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さて、遺跡の調査を開始すると同時に、レーゼ少年に俺たちの目的とかも伝える事が出来た。
しかし、ココに来て一気に10人以上も転生者、正確には候補だけどが見付かるるとはな。
多分、レーゼ少年以外もいずれ俺たちの、正確には俺の元に来るんだろうな。
それはさて置き、この世界の状況についてレーゼ少年に説明したけれども、アレには一部ウソがある。
と言うか、俺たちの扱い、立ち位置的な部分だけども、実際の所、彼が思っているよりもはるかに重要な立ち位置に居る。
彼は、人数もたかが知れているし、カグヤの封印が破られた時には、大した戦力には成り得ないと思っているみたいだけども、実際に各国が想定しているのは俺たちを特価戦力として運用する事だ。
より正確に言うのならば、最も困難であり、最重要課題である新の封印の確立。それが俺たちの使命になる。
・・・・・・・実際の所、どうやったら新たな封印が出来るかなんて皆目見当もつかないんだけども、その辺の答えか、最低でもヒントはカグヤに残されているだろう。
そんな訳で、まずは封印が破られる前にカグヤに辿り着く事が第一目標な訳だけど、まあ、まだまだ無理だよね。
少なくてもジエンドクラスに至らないと話にならないらしいし。
「とりあえず、この調子で遺跡の調査をしていくから」
「それなんですけど、あの、父が参加したいと言い出しまして」
「ああやっぱり?」
これは初めから予想出来ていたから驚かない。
むしろ、キチンと許可を求めてきた方が驚きだ。俺としては、下見に行く所を尾行して、みんなで一緒に行く時に乗り込んできて無理矢理ついて来る事を予想していたんだけども。
「それは構わないけど、連れて行く遺跡はこちらで決めさせてもらうよ。国に知られるとヤバイ遺跡に何て連れていける訳ないし」
「それは判っていますよ。私からも釘を刺しておきますから」
「国に知られるとヤバイ遺跡って、さっきの兵器みたいなヤツですか?」
「アレは生温い方だよ。あの程度なら知られても何の問題もない」
アレより危険なのってどんなのなんだろうってレーゼが青くなってるけど、うん。キミもすぐに知る事になるよ。
「とりあえず、天皇を連れて行けるちょうど良い遺跡があったら伝えるから、勝手に動かないように伝えておいてくれる」
「ええ。勿論よ」
実の所、レーゼの他の転生者候補を一度に連れてこなかったのって、自分たちで好きに遺跡に入るためなんじゃないかって思えるから、ちゃんと釘を刺しておかないと、いや、刺した所で効果があるか謎なんだけどもね。
勝手に入って中でとんでもない物を見付けて、後で後悔しても俺は知らんから・・・・・・。
「それじゃあ、これからは遺跡調査を中心にしばらくしていくって事で良いの?」
「ああ、レーゼの修行もある程度落ち着いたし、これ以上つきっきりで厳しくする必要もないだろ」
「良かったねレーゼ。これで一息つけるね。あっでも、気を抜いて修行をサボってると、すぐにアベルのスペシャルバードの修行が待ってるから気を付けてね」
「はっはい。頑張りますっ」
そんなに怯える事もないだろうに。と言うか、人木々が悪い事を言わないで欲しいんだけどケイ。
「うん良い答え。なんかキミが本当に仲間になったんだって実感できたよ」
「判る。同じ苦しみを味わった者同士の連帯感てやつ?」
「そうですね。確かにそうかも知れません」
なにか、みんなしてヒドイ事を言われているんだけど・・・・・・。
「ねえ。こうしてレーゼ君が仲間になったんだから、ちゃんと歓迎会をしないと」
「そうだよね。新しい仲間をシッカリ歓迎しないと」
それは単に自分たちが楽しみたいだけなんじゃないかなって思わなくもないけど、強制的に仲間にさせられたと思ったらねこれまで厳しいなんて程度じゃすまないハードな修行に放り込まれたんだるココで少しくらいは羽を伸ばしてもらっても良いだろう。
「そうだな。そればゃあレーゼ少年。キミにこの世界に生まれた事を心の底から感謝する。最高の御馳走を用意しよう」
さて、当然だけども主役はジエンドクラスの食材。そして、世界樹の実も加わる。
まずはドラゴンのステーキとロースト。
これは欠かせない。レジェンドクラスの食材でつくったのよりも更に桁外れの美味しさ。もうこれは本気で食べた瞬間に昇天してしまうレベル。
それと、レーゼ少年の好物と言う事でねカオス・フェニックスの卵でオムレツとオムライスをつくる。卵はフワフワトロトロで、ソースはトマトソースにする。
カオス・フェニックスの身はローストに、それに唐揚げも作る。元日本人として、やっぱり唐揚げは外せないだろう。
あとミートパイも作ってみる。ひき肉ではなくてサイコロステーキを中に入れる。一緒にシッカリと色が付くまで炒めた玉ねぎも、味付けはむしろシンプルに。因みに肉はカオス・ウロボロスを使用。ウェルダンに焼き上がった塊の肉から溢れ出す肉汁が最高。
スープはブイヤベースにしてみた。濃厚な海鮮の旨みが溢れ出す。
サラダはポテトサラダ。と言っても、使っているのはジャガイモじゃない。αランクの植物系の魔物の値がそのまま至高のジャガイモみたいな食材らしい。どんな魔物なのかかなり興味がある。
因みに、それでポテトチップスを作ってみたら、もはやジャンクフードの領域の食べ物じゃなかった。
アレは、ひとたび食べたらもう引き戻れない魔性の食べ物だ。、
デザートは最高の果物、果実をふんだんに使ったパイにケーキ。
唐揚げ以外は基本、洋食系で揃えてみた。
「はわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
当然だけども、そのあまりの美味しさにレーゼ少年は魂が抜けている。
「ボッ・・・・・・ボク、こんな美味しい物を食べたのはじめてです」
しょうがないので突っ突いて̪魂を引き戻してやると、興奮に顔を上気させて狂喜乱舞した。
うん。俺もコレがあるからこそ、面倒だけどなんとかしようって気になるからね。
正直、本当ならいくらなんでも命を賭けて世界のために戦い尽くせなんて使命を与えられても、はいそうですかって素直に受け入れられるものじゃないよ。
もし、そんなものを無条件で受け入れられるとしたら、それはもう狂気に過ぎないと思う。
それじゃあ、俺はどうして命懸けで世界を護ろうとしているかと言えば、それは大切な人たちが居るからであり、同時に、魂の奥底から満足する最高に美味しい食べ物があるからだ。
食べ物のために世界を護る。
そう言い換えても良い。
うん。普通にあまりカッコイイとは言えないのは判ってるけど、それが俺の偽らざる本心だし。
多分、10万年前も、それ以前の転生者たちに中にも、同じ気持ちだって人も結構いると思う。
だって、それ程にもう魂を掴んで離さないくらい。この世界の食事は最高なんだよ。
ジエンドクラスの魔物。その食材の最高の味を知ってしまったからには、俺はトコトンまで味わい尽くす為にひたすら狩り尽すつもりだ。
そう、これから訪れるのは未曽有の大災害じゃない。食材ハントの時間だ。
その為に、今は必要な準備をしているに過ぎない。
例え命懸けになろうとも、生き残れる可能性がほぼゼロに近くても、これは俺にとってただ美味しい物を食べる為の収穫に過ぎない。
・・・・・・そう言い聞かせる事で、俺は何とか恐怖に潰れてしまいそうな心を奮い立たせている。
実際、死にたくはないし、仲間や家族が魔物に蹂躙されていくのを、ただ指を咥えてみているつもりはない。
だから俺は、俺が出来る限り最大限足掻いてみせる。
レーゼ少年たちはそれに巻き込まれる訳だから、可哀想といえば可哀想だけども、自分が生き残るためだと諦めてもらおう。
「本当に美味しいです。アベルさんて料理上手なんですねっ!!」
「それなりにはね。もっとも、これは素材が良いからこそだけどね」
「ウソは言わないの。素材が良すぎるからこそ、最高峰の腕がなければ扱い切れないでしょうが」
「適当に焼くだけでそれなりに美味しく食べられはするけど、本当の味を引き出すのがどれだけ難しいか」
「私たちも挑戦してみたけど、アベルとは比べ物にならないくらいお粗末で、食べ物への冒涜なきまでして来たから諦めたのよね・・・・・・」
「そうなんですか・・・・・・」
その話は止めようよ。空気が暗くなってるし、レーゼ少年も引いてるから。
「その話は置いといて、とにかく、これがこの世界の醍醐味だよ。とにかくおいしい物がいくらでもある。それを食べ尽さないなんて損だよ」
「はい。ボクもなんだか楽しみになってきました」
そう言いながら10個目のオムライスを平らげてるけど、本当に大好物なんだなレーゼ少年。
「本当に、美味しい食べ物は活力の源だからな」
「本当に食いしん坊よねキミ。だけど、命を賭けてでもと思うのも判るかな」
「別に俺は美味しい食べ物のためだけに命を賭けてる訳じゃないから、そこのところは勘違いしない様に」
ヒルデがクスクスと笑いかけて来るけど、何か勘違いされている気がするのは気のせいか?
「勘違いしない様にって?」
「俺が命を賭けるのはキミたちを護りたいからだよ。大切な仲間を護りたいから、俺は命を賭けられるんだ」
何かとんでもなく臭い事を言ってしまった気がする。
ヒルデが顔を真っ赤にして照れているような気がするけど、気の所為だと思いたい・・・・・・。




