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「やあ、対面は無事に済んだかね?」


 楽しそうに俺に笑いかけて来る天王は、コッチが引くくらいにボコボコだった。

 何故に回復魔法で直さないでボコボコのまま? と思ったら、どうやら魔法で直すとすぐにまたボコボコニされる無限ループに陥っているので、これ以上被害を増やさないために、終えて我慢できるギリギリのボコボコ状態でいるらしい。

 と言うか、自分で回復しなくても、ヒルデとかが回復させてそこからまたフルボッコの刑を始めるので、自分に回復魔法が効かない様にしているらしい。

 そんなおかしな術もあるのかと思うけど、冷静に考えたら国にとって使い道の大きな魔法だろう。裏の側面が激しいけど気にしないでおこう。


「まあな、それはともかく、変な事はしないで欲しいんだがな。彼ら全員、貴方にかなり怒っているぞ」

「はは、恨まれてしまったかな。だがそれも仕方ない。むしろそちらにしては好都合であろう?」


 本当に食えない。面倒臭いオッサンだ。

 あの10人の内、5人は転生者確定で、残りの5人はまだ転生者なのか判らない。判らないのだけども、彼らは既に戦う事が決定している。

 俺の弟子となってレジェンドクラスの超越者、更にはジエンドクラスの超絶者を目指さなければいけないのがもう既に決まっているのだ。

 彼らは既に、王命に従い俺の元で修業する事にされている。正確には、俺と天王との協議により、見込みのある才能を持った者を預ける事が決められたと既に国中に報じられている。

 ・・・・・・まったく良くやってくれる。

 これで彼らの退路は完全に断たれた訳だ。

 彼らは自分の夢を叶える為にもまずは強くならないといけない。少なくてもレジェンドクラスに、出来ればジエンドクラスになって、世界の危機を救わなければ、望む仕事につくことも出来ない訳だ。


「そうやって敵をつくってい事そのうち取り返しのつかない事になるぞ、とりあえずは、いずれ彼らに殺されないように気を付ける事だな」

「・・・・・・・ふっ、既に取り返しのつかない事になっているのは理解しいるのでな、今更どうと言う事もない」


 チラリとヒルデの方を見ながらうそぶくけど、若干顔が青いぞ。

 そしてヒルデが笑顔なんだけども、目がまるで笑ってないね。これは、回復魔法を効かなくする術を撃ち破って更にボコボコにするつもりかもしれない・・・・・・。

 それにしても、一度フルボッコにしたぐらいじゃすまないのか。

 どれだけこの父親に対して鬱憤が溜まっていたんだ?

 まあ、今までそれだけの被害を受けて来たからこそだろうし、どれだけボコられても完全に自業自得だ。

 なんだけども、レーゼ少年たちが思いっきりひいているな。


「本当に大概にしておけよ。まあ良い。そんな事より天域に行きたい」


 彼らの気持ちは本当に良く判るので、ここはもうこれ以上関わらないに限る。

 そんな事より本題な訳だけども、俺の言葉に流石に驚いたようだ。


 天域とは、天獣と呼ばれる聖獣、神獣が住まうこの国の聖域、神域の事だ。

 そして天獣とは、この世界に生きる最強種の一角。ジエンドクラスの力を持つといわれる最強の獣。

 魔物が異世界からの侵略者であるのに対して、彼らは人間種が文明を築き上げるはるか以前から。この世界に君臨し続けている者。この世界の真の支配者にして、真の守護者。その一角。

 白銀の翼を持つ、黄金の獅子だと言う。

 20万年前、転生者たちによる封印が事実上失敗したこの世界が存続しているのは、彼らがるからだ。


 ・・・・・・そう、20万年前、この世界は魔物の侵攻を食い止める封印を造り出す事に失敗している。

 何故なのかは判らない。当時の事を記す資料なんて最早残されてもいないのだから、知りようもないのだから当選だろう。

 ただ、そのまま滅びに向かうはずだった世界は、天獣らこの世界の真の守護者たちによって守られ、十万年前の封印を迎える事が出来たのだ。


「正気か?」

「当然だろう。むしろ、この状況で会いに行かないなんて選択肢があるとでも?」


 天獣はこの世界の真の守護者。そして、彼らは必要な時にしか動かない。現に、3万年前の魔域の開放に始まる惨事の時にも、人間たちだけで対応できると判断したのか動く事はなかった。事実上、この10万年の間、彼らが歴史の表舞台に上がる事は一度も無かったのだ。

 それ故に、ヒューマンなどはその存在自体を既に忘れ去っている。

 俺が天獣の事を知っているのも、10万年前の遺跡の中にその記録が残されていたからだ。その記憶の事をヒルデたちに聞き、初めて知った天獣の存在。

 その彼らに会う事こそ、この国に来た最大の目的だ。


「実際問題、10万年前のように彼らの協力が得られなければ、カグヤの封印が破られた時に対抗する事は出来ないだろう」

「なんと、10万年前にはかの方たちもお力をお貸ししていただいていたのか」

「当然だろう。本当の意味での世界の危機に、真の守護者たる彼らが動かないハズがない」


 実際には、10万年前の転生者たちは彼らの協力を得られなかったらしいがな。

 だからこそ、1万人以上いたにも拘らず100人程しか生き残れなかった。

 ゲーム知識が邪魔をして、協力を求められなかったのが最大の失敗だったと示されていた。もしも協力しあえていたならば、もっと犠牲を抑えられていただろうと・・・・・・。

 余りにも多くの犠牲を払ってしまった事への後悔と痛恨の念が示されていた。

 だからこそ、俺は彼らと協力できるようにしておきたい。そうすれば、例えどんな事が起きても犠牲を最小限に抑えられるハズだ。


「もっとも、10万年前には人間との協力体制を取る事が出来ずに、互いにそれぞれバラバラに動いていた結果、被害が増してしまったらしいけどな。だからこそ、俺は今回こそ互いに協力し合えるように彼らと会いたい」


 まあ、今の俺じゃあ実力不足も甚だしいのは判っているんだけどね。

 それでも会いたいと思うのは、ハッキリ言って俺の興味だ。

 繊維の真の守護者たる聖なる獣。その姿を実際に確かめられる機会が来たのだ。このチャンスをムダにする訳にはいかない。


「そういう事であるならば仕方がない。しかししばらく待ってもらおう。いくらレジェンドクラスの超越者であろうとも、かの方々との接見を簡単に許可する訳にはいかぬ」


 それは当然だな。もしも天獣の怒りに触れてしまえば、この国自体が消えてしまう可能性だってある訳だし。

 それに、天人にとって天獣は神聖不可侵な存在だ。合いたいと言われてそうですかと簡単に合わせる訳にはいかないだろう。


「許可が下りるのにどれくらいかかる?」

「最低でも1ヶ月は欲しい」

「判った。よろしく頼む」


 ヤッパリそのくらいはかかるか。

 天王はボコボコの体を自分で直すとすぐに転移でいなくなる。多分、即座に承認のための手続きに行ったんだろう。

 ヒルデの方はものすごい呆れた顔をしている。ついでに毒気の抜かれたようにも見える。

 この様子だと、もうフルボッコの刑は終わりだろう。


「天獣様とお会いしようなんて、本当にとんでもない事を考えるわね貴方は」

「むしろ、会わないって選択肢がないと思うけど」


 と言うか、会わないでどうするって話だ。戦力としても、カグヤの封印が破られた時には絶対になくてはならないし、彼等ならばこの世界の真実をより深く知っているかも知れない。

 おそらく、間違いなく今の俺じゃあ余りにも脆弱過ぎて彼らに認められすらしないだろうけど、ホンの僅かな繋がりくらいは出来るかも知れない。

 今はそれだけで十分だ。いずれ、本当に認められるに足る存在になればいい。


「それにしても、まさか天獣様にお会いできるなんて」

「ヒルデは天獣にあった事はないのか」

「ある訳ないでしょ。王族といえども、天獣様にお会いできるのは天王だけ、それも即位の報告の時だけ謁見を許されているのよ」


 成程そこまでか・・・・・・。

 これは予想していたよりもはるかに厄介かも知れない。

 それでも、会わないって選択はないしどうしようかね?


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