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「いったい何が、ここまでの狂気に彼らを突き動かしたんだ」


 残り3つの遺跡に隠されていたのも、人の狂気そのものと言える悍ましいものだた。

 存在した事そのものを抹消するしかない。

 俺自身、遺跡の中で造られていたモノ、在ったモノについて口にするつもりはない。完全にその存在した事実そのものを消し去るつもりだ。

 それにしても、幸運だったのは全ての遺跡がまだその狂気を完成させていなかった事だ。

 或いは、それすらも仕組まれた事なのかも知れないが、それを知る術は少なくても今はない。


「問題は、同様の遺跡が後幾つ残されているか、そして、全てを消し去るまでにその内のひとつでもが動くだしてしまわないかだな」


「そしてこれが、転生者ゆえの狂気なのか・・・・・・?」


 おそらくは、彼らがここまでの狂気に染まったのは、神龍や天獣が言う太極に囚われし者の言う何かが関係しているのだろう。

 10万年周期で起こる何か、この世界の根源に係わるだろう何かが、彼らを狂わせたんだろう。


「できれば係わりたくないんだけど、そうも行かないんだろうな」


 俺たちもその何かに向き合わなければならないのは確定。

 或いはその時、俺も彼等と同じ様に狂気に染まってしまうかも知れない。


「どうしたんですかアベルさん。難しい顔をしていますけど」

「気にしなくて良い。もう終わった事だからな」

「遺跡の事ですか・・・・・・」

「バレバレか」


 まあ遺跡のこと以外ないよな。

 1人で言って、そのあと誰かを連れて行く事もなく何も喋りすらしないんだから。遺跡で相当な何かがあったとしか思わないよな。


「だけど、気にしなくていいよアレッサ。遺跡については俺が独断で存在ごと抹消した。それだけの事だから」


 そう。ただそれだけの事だ。

 その存在が気に入らないから消し去った。ある意味ではそれだけの事。

 それに、狂気に染まった転生者たちの残した物は、確かに許されない物であり、この世界を亡ぼしかねない物であったけれども、同時に、彼ら自身はこの世界を亡ぼせるだけの力を持ちながら、決して世界を亡ぼそうとはしていない。

 それは、今こうしてこの世界が存続している事でも明らかだ。かつての転生者たちは、絶望と怒りの中でどれだけ狂気に染まったとしても、それでもなお、この世界を守り通そうとした。

 そこに彼らの強い意志を感じる。

 この世界に利用されてきた転生者の数は、おそらく億の単位を優に超えているだろう。それだけの数の人々が必死に守ろうとし続けて来たのだ。

 勿論、間違いなく、中にはこの世界そのものを亡ぼしてしまいたいと言う程の深い憎しみに囚われた者もいただろう。

 それでも、過去の転生者たちはこの世界を護り続けて来た。


「アベルさんが遺跡の事を葬り去るつもりなのは判ります。ですから何も聞きませんが、お願いですから無理をしないでください」

「ムリはしてないさ。遺跡の中にあったのは、この世界を護ろうとする意志が歪んでしまった物。ただそれだけの事だからね」


 そうただそれだけの事。だから何も思い悩む必要なんてない。

 

「とりあえず、遺跡の調査も終わったし、ゲヘナに行こうか」

「魔人の国。ルシリスさんの国ですね」


 そのあとには鬼人の国とかまだまだいかないといけない国が残っている。

 その中でも、個人的にやっぱり鬼人の国が楽しみなんだけどね。


「そんな訳でさっさとゲヘナに行っちゃおうかとか思うんだけど?」

「すいません。その前に一度城に上がってもらえますか」


 このまますぐにでも行こうかと思ったけど、ティリアに止められてしまう。


「そう言えば、ベルゼリアに戻って来ていながら、一度も城に上がってないな」

「はい。アベル様相手にメンツなどと言うつもりはありませんけど、それでも一度城に上がっていただいて、お父様にお会いしていただかないと」


 それもそうだ。と言うかこの国のお姫様を預かっているのだから、帰ってきたら顔を出すぐらい礼儀だよな。


「ゴメン。忘れてた。それじゃ行こうか」

「はい」

 

 そんな訳で早速城に上がる事にする。

 普通、王に謁見するには何日も前に事前に連絡を入れて、許可を得なければいけないとかなんとかは俺には関係ない。

 そのまま城に転移して、この時間だと執務室で仕事中の王の元に直行する。

 迷惑この上ない突撃だが、まあそれこそ今更だ。

 そもそも、ゲームみたいに事前に謁見の許可を得ていた訳でも無いハズなのに、いきなり行ったのに王が玉座に座って此方を出迎えるなんて事があるハズがない。

 必ず玉座に座って待ち受ける王。アレもゲームの謎のひとつだ。仕事しろよ王。

 そんな下らない事を考えながら、ベルゼリア王に突撃をかける。


「お久しぶりです。お父様」

「おおティリアか、其方こそ元気そうで何より」


 流石と言うか突然の来襲にも動じない。

 それでこそ王である。まあ、ティリアから事前に連絡が入っていたんだろうけど。


「挨拶に来るのが遅れて申し訳ない」

「構わぬよ。アベル殿は忙しいのだからな。むしろ、こちらからあいさつに出向くべきであったのだ」


 まあ、立場的には王の方からこちらに出向いて来てもおかしくないんだよな俺。


「とりあえず。見付かった遺跡については片が付いた。全て俺の独断で処理させてもらった」

「成程。それ程危険な遺跡であったと言う事か。いや、詳細は聞かない。そのまま闇の葬ってくれれば良い」


 俺としても、この件については一切口を挟ませるつもりはないので助かる。


「それで、こちらの遺跡の剣が終わったと言う事は、また大陸を離れるのかね?」

「次は魔人の国ゲヘナに行く予定ですよ。お父様」

「ゲヘナか。それは良いが、出発はもう少し待ってくれんかね」

「構わないが、何故?」


 王としても、まずは俺が全ての種族の国を周るのを優先するべきなのは理解しているハズだ。それを少し待ってくれと言うのだから相応の理由があるハズだが?


「何故とは冷たいの。それともよもや忘れたのか? もうすぐティリアの誕生日であろう」

「あっ成程」


 もうそんな時期だったか。


「せっかく戻って来たのだ。城で盛大に祝いたい」


 そうか、もうティリアが仲間になって1年も経つんだな。

 なんと言うか、余りにも激動の1年で、もうそんなに経つという実感が湧かない。

 と言うか、今更だけど何人かの誕生日をスルーしてしまっている気がする・・・・・・。


「ティリア自身もSクラスへと至り、しかもレジェンドクラスであるアベル殿の婚約者なのだ。我が国としても盛大に祝いたい」

「私はそんな盛大なパーティーなど必要ないと思うのですが」

「何を言う。これは我が国のためだけでなく、其方のためにも必要な事だぞ」

「私のためですか?」

「うむ。レジェンドクラスの超越者であり、いずれはジエンドクラスにまで至るであろうアベル殿の婚約者である其方の誕生日だ。相手に相応しいと思わせるだけの盛大なパーティーで祝わなければね其方が侮られる事になる」


 ああ成程ね。確かに、メンドクサイ事にそう言うのはありそうだよな。

 と言うか、現状既に各種族の姫が俺の婚約者に内定してるのと同じだからな。ティリアもヒューマンの姫君として婚約者になっている以上は、相応の対応をしないといけない訳だ。


「俺としてはそう言うのどうでも良いんだけどね」

「アベル殿にとってはどうでも良い事だろうが、我が国としてはそうも行かんのだよ。それに、ティリアに恥をかかす訳にもいかんのでな」


 ああ、流石にそう言われると断れないな。

 しかし、そうなると今回も実質俺が仕切るのか?


「今回はアベル殿の手を煩わすようなマネはせぬ。ただ、食材を多少融通してくれるとありがたい」


 パーティーに出す御馳走をつくり食材ね。

 俺のアイテムボックスの中には、遺跡から見付けたジエンドクラスの食材を合わせて、世界最高の食材が山のように入っているからな。それを正規の値段より多少安く融通してくれって事だな。

 まあ、その辺は仕方がないよな。どのくらいの量を必要とするかも判らないし、正規の値段で買い取ったりしたら国庫に大打撃を与えてしまいかねない。

 実際、食材の買取根だけで数百億リーゼは行くだろうし・・・・・・。


「婚約者の誕生祝ですからね。食材くらい此方から出しますよ」


 ただし、これらの食材。生半可な料理人じゃあ扱い切れないシロモノだけどね。

 まあ、宮廷料理人ともなれば超一流だろう。


「それはすまないな。では、誕生日は2週間後だ。それまでゆるりとして欲しい」


 2週間か、流石に今からゲヘナに行ってから帰って来るのは、出来るとかそう言う問題じゃなくて失礼だよな。

 そうするとホントにしばらくはのんびり過ごすかな。

 まあ、こういう時に限って、何かトンデモナイ事が起きたりするのが今までの経験上、一番可能性として高いんだけど・・・・・・。

 出来れば何も起きずに、平和にのんびりと過ごしたいものだ。



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