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 さて、ライオルが無事にレジェンドクラスに至った事で、スピリットでの用事も終わった事になる。

 そんな訳で、そろそろ次の国に行こうかと思っている。

 行き先は勿論、シャクティの母国、竜人の国ドラゴレーンか、ヒルデの母国、天人の国アークセイヴァー。

 どちらにもものすごく興味がある。

 特に天人の国アークセイヴァーには、空に浮かんだ島がいくつもあり、天人の王都もその内のひとつに造られていると言う。天空都市セイヴァーレート。その偉容は圧巻だそうだ。


「むさい男二人とつきっきりで、モフモフ成分を堪能できなかったのが残念だけど」


 せっかく獣人の国に来たのに、様々なケモ耳や尻尾のモフモフを見て癒やされて、あわよくは触りたいという野望は達成できないまま。


「それ誰かに聞かれたら変態確定されちゃうよ」

「判ってるけど、モフモフは正義だから」


 獣人は感情表現がケモ耳や尻尾に直接現れるので、見ているだけで和む。


「まあ冗談は置いといて、次は位置的にアークセイヴァーかな。ヒルデにはもう連絡してもらっているよ」

「楽しみにしているって、それと、うちは発掘済みの遺跡が少ないから、十万年以上前の遺跡を調べるついでに、未発掘の遺跡も2つ3つ調べてみないかって」


 随分と困惑している様子なのは、多分、両親が本気で言っているのが判るからだろう。

 ・・・・・・実は、俺も同じ打診をうけてたりする。

 いや、勿論だけど断ったよ?

 だけど、天人と言うのは中々に良い性格をしているので、断りきれるか不安だったりする。


「それはまた剛毅と言うか、怖いもの知らずと言うか・・・・・・」

「そうなんだけど、アベルには受けて欲しいの」

「え? 受けるの? 断るんじゃなくて?」


 これまた意外なお願いをされてしまった。


「お父様たちなら、天人の転生者を見付け出して遺跡の調査を自力でしはじめるかも知れないし」

「「それは確かに・・・・・・」」


 ヒルデの両親の事を知っている13人の声が揃った。


「いや、転生者の事は知らないんじゃ?」

「ううん。天人の歴史書の中に転生者の記述があった。多分お父様たちも気付いてる」

「そういう事は、もっとはやく言って欲しかったな・・・・・・」


 まあ、現実的に考えて転生者についての情報が完全に隠匿されているなんてハズがない。

 ヒューマンの国ならともかく、10万年以上前からずっと続いている他の種族の国に、転生者についての記述が残されていないハズがないか・・・・・・。


「それボクの国にもあったよ。特に興味なかったけど、そうか、遺跡の調査が出来るのか」

「色々と危険だから、迂闊にやらない方が良いと思うけど」

「でも、何があるんだろうって、怖いもの見たさの誘惑は強いよね」


 イヤイヤイヤ・・・・・・。その程度で済む問題じゃない事くらい判っているよね?

 五銭の中に封印されているのは、迂闊に外に出したりしたら世界そのものを破滅させかねない危険物のオンパレードだよ。下手に調査なんかしたら危険どころの騒ぎじゃないって・・・・・・。


「ついでに、転生者らしき人物もいたって、アベルたちにはその人と会って欲しいって」

「マジで・・・・・・」


 時代がシャレにならないくらい切迫していて、開いた口が塞がらないんですけど・・・・・・。


「それってつまり、アベルたちが調査しないなら、その人を使って遺跡に入るって事・・・・・・」

「絶対に止めた方が良い・・・・・・」

「でも、ひょっとしたらジエンドクラス食材が残されているかも知れないし、アニメとかが一杯の趣味の施設かも知れない」


 それはそれで大問題だから、是非ともやめて欲しいんですけど・・・・・・。


「・・・・・・まあ、その人が本当に転生者か次第だけど、そう言えば、ヒューマン以外の転生者ははじめてだな」


 今の所、転生者は俺も含めて4人ともヒューマンだ。

 まあ、100億の人口の内4人だけが転生者て事もないだろうし、そもそも、本当に今が10万年前と同じ危機に瀕している状況なら、それに対抗できるだけの戦力、つまりはジエンドクラスに至れる可能性を持った人物が多く必要となる。

 その中には、当然だけど転生者も含まれているだろう。

 

 ・・・・・・実際、10万年の超絶チート転生者が残した古文書の中には、最後まで生き残った、つまり自分たちの仲間は100人程度に過ぎないけど、おそらく、同じ時代に転生した人数は1万人を超えるだろうと書かれていた。

 つまり、残りの9900人は激しい戦いの中で死んで行ったと言う事だ。

 それを考えると、今回も同じくらいの、或いは遥かに多い人数の転生者が現れる可能性がある。既に数百人の転生者が生まれていたとしてもおかしくはない。

 だとしたら、そろそろ向こう側から接触してきても良いと思うんだけど・・・・・・。

 まだ、転生者としての記憶を取り戻していない人も要るかも知れないし、その辺りどうなるのか全く不明。


「とりあえず、まずはその人と会ってみないと始まらないな」

「多分、着いたらすぐに合う事になると思います」


 ヒルデの両親は、実の娘から見ても相当に良い性格をしているらしいからな・・・・・・。

 因みに、いうまでもなくこの場合の良い性格とは、決して褒め言葉じゃない。



「良く来たアベル殿。それとも、我が息子と呼ぶべきかな」

「ヒルデの間に婚約はしていませんけど」

「なに、そんなものせっかく来たのだから此処で済ませてしまえばよい。獣王レオンも本当はそのつもりだったのに、ライオルの所為で出来なかった訳だからの。まったく、あの者は本当に空気を読まん」


 天人の女王。ヒルデの母であるブリュンティルが何かトンデモナイ事を平然と宣う。


「それにしても、あの者がレジェンドクラスに至ったとは驚天動地に過ぎる」


 その気持ちは判るけどね。300年もバカをやり続けて来た彼を知る身としたら、俺なんかとは比べ物にならないくらいの驚きなんだろうけど、もうちょっと言葉を選ぼうよ。天人の王、天王にしてヒルデの父であるゲーテムンデの言葉に内心で突っ込む。

 判っていたけどこの2人、本当に良い性格をしているよ。

 

「まあ、ライオルは天才だったから。それより、そちらが?」


 俺は2人の後ろに隠れている人物に注目する。白と言うよりも淡い銀の翼を持った少年。少年だよな?

 歳は俺と同じくらいか少ししただろうか、中性的な顔立ちで、体付きもほっそりしているので見た目では性別が判断不明。まあ、初対面ではほぼ確実に性別を間違われる俺よりはマシだろう。


「ああ、この者はスクルド公爵が子レーゼ・ワーグ・スクルド。おそらくは貴公と同じ者だ」

「初めましてアベル様。レーゼです」


 紹介されると当然のように日本語で挨拶してくる。これもう確定じゃない・・・・・・。


「はじめまして。アベル・ユーリア・レイベストだ。キミとはゆっくり話をしたいな」


 そんな訳で、俺も日本語で返してみたけど、何故にキミがビックリした顔をするかな?



「驚きました。まさか本当に、ボク以外に転生者が居たなんて・・・・・・」


 どうやら、天王たちから詳しい話は聞いていなかったらしい。

 突然、紹介したい人物がいると連れてこられて、しかも、この本に書かれている言葉で挨拶するようにと言われたそうだ。 

 何の事だかサッパリ判らないまま、本を開けてみたら懐かしい日本語で書かれていて、どういう事なんだろうと混乱している内に引き合わされたそうだ。

 ・・・・・・うん。本当に良い性格してるよ。あの2人。


「こちらは俺たち4人が転生者だ。もとも、記憶を取り戻してないだけの転生者が居ないとも限らないけど」


 これはレベリアの1件以来考えていた可能性。それは、俺たちの中に記憶を取り戻していない転生者がいるんじゃないかって事だ。

 ぶっちゃけ、俺の仲間、パーティーメンバーは強すぎる。才能が有り過ぎるのだ。

 各種族の姫であるユリィたちは判るにしろ、メリアたちまで全員がSクラスに至りえる才能を持っていたのはいくらなんでも異常過ぎる。なので、ひょっとしたら彼女たちのうち何人かは、記憶を取り戻していない転生者なんじゃないかなんて思っていたりする。

 まあ、そんなにホイホイと転生者が、しかも記憶を取り戻してないのに集まるのもおかしいんだけど・・・・・・・。


「記憶を取り戻していないですか?」

「ああ、俺は5歳の時に、ザッシュとサナも同じ頃に記憶を取り戻しているけど、コッチのレベリアは記憶を取り戻したのは最近だ、どうも、転生者が記憶を取り戻す時期にはズレがあるらしい」

「成程、ボクも前世の記憶を取り戻したのは10歳を過ぎてからでしたから、確かにズレはあるのかも知れませんね」


 俺の説明に納得したように頷くレーゼ。

 因みに、彼は現在12歳だそうだ。記憶を取り戻したのは2年前くらいになる。


「それにしても、同じ本が他にも残されている可能性を忘れていたのは、本当に迂闊だったよ」

「この本ですね」


 話を変える訳じゃないけど、今はこちらの方が重要だ。 

 天王たちがレーゼに渡した本。それは俺が持つ10万年のチート転生者たちが残した者と全く同じ物。

 要するに、この本は一冊しか残されていなかった訳じゃなかったんだ。

 今まで回った遺跡の中には同じ本はなかったけど、おそらくは各種族の国の遺跡の中に、一冊ずつは最低でも残されているのだろう。

 こうなると、実は他の国にも同じ本がある可能性が結構ある。

 て言うか、ヒューマン以外のかつての転生者が強くなるための修行や遺跡探しに使ったのは確実だろうし、そもそも、3万前の転生者たちが、魔域の開放に挑むまでに強くなったのも、その後の惨劇を何とか抑え込めるだけの力があったのも、この本と同じ物を持ていたからだろう。


「歴史の転換期に、幾度となく係わって良そうな気がする本だと改めて気付いたよ」

「ボク、自分が転生者なのを少し後悔し始めて来ました」

「奇遇だね。俺もだよ」


 この本を手にしただろう転生者が起こしたであろう騒動などを説明すると、からはものすごく微妙な顔をした。

 気持ちは判るよ。本当に・・・・・・。


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