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さて、みんな負けん気が強いと言うか、ケイがアストラル魔法の習得したと思ったら、それから一週間で見事全員が覚えてみせた。
因みに、習得に一番時間がかかったのはザッシュ。レベリアより時間がかかるのはどうなんだと言いたい。
因みに、そのレベレアはアストラル魔法の習得訓練で魔力の扱いにも一機になれ、今ではSランクにまで至っている。このままてくといずれザッシュを超えるんじゃないかと思われる。
と言うか、ザッシュの実力を超えるのも時間の問題では?
「遺跡の調査も順調だな」
「終わったら一度、レザリア大陸に戻るんだっけ?」
「そうだな。本当ならスピリットに行きたかったんだけど、面倒事を片付けないといけないし」
冷静に考えれば、10万年前の遺跡以外にも、過去の転生者たちが残した遺跡が世界中に点在していてもおかしくはない。
むしろ、ない方がおかしい。
と言うか、十万年まえの超絶チート転生者たちが、カグヤの封印が解かれそうになった時の為に遺跡に遺産を残したように、それ以前に封印を成した転生者たちが、封印が破られようとする時のために、対抗する遺産を残した遺跡を各地に残して居ていたと考える方が妥当だろう。
つまりは、この世界には繰り返される歴史の中で、過去から託された遺跡が世界中に、それこそ星の数ほど残されていると考えても良い訳だ。
それは判るんだけども、じゃあどこにあるのか知る手段がほとんどない。
だから、一度レザリア大陸にに戻って、遺跡を見付け出す為の調査体制の確立とか何やらを済まさないといけない。
実際の所、見付け出すまでには相当の時間がかかるだろう。むしろ、手掛かりもつかめずに見付け出せない可能性だってある。
「それでも、各国に伝えて調査をしない訳にもいかないからな」
ココで何もしなかったら、せっかく少しずつ関係が改善しつつあるヒューマンと他種族の間にまた溝を作ってしまう事になる。
結局、二万年続いていたヒューマンと他種族との国交の断絶は、俺の存在によって一応は終わった事になる。
それによって、既にヒューマンの各国とユグドラシルやレイザラムなどの各国との間で、話し合いの場が持たれ始めてはいるんだけども、まだまだ、関係の改善と言えるまでにはなっていない。
それもこれも、ヒューマンだけが80もの国に分かれているのが原因だったりする。
要するに、ヒューマンとの国交、関係を改善するためには、80以上ある全ての国と交渉や話し合いをしなければいけないからだ。
それも、全ての国が平等に条件でないといけないのに、自分の国だけは有利な条件を結ぼうとする国が出てきたりするので、交渉も話し合いもなかなか進展しないのだ。
本当に困ったものだから、実は、その状況を何とかして来るのも、今回戻る理由でもある。
別に今のままでもある意味問題なかったりするのだけども、正直、何時までも俺がヒューマンの代表として各種族の国家間の交渉や話し合いに立ち会うのもどうかと思うので、この際、明確に各種族との交渉や話し合いを一手に引き受ける、ヒューマンの代表国家を決めてしまうつもりだ。
そうしないと、何か起きた時、ヒューマンだけ何も出来ないままになってしまうからな。
と言うか、代表国家を予め決めていれば、この前の会議の時もヒューマンだけ除け者になる事も無かった訳だし。
「ただ、相当面倒な事になるのは確実だよな」
「それはね。どの国だって代表として種族間協議の席に座る地位と権利は欲しいでしょうし」
それはそうだ、つまりはヒューマンの代表国と言う立場になる訳だから、実質的な地位や名声だけでも破格なモノになると考えるだろう。
この世界の王族は、ぶっちゃけ魔物との戦いの為の生贄に近い立場だが、尊き者として生まれた自覚を持って行動しているし、その自負も当然あるだろう。
・・・・・・まあ一部、変わってくれるなら喜んで変わるとの本音もあるだろうけど。
「実際に思う程の利益が出る事はないだろうけど、それでも、かなりの利益を得られるのも確実だしな」
「国を背負う者として、国を豊かに出来るチャンスを見逃すハズがないしね」
俺の祖国のベルゼリアや隣のマリージアなどは、人口3億人を超えるヒューマンの国々の中でも屈指の大国だ。だからこそ、更に一歩先んじたいとも思うだろうし、他の国々だって、このチャンスをものに出来れば一気に国を躍進できるとあっては引かないだろう。
戦争なんて、怒っても精々が数千年に一度の事だけども、戦争がないからって国家間の確執なんかが全く無い訳じゃない。
これまた面倒な事に、他の種族の国々は、互いに確執なんて持っていないのに、ヒューマンの国々だけは表面上は友好でも互いにいがみ合い、牽制し合っていたりするのだ。
せめてもの救いは、全ての国がそうじゃない事なんだけど・・・・・・。
「そもそも、なんでヒューマンはいくつもの国に分かれているの?」
「それはずっと不思議だったんだよね。色々と見て回ったけど結局どうしてか判らなかったし」
とはユリィとケイだけども、シャクティたちも同意見の様だ。
まあ、彼女たちからしたらヒューマンの在り方は理解不能だろう。
俺たち転生者は、前世の地球の国々の様子とかを知っているから、まあしょうがないと思うんだけども、彼女たちにしたら、同じ種族の中で対立しあったりするヒューマンのバカらしさは、本当に呆れるしかないだろう。
俺たちとしては、それでも、何かあればすぐに戦争だテロだと武力衝突をに走る前世との違いに驚くほどなんだけどね。
それでも、やっぱりヒューマンはこの世界の全ての人種の中で、最も未熟な種族だと言わざるおえない。
「まあソコはね。10万年前でも統一国家になっていなかった訳だし。それに、下手に纏まるとまたバカな事を考え出すかも知れないし」
これは自分で自分を貶しているのと同じじゃないだろうか?
だけど、どうやら10万年以上前の、カグヤの封印がなされる前、絶望的なまでの魔物の脅威に晒されている状況下ですら、ヒュマンは一つに纏まれずにいたらしいし。
その上で、魔物の脅威から解放されたヒューマンの国々が戦争を起こさない様に、全ての国が魔域に接するようにレザリア大陸にには魔域が残されたのだ。
だからこそ、レベリア大陸には、大陸中に点在するように小さな魔域が広がっている訳だ。
詰まる所、十万年まえの超絶チート転生者たちも、ヒューマンを信じていなかった訳で、それでまあその予想通りになっているのが現状な訳だ。
・・・・・・しかし、十万年まえからまったく進歩してないって事じゃないかと思うと、ヒューマンて本気で情けないよな。
ひょっとしたら、転生者の性かも知れないから、なんとも言えないのだけど・・・・・・。
「だったら、アベルが統一しちゃえばいいんじゃない?」
「そうね。そうしたら何の問題もないと思う」
変な事を言わないでもらおうか、俺は王になんか成る積もりは一切ない。
そんな面倒な事を誰がするか!!!!!!
しかも、もしそんな事をしたら、俺が居る間はヒューマン全体を纏めていられるが、俺が居なくなった途端にバラバラになって行くのが目に見えている。
つまりは、ヒューマンの統一国家を纏め上げるためには、俺が王で居続けないといけない訳だ。
その上で、レジェンドクラスの俺は既に数千年の寿命を持っている。
要するに数千年はヒューマンを一つに纏めて、平和な国を築く事も可能な訳だけども、それは即ち、俺が数千年もの間、王として君臨し続けないといけない訳でもある。
「俺は王になるつもりは無いよ」
「でしょうね。キミは何処までも自分本位だから」
それについてはまさにその通り。
俺はこの世界で自分の思うが儘に生きて行こうと思っている。だから、自分が助けたいと思った吹いては何があっても全力で助けるし、逆に助けようと思わなければ、例え助ける手段を持っていても助けはしない。
それに、正義に興味もないから、正義の名の元に勧善懲悪なんてするつもりも無いし、同じ様に、悪の名の元に非道を行うつもりも全くない。
ただ、自分の思うが儘に、自由に生きたいだけだ。
ある程度のの柵は仕方がないし、完全に自由なだけでいられる訳もないので、そこは社会の中に生きる者としての義務も当然果たすけれども、自分から負う理由もない責任を背負いに行ったりする気もない。
「ですが、アベル様が臨まなくても、いずれはそうした動きが出て来るのは止められないと思います」
つまり、俺の元で一つになる事を望む声がいずれは上がって来ると?
あるかも知れないじゃなくて、あるだろうな。今でも、一部の王とかは俺に国を任せたいとか思ってる節があるし・・・・・・。
「多分、アベルがヒューマンの大陸を統一しようとしたら、自分で思うよりもずっと簡単に統一できると思う」
「むしろ、反対する人なんていないんじゃない?」
「アベルが大陸を支配する王になって、今の国々を収めている王たちがそのまま貴族になるだけ?」
「アベルなら、遺跡から発掘した兵器とかを使って、魔域の開放も出来るだろうし」
「そうなれば領地も増えるし、良い事尽くめって手ぐすね引いていそう」
何かメリアたちが好き勝手行っているんだけど・・・・・・。
何か戻るのが億劫になってきた。
ヒューマンの事は放っておいて、モフモフ天国スピリットに行っちゃおうかなとか本気で思うよ。
とりあえずは、遺跡の調査が終わるまでに何とか対策を考えるしかないか・・・・・・。
後、やっぱりはやめに一度戻って、俺を王にしようとか思わない様にって釘を刺しておいた方が良いよな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・面倒くさい。




