表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/398

203

ディアナ視点です。

 30万年も前の遺跡が今更見つかって、しかもそれが元で大変な騒ぎになるなんて、本当に良そうもしない事が次から次へと起こる。

 一応、別にアベルが騒ぎを引き起こしている訳じゃないのは判っているつもり。

 つもりだけども、こうも立て続けに色々と起きると、何か厄介事を呼び寄せるモノでもあるんじゃないかと思えてくるよ。


「話には聞いていたけど、実際に自分で体験してみると、本当にとんでもないね」

「何をどうやったら、30万年の時を経て兵器が完成した丁度その時、その場言い合わせるなんて偶然が起こり得るのか理解に苦しむよ」


 キリアと二人、これまでの事を思い返してみて呆れてしまう。 

 本当にどんな偶然だろう?

 確率としてもう偶然じゃありえない様な話だと思う。


「まあ、あの遺跡を残したのもアベルと同じ転生者て事だから、何かしら引き合うモノがあるのかも知れないけどね」

「それに、過去の転生者のしてきた事を考えれば、アベルなんてまだまだ生易しいレベルなんだとも思う」


 魔物の世界を攻撃して破壊する為なんて、とんでもない兵器を残したくれたのもアベルと同じ転生者。

 しかも、Ωランクの超絶者だったっていうんだから本当に・・・・・・。

 カグヤを造った10万年前の超絶チート転生者は、多分その後別の世界へ旅立ったって聞くし。

 魔域を開放した結果、魔物の地井侵攻を引き起こした惨事を引き起こしたのも、ヒューマンの大陸を統一して、他種族に対してまで侵略戦争を仕掛けて、ヒューマンと私たちの各種族との関係が断絶するキッカケを造ったのも転生者との事。

 それと、ティリアの御先祖様も転生者でカグヤにまで至ったらしいし、建国もしてる。

 彼らが当時に引き起こした騒動と混乱を思い浮かべてみれば、まず間違いなくアベルの比じゃないのは確実。


「「転生者、騒ぎを起こさずにはいられないのかな?」」


 そんな疑問の言葉か重なって、思わず二人で声をあげて笑ってしまう。


「他の3人は大人しいんだけど」

「それもアベルの陰に隠れてるからだと思う」


 特にレベリアが何か別の意味で危険な気がする。アベルが、腐女子なんかをこの世界に根付かせるつもりは無いって断言してたけど、婦女子? 一体何だったのか、本能が知らない方が良いって警告して来たから、あえて聞こうとは思わなかったし、これからもスルーしておいた方が賢明だと思う。


「まあ、アベルは心配し過ぎだと思うけどね」

「これまでの転生者がしてきた事や、自分に降りかかってきた事を考えると仕方ないかも知れないし」


 何か、Ωランクの魔物よりも更に強力な魔物が存在する可能性が出て来たからって、それが現れてしまうんじゃないかとか考えているみたいだった。

 正直心配のし過ぎ。

 何かフラグを立てる? みたいな事を心配してたみたいだけども、そんな事は起こらない。


「素もそれでも、心配症になり過ぎ。あれじゃあもう被害妄想に近いよね」

「もし仮にそんなモノが存在していたとして、こちら側に干渉してこれるのかにこの世界はとうの昔に滅んでいるからね」


 こうして私たちが今を生きている時点で、心配する必要はないと思うけれども、当たり前の日常が何時までも続く保証もない事も理解しているから、何か出来る事があるかもと思うのなら、悩んでみれば良いんじゃないかなとも思う。


「と、もうそろそろグングニールの戦闘シュミレーションの時間だっけ?」

「あっ、もうそんな時間? 楽しみだったんだよね」


 アベルが討伐したレジェンドクラス数多くの魔物、そのデータを基にした対レジェンドクラス用の戦闘シュミレーション。

 それを本格的に開始するのが決まって、正直に言ってスゴイドキドキしている。

 だって、これから今まで経験したことの無い未知の領域に足を踏み入れるんだ。

 私たちも、レジェンドクラスの魔物を討伐できるようになる。そう思うと心が躍る。


 それと、特にユリィたちが張り切っている。

 彼女たちは、アベルがレジェンドクラスになった影響で起きた一件の時、一緒に戦う事も出来ずにただ見ている事しか出来なかったのがずっと悔しかったんだ。

 だからこそ、今度同じ事があった時には自分たちも肩を並べて戦えるようになっていたいと思っている。

 恋する乙女の純情かな?

 でも、そうするととっくにシャクティたちもアベルに恋してる事になるけど?

 まあ、本当のところはどうかなんて本人たちでも判らないだろうし、まして私たちに判るハズがない。だからそれはひとまず置いておいて、


「それじゃあ行こうか」


 そうやって手を差し出してくれるキリアの手を取って、私は彼女の肩にふわりと乗る。

 ココは私の特等席。

 こうしてキリアの肩に居る時が一番落ち着く。安心していられる。だから、ここに居て良いのは私だけ。私だけの特等席。


「甘えん坊だなディアナは」


 だから、私以外の誰にも渡さない。

 そんな事を思っているのを見透かされたみたいに、キリアは私の頭を優しく撫でる。それに対して、私は自分のオデコをキリアのオデコにこつんと当てる。

 そうやって、少し互いの体温を感じ合ってから、私たちはグングニール戦闘シュミレーションに向かう。 


 シュミレーション訓練は実際にグングニールに搭乗して行われる。

 ただし、当然だけども期待そのものは動かさない。搭載されている仮想戦闘モードを利用した他訓練だけども、実はこれって結構な額の費用が掛かる。

 確か、Sクラスの魔域ひとつはこの訓練で消費してしまうので、一回で数百万リーゼの出費が必要となるから、実際に起動させて行う訓練よりははるかに安上がりでも、それでも早々容易く行える訓練でもなかったハズなんだけど・・・・・・。


「まだまだグングニールのスペックを引き出しきれていないな」


 既に50回目を迎えて戦闘シュミレーション訓練を終えて、アベルは私たちの動きをそう評した。


「それは判っているけど、余り無茶を言わないで欲しい。あんなハイスペックをそんなに簡単に使いこなせないよ」


 本当にその通り。

 正直、グングニールのフル・スペックは私たちの想像を超えていた。

 シュミレーション初めてその性能を最大値まで発揮させた時、私たちは全く制御すらできなかった。

 戦闘訓練以前の問題で、魔物と戦うどころか機体を制御すら出来ずに自爆して一回目のシュミレーションは終わって、その後なんとか機体の制御が出来るようになるまでに10回。ある程度魔物と戦える様になるまでに更に10回。

 そして、何とか倒せる様になるまで更に10回。

 その後もシュミレーションを続けているけど、まだ完全に使いこなせていないのは実際に動かしてる私たちが誰よりも良く判っている。


「と言うか、いくら何でもペースが早過ぎだよ。まだ初めて1週間も経ってないんだよ? それでこれだけ上達したんだから、むしろ褒めて欲しいって」


 これまたその通りで、アベルはもう少し私たちの事を褒めてくれても良いと思う。

 とは言え、この訓練だけで既に1億リーゼ以上の出費が出ているんだし、それだけの成果が出てくれないと困るのも確かだと思うけどね。

 て言うか、普通の装機竜人の戦闘シュミレーション訓練の場合で考えていたけど、今回、グングニールでの訓練の場合はもっと費用が掛かっていてもおかしくないんじゃないかなって今更の様に気付いた。

 ひょっとして、もう既に10億リーゼ以上掛かっている?


「そうは言っても、まずは性能を完全に引き出してもらわないと、連携訓練にも移れないしな」

「そりゃあ、まだ訓練でも初歩の初歩で、本格的な戦闘訓練はまだだって判っているけど」


 だからペースが早過ぎだってて私は頬を膨らませる。

 実際に魔物を相手に戦う実戦のシュミレーションをしながら? と思うかも知れないけれども、まさにアベルの言う通りで私たちはまだ本格的な訓練には入れていない。

 まずは全員が期待性能を完全の引き出して、乗りこなせる様になってから始まるのが各機との連携の訓練。装機竜人の基本運用は部隊での連携戦闘。

 それが出来るようになってやっと一人前で、そこからは戦闘シュミレーションもそれまでとは比較にならない程にハードになる。

 今私たちは、私たちにミランダさん、メリアたちにティリア、ザッシュたち。合わせて25人で訓練を受けていて、それに対して戦闘シュミレーションの中で戦う魔物の数は3体だけ。

 ・・・・・・最初は3体相手にボロボロに負けていたのが、今では何とか倒せる様になっているけど、この程度で満足してたんじゃあ仕方がない。

 連携訓練を始めたら相手をする魔物の数は一気に数倍になるし、最終的には同数かそれ以上を相手に勝てるようになるのが目標。

 3体程度を集団でふろぽっこにしてなんとか勝てている現状に満足している暇なんてないのは判っているけど。


「いくらなんでも急ぎ過ぎ」


 もしかしてアベルってサド?

 修行で鍛えると評してみんなをイジメて喜んでないよね?


「何か不穏な事を考えてないか?」

「だとしても、全部キミの所為だね。少しは労りを覚えた方が良いよ」


 労りを覚えても厳しいのに変わりはない気がするのは気のせいかな?

 本当に、確かに私たちも楽しいからついついムキにって喰らい付いて行こうとしちゃうのもいけないのかも知れないけど、本当にアベルの弟子は大変だよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ