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 さて、ライオルの試練が始まってからもうすぐ1ヶ月になる。

 そして、試練の終わりももうすぐになる。

 3週間が過ぎたあたりから、ライオルは少しずつ力の使い方のコツを掴みだしてきた。

 早えよオマエ、もう少し苦労しろよと言いたいところだが、現実問題としてライオルも時間をかけている余裕なんてないだろう、俺たちの拷問に近い戦闘訓練を潜り抜けながら、魔物との死闘を続け、ようやくコツを掴み取ったのだから、本人としては感無量と言うか、狂喜乱舞状態だろう。


「しかし、せっかくのレジェンドクラスの素材が、価値が下がってしまったのは残念です」

「まあ、俺がなってから間もないしな。それに、価値が下がったと言っても食材としてだけだろ」


 本人としては、せっかく命懸けで手に入れたレジェンドクラスの素材の価値が、以前よりも下がっているのが不満らしいが、それは仕方がない。

 まあ、原因は俺なんだけどね。

 まず、俺がレジェンドクラスに至る試練に臨んだ時に手に入れた素材が大量にあるのと、なによりも、遺跡からジエンドクラスの食材を見付け出したのが最大の原因だ。

 それによってこれまで最高の食材とされてきたレジェンドクラスの食材の牙城が崩れてしまった訳だ。

 そんな訳で、命がけの試練の中で手に入れた素材の価値が下がってしまっていることに不満のようだけど。


「価値が下がったって言っても、十分すぎる値段はつくだろ。それに、十分すぎる資産は持っているだろうに」

「そうだな。とりあえずオマエは無事に試練を乗り越えられるのを喜んでおけ」

「それは、重々承知しております」


 それにしても、ライオルが無事にレジェンドクラスに至れそうなのでこれで6人、いずれはミランダとユリィがいたるのも確定しているから8人になる。

 一気に倍になる訳か・・・・・・。

 何か作為的な物を感じなくもない。

 とはいえ、これまでに短期間にレジェンドクラスに至る者が連続して現れた事がない訳じゃない。3万年前なんかがまさにそれで、転生者が次々とレジェンドクラスに至た末に起きた惨劇だった訳だけど。


「まあ、とりあえずキミは、早く完全に力を使いこなせる様になって、試練を終わらせる事だね」


 もう大丈夫そうだとか油断していると、最後にとんでもない事になったりしかねないからな。

 出来れば、フラグにならないで欲しいんだけど・・・・・・。



「見事にフラグになったな・・・・・・」

「フラグとやらが何だか知らないが、アイツはもう完全に力を使いこなせているし、試練ももう終わりだ。俺たちが手を貸しても良いと思うが」

「貴方が大丈夫だと言うなら問題ないですね。それじゃあ早く行きましょう。早くしないと間に合わなくなりそうだし」


 現在、ライオルはXYランクの魔物5匹から必死に逃げている。むしろ、その攻撃を尽く退けられているだけでも大したものだ。

 それにしても、本当にフラグの様に最後の最後でとんでもない事が起きるな。

 ライオルももう完全に自分の力を使いこなせる様になり、これで試練も終わりだろうと思った矢先に、現れたのはレジェンドクラスの最高峰、XYランクの魔物であるラグナ・ティアマトが5匹。

 ハッキリ言って、力を使いこなせているからって1人で倒せるようなレベルの相手じゃない。正直、俺とレオシルスが加わってようやく、何とか倒せるレベルだ。

 明らかに悪意を感じると言うか、本気で殺しにかかってないかコレ?

 なんて考えている暇もないので、2人してライオルの元に飛ぶ。

 

 転移してみると、ちょうどライオルが相手の攻撃を跳ね返している所だった。

 攻撃してきた相手に跳ね返すのではなくて、これから攻撃しようとしている相手の方に逸らすように跳ね返す。

 実に上手いやり方だ。攻撃のために一瞬動きを止めかけていたラグナ・ティアマトは回避できずに味方の攻撃の直撃を受け、防御障壁を破られる。それと同時に即座に追撃して1匹を倒して見らるのだから、ライオルの成長は見事だ。

 だけども、奮闘できたのもここまでだ。まるでこの展開を始めから呼んでいたかの様に、2匹のラグナ・ティアマトがライオルに襲い掛かる。しかも、倒した魔物が視界を遮り、築くのが遅れ反応できなくなる絶妙な位置とタイミングでだ。

 当然、ライオルには反応すらできない。本来ならそこで終わりだ。だが今ココには俺たちが居る。

  

「アイン・ソフ・オウル」

「死ね。デス・カラミティ」


 俺とレオシルスがその2匹を仕留める。


「はっ?」

「何をしている。戦闘中だぞ」


 いきなり参戦した俺たちに目が点になるライオルを怒鳴る。

 何があっても驚かず、冷静に判断し続ける。基本長の基本だろうがまったく。そんなんだからバカの称号を授かるんだよ。


「よろしいのですか、御二人が参加されて?」

「問題ない。オマエは既に力を使いこなせているからな。試練は終了している」


 どうやらこのラストの一戦はオマケ扱いらしい。だから、サポート役が参戦しても問題ないとの事。要するに、新たなレジェンドクラスの実力を図るためのモノらしい。

 それにしても過剰戦力過ぎると思うが、それと、それなら何故に俺の時に参戦してこなかったんだと突っ込みたい。ミミールには後でじっくりと話を聞かないとダメだな。

 だけと、今は戦闘に集中だ。余計な事を考えながら相手に出来るような生易しい戦いじゃない。全力を尽くして挑まないと返り討ちになりかねない。

 それでも、3対2と数の上で逆転している事は大きい。


「元々はキミの戦いだ。俺たちはサポートにまわるからキミが倒せ」

「判りました」


 ライオルが主体となって、俺たち二人がサポートすれば問題なく倒せるだろう。


「それでは、1匹ずつ確実に仕留めさせて頂きます」


 そう宣言すると残るうちの1匹に突っ込んでいく。

 成程ね。1対1でどこまで自分の力が通用するかをまず試してみたい訳だ。その判断は正しいな。

 そんな訳で、俺たち二人はもう一匹の方を抑え込み、ライオルの勝負の邪魔にならないようにする。

 方法は簡単。まずはレオシルスが相手の足を止め、動きが止まった所で俺の魔法で捕獲する。

 次元断層領域監獄結界<ヘブンズ・ヘイム>

 次元のはざまの監獄に対象を封印するこの魔法を破るには、XYランクの魔物でも30分はかかる。これでライオルの戦いに横槍を入れられる心配はない。


 一方のライオルは相手に向かって正面から挑む。これは攻撃を誘発してのものだ。

 当然、正面から向かい来るライオルにラグナ・ティアマトは攻撃を仕掛け、それを待っていたライオルは攻撃を跳ね返す。

 当然、相手もその程度は計算済み。跳ね返された攻撃を悠々と避ける。

 だが、それがライオルの狙い。跳ね返された攻撃をどう避けるかはある程度予測できる。つまり、相手の動きをコントロールできると言う事だ。そのアドバンテージは大きい。

 即座に相手が動いた先の上に転移し、同時に攻撃する。相手もすぐに気付いて対応しようとするが間に合わない。

 瞬間、轟音が響き、ライオルの一撃がラグナ・ティアマトの防御障壁を打ち砕き、その身を貫く。

 一撃必殺。1対1で正面から挑み完勝した。これで、ライオルにはXYランクのの実力がある事が証明された。


「お見事、それじゃあ最後の1匹だ。油断せずに確実に仕留めろ」


 そう言ってヘブンズ・ヘイムを解き、封じていたラグナ・ティアマトを開放する。

 そしてライオルは、再び正面から挑み、見事に打ち倒してみせた。



「しかし、まさかお前が俺の後継者になるとはな。夢にも思わなかった」

「我がレオシルス様の後継者ですか?」


 試練も無事に終わり、一息ついた所でレオシルスがしみじみと呟いた言葉に、ライオルは首を傾げる。


「当然だろうが、俺も後2000年くらいで死ぬ。どうやったって俺の方がオマエよりも先に死ぬんだよ。だからこそ後を継ぐ後継者が必要なんだろうが」

「2000年の間に、我の他にもレジェンドクラスに至る者が多く現れると思いますが」

「そう言う問題じゃねえよ。俺の意思を継ぎ。このスピリットの守護神となれって言ってるんだよ」


 そこまで言われて、ようやくライオルも意図を理解できたみたいだ。


「我でよろしいのですか?」

「オマエ以外に誰が居るってんだよ。まあ、俺もまさかオマエに託すとは思いもしなかったがな」


 後継者か、俺の場合は3万年ぶりのヒューマンのレジェンドクラスなので、誰かの後継者とかにはならないだろうけど、ユリィの場合はミミールの後継者と言う事になるのかな?


「これからは、レジェンドクラスとして、この国を護る守護神としての在り方もしっかり覚えてもらう」

「はい。必ずやご期待に応えてご覧に入れます」


 レオシルスは自分の想いを継いでほしい訳だ。

 想いを継ぐ者。確かにそれこそが真の意味で後継者たるのだろう。

 だからこそ、彼は自分の想いをライオルに伝えようとしている。獣人のレジェンドクラスとして国の守護者たる事を己に課した自らの在り方を伝え、継承して欲しいと考えている。

 その気持ちは少し判る。

 そして、ライオルはその想いに応えてくれるだろう。

 その想いに応えた時、ライオルは本当の意味で獣人のレジェンドクラス。スピリットの守護神になる訳だ。



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