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「そう言えばファファル、竜人の転生者候補はいないのか?」
神龍に会い、この国の遺跡探索も終わったので、そろそろ次の国に行っても良い頃なんだけども、その前にまずは確かめておくかな。
流石に天人の国みたいにイキナリ11人も転生者が出てきたりはしないと思うけどね。
「そちらは父上が調べていらっしゃるようですが、何人かそれらしい人物はいる者のまだ確定してはいないそうです」
「成程、少なくても竜人の転生者を預かるのはまだ先か」
どうやらいずれは俺の元に転生者が送られて来るのは既に確定してるみたいだな。
「そうなりますな。ところで、アベル殿は次は何処に行かれるつもりですか?」
「それなんだけど、まずは一度ベルゼリアに戻る事になると思う」
竜人の国ドラグレーンのすぐ隣にある、魔人の国ゲヘナに行っても良いんだけども、その前にまず一度ベルゼリアに戻るべきだろう。
なんで戻らないといけないかと言えば、色々と調べ上げていたのが漸く情報が上がって来たらしいから。
どうにも、ヒューマンの大陸には現状確認できているだけで4つの10万年以上前の遺跡が存在しているらしい。
それが何時の遺跡なのか、20万年前なのか、30万年前なのか、はたまた40万年以上前なのか、或いは100万年以上前の者なのかも判らないが、とりあえず4つの遺跡がある事が確認できたそうだ。
「はるか以前の遺跡ですか」
「10万年前の遺跡と違って、俺たちを助ける為に残されたと言い切れないのが始末に負えないんだよね」
本当に、何のために残されたのか判らない遺跡だったりするからな。
出来れば、魔物の世界を破壊するための兵器を造り出す為の施設とかみたいな、とんでもない遺跡じゃないと良いんだけどね。
それも望み薄な気がするよ。
とりあえず、不発弾のような危険物に等しい4つの遺跡を早急に調べる必要があるのは確かだ。
「できれば面倒な物が出てこないでくれると嬉しいんだけど」
「それは難しいのでは、我が国の遺跡から見つかったモノの数々も、扱いを誤ればどうなってしまうか判らぬ物ばかりでしたし」
いずれは必要になるのだし、ファファルには遺跡で見つかったモノについてある程度は知ってもらっているんだけど、確かに、どれもこれも勘弁してくれって危険物ばかりだったよ。
何故にもっと平和的な物が残されていないかね?
10万年前の転生者御用達の温泉施設とかが残っているとかそんな遺跡の方が助かるんだけど。
というか、カグヤの封印が破られた時のための戦力なら、これまでに回った遺跡に残されていた兵器でもう十分過ぎる気がするんだけどね。
多分、10万年前の転生者に聞かれたら鼻で笑われるんだろうけど・・・・・・。
今の俺たちから見たら過剰過ぎる戦力も、実際に地獄の戦いを潜り抜けた彼らからしたら、心許ない贈り物に過ぎないのだろう。
だけどだ。正直言って使いこなせるのか不安で仕方がない数の、強力過ぎる兵器の山だぞ。
ぶっちゃけ、遺跡に眠っている兵器を全部外に出したら、現在使っている、既存の兵器を全部破棄して遺跡の兵器に取り換えても余りあるだろう。
つまりはそれだけトンデモナイ量が残されているって訳なんだけど・・・・・・。
「いったいどれだけの数の兵器が残されているのですか? 我が国の遺跡に眠っていた兵器だけでも相当な量になる」
そうだな。ドラグレーンの遺跡で見つかった装機竜人だけで3000機、空中戦艦だけで500隻を超えているからな。それに超火力を内包し、装機竜の亜種の航空戦力も5000機以上配備された戦闘要塞も2基あったし。ブラックホール爆雷なんて決戦兵器まで出てきた。後、なにか軌道エレベーターまであった。軌道エレベーターと言う名の兵器だけど。地上では生み出したエネルギーを軌道エレベーターを通して伝導し、宇宙ステーションと言う名の砲口から撃ち出す超大型砲。星の全域を射線に捉え、あらゆる敵を薙ぎ払う防衛兵器だったけど、チョット待てと突っ込みたくなったぞ。
「さあ? 正直が聞きたいよ。しかも、残した方の10万年前の転生者は、これでも全然足りないと思ってるみたいだし」
「カグヤの封印が破られた後の戦い、いったいどのようなモノになるのか想像も付きませんね」
「俺もだよ」
と言うか、今の現状だと一方的に蹂躙される未来しかない気がする。
遺跡にある兵器群を全て引っ張り出して対抗する為に布陣を事前に引いていてもなお、一方的に蹂躙されてそれで終わりになってしまいそうだ。
「まあ、とりあえずは今の内に出来る事をしておくしかない訳だし、その為にも遺跡の調査は取り急ぎしないといけないんだけど、なんで俺がやる事になるんだろうな?」
「何故って、遺跡にはアベル殿でなければ入れませんので当然かと」
「イヤイヤ。転生者は俺以外にもいるから、うちのメンバーだけで、俺以外にも転生者は10人以上いる訳だし、別に誰が行っても良いと思うんだよな」
そう言えば何故に俺が遺跡調査を一任されている形になっているんだ?
ザッシュはバカだから止めておいた方が良いかも知れないけど、サナとかレーゼ少年とかでも別に構わないんだよな。
というか、みんなで分担して調査していけば時間もかからないし、俺の負担も減って一石二鳥だ。
うん。なぜ今まで気が付かなかったかな。
「うんそうだな。これからは遺跡の調査はみんなに手伝ってもらおう。そうすればもっと効率よく出来るし」
「いや、絶対にムリだと思いますよ」
何を言うか。これ以上、俺にばっかり厄介事が押し付けられるのはゴメンだ。此処は是非とも、みんなで不幸になろうじゃないか。
「何を言うかなキミは、まあいいや、それじゃあ俺たちは明日にはベルゼリアに向かうつもりだから」
「随分と急ですが仕方ありませんな。また会える日を楽しみにしています」
「うん。キミなら次に会う時には、俺を超えて居そうだな」
冗談でもなんでもなく、ファファルなら次に会った時には俺より確実に強くなっていそうだ。
ある意味で次に会うのが本当に楽しみだ。
そんな別れを告げて、俺たちはさっさとベルゼリアに戻る事にした。
「そんな訳で、今回戻って来たのは数十万年前の遺跡を調べる為なんだけど、四か所あるからザッシュとかで回ってみない?」
「いきなり何を言い出すんですか?」
「いや、遺跡には転生者なら入れるんだからさ、調査に行くのが俺の必要もないだろってね。なんならレーゼ少年はどうだい? 未知の遺跡に何が眠るのか調べるの、おもしろそうだと思わないか?」
俺が転生者に遺跡の調査をしてみないかと気軽に行ってみた反応は、ものの見事なドン引き。
何故にそうなるかね?
ロマンあふれる古代の遺跡探索だよ?
「冗談でしょう? 冗談ですよね?」
「いや冗談じゃないよ。今みたいに俺1人で調べて回ったんじゃ時間の無駄だからね。効率的に考えてもみんなで調査にまわった方が良い」
というか今調査しているのは既に発掘済みの遺跡ばかりで、それが終わったら今度は発掘されていない遺跡の調査をしないといけない。
この調子じゃあ、全部の遺跡を周りきるの名どれくらいかかるか判ったものじゃない。最低でも数年。下手したら10年以上かかってしまうかも知れない。
「いや確かに、アベルさん1人が確認していっている今のやり方じゃ時間がかかるかも知れないけど、だからと言ってボクたちじゃあ絶対にムリですよ」
「なんで? 単に遺跡に何が眠っているか確認するだけだよ?」
「だから無理だって言っているんです。誰か助けてください。こんなのムチャクチャです」
何が無茶なんだか、極めて合理的な判断だろうが。
「ねえアベル。どうしていきなりそんな話を?」
「別にイキナリじゃないさ。今までは機会がなかっただけで、今のままじゃ時間がかかり過ぎるってずっと思っていたんだ」
「ああうん。確かに時間をかけ過ぎるのも問題だと思うけど」
「今までは俺が1人で遺跡の調査をして、ヤバい物があったら事前に回収して封印したりしていたけど、これからもそれを続けていたんじゃ時間がかかり過ぎるからね。そろそろ遺跡に何が封印されてても、みんな驚かなくなって来たし、なら事前の調査や危険物の封印なんかもみんなで分担した方が効率的だ炉」
「確かに効率的ではあるけど、前提条件として無理があるわよ」
「何が?」
いったいなにがムリだというんだミランダ?
「何がって、みんなも遺跡に慣れたといっても、それはキミが大丈夫だと判断した遺跡だからよ。実際、キミが危険だと判断した遺跡には私たちは立ち寄ってないでしょ」
そう言えば、既に数百もの遺跡を調査してきた訳だけど、その内の50ほどの遺跡は危険なのでみんなは立ち入っていない。
中には、実際にカグヤの封印が破られるその時まで、その存在を明らかにするのは危険すぎるアレやコレが眠っている。
それを見た時の俺の感想は、必要だと思ったんだろうけど、なんてものを残してくれたんだの一言に尽きる。
「それはそうだけど、その危険物の判断もそろそろ俺1人がしなくても良いと思うんだ」
「私たちの基準じゃあ、ブラックホール爆雷の時点でアウト。あれ以上の危険物なんて想像もできないし、したくもないんだけど」
それは俺も同じだよ。実際、居ればこれはヤバいってみんなに見せなかったものの中には、ブラックホール爆雷なんて目じゃない超絶危険な兵器とかがいくらでもあったし、むしろ、兵器に分類されない物の方がはるかに危険で厄介なんだけどね・・・・・・。
「ぶっちゃけて言っちゃうと、そんな危険な物が存在しているなんて事実をキミ以外の誰かが背負うなんて無理なのよ。みんなの平穏の為に、残念だけど諦めて」
チョット待って欲しい。いくらなんでもソレはないんじゃないかな?




