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 さて、それから色々とあって、3月3日。俺の誕生日当日となった。

 それまでにあった事はどうしたって?

 大陸中を駆けまわって、各国に根回しを続ける様子なんか話してどうする?

 一言だけ言わせてもらえば、前世も含めてそんな事は素人なんだから、死ぬほど苦労した。

 まあ、根回しが済んだら、後は各国の王が一堂に会した会議で、各種族との交渉などを一手に引き受ける代表国を決めれば良いだけ。

 因みに、代表国はベルゼリアやマリージアなど、大国と呼ばれる国が数年ごとに持ち回りで行う事になった。一国だけに任せるとパワーバランスが崩れたりするからな。

 まあ、とりあえずはレザリア大陸でも数十万年前の遺跡を調査する体制が整ったのだから良しとしよう。


 ・・・・・・それは良いんだけども。


「想定していたよりも、更にメンドウな事になってる・・・・・・」


 問題は誕生日の方だ。現在、俺はベルゼリア王城で、望みもしない自身の誕生パーティーに出席している。

 パーティーの出席者はざっと数千人を超えている。1万を超えていたとしても驚きはしない。

 ます各国の王と王妃などの王族だけで500人は超えている。それから各国の上級貴族、これも1000人を超える人数になっている。2・3000人は軽くいるかも知れない。

 彼らがまた厄介なのだ。人の誕生日を祝う振りをしながら、自分の娘との婚姻を迫ってくる。

 しかも、こちらに気付かれない様にそれとなくなのがいやらしい。

 ウッカリ、迂闊な事を言ってしまうと何時の間にか婚姻が成立している事になりかねないので、相手をするのに精神的に恐ろしく疲れる。


「彼らも必死なのであろう。アベル殿には済まぬが、もう少し我慢してくれ」

「まあ良いですけどね。それでも、これが毎年続くのかと思うと億劫ですよ」

 

 規模が規模なので、レイベスト邸では無理があり、結局、誕生パーティーは当然の様に王城で行われる事になり、これまた当然の様に、王が初めからずっと俺の横にいる。

 おっさんが隣に居ても、普通なら嬉しくないんだけども、今回ばかりは話が別だ。彼が隣で牽制してくれなければ、俺はもっと大変な思いをしていただろう。

 て言うか、おそらく知らない間に誰かと婚姻を結ばれていたかも知れない。


「流石に、来年以降はここまでの事をしなくても問題はないので、実家でゆったりと過ごされると良い」

「この様子を見るに、ゆったり出来るとは思えないですけど」


 今年はダメだったからと諦めるようには思えない。機会があれば、虎視眈々と狙ってくるのは確実だろう。


「正直、どうして俺をターゲットにするのか、理解できないんですけどね」

「それは、本気で言っておられるのかな?」


 王は本気で怪訝そうな顔をするけど、俺としては本当に不思議でならない。

 確かに力はあるし、財力もそれこそ莫大な額になっているけど、なんで誰も彼も俺に群がって来るかね?

 俺よりもいい条件の相手なんて、それこそいくらでも居ると思うんだが・・・・・・。


「アベル殿、このパーティーの為に其方が用意した品々だけでも、各国の王家に貴族家が目の色を変えるのは当然であろう」

「それは、そうかも知れないけど」


 一応、俺としてはやりたくもないパーティーでも、成功させない訳にもいかないので、ジエンドクラス食材など提供できる者は山ほど出している。

 多分、俺がパーティー様に提供したしなの総額だけで、100億リーゼどころか、1000億リーゼは行くんじゃないだろうか?


「アベルは権力とかに興味ないから、その辺り少し疎いのよね」

「そこが、少し不安なんだよな」


 随分な事を言ってくるのはメリルとベルン。実の姉と兄ながら随分な言い方だ。


「アベルは、もう少し自分が、周りからどう評価されているかを知った方が良いよ」


 ベルンに本当に心配そうに忠告されると、こちらとしても言い返せなくなる。


「それは確かに正論なのは判っているけど、そう言うのが嫌で冒険者になったハズなんだけどね」

「確かに、冒険者なら騎士として国に仕えるよりは遥かに自由だけど、それでも完全に自由とはいかないさ」

 

 特に俺みたいにありえないほど力を持っていれば尚更と。


「それにしたって、この有り様はないだろうと思うけど」

「それは確かにね。だけど、それもアベルが成人して結婚すればある程度は収まると思うよ」


 いや、それもどうなんだ?

 確かに、ティリアたちとは婚約している訳だし、そうなると来年、15歳になって成人したら結婚してもおかしくはないんだけど・・・・・・。

 アレ? チョット待てよ、そうするとイキナリ10人と結婚する事になるのか?

 

「俺はもう貴族じゃないのだし、成人と同時に結婚と言うのは早過ぎると思うけど」

「別にそんな事はないわよ。それに、婚約している時点で結婚するのは確定なんだから、何時までも待たせる方が悪いと思うけど?」


 メリルの言う事も確かに正論。だけど・・・・・・。


「それは、自分も結婚してから言おうか」


 俺が突っ込むとベイルもこちらに近付いて来ていた両親も、王も同意して頷いた。

 ・・・・・・そう、姉のメリルなんだけども、婚約者もいるし、とうの昔に成人しているのにまだ結婚していないんだよ。理由は単純明白で、当人が研究に没頭しているから。

 若干、俺の所為でもあるんだけど、だからと言って、婚約者を何時までも待たせている当の本人に、とやかく言われる筋合いはない。


「私は良いのよ」

「「「「「いや、良くないから」」」」」


 開き直ろうとしたメリルに突っ込みが揃った。

 

「余としても、其方の振る舞いはそろそろ見逃しては置けぬぞ」

「あっ・・・・・・いやその・・・・・・」


 王から直々にダメだしを喰らって、流石にメリルもタジタジだ。


「ベイルに続いていずれはSクラスに至るのも確実な其方に、何時までも好き勝手していられては、国としての面目がたたぬわ」

「そうは言っても、私としてはただ装機竜人の研究がしたいだけですし」

「其方の望みは判っておる。しかし、其方はこれまでこの国の支援の下で好き勝手に研究をしてきたのだ。その分はシッカリと返してもらわねば困る」


 俺からワイパーンなどの素材やグングニールなどの10万年前の機体を手に入れて、好き勝手に研究していたメリルだけども、いくら研究対象や素材があっても、研究のための施設と費用がなければ研究はできない。

 それを負担していたのがベルゼリア王家で、すでに相当の金額をメリルの研究に充てているはずだ。

 多分、俺との繋がりとかも考えてかなりの額を出資しているハズだから、何の成果も出さないまま自由にしているメリルに対して、言いたい事も多いだろう。


「メリルは既に自分の貴族位を持った、この国の貴族なのだから、早々自由にはいかないって判ってるハズだよ」

「うーーーー、これなら、アベルみたいに冒険者になっちゃえばよかった」

「その場合、今みたいに好きに研究に打ち込めてはいなかったと思うけどね」


 ベイルの正論にメリルは不貞腐れるけど、そこに今度は俺に現実を突き付けられて撃破される。

 実際、15歳で冒険者になっていたとして、メリルが今の様に装機竜人などの研究に没頭できるようになるのは不可能。

 まだSクラスになっていないメリルが、装機竜人などの研究が出来るのは、国の研究員としての立場にいるから。

 その立場を失えば、今のメリルにはこ れから先研究を続けるのは不可能。

 ・・・・・・まあ、Sクラスになればまた話は変わって来るんだけど。


「まあメリルの事は置いておくとして、アベル、せっかくの誕生日なのに窮屈な想いばかりしてストレスも溜まっているだろう。此処は私たちに任せて、ティリア姫たち婚約者とダンスでもしてきたらどうだ? 少しは息抜きになるだろう」


 出来れば早く結婚してくれとこの中の誰よりも願っているだろう父が、そのメリルの肩にシッカリと手を置きながら対案してくる。


「そうね。婚約者の相手をしている所に迂闊に近付いて行く様な、無礼な真似をするような人もいないでしょう。あえて注目を浴びるように踊って見せた方が、これから楽だと思うわよ」


 更に母まで、メリルの反対側の肩をシッカリと掴んで、俺にダンスでも楽しんでくるように言ってくる。

 いやまあ、これでも貴族家の端くれ生まれたんだから、一通りのダンスくらいは踊れるけど、これって日ごろ言えない鬱憤をメリルにて雰囲気がビシバシするんだけど・・・・・・・。


「そういう事なら、少し躍らせてもらおうかな。流石に、何時までも挨拶ばかり続けているのも退屈だからね」


 ここは関わらない方が良いと判断して、さっさと離れさせてもらう。

 なにか、メリルが裏切り者とでも言いたそうにコッチを見ている気がするけど気にしない。


 それにしてダンスか・・・・・・・。

 この場合、誰とまずはじめに踊るべきなんだ?

 この国の姫であるティリアと踊るのが妥当な気もするけど、彼女はパーティーな加わってまだ間もない。それなら同じ姫で、先にパーティーメンバーになっているユリィやケイと踊った方が良い気もする。

 ここで踊る順番を間違えると、面倒な事になりそうな気がするんだよな・・・・・・。


「あら、ようやく誕生祝の挨拶は終わったの?」

「終わってはないよ。だけど、流石に此処に来ている全員と挨拶をするのも無理だからね」


 下手をすれば1万人を超える人数とじゃあ、軽く挨拶をするだけで日を跨いでしまう。

 その上、大半は軽く言葉を交わして終わりで済む訳がないのだし・・・・・・。


「せっかくの誕生日なのから、責めて婚約者とダンスくらいは楽しんで来いだってさ、その方が何かとメンドウもないらしいよ」

「成程ね」

「そんな訳だから、一曲踊ろうかミランダ」

「私?」


 自分が指名されるとは思ってなかったのか、珍しく驚いているミランダの手を取り、ゆっくりと踊り始める。

 まあ、こんな誕生日も悪くはないかな。ダンスを楽しみながら、そんな風にようやく思えた。

 

「こういうのもたまには良いわね」

「俺としては、もっとゆったりと楽しみたいけどね」

 

 ただ、周りの視線がもの凄く気になって、純粋に楽しめなかったのが残念だたけど。


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