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「己惚れる訳ではありませんが、私は次期レジェンドクラスと呼ばれる実力を持ちます」

「確かにな。自惚れじゃなくて事実だよ」


 明らかに旅に出た当時の俺より強い。


「しかし、候補と呼ばれながらあと一歩、壁を越えられないでいます」

「まあ、Sクラスとレジェンドクラスの壁は、Sクラスになる時の比じゃないからね」

「はい、それ故にいくら努力を続けても壁を越えられず。このまま鍛錬を続けていてもレジェンドクラスには至れないのではないか、そんな不安に駆られてしまうのです」


 うん。気持ちは判る。周りの期待もあるだろうしね。


「そんな折、あの獣人の問題児、ライオルがアベル殿の手で更生され、レジェンドクラスにまで至ったと聞いたのです」

「ですから、兄様もアベルさんに?」

「その通りだ。アベル殿なら、私がぶつかる壁を乗り越えるキッカケを与えてくださるのではないかと思ってな」

「成程ね。だから弟子にと、それにしても壁ね。そう言えばキミって何歳なの?」

「私ですか。私は154歳です」


 まあ、概ね想像通りの話だな。

 多分、レジェンドクラス候補になってすでに100年以上経っているんだろう。100年かけても届かないとなると焦るのも当然だな。

 それにしても、マヒィアのボスにしか見えないファファルにお願いされると、なんだか脅迫されているような気がしてくるんだけど。


「勿論、レジェンドクラスの超越者にそう簡単になれるとは思っていません、それでも、なにかキッカケが欲しいのです」

「ああ、ライオルなんてバカがなっちゃったものだから、他のレジェンドクラス候補としては気が気じゃない訳だ」

「それは・・・・・・。はい、確かにその通りです」


 そうだよなあ。ライオルは本当にバカだったからな。その救いようのないバカがいきなりレジェンドクラスになるなんて青天の霹靂も良い所だろ。

 で、あのバカがレジェンドクラスになったのに、オマエたちはまだ慣れないのかって話になって来ると。


「成程ね。まあ話を聞くと俺の所為でもあるし、弟子入りはともかく、修行はつけさせてもらうよ」

「ありがとうございます」


 やれやれ、これはまた濃い日々が続きそうだな。



「それじゃあ早速始めるとしようか」


 ファファルの案内で応龍の離宮についた所で、早速ファファルの修行に足りかかる。


「今からですか?」

「そう今から」


 時間は貴重だからね早く始めさせてもらうよ。


「しかし、こんな所で出来るのですか?」

「結界を張るから何の問題もないよ。それに、これからやるのは場所がどこでも良いものだから」


 彼には早速、レーゼ少年たちと同じ苦しみを味わってもらう。

 ファファルの魔力の丁度倍の魔力を送り込む。


「アベル殿これは・・・・・・」

「はい集中して。魔力を制御する。制御に失敗する時を失って、最低でも半日は目覚めないよ」


 しかし、流石に次期レジェンドクラス候補相手だと、俺の方も魔力の消耗が厳しいよな。1回や2回ならなんてことはないけど、回数をこなすとなると結構キツイかも。次第に送り込む魔力も多くなる訳だし。


「この修行にはいったい何の意味があるのですか・・・・・・」

「うん。まずは今の全魔力よりも多い魔力に体を馴染ませる事。それに、魔晶石を使って全魔力を超える魔力を使った魔法を使う時なんかのために良い訓練になる。それに、制御に失敗して気を失っても、目に見えて魔力が増幅したりするんだよ」

「本当ですか?」

「本当だけど、ワザと制御に失敗しない事。ワザと失敗したりしたら相応の覚悟をしてもらうから」

「わっわかりました・・・・・・」


 力の伸び悩みに苦しんでいるのだろうファファルとしたら、手っ取り早く魔力の総量が増えるようにワザと制御に失敗したいところかも知れないけど、ここはキチンと魔力の制御を覚えてもらわないと困る。


「はい制御できているね。それじゃあ、次はその魔力を使って魔法を唱えようか」

「魔法をですか?」


 驚くのも当然だな、いくら結界を張っているからと言って、こんな所で魔法を使うには、魔力の量が大きすぎる。


「心配ないよ。これに向かってと唱えてもらうから」

「それは封印石ですか」


 封印石とは、その名のまま魔法を封じられるマジックアイテム。

 封じ込めた魔法は後で解き放って普通に使う事が出来るので、魔域の活性化などの長期戦には非常に役立つアイテムだ。

 何故か俺はあまり使ってないけど・・・・・・。

 とりあえず、ファファルには俺が送り込んだ魔力を使った魔法をこの封印石に込めてもらう。


「うん。無事に魔法に出来たけど、まだまだ制御が甘いね。あの魔力量で今の5倍の威力の魔法が使えるようにならないと」

「それはつまり、今の私はそれだけ魔力を無駄にしてしまっていると?」


 無駄とはまた違うんだけども似たようなものだ。


「魔力の制御が完全になれば、それだけ魔法に使う魔力の量も抑えられるし、威力も上がって来る。少なくても、俺なら今の魔力でキミの10倍の威力の魔法が使えるよ」

「10倍ですか・・・・・・」


 愕然とするのも当然だけど、実の所、最低でも10倍だからね。先はまだまだ果てしなく遠いんだよ。


「どうもキミは魔法の展開が苦手みたいだから、今の魔力量でもう一回やってコツを掴んでみようか」


 これは更に倍の魔力を送り込むのはまだ早いな。

 そんな訳で、さっきと同じ量の魔力をまたまた送り込む。

 うん。魔力の制御自体は問題なく出来ているんだけど、魔法を使う時に無駄が出ているっていうか、魔法の使い方が微妙に下手だな。


「うーーん。どうも君は魔法の使い方が下手なようだから。魔力の制御よりもそちらを優先した方が良いかな」

「魔法の使い方が下手ですか?」

「うん。魔力を効率よく魔法に転換できていない。シャクティの方がキミよりも、同じ魔力で強力な魔法が使えるよ」


 これは間違いなく、ファファルよりシャクティの方が魔法は上手い。

 と言うか、魔法の使い方においてはひょっとしたら俺より上手いかも知れない。


「と言う訳で、シャクティ。御兄さんの魔法の使い方のコツを教えてあげて」

「私がですか?」

「うん。だってその方がはやいし」


 どうもこの兄弟微妙に仲がよろしくない気もするけど、魔力を魔法に転換する際の効率なら、俺よりもシャクティの方が教官に向いているだろ。


「そんな訳で、まずキミはシャクティに魔法について教えてもらってね」


 そう言い残してシャクティに丸投げする事にする。

 ぶっちゃけあの魔王の相手は疲れる。一々声にまでドスが聞いてて、話をするだけで疲れるのだ。


「シャクティに丸投げはひどいんじゃない?」

「兄妹なんだし、一緒に修行してもおかしくはないだろ。まあ、今回は妹の方が教官役だけどな」

「それ、ファファルとの間にあったこと知っててじゃないよね?」


 うん? どういう事だ?


「ファファルは元々私たちの師匠でもあるのよ。一番初めに私たちに戦い方を教えてくれたのが彼なの」


 なんともまあ。ユリィの言葉に驚いてしまう。

 でもありえなくもないか。ヒューマンを除く各種族の国々は友好関係にある訳だし、彼女たちも幼い頃からの幼馴染だ。

 しかし、それぞれの親が戦い方を教えたのかと思ったらまさかのファファルだったとはな。


「師匠なんだったら何故にそんなに毛嫌いする?」


 確かにあの外見は恐ろしすぎるけどな。

 彼女たちの場合は凶悪過ぎる外見に怯えている訳じゃなさそうだし。


「元師匠だからよ。確かに彼の指導を受けて強くはなったけど、やり方が酷すぎるのよ。あの人は絶対に指導者には向いてない」

「それは同感。何度も死ぬかと思ったアベルの修行の方がまだマシだし」

「例えが概念的過ぎて、魔法の習得にも一苦労でしたし」


 成程。どうやら彼の元で修業していた当時の事が原因で毛嫌いしているのか。

 うんまあ、一流のアスリートが一流の教育者には必ずしもなれないのと一緒だな。

 レジェンドクラス候補にまで成るほどだ。要するにファファルは生まれつき天才な訳だ。そして天才だからこそ、出来ない人間の事が理解できないと・・・・・・。

 成程ね。そりゃあまあ険悪になるわな。

 俺から言わせたら彼女らも大概なんだけどね。


「それにしても、まさか魔法の展開が苦手だなんて」

「驚いたけど、確かにあの人肉弾戦主体だったからありえるかも」

「どういう事だ?」


 話を聞くと、どうやらファファルは魔力を全身に纏って、肉体を極限まで強化しての肉弾戦を主体にしていたらしい。

 極限まで圧縮した魔力による拳や刃で敵を粉砕し、混戦に持ち込み、距離を詰める事で相手の攻撃を封じる戦法を取っていたそうだ。


「遠距離攻撃も魔力をそのまま撃ち出す魔力砲を主体にしてた」


 なんともまあ、要するに魔力や闘気をそのまま使う担当スタイルだったと・・・・・・。

 それじゃあ魔法が微妙に下手なのも当然だな。

 ライオルとは全く違うが、随分突き抜けた戦い方をするものだ。


「成程ね。しかしそうなると、彼が候補のままレジェンドクラスになれずにいた理由もハッキリするな」


 いうまでもなく魔法が下手なのが最大の原因だ。

 正直言って、戦闘スタイルが偏り過ぎていて、今のままじゃあレジェンドクラスになれたとしても試練を乗り越えられない。

 レジェンドクラスの魔物と戦うには、そんな突き抜けたスタイルじゃあまるで話にならない。

 しかし、そうなると戦闘スタイルからやり直させないといけないのか・・・・・・。


「これは思ったよりも面倒かも・・・・・・」


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