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アシャ視点です。

「あのシュトラ王子が結婚か、何かおかしな気分」 

「それは確かにね。あの人、私たちの前では基本ふざけていたから」


 正直、次期王と言われてもピンと来ない。

 ケイやディアナにとっては天敵。ある意味でもの凄く危険な人物としか思ってなかったのだから当然だと思う。

 国内の不穏分子を炙り出して一気に殲滅するための演技だったと聞いたけど、正直、今までの印象が強すぎて信じきれない。


「ただ、お似合いだったし素敵だったのも確かよね」

「前から、外見だけは良かったし」


 これまた辛辣だけど、ボクも正直、シュトラ王子の事は嫌っていたし、早々感情は変えられないのだから仕方がないかな。

 ただ、本当に素敵だったと思う。クリスタルスパイダーシルク製の輝くスーツとドレスを纏った二人は本当にキレイだったしお似合いだった。

 結局、2人の結婚式はジエンドクラスの食材が見付かった事で予定よりもはるかに盛大に行われる事になった。具体的にはレジェンドクラスの超越者が5人そろって出席する事になったりとか。

 元々は、アベル以外出席するつもりも無かったそうなんだけど、何か、発見された最高の食材を手札に交渉がされたらしい。

 特に、果物はそのまま食べるのならともかく、調理して食べようと思ったら最高のパティシエと世界樹の蜜の様な、釣り合うだけの最高の食材が必要になるから、その辺りも含めてこう使用したみたい。

 自由過ぎるレジェンドクラスの超越者たちと色々と話し合いが出来ただけでもシュトラ王子の功績になるし、それも含めて、アベルからの結婚祝いみたいなものかな?


「まあ、無事に終わって良かったよね。これでレイザラムに行けるし」

「レイザラムの方にはどんな遺跡があるのかな」

「後、間違いなくあの30万年前の遺跡みたいなトラブルも起こるよね」

「それは必至、アベルの行く所に何も起きないハズがない」


 キリアが断言するのを酷いとは言えない。正直、ボクも同感だから。 


 因みに今はもうレイザラムへ向かう最中。国王一家も一緒にヒュペリオンで飛行中。

 アベルはこうなる事も判っていたらしくて「判っていても政治的な駆け引きとかはなれないな」とぼやいていた。

 まあ、一緒に国に戻るのはレジェンドクラスのアベルとの親密さをアピールする為だし、その辺りは王族として当然の判断とは言え、厄介だなとか思っているんだろうけど、ドワーフの姫であるケイと婚約したアベルに面倒なんて言っている暇はない。

 それに、レギン王も遺跡の調査とかで色々と慌ただしくなるのももう目に見えているから、その分も含めて少しでも元を取っておきたいんだと思う。

 アベルの起こしたとんでもない厄介事の責任を取って後始末をしないといけないんだから大変だよね。何事も起きなければ良いけど、そんな奇跡みたいなこと起きるハズもないし。

 うん。本当に何事もなく終わったら奇跡だと思う。


「本当に、何が起こるにしても、国が終わってしまうような事にならない事を祈るよ」

「あの、何が起こったとしても、別にアベルの所為じゃないと思うんだけど・・・・・・」


 何か悲壮感さえ漂わせるケイに、ユリィも困惑気味。

 いや、違うかな。国を揺るがすほどの大事件がこれから起こるのはもう確定に近いし、その中心にアベルが居るのも確実だけど、別にアベルが何か問題を起こして事件になる訳じゃないから、アベルが悪い訳じゃないハズなんだけどね。どうしても割り切れないと言うか・・・・・・。


「確かに、それにあの30万年の遺跡などは、彼が偶然見つけなければどんな惨事を引き起こしていたかも知れませんし」

「確かにシャクティの言う通りよね。と言うか、問題なのは遺跡にとんでもないモノを残していった過去の超絶者たちよね」

「まあ、それを調べて回るなんてし出したのはアベルだけど、状況的にしておかないと危険そうだし」


 シャクティがアベルを擁護して、ヒルデとクリスが補足する。

 うん。言われてみれば確かにその通り。

 それよりもなによりも、過去に幾度となくなされた封印が、どれも10万年周期で破られている方が問題。


「ひょっとしたら、カグヤの封印も破られてしまうかも知れないのだからね」

「だとしたら、それに対抗するのがアベルたちって事だよね」


 そしてもし、カグヤの封印が破られでもしたならば、その時はアベルが先頭に立って立ち向かう事になるのだと思う。

 これまでの歴史でも、幾度となく封印を繰り返してきたのも、封印が破られる度に溢れ出す魔物の軍勢を退けて来たのも、アベルたちと同じ転生者。

 そして、ちょうど封印が破られる時期に転生して来たと言う事は、アベルには溢れ出す魔物を退け、再び封印を施す使命があるって事なのかも知れない。


「そう考えると、アベルって本当に可哀想」

「それは、これまで封印をしてきてくれたこれまでの人たちも同じだけど」


 ルシリスの言う通り、これから過酷な戦いに身を投じる事になるかも知れないアベルを含めて、魔域の封印の為に10万年周期で転生してくる人たちは、ある意味でこの世界の犠牲者でしかないと思う。

 そして、都合よく10万年周期でくる破滅に対抗できる超絶者がこの世界に転生して来る事を含めて、確かに、アベルが疑心暗鬼になるみたいに、何者かの意思が動いているようにしか見えない。


 或いは、本当に神の手の上で世界の歩みが決められているとでもいうのだろうか?


 これまでの世界の歴史、語られることの無かった、知られることの無かった、転生者たちだけが辿り着いたこの世界の真実。それを知ると本当にそんな疑念や疑問が拭えなくなる。


「もしも、本当にカグヤの封印が破られるような事に、アベルが溢れ出す魔物に立ち向かう事になったなら、その時は私たちも彼と共にあるべきです」

「アベルと一緒に居る私たちの責任」

「転生者が世界を護るために必要なシステムだとしても、彼らだけに任せていいなんて事にはならないからね」


 もしも本当にカグヤの封印が湯ぶられるのなら、それに立ち向かうのは私たちの使命。アベルがこの世界を護るために生まれたのだとしても、それで彼に全てを任せてしまって良い事にはならない。


「その為にも、もっと強くならないと」


 もしアベルが、本当に10万年周期の禍に対抗する使命があるのなら、彼は確実にジエンドクラスの至るし、他の転生者、ザッシュたちも同じようにジエンドクラスの頂に至る事になる。

 それに対して、ボクたちはどこまで行けるか判らない。生まれた時から至る事が義務付けられていたSクラスには無事に至る事が出来た。だけど、その先、レジェンドクラスの超越者に至れるとは正直思えない。

 自分がその頂に至れると想像もできない。

 だけど、実際にカグヤの封印が解けたなら、レジェンドクラスどころかジエンドクラスの力が必要になるのも目に見えている。

 アベルと共に魔物の侵攻に立ち向かうには、それ程の力が必要になるのだから。

 だから、強くなる事を望む。多くの民を護るために、国を護る使命を果たす為に、そして何より、大切なみんなを護れる力が欲しい。

 アベルたちと違って、ジエンドクラスに至れる可能性なんて皆無なのも判っている。判っていても、その頂を目指して努力し続けるべきだと思う。


「ひょっとしたら、私たちがアベルの元に集まったのも運命だったのかもね」

「人類すべての力を集める必要があるから、王族である私たちが集ったと?」


 それどころか、ボクたち自体が仕組まれた結果だったとしてもおかしくない。

 同世代の姫が全種族に生まれて、当たり前の様に親交を得たのも全て仕組まれていたんじゃないかって、そんな気さえして来てしまう。


「もしそうだとしても、これからどうするかを決めるのは紛れもない私たち自身の意思」


 同じ事を考えたのだろうシオンは、だからこそハッキリと断言した。

 ボクたちが友達になったのも誰かに仕組まれたからじゃなくて、ボクたち自身が決めた事。

 この想いも絆も、決して誰かに与えられたモノなんかじゃない。ボクたち自身が育んで来たもの。私たちの友情は例え神であっても、好きに利用して良いものなんかじゃない。

 だから、仮にボクたちが会いまみえたのが仕組まれた事だったとしても、ボクたちの想いはボクたち自身が育て上げたボクたちだけのもの。


「ええ、強くなるのも王族として生まれた使命だけではなく。私たち自身が大切なモノを護れる力が欲しいからです」


 ミストは力強く自分の想いを言葉にする。

 その想いは私たちも同じ。ボクたち全員の想い。

 はじめは確かに王家に生まれた使命からであっても、確かに私たちは大切なモノを護りえる力を自分自身で欲した。何かを護れるようになりたいと願ったのは自分自身。

 

 だからこそ、ボクたちは何があっても戦える力が欲しい。


「だから、何処までやれるか判らないけど、みんなで精一杯頑張ろう」


 何があっても大切なモノを護れる様に、ボクたちは力を望む。強くなる事を目指す。

 今は、ただそれだけを目指して行けばいい。それに、その道はアベルが示してくれると思う。

 だから、とりあえずはレイザラムでどんな事が起きるかかな。

 過去からの警告通りに、アベルが警戒している様に本当にカグヤの封印が解かれてしまうのか、それを確かめるためにも何が起きるか注意しておかないと。

 それに、騒ぎの中心でアタフタするアベルの様子も楽しいし。

 うん。レイザラムに着いたけど、本当にこれから何が起きるか楽しみかも。



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