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サウラ視点です。

「アイン・ソフ・オウルをですか?」


 彼が私たちを驚かせるのはもう何時もの事だけども、何時もの事だからって、慣れるのはどうやら無理そうだと確信したよ

 それにしてもアイン・ソフ・オウル。アベルの切り札とも言える強力な超級複合魔法。

 アストラル魔法と呼ばれるそれは、精神魔法と魂魄魔法、そして光魔法と闇魔法の4つの属性魔法を合わせた複合魔法で、極めて扱いが難して超級魔法のひとつ。

 今の所使えるのはアベルを含むレジェンドクラスの超越者だけで、ミランダも一緒にアベルに教えを受けて挑戦してみたけどダメだったらしい。

 そんな超高難度の魔法をいきなり覚えてみないかと言われても困る。


「アベル、キミね。あの魔法は覚えてみないかって言われても覚えられるモノじゃないよ?」

「そこは判ってるって、だから、まずはもっと簡単なアストラル魔法から覚えて行けばいい」

「それなら、私の時もはじめからそうしてくれれば良かったんだけどね・・・・・・」


 ミランダがジト目でアベルを睨むのも当然だと思う。

 ただ、アストラル魔法は覚えられレで使い勝手が極めていいので、出来れば覚えたい。


「覚えられるなら覚えたいですけど、いったいどうやって?」

「ああそれは、俺もやった練習法を教えるから」


 そんな訳で、私たちは遺跡探索の傍ら、新しい魔法の練習を始める事になった。


「まずは精神魔法に魂魄魔法、光と闇の4つの魔法の同時展開から始めようか、魔法はどれも同規模で、展開できたら少しずつそれぞれの魔法を合わせて行く」


 4つの属性魔法を合わせた複合魔法であるアストラル魔法は、そもそもその4つの属性を持っていないと使えないので、魔法の習得訓練をするのは、属性を持っているメンバーだけなんだけど、まさか半数以上も属性を持っているとは思わなかった。

と言うか、精神魔法は基本使用が禁止されているから、私自身もその属性を持っているのを今まで知らなんったんだけど・・・・・・。

 そして、当然のようにまずは精神魔法を使えるようになるところから始まったのは、お察しの通り。

 習得までに3週間もかかったのは、アベルとしても想定外だったみたいだけども、そんな簡単に未知の属性の魔法を使いこなせる様になんてならない。

 1週間程度で使いこなせる様にしようとか、いくらなんでも無茶が過ぎる。

 とりあえず、みんななんとか精神魔法をある程度は使いこなせるようになったので、早速アストラル魔法の習得訓練を始めた訳だけども、4つの属性魔法を全く同じ威力で発動させるのは思ったよりも難しい。


「シオン、シャクティも魔法の規模にバラつきがあるよ。キッチリと同じにしないと」

「判っているけど難しい・・・・・・」


 複合魔法は、合わせる魔法を同じ威力で展開する必要がある。どちらか一方の威力が大きいと、反発して失敗してしまうのだけども、この同威力に揃えるのがなかなか難しい。

 どうしても得手不得手があるし、特異な属性の魔法の方が力が強くなってしまうので、同一の出力で魔法を発動させるのは中々に難しい。

 まあ、一度覚えてしまえば後は簡単なんだけど・・・・・・・。

 実際、アベルだってアストラル魔法を使う時に4つの属性魔法を展開してから融合させてなんて方法は使ってない。一度覚えてしまえば、次からははじめからアストラル魔法として発動できるのだけども、それが本当に難しい。

 

 私も、なんとか4つの属性魔法を同威力に揃えて、そこから融合させていこうとするのだけども、どれだけ集中しても、完全の混じり合う前に魔法が崩れてしまって、何回やっても成功の糸口すらつかめない。


「判っていたけど難しい・・・・・・」

「いきなり4属性を合わせるのが難しいなら、まずは、精神と魂魄、光と闇の属性を合わせて融合してみる所から初めてみるのも手だよ。多少は感覚がつかめるかも知れないから」


 成程。ではまずはそっちから少しずつやってみるとしよう。

 でも、光と闇の魔法を融合させれば、虚無の属性魔法になるのは知っているけど、精神と魂魄の2つの属性魔法を合わせたらいったいどんな属性になるの?


「それは良いけど、精神と魂魄の2つの魔法を融合させるとどんな魔法になるの?」

「生命魔法だよ。命を司る魔法。エイルにも使われている魔法だよ」


 戦闘バイオロイドであるエイルの魂はその魔法で生み出されたと。


「と言っても、普通ならば一定時間人工生命体を生み出すくらいまでが精一杯のハズなんだけどね」

「魔法でお気楽に、Sクラスの力を宿せる魂を精製できるなんて普通に考えてありえない」


 それもごもっとも。

 というかそれが可能なら、例えばDランクの力しか持たない人に生命魔法をかけてSクラスの力を持ち得る様にする事すら可能なハズ。だけど、実際にはそんな事は出来ない。出来ないよね?


「出来ないよ。これもかつて研究されたらしいけど、成功した事はないそうだ」


 因みに、10万年前の遺跡じゃなくて、この前の30万年の遺跡に記憶が残されていたそう。

 魔物の脅威に対抗するために禁忌に触れて、多くの犠牲者を出したとの事。その怒りと絶望もまた、あの遺跡を残した人に、全てを根本から終わらせるための兵器を造らせたんだと思う。


「それはさて置き、今日はこの辺りで終わりかな。そろそろ集中力が切れそうだし」

「確かに・・・・・・」

「これ以上は無理かも・・・・・・」


 魔力の方はまだまだ十分にあるのだけど、もう集中力の方が限界。複合魔法の習得訓練には、半端じゃない集中力を必要とするから、今日はもう精神的に限界。


「3時間程度でこんなに疲れたのははじめてかも・・・・・・」

「明日はもう少し頑張れるさ。複合魔法の習得訓練は、集中力の訓練にもちょうど良いし」


 それは良く知ってる。私は実は光と闇の複合魔法の虚無魔法はもう既に覚えていて、使えるんだけども、その時は、習得するまでに散々集中力を鍛えられた。

 その意味では、これからの苦労をよく知っているから、思わず溜息が出たよ。


 そんな訳で、アストラル魔法の習得訓練をはじめて早1週間。残念ながら、未だに誰一人習得できてはいない。

 これはむしろ当然。そんなに簡単に覚えられたら、そちらの方がおかしい。

 とはいえ、何時になったら習得の糸口が見えてくるかも判らない状況は、流石に少し焦ってしまわなくもないけど、とりあえず、今日はソッチの事は忘れて遺跡探索。


「今日の遺跡は確か海底に沈んでいるんだよね? どんな遺跡だろ」

「できれば、危険な遺跡じゃないと嬉しいけど、望み薄だよね」


 うん。間違いなく望みは薄いというより、ないに等しいと思う。

 基本的には、10万年前の遺跡は全部、カグヤにもしもの事があったりして、魔物の脅威が増した時の為に残されたモノだから、今の常識なんて通用しない、とんでもない兵器とかばかりなのも当たり前なんだけどね。


「お待たせ。遺跡の下調べは終わったよ」


 そんな事を考えていたら、事前調査に行っていたアベルが戻ってきた。


「お疲れさま。どんな遺跡だったの?」

「ああ、まあレジャー施設? みたいなものかな」


 どんな遺跡だったか聞くと、予想とは違った答が返ってくる。

 だけど、以前にも温泉施設だったり、趣味のサブ・カルチャー満載の遺跡とかもあったし、そういうのが出て来てもおかしくはないのかな?


「それは危険がなくて良かった」

「まあね。何の危険も無い訳じゃなかったけど・・・・・・」


 何やら歯切れが悪い。遺跡自体とは別に、何か転生者が残した危険な物でもあったのかな?

 そういうものはアベルが人知れず回収しているらしいのは知っていたけど、この様子だと相当な危険物が残されていたのは間違いなさそう。

 何があったのか聞くようなマネはしないけどね。

 因みに、アベルも確実に全ての危険物を回収できる訳じゃないから、たまに回収漏れもある。あのサブ・カルチャーの殿堂みたいな遺跡でも、回収し忘れていたモノがあって、ほんの少しだけ私は見てしまったんだけども、あの時は目が腐るかと思ったよ・・・・・・。

 即座にアベルに封印してもらって、無かった事にしたけど、あの時は。


「今見たものは他言無用。キミもすぐに忘れるんだ」


 てスゴイ必死だった。

 うん。気持ちは判るよ。あんなのが万が一にも流出して、広がってしまったらどんな惨事を引き起こすか、考えただけで恐ろしい・・・・・・。

 後で少し聞いてみたんだけども、アベルたちが元いた世界、地球にはあの手のモノをこよなく愛する腐女子と呼ばれる人たちが居たそう。

 私には全く理解できないよ・・・・・・・。

 一体どんな世界だったんだろう。アベルたちの前世で暮らしていた地球は?

 想像するだけで恐ろしいよ。

 後、決してレベリアには言わない事、聞かない様にと念を押された。どうやら、彼女はその腐女子と呼ばれる一部特殊な嗜好の持ち主らしい。

 今は抑えられているけど、もしもその特殊な嗜好が解放されたりしたら、 一体どんな惨事を引き起こすか判らない。或いは、今の内に彼女は殺してしまうか、監禁しておくべきなのかも知れないって、アベルが真剣に続けたのがかなり怖かった。

 だけど、その心配も判る。もしも、その婦女子なる特殊な嗜好の持ち主が現れたら一体どうなってしまうのか、考えるだけでも恐ろしい・・・・・・。

 転生者も、転生者の残した遺産も、或いは、別の意味でこの世界にとって脅威なのかも知れないよ。

 願わくは、これから行く遺跡でまたそれらの危険な物と出会わない事を本当に願うよ。

 そして、それらがアベルの元で永遠に封印されて、決して表に出ない事を・・・・・・。



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