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無事にレイザラムに到着。
ユグドラシルで調査した遺跡の中には、やばすぎて詳細を明かすとかムリすぎる遺跡もいくつかあったけど、何とか調査も無事終了。
何があったのかは精神衛生上黙秘。
ただ、あの30万年の遺跡にあったトンデモ兵器よりも、更に凶悪な代物すらあったとだけ言っておこう。
アレは心臓に悪いとかそんな次元の話で済むモノじゃない・・・・・・。
今更だけども、10万年前の超絶チート転生者たちは自重というものを全く知らない。
あんなのを見せ付けられると、本当に彼らはΩランクで済む実力だったのかが怪しくなってくる。そのさらに上に平然と成っていてもおかしくない気がしてくる。
まあ、常識の範疇を完全逸脱して人たちのやる事や、存在ごと完全に闇に葬り去るのが確定しているモノについてて何時までも気にしていても仕方がない、それよりもとりあえず、ユグドラシルでやるべき事も全部終わったので、今度はレイザラムに来た訳だ。
レイザラムの次は獣人の国に行く予定だったのが、一度ヒューマンの大陸に戻らなくなったけど、とりあえずそれは置いておいて、二度目の訪問となるドワーフの国レイザラム。
前回来た時は、何か腐敗しまっくった聖域の管理者を叩きのめすのに利用されたけど、果たして今度はどうなることやら。
「多分、前回とは別の意味でアベルは大変だと思うけど」
「何故にそう断言できるのか聞いても?」
「だって、シュトラ王子が姉様に贈ったレイザラムの髪飾り、出所がアベルだなんてすぐに判るし、そうなると最高の金属であるレイザラムを手に入れたいと思う人たちが放っておかないでしょ」
言われてみればケイの仰る通り。
レイザラムはミスリルやオリハルコン、ヒヒイロカネ等を遥かに上回る超希少金属。数百年鍛冶一筋に過ごしてきた名工ですら扱った事すらない様な幻の金属だ。
そんな金属を俺が大量に持っているのを知って、ドワーフが黙っているハズがない。
ドワーフの名工たちは目の色を変えてレイザラムを求めるだろうし、持っているだけで最高のステータスになるレイザラム製の品物を手に入れたいと思う貴族たちとかだって大勢いるはずだ。
で、貴族の方はともかく、名工の方はそうそう引かないだろう。
彼らにしてみたら一世一代の大チャンス。この機会を逃したらもうレイザラムを鍛える事なんて出来ないと判っているのだから、何が何でも俺からレイザラムを手に入れたいはずだ。
「それはまた、どうしようもなく面倒な事になりそうだな」
「そうね。多分、その筆頭になるのが御爺様だと思うし」
何か不穏な事を言わなかったかなケイさんや。
「御爺様?」
「うん。先代国王のスミス御爺様。王位をお父様に譲られた後に鍛冶職人になられたの。今では我が国一の名工と呼ばれているんだ」
それは非常に厄介と言うか、危険な人物の様だ。
「そうか、あったら大変そうだな。ところで、何か出口に待ち構えている人がいるみたいなんだけど、あの人ってひょっとするのかな?」
空港に着艦して早速ヒュペリオンから降りようとしていた所なんだけども、何か既に入り口前に陣取っている人物がいる。
「うん。間違いなく御爺様」
「父上、いくら何でもこれは・・・・・・」
こうなるだろうと予想していたらしいケイは平然としているけど、レギン王の方は頭を抱えている。
まあ、この後の展開。前国王が俺にレイザラムを出せと詰め寄って来るのが目に見えているのだから、頭を抱えたくもなるだろう。
「ああ、済まないが少し待っていてくれるかなアベル殿。先に話して来るので、ケイ行くぞ」
「話しても無駄だと思うけど」
「お父様は、鍛冶の事になると見境がありませんから」
無駄だと判っていても行かない訳にはいかないらしく、王に王妃にケイ、王家御一家で先代を抑えに行った。
「スミスお爺様になら、ケイとの婚約の挨拶の品としてでも、レイザラムを送っても問題ないと思うけど、そうすると他の鍛冶師の方たちが黙ってないのかな?」
そうだと思うよユリィ。
いくら先代国王であり、この国で一番の名工とはいえ、孫との婚約の挨拶の品としてアッサリとレイザラムを手にれたなんてなると、本の名工たちが黙っていないと言うか、暴動を起こしかねない。
「だろうね。それよりも、なにか話し合いにすらなってない気がするのは気のせいかな?」
絶対に気の所為じゃないな。何か今にもコッチに突進してきそうなんだが。
「うん確かにね。ケイたちが突破される前に此方から行った方が良いと思う」
「それが妥当か、それじゃあ行こうかね。みんなは少しは慣れていた方が良いと思うよ」
「そうさせてもらうわ。ちょっと危険だと思うし」
ココからでも判るスミス前王の熱狂的な情熱にミランダも身の危険を感じている模様。
とりあえず、みんなの事はミランダに任せて俺も話し合いになっていない現場に行く事にする。
「はじめまして、スミス前国王。私は貴方の孫であるケイリーン王女と婚約した、レジェンドクラス冒険者のアベルです」
「おお、前回いらした時には顔も見戦で失礼したな。我はスミス。今は一階の鍛冶師に過ぎぬ。故にそう改まる必要はない。それよりもだ、其方の持つレイザラムを少し譲って欲しい」
いきなり本題に来たな。
「お譲りしても構いませんが、いくつか条件が、此処でお話しする内容でもありませんので、まずは王宮に行きませんか」
勿論、滞在先は城になるんだから、さっさと行った方が良いに決まっている。
この御仁はさっさとレイザラムを手に入れて、そのまま自分の工房に直行したいんだろうけど、此処でアッサリレイザラムを渡すとかありえないから。
そんな事をしたら、この後どんな面倒な事になるか知れたもんじゃない。
「むっ。確かにそうだな。到着早々の相手にイキナリ頼むのは無礼であった。許されよ」
手に入りそうだと判ったからか、一気にスミスお爺様は落ち着きを取り戻す。
うん。本当に落ち着いてもらえてなによりだよ。
はじめの挨拶の時なんか、断ったら命はないと思えとでも言いたげな殺気までは成ってたし・・・・・・。
とりあえずドワーフ一の名工。先代国王落ち着かせる事が出来たので、早速城に行くとしますか。
「それでアベル殿、レイザラムを譲ってくれる条件とは?」
城に着いて俺たちが滞在する部屋に案内されて、一段落着いたと思ったら早速だけども、どうやら譲るのにいくつか条件があると言ったのは覚えていたらしい。
「まずはコレを見てください」
「これは、ミスリルじゃな。しかし、ここまで見事に逸品は見た事がない・・・・・・」
因みに俺が魔力を使って作った品だ。
所謂ミスリルソード。鍛える間ずっと純度の高い魔力に包まれていたため、通常のミスリルとは比較にならない程の強度と魔力の伝達力を持っている。
そんな訳で魔力を刀身に纏わせるて魔力剣としても高い威力を発揮するし、魔法の発動を手助けする発動デバイスとしても優秀な一品だ。
「これは俺が鍛えた物です。この剣と同等以上の剣を鍛え上げる。それがレイザラムをお譲りする条件です」
「これ程の名刀を鍛え上げろと・・・・・・」
「レイザラムを鍛えるには、少なくもこの程度の腕がなければ不可能です。この程度の件も撃てない未熟者が鍛えたのでは、単なるがらくたにしかならないでしょう。それは、この国と同じ名を持つ金属への冒涜です」
これは脅しではなくて本当に、少なくても、このくらいの剣が打てない様じゃあ話にならない。
ぶっちゃけ、レイザラムの扱いはミスリルの1万倍は難しい。そしてミスリルですら、魔法金属としての特性を活かしきって加工するのは熟練の技術を必要とする。鋼を鍛えるのとは訳が違う極めて高度な技術を必要とするのだ。
この御仁はミスリルを完璧に鍛え上げるだけの腕を持っているのは確実としても、それでも、レイザラムを鍛えるに足る力量を持っているかは判らない。
「ですからこれは、レイザラムを扱うに相応しいかどうかを見極めるテストです。この剣と同等の物を鍛え上げて来たのなら。レイザラムをお譲りします」
「成程、我にレイザラムをゆずに相応しいだけの力量を示せと言うのだな。言われてみれば当然の事よ。合い判った。この身の全てを捧げて最高の一振りを鍛え上げてみせよう」
どうやら無事に納得してくれとようだ。
鍛冶師としてのプライドと言うべきか、逆に、バカにするなと怒り狂ってしまうんじゃないかとも思っていたんだけども、自分の腕に自信を持つのは良いけど、変にプライドだけ高いのも居るからな・・・・・・。
そんな人物でなかったのが本当に幸いだ。
「それにしても、これ程の名刀を鍛えるとは、アベル殿は職人としても超一流なのだな」
なんて考えてたら、何か嬉しそうにそんな事を言ってくるけど、魔力を使って鍛えているので、言ってしまえば魔法で作っているだけなんだから鍛冶職人とは違うんだけど・・・・・・。
いや、別に違いはしないか?
「ケイも良き相手を捕まえたものよ。これならば、アレについても問題いであろう」
はい? 何か不穏な事を言いませんでしたか・・・・・・。
アレとは一体なんぞよ?
何か着いた早々、面倒事の気配がしてくるんだけど、気の所為かな?




