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マルグリット視点です。

「2人はどうするつもりなのなのかな? 来年、アベルが成人したらすぐに結婚するつもりかな?」


 私の質問に、ユリィとケイの2人は顔を真っ赤にして固まった。

 そんなに素直な反応をされると、少しイジメたくなってしまうな。


 幼い頃からの親友である二人は、久しぶりに再会すると恋する乙女になっていた。

 相手はアベル・ユーリア・レイベスト。ヒューマンに3万年ぶりに現れたレジェンドクラスの超越者。

 私たちよりも年下で、可憐な少女にしか見えないのに、その力は圧倒的で、同時にこの世界に多くの変革をもたらした人物。

 彼の登場によって、2万年に渡った断絶していたヒューマンとの関係も、少しずつ改善に向かって動き出しているし、ユグドラシルやレイザラムでは国の膿を出す事にも成功している。

 そして、私たちがずっと待ち臨んでいた、再び一緒に旅をするのも彼のおかげで実現だ来た。

 正直、興味の尽きない人物だと思う。


「それはアベル次第かな。もう正式に婚約も結ばれてるから、何時結婚するも自由だし」

「そうね。でも、来年には結婚するって事はないと思うよ」


 そんな風に言いながら、2人とも嬉しそうで、なによりも幸せそう。


「2人とも幸せそうね」

「うん。幸せかな」

「大変な事も多いけどね」


 相手が規格外としか言えないからね。苦労も多いだろうに本当に幸せそう。


 正直、私にはその辺りが良く判らない。

 誰かを愛するとか、誰かに愛されたいとか、そんな風に思った事も今まで一度も無いし。


「でも、2人が恋をするなんて思いもしなかった」

「確かにね。はじめは信じられなかったし」

「私たちが合流した時には、ユリィもケイも、彼に惹かれていましたから、それからずいぶん長い道程でしたけど」


 その様子を思い出すみたいに、ヒルデ、クリス、シャクティの3人は感慨深そうに茶化す。

 でも、そう言いながら3人も、アベルの事を少し気にしているように私は思うけど。


「でも、みんなも人事じゃないよ。このままいけばみんなアベルと結婚する事になるんだから」

「まあ、本当に嫌なら無理強いはしないだろうけど、一緒に旅をしている時点で嫌いじゃないと判断されるだろうし」


 それは判っている。このままいけば、数十年後には確実に私たち全員が彼と結婚する事になる。

 これは、別に政略結婚と言う程のものでもない。純粋にアベルの持つ力を考えれば当然の話なだけ、それに、ヒューマンとの関係改善を考えても当然の事。

 今の所、彼を恋愛対象としてみた事もないし、そもそも、私自身がまだ恋愛とかそう言うのに興味がないのだけど、このまま一緒に居る内に、気が付けばそんな感情を抱くようになるのだろうか?

 結局、そう言う対象として見れなくても、彼の事は嫌いではないし、むしろある意味では好ましい人物だと思うから、結婚するのも問題ないと思うけどね。


「先の事は判らないけど、私としては別に問題ないけど」

「アレ? マルグリットは恋愛とか興味ないと思ったけど」

「興味はないよ。だけど、自分の立場は弁えているし、アベルの事は好ましい人物だと思っているから。恋愛感情とかはなくても、結婚相手としてはこれ以上ない相手だと思う」


 私の言葉にアシャが疑問を返して来るので、端的に応えると何人かに微妙な顔をされてしまう。

 うん? どうしたのだろう?


「マルグリットらしいけど、そこまで割り切っちゃうのもどうかと思うよ」

「確かに、私たちもある程度はそんな風に考えてるけどね・・・・・・」

「別に割り切っているつもりは無い。これから先、私の感情がどう変わって行くかなんて判らないんだからな。ユリィやケイの様に、いずれは私も彼に惹かれていくかもしれないし」


 本当に、人の心なんてどうなるか判らないのだから、彼を心から愛するようになる時が来るかもしれないし、逆に彼を嫌う様になる可能性だってある。自分の気持ちがどうなるかなんて、その時になってみなければ判らない。


「まだまだ時間はいくらでもあるのだし、あまり気にしないで自然にいた方が良いと思うよ」

「マルグリットは本当に、呆れるくらいに自然体だね」

「そうかな? キミほどじゃないと思うけど」


 私としては、キリアの方がずっと自然体だと思うけど、本人とは認識が違うみたい。

 フム。そうすると何時ものキリアはあれでもまだ自然体ではないのかな?

 そうだとしたら、それはそれで興味深いんだけど。


「キリアはキリアだからね。自然体とか関係なく、ありのままでいるから」

「それは褒めているのかな?」


 当然、最高の褒め言葉だろう。それにしても、キリアとディアナ。この2人も変わらない。

 お互いに大好きなのを素直に伝え合っているから、一緒に居ると微笑ましいのだけど、たまにこっちが恥ずかしくなってしまったりする。


「2人とも、そのくらいにしておかないと、またあの子の餌食になるよ」

「「それはイヤ」」


 あの子とはレベリアの事。あの子はどうも少しおかしい。アベルなんかは、時々発作を起こすからその時はなるべく近付かない方が良いと言っていたけど、発作って、一体何の?

 とりあえず、どういう訳かあの子は、キリアとディアナの二人を妙に熱い視線を送っていたりする。

 前に2人の甘い空気に、寄生を上げて突撃していった事があったけど、アレは何か知らないけど恐ろしかった。アベルに即座に制圧されて事なきを得たけれども、アレ以降、あの子の事はどうも苦手。


「まあ、あの少しおかしな子の事は置いておいて」

「結局、今は気にしても仕方がないってとこかな?」

「そうね。他に考えて置く事もあるし」

「でも、この大陸での用事はもう大体済んだし、次はスピリットに行くんじゃないの?」

「多分そうなると思うけど、それはそれで、色々と起きそうだし・・・・・・」

「国にそんなに問題はなかったと思うけど、それでも、何も起きないとも言い切れない・・・・・・」

「バカは何処にでもいるからね」

「それに、遺跡調査でまたとんでもない物が出て切るのも確定だしね」

「それが一番困るよね。確かに、もしもの時には必要な力なのは判るんだけどさ」

「今は、禍の元にしかならない危険な品々ですからね」

「ウッカリすれば世界の終わり。でも、もしもの時にはその総力をあげなければ、世界は守れない・・・・・・」

「それどころか、あれだけの兵器の数々があってなお、守りきれるとは限らない」

「だからこそ、ボクたちはもっと強くならないといけない」

「いまだに、10万年周期の封印の破綻が訪れるなんて、信じられないけどね」


 その疑問は私の中にもある。でも・・・・・・。


「それはみんな同じ。だけど、可能性がある以上は、備えない訳にはいかない」

「現実に、過去に幾度となく繰り返されているのですから」


 現実問題として、過去に魔物の世界からの侵攻を防ぐ封印が幾度となく行われ、それが何度となく破られ続けて来たのは事実の様なのだから、私たちはそれに対抗しうる、万が一の事態が起きたとしても国と民を護れる力を得なくてはいけない。

 それが、各種族を束ねる王家に生まれた私たちの使命。


「まあ、とは言ってもどこまで強くなれるかは判らないけどね」

「そこは仕方がないよ。私たちの才能とアベル次第」


 意気込んだ所に現実を突き付けられたけれども、実際、私たちがこれから先、何処まで強くなれるかなんて判らない。

 自分では、Sクラスの最高峰、ES+ランクにまでは至れるだろうと思っている。だけど、実際にはこれ以上強く離れない可能性だって十分にある。

 逆に、ひょっとしたらレジェンドクラスの超越者にまで至れる可能性だってあるにはあるハズ・・・・・・。

 だけど、私たち自身がそこまで至れるなんて夢にすら思っていない。

 現実に、レジェンドクラスの超越者へと至る壁は想像を絶する程に高く厳しい。

 私たちはアベルたちレジェンドクラスの超越者との力の差をハッキリと理解しているからこそ、自分たちが居ずレアの頂にまで至る事を想像すらできない。

 それを夢見るなんて、無謀でしかない事を誰よりも理解しているから・・・・・・。


「そうだね。でも、私たちも彼らと同じ転生者ならよかったのにって、思わなくもないよ」

「それは、確かにね・・・・・・」


 アベル以外の転生者もまた、特別な存在なのは見ていれば誰でも判る。転生者の全てがレジェンドクラスの超越者へと至れる訳じゃあないのは知っている。現に、3万年に渡って、ヒューマンの転生者からレジェンドクラスの超越者が現れる事はなかったのだし。

 だけども、彼らは、彼女たち3人は多分、いずれはレジェンドクラスに至る。

 アベルは転生者と言っても、全属性特性持ち以外には、特に何か特典解かないし、10万年まえの超絶チート転生者たちが残してくれた修行法を知れなければ、それ程の力は持てないと思うと言っていたけど、現にあの3人は同じ修行をしていながら、私たちよりも確実に成長がはやい・・・・・・。

 特にザッシュやレベリアなどは、アベルに鍛えられるまでは碌な訓練も受けていなかったハズなのに、もう既にSクラスにまで到達している。

 

 これは、誰がどう見たって不条理・・・・・・


 そんな様子を見ていたら、どうしても転生者はズルいと思ってしまう。

 そして、自分も転生者だったらもっっと強くなれたのかもと、何処までも強くなれたのにと思ってしまう。


「彼らには、私たちにはわからない苦労があるのも知っているんだけどね」


 異なる世界の2つの常識の中で生きなければならない彼らが、私たちには理解できない苦労を散々抱えているのも、一緒に居ればすぐに判る。

 それでも、彼らを羨ましいと思ってしまうのは、私たちの我儘なのかも知れない。



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