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「・・・・・・レジェンドクラスの魔物の侵入すら阻むと?」

「そうみたいだな。まだ試験段階らしくて、あの遺跡で実験的に植えられて、効力を調べたりなどしていたらしい」

「うわ、判っていたつもりだったけど、更に想像も付かない物を平然と残してくれるよね」


 レギン王はたっぷり時間をかけて、何とか言葉を絞り出したので、追加の説明をするとケイが本気で呆れたとばかりに溜息を付く。

 いやまあ気持ちは判る。

 魔除けの聖樹は、魔物との戦いの在り方を根本から覆しかねない。

 そう、もしも魔除けの聖樹を魔域を除く全ての地にその効果が及ぶように植えていったらどうなるだろう?

 答えは魔物の人の領域への侵攻を阻める。つまりは世界は、実質的に魔物の脅威から解放されるのだ。

 もっとも、これは確実とは言い切れないし、試さなければならない事も多すぎる。 

 例えば、魔物は魔域の中枢にあるゲートからこちら側の世界に現れる訳だけども、こちらの世界へと来た魔物は、自ら魔域から外へと進行していく以外にも、魔域そのものが魔物を転移させて各地に飛ばして侵攻していたりする。

 魔除けの聖樹は魔域から直接侵攻してくる魔物の侵入は阻めるけれども、おそらくは転移して進入して来る魔物までは防げないし、そして、魔除けの効果範囲内に侵入してきた魔物に対して、どんな効果を発揮するのかも判らない。

 魔物を寄せ付けない効力を持つだけなので、中に入った魔物には何の効力もないのか、単に不快な思いをさせるだけなのか、或いは弱体化、もしくは滅するまでの効力までもっているのか?

 どうなるのかまるで判らないのだ。

 そして、最大の問題が、世界中に植えるだけの魔除けの聖樹が確保できるか判らない事。


 今の所、魔除けの聖樹はあの遺跡に植えられている数十本しかない。

 どうやったら苗木を増やせるのかも判らないし、実際に増やせるのかどうかも判らない。

 むしろ、世界中に植えるために必要な数億、数十億もの数を揃えられる可能性はまずないだろう。

 何故なら、魔除けの聖樹は間違いなく、自然に生まれた者ではなく、人工的に造られた植物だからだ。

 一体どうやったら、魔物を阻む領域を生み出す聖樹を造り出せたのか想像も付かない。

 だけども、少なくても今の技術で再現可能なモノでは無いのは確実だろう。


「遺跡内で確認できたのは、全部で30本。その内のひとつをこちらに持ち帰り、調査をするくらいなら問題ないだろうが」

「王都だけを魔物の脅威から解放するのかと、不満の声を上げる者も出て来るかも知れんな」


 今は魔物の脅威に対して、誰もが平等に危険の中にいる状態だ。勿論、魔物と対抗する最前線である防衛都市が一番危険である事は間違いないが、何処であっても、何時、魔物の脅威に晒されるか判らないのは変わらない。

 それが、魔よけの聖樹を研究の為に王都に持ち替えれば、王都だけが魔物の脅威から解放される事になる。

 そうなれば、王都に居る王族や貴族たちだけが安全な場所にいると不満を持つ者が出て来てもおかしくはない。


「どこかの防衛都市で試そうにも、その場合にも問題があるし。これは確かに迂闊には手出しできない厄介なモノだな」

「どうするかの判断はそちらに任せる。どうするも自由だ」

「アベル、それって責任丸投げって言わない?」


 その通りだけども、じゃあ俺がどうするか決めようって訳にはいかない。


「まあ、アベル殿に決めてもらう訳にはいかぬからな。とりあえず各国に連絡して協議するしかあるまい」


 これは王が決める案件だ。

 まあ、他の王たちとよく協議して、どうするかを決めてくれ。

 因みに、この件に対してもヒューマンは完全に置いてきぼりになるのは確定済み。

 これはヒューマンが一つの国に纏まっていないのが悪い。

 本の種族の国がそれぞれ一本ずつ自国で調べる事にしたとして、それでもまだ半数は残る訳だけども、ヒューマンの国に対しては数が足りない。

 そうなると、どの国が魔除けの聖樹を得るかで争いになりかねないので、この際はそもそも無視の方向になる。

 まあ実際は、俺も一つ確保して調べる事になるだろうから、俺がヒューマンの代表になる訳で、無視とは違うんだけども。


「どこかの遺跡に苗木でも残されていればいいんだけどな。そうしたら、魔域のゲートの周辺に植えてみるとかの実験も出来るし」


 実際の所、こんなのを造ったんなら真っ先に試してみるべきだろう。

 魔物の侵入を防ぐ魔除けの聖樹でゲート周辺を覆ってしまえば、そもそもゲートからの魔物り進行そのものを防ぐ事すら可能かも知れない。


「それについては、これからの調査を期待しよう。ともかく、この件は確かに引き受けよう」


 どうかな、発掘済みの遺跡に苗木とかがある可能性は低いと思う。

 あったなら、過去にもう転生者が何かしらしてるはずだし・・・・・・。

 それ以前に、良く遺跡に魔除けの聖樹が残っていたモノだ。

 まあ良いや。とりあえずこの件についてはお終い。後でどうするか結論が出たなら話が来るだろう。


「どうするか決まったら連絡を、それじゃあ俺はこれで」


 話は終わったので退出する。ケイも当然の様について来るけど、さてこれからどうしよう?

 アストラル魔法の習得訓練までにはまだ時間があるし、思いがけず時間が空いてしまったけど何をしよう?


「少し時間もあるし、王都の散策でもするかな」

「街に降りるの?」

「ああ、そう言えばあまり街の散策をしていなかったからな」


 前回来た時には多少したのだけども、今回ははじめっからとんでもない厄介事に巻き込まれたし、レイザラムを狙う鍛冶師とかが面倒くさかったので、街の方に入っていない。

 このままじゃもったいない。せっかくドワーフの国に来ているのだから、観光もシッカリ楽しまないと。


「それなら私が案内するよ。せっかくだしデートと行きましょう」

「それは嬉しいけど、街の事をよく知っているのか?」


 案内してくれるのは嬉しいんだけども、お姫様が街のついて良く知っているものなのだろうか?

 まあ、この世界に前世の常識が通用しないのは判っているけど、姫が気楽に街を散策とかしているものなのだろうか?


「当然よ。生まれ育った街なんだから、知らない訳がないじゃない」

「それじゃあ、案内してもらおうかな。女の子の方にエスコートしてもらうのもどうかと思うけど」

「そこは気にしない。それに、ユグドラシルでもユリィと一緒にデートしてたでしょ」


 気付かれてた。

 まあ、普通にバレないハズがないか。

 それに、別に隠してた訳じゃないし、なんて考えながらケイの案内で街に行く。 


「ケイのおススメの店とかあるのか?」

「勿論。まずは軽く何か食べましょう」


 連れていかれたのは女性局が一杯のオシャレなカフェ。正直、1人では絶対に入りたくないないのだけども、実は俺だと何の違和感もないんだろうなとは予想がついてる。


「何を考えてるのか判るけど、もう諦めたら?」

「諦めてどうする」

「だけど、魔法で姿を変えたりとかはしないよね?」

「それは俺の主義に反する」


 どう見ても美少女にしか見えない外見を、魔法で変える事は出来るけれども、正直、気が乗らない。

 なので、出来れば自然に男らしく成長して欲しいんだけども、どうにも望み薄な気がするんだよな。身長だけでもせめて170センチ以上は欲しいんだけども、このままだと届かないかも知れないし・・・・・・。

 因みに、今の身長は150センチ丁度。もうすぐ14歳になる男子の平均身長よりかなり低い。


「まあ良いけど、それよりも此処のパイは最高よ」


 そう言ってケイが注文したのはミートパイとビール。

 これは軽いのかと思ったけど、周りを見るとごく普通にみんな食べている。ドワーフにとっては軽い軽食やおやつの様だ。

 なお、ミートパイは3つあって、それぞれチキンにポーク、ビーフだそうだ。

 20センチくらいあるミートパイが3つ。前世だったら絶対に軽くはないな。

 今となっては余裕どころか食べた内にも入らないけど。


「これは本当に美味いな」


 早速食べてみると、サクサクのパイの中から溢れ出した肉汁が口の中一杯に広がる。濃厚な味付けでありながら決してくどくなく、それどころかアッサリとした後味ですらある。

 そして、ビールと抜群に合う。

 この手の料理は、普通ワインと一緒にじゃないかと思ったんだけども、これはビールとこそ合うように出来ている。


「当然。ドワーフは肉とお酒にはうるさいんだから」


 同じ料理でも、それぞれの酒に最も合う一皿まで研究していると、成程、酒に合う肉料理に対するドワーフの情熱は計り知れないモノがあるな。


「この後は、魔道具のお店に行く? 遺跡から見つかったのやアベルの自家製の程じゃないけど、度を府の職人の作った物もかなりの優れ物よ」


 それも興味を惹かれる。装機竜人などの製作においても、ドワーフのSクラスの職人の技術は一歩抜きんでているらしいし、グングニールなどに解析から、新技術を確立するのもドワーフがトップを行っているそうだ。それと、それらの技術を応用した魔道具の開発とかも盛んになっていると聞いているから、実は結構楽しみだったりする。

 て言うか、ホントはもっと早く行きたかったんだけどね・・・・・・。

 さて、どんな魔道具があるのか楽しみなんだけど、


「ケイこれは?」

「ここのもう一つの名物のローストサンドよ」


 何時の間にか、薄切りにしたロースト肉をたっぷりと挟んだサンドイッチとワインが。


「そのまま食べるよりもこうしてサンドイッチにした方が美味しいのよ」


 サンドイッチ用に造られたロースト肉と、ひとつはビーフで間違いないが、残りは一体なんだ?

 それと、これはワインに合うようにつくられているらしい。確かに、フルボティの赤ワインと良くマッチしている。

 本当に、酒と会う肉料理の研究に抜かりはないみたいだ。



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