表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/398

244

 目の前に居る翼持つ黄金の獅子。それは紛れもなく天獣だ。

 しかし、何故ここに居る?

 意味が判らない。完全に理解不能だ。

 こんな事になるなんて誰が予想できる。


「其方が人の身で新たにレジェンドクラスとなった者か、名を何と言う」


 完全に予想していなかった展開に固まる俺に、天獣は厳かに問い掛けてくる。

 その問いかけにようやく凍り付いていた思考が動き出す。


「アベル・ユーリア・レイベストです」

「ふむ、其方、異界より生まれ変われし者か」

「確かに私は転生者ですが、転生者をご存じなのですか?」

「うむ。其方らも我らと同じ、太極に囚われし者故な」


 太極? 囚われた? 一体どういう事だ?


「太極に囚われたとはどういう意味ですか?」

「真実を求めるか、しかし、今の其方では真実を知ったとて何も出来んよ」


 それは、確かにその通りだろう。


「真実を求めるのなら、まずはカグヤに至るがよい。あそこには、10万年前に太極に抗えし者たちが残した真実が残されていよう。仕組まれた時も近い。全てを明らかにしたいのなら、まずは新実に至るだけの力を身に付ける事だ」


 どうやら、10万年前の転生者たちはこの世界の真実を知っていたらしい。その上で抗っていたと、だけどもいったい何に抗っていたんだ?

 天獣の言う太極?

 そもそも囚われたとはどういう意味なのか・・・・・・。


「足掻いてみるがよい人間よ。そして新実に辿り着き、何を成すかは其方次第。また会う時までに其方がどこまで登り詰めているか楽しみにしているぞ」


 天獣はそう言い残すと翼を羽搏かせて飛んで行ってしまう。

 なにもかも突然すぎて止めることも出来なかった。


「今のは・・・・・・」

「天獣様がアベルに会いに来た?」


 おそらくはそうなんだろうな。

 一体何のためにワザワザ会いに来たのかは判らないけど、おそらくは彼に言う仕組まれた時、カグヤの封印が破られ、魔物が溢れ出す時に立ち向かう定を負う転生者を見に来たんだろう。 

 おそらくは、その時に共に戦うに値するかを見極めに来たんだ。

 俺が、俺たちが合格できたのかは判らない。

 それでも、少なくても彼らに興味を持って貰える事は出来たみたいだ。


「流石にこんな展開は予想してなかったけど、天獣に会う事は出来たな」

「そんなレベルで済む話・・・・・・?」

「天獣様から会いに来られるなんて・・・・・・」

「どうしよう、これってまた大騒ぎになるよね?」

「うん。前回とは比べ物にならないくらいの騒動になると思う」


 国中のSクラスに襲撃されるのよりさらに面倒な事になると? それは本気で勘弁して欲しいんだが。


「それよりええっと、どうする? このまま遺跡に行くか? それとも今日は一旦帰るか?」


 正直、このまま遺跡に向かうのもどうかと思う。

 天獣の襲来は余りにもインパクトが強過ぎたからな。現在、みんな呆然自失状態だし、ここは一旦休んで気を落ち着けた方が良いと思う。


「ココは一旦戻って、遺跡に行くのは後日にした方が良いと思います」

「賛成。もうイッパイイッパイでこれ以上はムリ」


 俺もそうです。

 そんな訳で、今日は予定を中止して離宮に戻る事にした。



「アベル殿、天獣様にお会いしたと言うのはまことかな?」


 戻って寛いでいる所に天王が突撃してきた。

 情報がはやい。まあ当然か、それにしてもこの王、キチンと仕事をしているのだろうか?

 どうやっても王としての責務をこなしている姿が想像できないと言うか、気が向いたらこうして突撃して来るのはどうなんだと言うか、いや、どうでも良いんだけどね。

 

「会ったよ。どうやら俺が転生者か確認しに来たみたいだな」

「なんとっ」

「転生者は彼ら天獣と同じ太極に囚われた者らしい、いったいどういう意味かはまるで判らないけど」


 理解不能なフレーズがいきなり出てきたからな。

 ただまあ、なんとなくだけども俺たちが神の掌の上で踊らされている様な状況なのは理解できた。この世界の在り方を含めてすべてが誰かに仕組まれているのは確定みたいだ。


「ほんの少ししか話を聞けなかったけど、それでも話せて良かった」


 と言うか、会えてよかった。

 天獣か、確かに天人たちが神の如く崇めるのも当然だ。

 彼にはそれだけの威厳が、人間とは根本的に格が違うと本能的に理解させられる風格があった。

 アレは言うならば、高位次元生命体。

 そうとしか表現できない存在だ。


「なんと、天獣様とお会いしただけでなく話までも交わしたと・・・・・・」


 と言うか何か天王の様子がおかしいんだけど・・・・・・。

 なにかどす黒い負のオーラを背負ってないか?


「なんと羨ましい。何故だ。何故そんな待遇を受けられるのだっ、ワシが天王になった時には、お会いする事は出来でもお言葉を頂戴する事など出来なかったのに」


 なにか地の涙を流して絶叫し始めたんだけど・・・・・・。

 と言うか感情が爆発した所為か魔力が制御できなくなっているぞ? このままだと暴走した魔力でこの辺り一帯吹き飛びかねないんだけど・・・・・・。


「落ち着け。暴走するな。まさか自分の城を消し飛ばすつもりか?」

「黙れえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ、そんなのはどうでも良いのだぁぁぁぁぁぁっ 問題は、オマエが天獣様と言葉を交わした事だぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ヤバイな。何か本気でキレてるんだけど。

 て言うかこのままじゃあ本気で離宮が跡形もなく消えてしまう。


「だから話を聴け」

「黙れええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 話がまるで通じないのはどうした事か、そろそろ本格的に建物にヒビが入りだしてきているし。


「面倒」


 そんな訳で暴走した天王を封印する事にした。


「何だったんだいったい?」

「歴代の天王でも、天獣様と謁見して言葉を交わす事が出来たものは少ないですから、アベルが羨ましかったんでしょう」


 そうなのか?

 何か恐ろしいまでの狂気を感じたが・・・・・・。


「とりあえず、しばらくは封印結界の中で大人しくしててもらおう。この離宮も直さないといけないし」


 天王の魔力の暴走の所為で、既にあちこちにヒビが入ってしまっている。このままだと倒壊してしまいかねないのでさっさと魔法で直す。


「これで良しと」

「後始末までして頂いて申し訳ありません」

「お母様。いらしてたのなら父を止めてください」

「それはムリよ。私では止めきれませんわ」


 目が完全にいってしまっていたからな。アレを止めるのは言葉じゃ無理だよ。こうして実力で止めないとね。


「とりあえず、天王には封印結界の中で1時間ほど頭を冷やしてもらう」

「それが良いでしょうね。流石に1時間もすればあの人も正気を取り戻すでしょうし」


 アッサリと同意されてしまった。今出しても同じことの繰り返しだから、早く出してなんて言われても困ったのだけど、こんなにアッサリと見捨てられるとは合われ天王。


「ただ、あの人が羨むのも仕方がない事なのですよ。天獣様は私たち天人の祖。父にして母たるお方ですから」

「天人の祖?」


 思いがけない話が出てきたな。


「言葉通りの意味です。私たち天人と獣人は天獣様により生み出された種族。天獣様は我らの髪にして創造主なのです」


 そう来たか・・・・・・。


「因みに私たち竜人と魔人は神龍様より生み出された」

「エルフとドワーフは世界樹ユグドラシルから生まれた種とされているわ」


 おうそう来たか・・・・・・。

 この世界にはヒューマンを含めて15種の人間種が居る。その全てが同じ祖から成り立っているとは思わなかったけど、成程ね。

 しかし天獣からはまだ良いとして、世界樹から生まれ出たってどういう事?

 しかしその話はじめて聞くんですけど?

 何故に今まで誰も話さなかったかな?

 いや、知らなかった俺の方が悪いのかも知れないけど・・・・・・。


「創造主か」

「ええ、創造主であり、父であり母である、それが天獣様です」


 本当に何が何やら、そんなこと知らなかったよ・・・・・・。

 それにしても、それなら天王の様子も納得か? いや、アレは納得できるものじゃないな。


「それじゃあ天王は・・・・・・」

「アベル様が天獣様と話されたのが羨ましかったのでしょう」


 単なる嫉妬ね。

 しかも、これってこれで終わりじゃないよな。間違いなく嫉妬に狂ったやつが山のように湧いて来そう。

 本当に勘弁してくれ、目的は果たされたハズなのにうんざりするよ・・・・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ