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すみません。風邪で遅れました。

花粉症と風邪の組み合わせは最悪です。

「おめでとう。思っていたよりもさらにアッサリと正式にレジェンドクラスになったな」

「これもすべてアベル殿のおかげです。本当にありがとうございました」


 ファファルがレジェンドクラスに至ったことを祝うハーティー。席上には国内の貴族はもちろん、国外から王族も多く詰めかけている。

 当然といえば当然だが、この男、次期竜王なのはもう確定だし。

 それと、当たり前の様にライオルまで含む、レジェンドクラスが集結していたりする。


「それにしても運が悪かったわよね。先にアベルちゃんと会って居れば、ライオルに先を越される事もなかったのに」

「私はレジェンドクラスに至れと事を誇りに思っています。ライオル殿より遅れた事を恥じるつもりもありません」

「流石でござるなファファル殿。その心意気に感服いたします。それに既に我よりも強くなっていらっしゃるとは」


 ミミールが茶々を入れるとファファルが平然と流し、ライオルのバカはその様子に感心しっぱっなしだ。


「それはそうと、約束通り祝いの一品を用意したから、心行くまで楽しんでくれ」

「ありがとうございますアベル殿」


 用意したのはスイーツだ。

 この男の外見には全く似合わないが、世界樹の果実とジエンドクラスの果物を使った極上スイーツ。


「これは、なんと色鮮やかな」

「それよりも味の方が大事です。兄様、これを食べたら驚きますよ」


 ついでと言っては何だが、これに最適な酒も用意してある。甘い物と酒? と思うかもしれないが、組み合わせ次第ではこれ以上ない至福のパートナーとなるのだる

 

 どうでも良いけど、世界樹の実の所有権はユリィにあるのでこれを作るために必要量を分けてもらうのにかなり苦労した。

 ジエンドクラスの果実なんかは彼女もシッカリ確保していたりするので、対価となるものが難しいんだよ。


「これはラッキー。これだけでも参加したかいがあるってものだよ」

「うむ。実に楽しみだな」


 何か好き勝て言ってる連中がいるけど、それはファファルのだぞ?

 まあ、そんな理屈は通用しないのもわかっているけど。


「至福。これほどの甘露が存在しえたとは」

「本当に幸せ」


 なんて騒いでいる連中を放っておいて、ファファルとシャクティはすでに用意したスイーツを堪能している。

 うん。見事なまでのマイペースぷり。もっとも相手もさるもの、気にも留めずに許可も得ないでスイーツを蹂躙して行くけど。

 あっと言う間にスイーツは跡形もなく消えてしまう。300人分は用意したんだけどね。

 俺の分?

 残っている訳ないだろう。

 しかし、その程度の事は想定の範囲内。つくる時に自分の分も別に用意しておいてあるし。


「満足してもらえたみたいだな」

「勿論です。本当にありがとうございますアベル殿」

「それは何より。ところで、祝いの席で聞くのも無粋だとは思うが、神獣への謁見の許可はどうなっている?」

「ああ、その事なら問題ありません。アベル殿さえよろしければ、何時でも謁見が叶います」


 おや?

 まだまだ時間がかかるかと思っていたんだが?


「私がレジェンドクラスに至りましたからな。我ら竜人族は、新たなレジェンドクラスが生まれたなら、その者が神龍様にご報告に向かう習わしになっているのです。ですので、アベル様には、私の報告の儀に付き合っていただこうかと」


 成程そう言う事ね。

 まあ、その方が何かとメンドウもなさそうだし、コッチとしても都合が良いかな。


「判った。俺は何時でも良いからソッチが決めてくれ」

「では1週間後に」


 1週間後か、流石にすぐにって訳にもいかないんだな。


「1週間後か、なにか用意した方が良いかな?」

「そうですね。新たにレジェンドクラスに至った者は、試練で打ち倒した魔物の中でも最上位の物を供えると聞きますが」

「成程ね。それじゃあ俺は物が被らないように酒にするかね」


 龍が気に入るだろう酒か・・・・・・。

 なかなか難しいかも知れないな。

 ただ、龍に酒は割と定番だからな。この世界でも、竜神はドワーフや鬼人と並ぶ酒好き種族だし。

 しかし龍に供える酒となると相当な量が必要になるよな。50メートルプール一杯分くらいじゃ全然足りないかも。

 とりあえずは清酒に、焼酎に、ワインに、ブランデーに、ウイスキー、それぞれプール一杯分ぐらいずつ揃えてみるかね。

 最高品質のものを揃えるとなると、シャレにならない金額になりそうだな。

 普通に数百億リーゼ以上掛かりそうだ。

 遺跡ので確保した酒も出しておくかな。


 そんな訳で、1週間かけて神龍に献上する酒を揃えた。

 本気で想像以上の金がかかったのは言うまでもない。

 最高級の酒をそれぞれ樽買いしたので、本気で屋敷がたつどころじゃない出費になった。


「気に入ってもらえると良いんだけどね」


 これだけの費用をかけて用意したのに、お気に召さなかったんじゃあ話にならない。


「その辺りは大丈夫だと思います。新たな龍王が就任した時の挨拶には、お酒を献上する事になっていますし」

「やっぱり神龍も酒好きなのかね?」

「我らの祖であられますから。当然かと」


 そして早速、神龍の元に向かっている訳だけども、流石に今回は全員でと言う訳にはいかない。

 結局、神龍に会いに行くのは俺とファファルだけとなった。

 向かう先は龍牙霊峰の淵にある神殿。竜人が神龍の元を訪れる為の窓口としてつくり上げた。神龍を祀る大聖殿だ。


「見事だな」

「我らの神龍様への想いが込められております故」


 荘厳な造りで、その美しさは見事としか評しようがない。


「それで、献上の品はどうすればいいんだ?」


 ファファルはレジェンドクラスの魔物を丸々一匹。俺は山の様な樽酒だ。ど面もかなりのスペースが必要になる。


「確か、此処に置けばいいハズ」

「此処って明らかにスペースが足りないが」


 10メートル程度しかない祭壇じゃあ、レジェンドクラスの魔物の巨体を収めきれないと思ったら、ファファルがアイテムボックスから取り出し途端、みるみる小さくなっていって普通に収まった。


「仕掛けがあるのか、それじゃあ、俺の方も」


 ひとつ5メートル近い巨大な酒樽を次から次へと取り出して置いて行く。


「これで良しと、後は神龍が何時来てくれるかなんだけど」

「この神殿に人が立ち寄った時は、神龍様へ謁見の時と決まっているから、すぐにいらっしゃってくれるハズですが」


 神龍へ直接連絡を取る術を持たないので、何時来るかは判らないと。

 それもこれからの事を考えると問題だな。天獣もそうだけども、出来ればホットラインを持っておきたい。

 まあ、ホットラインがあったとしても、神龍や天獣にとって守るべきは世界であって人ではない以上、力を貸してくれるかは判らないんだけどね。


「良く来たな。新たな竜人のレジェンドクラス。そして我らと同じく太極に囚われし者よ」


 なんて考えていたらアッサリと来たみたいだ。

 だけども、天獣の時もそうだったけど存在感が余りにも圧倒的過ぎる。その圧力だけで物理的に押し潰されてしまいそうだ。

 そんな圧迫感に何とか対抗しながら振り返ると、そこには全長100メートル程の黄金に輝くかのごとき龍が居た。

 だけども、この龍は黄金の龍じゃない、黄龍だ。即ち応龍。


「まずは其方の願いが叶った事を祝おう。次代の龍王よ。よくぞレジェンドクラスへと至った。しかし、今この時代においてはそれでも力が足りぬ。其方が国と民を護りたいと願うならば、更なる力を求める必要があると覚悟しておく事だ」


 神龍はファファルに更なる力を求める覚悟はあるかと問う。


「判っております。私如きに辿り着けるか判りませんが、この身の全てを賭けて国と民を守り抜くため、最後まで諦めるつもりはございません」

「ならば良い。龍の子よ。いずれ汝の想いが力となろう」


 想いが力にね。それがどんな意味なのか気になる所だけど。


「そして、異界からの来訪者よ。汝は10万年前の者たちとは違うようだな」

「そうですか?」

「うむ。10万年前の者たちは確かに、汝と比べて圧倒的に強かった。だがかわりに強さに溺れて傲慢でもあった。汝は傲慢とは無縁の様だ」


 傲慢か、俺はそんな風には感じないんだけど、神龍の場合は10万年前の転生者とも直接会って居るんだしな、実際に会った印象が傲慢と言うなら、確かにその通りだったんだろう。


「して戦いを強いられし者よ。汝は我らに何を望む」

「共にこの世界を護るために戦う事を、出来る限り、戦いにならない様に足掻いてみるつもりですが」

「それは不可能であろう。全ては仕組まれている故」

「それでもです。10万年前の転生者が残した最後の希望。俺はそれに賭けるつもりですから」

「かの者たちが残した、最後の希望か、おもしろいな」


 天獣の時には聞く余裕もなかったけど、神龍はこの世界の全てを知っているようだ。

 知った上で、何もせずにいるのだろうか?


「それがなんなのかもまだ判りませんし。俺は貴方たちが知る世界の真実も知りませんが」

「世界の真実か、確かに我らは真実と共にある。しかし、今はまだ汝らにそれを伝えるつもりはない。知りたくば自ら掴み取るがよい。かの者たち、10万年前の者たちは自らそれに辿り着いていたぞ」


 あっ、やっぱり教えてはくれないか。

 まあ期待はしてなかったけどね。


「それよりも汝、かの者たちが残した遺産を持っていよう。その中にジエンドクラスの食材があるハズだが」

「確かにいくつかの遺跡で見つけましたが」

「そうか、ならばそれらも所望しよう」


 どうやら神龍はジエンドクラスの食材が欲しいみたいだ。

 どれが良いのか判らないので、とりあえず持っているのから少しずつ全部出していく。

 ああ、俺の確保した分がまた減って行く。回収しに行かないともうすぐにでもなくなってしまいそうなんだけど。


「うむこれよコレ」

「あと、一番うまく食べる為のレシピもありますから、一様これも置いて行きますね」


 龍が料理するのかどうかは知らないけど。


「うむ。では異界より来たりし者よ。汝らが世界の理を越えられるかどうか、楽しみにしておるぞ」


 そう言い残して診療は姿を消し、無事に謁見は終わったみたいだ。


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