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「さてと、レーゼの修行も一段落してきた事だし、そろそろ遺跡の調査を本格的にしようか」


 忘れそうになってしまうが、そもそも、俺たちは遺跡の調査のために各国を回っている。いやまあ、各種族のお姫様を仲間にしているんだから、その挨拶回りの意味も大きいんだけどね。

 それと、一応言っておくけどスピリットでも遺跡の調査はちゃんとしたから。ライオルのバカにかかりっきりだったように思われるかも知れないけど、ちゃんと遺跡の調査もしていたんだよ。

 その事について触れなかったのにだって実は理由がある。

 ・・・・・・本当に、なんであんな物が残っているんだよ・・・・・・。

 封印確定の危険な代物が残っていた遺跡もいくつかあったけれども・・・・・・・。それ以上に危険な物が残されている遺跡が1つあったんだよ。

 それは、5万年程前にその遺跡を発掘した転生者が残した物だった。

 それを目にした瞬間、俺は目が腐るかと思った。そして、迷わずそこにあった全てを燃やし尽くした。

 それは決してこの世にあってはならない物・・・・・・。


 ・・・・・・転生腐女子が残したBL系物語やグッツの山だった。

 同人系ケームソフトなども山のように積まれていた。いったい何万タイトルあるのか数える気にもならない、アレは腐敗した存在してはならない物の山だった。


 あの時ほど、俺1人で事前に調査をするようにして置いて良かったと安堵した事はない。

 本当に、どうしてこんな物を後世に残したんだと思ったら、その答えは燃やし尽くした腐敗物のすぐ傍に残されていた。

 それは、BL系のアイテムの山をココに封印した人物が残したメッセージ。 

 それを見た時、俺はかつてのその人の苦労を知った。

 

 5万年前、その遺跡を発掘した転生者たちの中に、強烈な腐女子が1人いたそうだ。

 彼女は仲間の他の転生者に腐教しようとするだけでなく、この世界、ネーゼリアにBLを広めようとまでした。

 そんな災厄に対して、仲間たちは己が身を犠牲にして必死に食い止めていたそうだ。

 そんな彼らの苦しみを無視して、婦女子は己が欲望のままに地球からありとあらゆるBLモノを取り寄せ、或いは創作していったそうだ。

 ・・・・・・本当に、何度殺そうと思ったか判らないと書いてあった。

 最終的に、この遺跡に全てを封印するに至るまでにどれだけの苦労があったか、その恨み節がメッセージの半分近くを占めていたのは仕方がない事だろう。

 本当は燃やし尽くしたかったそうだけども、仲間の腐女子がどうしても納得しないので、判断を後世にこの遺跡を訪れる転生者に任せる事にしたらしい。

 つまり、腐教し広めるも自由。全てを焼き尽くすも自由と・・・・・・。

 俺は迷わず焼き尽くしたけど、当然だけどこのメッセージを残した人も同じ思いだったみたいだ。


 ・・・・・・願わくば封印されしこの禁忌が、再び解き放たれる事がありません様に。


 それが、災厄をこの遺跡に封印し、同じ転生者である婦女子の禍からこの世界を救った、5万年前の転生者たちの魂の願いだった。

 そして、俺はそんな偉大な勇者の願いを叶えられた事を心から誇りに思う。

 勿論、この事は俺の心の中にだけ封印しておくつもりだ。

 多大な犠牲を払って、この世界の平穏を保った彼らの努力を無駄にするような真似は絶対にしない。


「とりあえず、俺が何時も通り遺跡の下調べをしてくるから」

「あの、どうしてアベルさんだけで先に行くんですか?」


 まあそれはさて置き、これからの予定を話すとレーゼ少年が当然の疑問をたずねてくる。


「それは、遺跡には正直シャレにならない物とか危険な物が眠っている事が多いからだよ。俺が先にいって安全確認をして大丈夫だった遺跡にだけ、後からみんなを連れて行く事にしている」


 本当に、別の意味で危険な代物が眠っていたりするからな・・・・・・・。


「危険な物ですか?」

「ああまあ、星ひとつ簡単に消し去る兵器とか。魔物を使役するために開発されたシステムの試作機なんかもあったが」


 それよりもなによりも危険なのが、転生者が地球から持ち込んだ品々だ。

 俺が下の遺跡で見付けた危険物の事を耳打ちすると、レーゼ少年は真っ青になって震えてしまう。


「そっ・・・・・・そんなのが残されていたりするんですか・・・・・・。?」

「残されていると言うか、封印されていると言うか・・・・・・」


「怖いです。遺跡ってそんなに恐ろしい所だったんですね・・・・・・」

「そんなに怯える様な者が残されていたことあったかな?」


 何かヒルデが不思議そうにしているけど、それは知らないからこそ言えるんだよ。知らないという事は何よりも幸せだとゆう事さ。


「まあ、ぶっちゃけて言うと俺が先に行って、みんなを連れて行って大丈夫な遺跡か見るのと同時に、遺跡の中にある危険物を排除しておきたい訳だよ」

 

 完全にチェックするのは難しいんだけどね。それでも、みんなも遺跡の中を隈なく調べて回る訳じゃないから、重要な施設や設備周辺を先に調査しておくだけでも安全性が全然違う。


「あっ、やっぱりそうゆう事してたんだ」

「当然だろ。今までどれだけの危険物を封印、もしくは廃棄処分してきた事か・・・・・・」


 封印してしまえる類の危険物ならまだ良いんだよ。

 問題は確実に廃棄処分しなければいけない類の危険物の数々だ。

 本当に何を考えて残したんだと言いたくなるような危険物ばかり。

 まあ、10万年前の時点で転生者は1万人以上いたらしいし、それ以降、これまでにいったいどれだけの転生者が居たかも知れないのだから、中にはとんでもない転生者や、どうしようもない転生者が少なからず手たのも仕方がない事なんだろうけど・・・・・・。


 ・・・・・・・俺自身が、その内の一人に入らないように気を付けないとな。


「ハッキリ言っておくけど、もしも俺が破棄しないでみんなに見せていたら、きっと発狂してたに違いないから」

「そんなに恐ろしいモノが残されていたりするんですか?」

「するんだよ。俺自身、良く耐えてると本気で思うね」


 なんで俺だけがこんな目にって思わなくもない。

 転生者の中には、どう言う訳が自分の趣味満載の私物を遺跡の中に残す人が一定数居る。

 まあ、俺としては前世読みかけだったマンガとかの続きが読めたりしたりもするから、続きが気になっていた物語のあとが読めたりとか実に助かっていたりもするんだけど、自作のポエム手帳とか、こんなの本気でどうしろとって物も多いんよ。

 日記帳とかが残されていたりする事もあるんだけど、これは当時の歴史を知る重要な資料にもなるから読まない訳にもいかなかったりするし・・・・・・。

 ある意味、遺跡の中はこの世で最も危険な魔境だね。


「まあキミも、いずれはすぐに遺跡の恐ろしさを知る事になるよ」

「いえ、出来れば遠慮したいんですけど」

「それはムリ」


 うん。絶対に無理。だって、


「何故なら、これからキミも遺跡に行く訳だし」

「えっ? ボクも行くんですか?」

「当然。行き先の遺跡の事前調査はもう終わってるから、早速今から行くよ」

「あの、心の準備が出来ていないんですけど・・・・・・」


 はっはっはっ。そんなモノいくらしたところでムダさ。

 実際に遺跡に行ってみれば判るけど、今の常識の内では計り知れないから、どうやったって常識も何もかもバラバラに打ち砕かれる事になるんだから、諦めて着いて来なさい。


「心の準備とかするだけ無駄だから諦めろ」

「そうですね。驚かないとかムリですし」

「何をしても時間の無駄だから、早く行って現実を受け入れるのが一番」

「判りました。行きますよ。もう、何でも来いです」


 先輩転生者たちの励ましになってない諦めの言葉を聞いて、どうやら覚悟を決めたというか、開き直ったらしい。


「それじゃあ行きますか」


 そんなレーゼ少年を微笑ましく眺めながら。俺は転移魔法で遺跡に向かった。



「ココが遺跡だよ」

「遺跡って、何もないじゃないですか」


 転移して来たのは天人の国アークセイヴァーの中に無数にある天空島のひとつ。

 空に浮かぶ浮き島であり、この国の王都もそのひとつにある訳だけども、今回来たのは端から端まで300メートル程度の小さな島。特に何に使われてもいない無人の浮き島だ。


「見た目はね。まあすぐに判るよ」


 そう言って島の中央部に立つと、空中に何時ものモニターが現れる。

 因みにこの遺跡のパスワードは、アーサー王の剣の名前。でもこれって、結構呼び方が沢山あったようなと思ったけど、日本で一番良く使われるエクスカリバーでOKだった。

 パスワードを入力するとすぐに入り口が現れる。


「さあ入った。入った」


 なにもない草原に突然現れたエレベータに乗って中に入る。

 行き先はひとつしかない。この遺跡の制御室だ。


「あの、この遺跡っていったい何なんですか?」

「ああ、浮き島に見えるのは擬態で、これは巨大な太陽光集束兵器だよ」


 前世のロボットアニメでは定番の兵器だよな。

 巨大な鏡で太陽光を収束反射させたり、巨大なレンズで収束させて何千℃にも達する閃光で敵を焼き尽くしたり。

 魔法で同じ事を再現可能で、しかも魔力の消費量に対して効果が絶大で、かなり有効な魔法だったりもするんだけど。

 この遺跡と言うか兵器は、何層にもなる巨大なレンズとミラーで光源となる太陽光を幾度となく集束を繰り返し、100万℃を超える超高熱のレーザーに変えて撃ち出す兵器だ。

 当然だけども、地上で使う様な兵器じゃない。

 万が一にも地上に撃たれたりしたら、超高熱は爆心地を誘拐させ、そのまま星を貫いて貫通してしまうだろう。

 風穴を開けられた星が無事で済む訳がない。


「要するに。これもまた一撃で惑星を破壊する超強力な兵器なんだよ」




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