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「先ほどまでの数々の暴言、また無礼な態度を心よりお詫びいたします」


 目を覚ましたライオルは、土下座して謝ってきた。

 どうやら、自分はレジェンドクラスに匹敵する力を持つなんて己惚れはキレイサッパリ砕け散ったようだ。


「そうだね。自分と相手、どちらの力も見誤るのはダメよ」

「はい。我は今まで自惚れておりました。レジェンドクラスの魔物を討伐する機会がないので、既にその実力を持ちながらSクラスのままなのだと、そんなありもしない妄想に取付かれていたのです」


 ミランダが声をかけた瞬間、火の巨体をビクッンと震わせたけれども、それは今までの自分の黒歴史を思い出したからか、それともミランダに怯えたのかどちらだろう?


「まあとは言っても、キミにレジェンドクラスに至れる可能性もあるだけの才能があるのも事実だよ。魔力の強化の修行をシッカリとして、魔法を極めればほぼ確実にレジェンドクラスになれると思うし」

「まことですかっ」

「ホント。ホント。ただまあ、魔力の総量を上げるのも、魔法を極めるのも一朝一夕で出来る事じゃないから、真面目に修行しても結構かかると思うけど」


 それでも、数十年もすれば彼はレジェンドクラスに至っているだろう。


「それよりさ、キミってなんで防御障壁を使わない訳? アレは本当に理解不能なんだけど」

「そうは言いましても、防御障壁とて万全ではありますまい。より強い力とぶつかれば砕ける。そして砕けてしまえば無防備になるのですからな。我はどのような攻撃を受けても砕ける事のない守りを研究し、闘気の防壁に至ったのです」


 それは確かにその通りだし、あの闘気の防壁が強力で、かなり有効な防御手段である事も確かだけど。


「でもアレも万全じゃないだろ。ミランダの攻撃一撃一撃でかなりのダメージを受けてたみたいだし」


 おそらく、防御障壁を破られて生身で攻撃を受けてしまった時と比べれば、そのダメージ量は1万分の1にも満たないだろうけど、それでも、一発あたりでヘビー級のプロボクサーのパンチを受けるくらいのダメージを受けていただろう。それを1000発も受ければね気を失うのも当然だ

 むしろ、良くそこまでもったものだと思う。

 ライオルが余程頑丈なのか、ミランダが気を失わない様に嬲り殺しにしていたのか、多分、前者だろう。


「確かに、ですが実戦においておのれの身の危険を直接理解させられる痛みが感じられるのは、集中力緊張感を高め、維持するるために最善かと」

「成程ね。確かに一理あるけど、ダメージを受ければ逆に痛みで集中力が乱れないか?」


 それに、防御障壁を破られたら終わりなのだから、敵の攻撃の大して細心の注意を払って戦うのは当然だ。

 相手の攻撃が今展開している防御障壁を破る威力があるか否か、その見極めが生死を分けるのだ。


「まあ良いや、ともかくキミは、魔力の強化の修行と魔法の修行をする事だね。そうすれば、キミは確実に今よりもはるかに強くなれるから」

「はい。精進いたしまする。つきましては、我を弟子として鍛えてはくださらぬか」


 正直、どうでも良いやと思って話を切り上げようとしたら、とんでもない事を言い出してきた。


「弟子ってキミを?」

「さようです。ミランダ殿に敗れて目が覚めて、ようやく貴殿の力のすさまじさを理解出来ました。そして、若くしてそれ程の力を得、また多くの弟子の育成にも多大な成果を上げる貴殿の修行法、育成法に興味が尽きぬのです」


 そう言われると、確かに興味を持つなと言う方がムリだろう。それに、目の前に確実に強くなれる機会が転がっているのだから、見逃す手もないだろうし、ライオルとしては当然の申し出か・・・・・・。


「弟子ねえ・・・・・・・」


 だけどコッチとしては気乗りしない。さっきまでみたいに、余りのバカさ加減にイライラする事はなくなったけれども、第一印象が悪すぎて一緒に旅をするとか考えられない。


「まあ、この国にいる間、魔力の強化の修行をするくらいなら良いけど」

「おお、まことですか?」


 此処で嫌だと言ってもしつこそうなので、スピリット王国にいる間だけ弟子として指導する事にする。


「それじゃあ、王に挨拶したら早速始めようか、と言っても、一週間もしたら一度ユグドラシルに行く事になるけど」

「どういう事ですかな?」

「一週間したら世界樹の蜜じゃない、花を探しにユグドラシルに行かないといけないんだよ」



 1年前、ユグドラシルを訪れた時、世界樹の花を偶然見つけたのがそもそものキッカケ。

 ここ100年以上も見付ける事の出来なかった世界樹の花。わずか1週間の咲く期間の内に、たった1輪の花を見付け出すのは至難の業。

 しかし、その花からは聖果樹の蜜と言う、この世界で最も至上な甘露が取れる。

 しかも、世界樹はいずれ光臨期と言うその力を活性化させる時期に入り、そうなると向こう100年は世界樹に近付く事すら出来なくなるので、蜜を得るなど夢のまた夢になる。

 だから、光臨期が始まる前に出来る限り蜜を手に入れたいのが、ユグドラシルの本音な訳だ。

 そんな訳だから、花を見付けた実績のある俺は、前回花を見付けた時期になったらユグドラシルで1週間世界樹の花を探し回るのが既に去年の段階で決まっている。

 これは各国の王も是非にと頼み込んで来るし、行かないと言う選択肢はない。

 それ以前に、俺も出来ればもっと蜜が欲しいし、行かない訳がないんだけど。


「世界樹の蜜ですか、アレは至上の甘露ですな。我も大好物です」


 希少性がとんでもなく高いのもあって同じ重さの金よりもはるかに高いけどな。

 因みに、発見者として自分の分をシッカリと確保させてもらった俺は、1人で既に10キロは消費している。1年で1人で10キロって、どれだけ甘いモノを食べたんだよって思うかも知れないけど、むしろその程度で済んでいると言えるだろう、実際、女性陣の消費量は俺の倍どころじゃないし・・・・・・。

 まあ、圧倒的な力を維持するために、前世とは比べモノにならないくらい食べるし、俺ですらティータイムにホールケーキを3つくらい軽く食べるのだから、彼女たちがどれくらいペロッといくかは判るだろう。

 と言うか、一度食べてしまうとしたが超えてしまって、甘味は世界樹の蜜を使ったモノでないと満足できなくなってしまうのだ。


「そうでしたか、実に数百年ぶりに世界樹の花を見付け出したのはアベル殿だったのですか」


 と言うか、何故にオマエがここに居る?

 今はユグドラシルで世界樹の花の捜索をはじめ輪うと言う所なんだけども、何故かライオルも一緒に居る。

 このバカ、たった一週間の魔力の強化の修行で一気に魔力量を増大させて、更にいくつもの魔法も習得して見せて、当然の様に転移魔法も覚えやがった。

 ・・・・・・いや、今まで使えなかった事の方がおかしいんだけどね。


「250年程前に此方に来た時に購入できまして、それを少しずつ楽しんでいたのですが、流石に底をつきましてな。新しく購入しようにも物がないとの事で悶々としていたので、去年、新たに蜜が出回った時には大喜びしましたよ」


 そして、シッカリと相当量を確保したそうだ。なんか一人で1トン近く購入したらしいので、数百億ジュールを使った事になるのだけども、本人はまったく気にしてない様子。

 前世なら、いくら好きだからと言って甘いモノに数千億円も躊躇いも無く使うなんて信じられないけれども、この世界ではそんな常識的な考えは通用しない。

 俺だって、同じ立場なら絶対に同じ様にするし。


「それは良いけど、どうしてついて来たんだ?」

「久しぶりに、世界樹の威容をこの目に焼き付けようと思いまして」


 成程ね。そういう事ならまあ判る。

 天を突き抜けるような世界樹の壮大な姿は、それ自体が魂を揺さぶる完成された芸術品の様だ。

 いやむしろ、その姿を見ているだけで魂が揺さぶられる。人のででは到達し終えない芸術の、美の極みと評した方が良いかも知れない。


「そうか、確かにこの美の集大成を、自然の偉大さの極みを見たいと思うのは当然だな」

「はい。そんな心のゆとりすら、自らを見失った我は今まで失ってしまっていたのだと痛感します」


 ようやく自分のバカさ加減に気が付いたからこそ、これまでの分を取り戻そうとしているのかも知れないな。


「とにかく、早く捜索を始めましょう。本当に、見付かると良いのだけど」


 ユリィとしては是非とも見付けたい所だけども、そうそう上手くも行かないと思っているらしい。

 そもそも世界時の花は1年に1回、たった1輪しか咲かない。しかも、当然だけども毎年同じ日に咲く訳ではないそうだ。

 しかも、咲く期間は1週間しかないし、花が咲くまでにその前兆も見られないらしい。つまりは、つぼみが少しずつ咲いて行くなんて事はなくて、花が咲くその日にイキナリつぼみが出来て花が咲くらしい。

 前日までには何の予兆も見られないと。

 そんな訳で、そろそろ花の咲く季節だろうと予想を立てて捜索してみても、実は既に策終えていたため発見できなかったり、捜索を止めた後に咲く事もあったりしてなかなか見付けられないと。

 世界樹の元にで花の捜索を出来る人数も時間も限られているので、人海戦術を取ることも出来ないのも痛いらしい。


「確かに、俺ももっと欲しいし」

「そうよね。光臨期が始まったら向こう100年は絶対に手に入れられなくなるんだから、今の内にもっと手に入れておかないと」

「今の手持ちじじゃあ、100年ももたないし」


 などと言っているけど、キミたちどれだけ食べるつもり?

 ユリィたちなんかもさ、自分用に10トン以上は確保していたよね?

 まあ良いけどね。いや良くないかも、これは見付からないと大変な事になるかも知れないな。

 どうも、気合を入れて何が何でも見付け出さないといけない雰囲気になっている気がする・・・・・・・。


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