まった国連の様な機関が存在しないのかの方が謎なんだけど。

 今までの転生者で提案した奴とかいないのか?

 まあいいや、とりあえず、今はこれからのヒューマンがどうなっていくかを見守るとしよう。

 それを決める為の場所として、この誕生パーティーが開かれているのだから。


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