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キリア視点です。

 冒険者としての魔物の倒し方。

 それは実に重要な事で、と言うか、今までティリアに教えていなかったのかと突っ込みたい。

 まあ、ティリアの場合は生まれつきの魔力障害の影響で、魔力の制御には長けていても、実戦経験も何もなかったから、まずは基礎の基礎から教えていたのは判るけど、冒険者としての魔物の倒し方も基礎の基礎じゃないかな?


 単に魔物を倒すだけなら軍や騎士、竜騎士たちが居る。

 それなのに冒険者と言う存在が社会の中に当たり前にある理由は、魔物の素材の供給者でもあるから。

 ある意味では、冒険者は狩人と言っても良い存在。

 獲物を狩って、その素材を売る事で生計を立てているのだから間違ってはいない。だからこそ、獲物である魔物を如何に倒すか、素材を傷付けないで倒すかが重要になる。

 それで得られるお金も変わって来るからね。

 どれだけ高ランクの高い実力を持つ冒険者でも、魔物の倒し方が下手で、素材を傷付けてしまっていたんじゃあ大したお金を得られない。

 命を賭けて戦う冒険者は、自分の身を護るための装備なんかを整えるのにも相当な金額が必要だし、高ランクになればなるほどかかる金額も増えて来るので、シッカリと蓄えて置く為にも、確実に儲けられる魔物の倒し方は必須になる。 


「さて、相手はサンダー・バッファローなんだけど、当然だけどコイツ相手に雷系の魔法は効果がない。ついでに火系の魔法は肉や皮を焦がしてしまうからあまりお勧めできない。一番確実なのは水や氷系統の魔法だな。特に水魔法は相手の雷に作用して拡散させたりもできるからな。使い方次第で楽に戦える」


 確かに、サンダー・バッファローは雷を纏っているからこそ怖いのだから、その雷を引っぺがしてしまえば脅威も半減する。安全に狩るにはいい手。


「高圧力で圧縮して水の弾丸で打ち抜いたり、首を斬り落としたりするのが基本かな」


 所謂ウオーターカッター。


「それと、こういった群を相手にする時に諮る順番も大事だ。先頭から順番に倒していこうとすると、倒した獲物を後続に踏みつぶされてしまうからな。逆に群の後ろから仕留めていくのが基本だよ」

「成程。確かにそうですね」

 

 アベルなんかの場合は、一撃で全滅させるのが基本だから、倒す順番とか関係ないだろうけど、確かに突っ込んで来る群の先頭から倒していったんじゃあ、後続の魔物に倒した魔物が吹き飛ばされて木っ端微塵になってしまいかねない。特にサンダー・バッファローみたいな強力な突進力を持つ魔物だと、せっかく倒した魔物がカケラも残らなくなってしまうし、倒す順番は本当に大事。


「今言った事に気を付けて、早速やってみようか」

「はい。頑張ります」


 普通に考えたら、200頭もの魔物を一人で相手にするなんて無謀なんだけど、ココじゃあその程度は当たり前なんだから恐ろしい。

 まあ、確かに突進速度も速いし、攻撃を受けたりしたら危険な魔物なのは確かなんだけど、サンダー・バッファローの場合は突進攻撃しかないから、実は、空さえ飛べれば一方的に殲滅できるオイシイ獲物だったりするんだよね。

 現に今もティリアが上空からの精密射撃で一方的に蹂躙してるし、思いっ切りジャンプして何とか攻撃しようとして来るけど、精々20メートル程度の高さまでが限界だから、保険も兼ねて30メートルくらいの高さから攻撃していけば安心安全。

 うん。確かに冒険者としての魔物の倒し方を教えるには最適な相手だね。


「やりました。倒しきりましたよ」


 最後の1頭を倒したティリアは嬉しそう。

 見てる方が引くように一方的な虐殺だったんだけどね。魔物は人類の天敵。確実に倒すために有効な戦い方をして当然。

 頭を、脳の部分を撃ち抜かれて即死で、傷もないから高値で売れるね。


「こんな簡単に2億リーゼも荒稼ぎできるなんて知ったら、低位の冒険者たちは発狂してしまいますね」

「普通は命懸けで戦うはずが、一方的な虐殺だもんな」


 サナとザッシュの二人が階級社会の理不尽さをマザマザと見せ付けられたとばかりに苦笑している。


「そうは言っても、一方的に殲滅できたのはそれだけの実力がティリアさんにあったからですよ。実力がなければ空を飛べて攻撃を受ける心配はなくても、そもそも倒すことも出来ませんから」


 それもまたその通り、アレッサの言う通り、A+ランクに匹敵する堅い守りを砕けなければそもそも倒す事なんて不可能。

 ティリアの攻撃は、それこそ1メートルの複合装甲版を撃ち抜くほどの威力があったからこそ、あんなにもアッサリと一方的に倒せた。つまりはそれだけの事。


「はい。レッスンは終わり。ティリアは倒した獲物を回収して、自分で冒険者ギルドに持ち込んでみると良い」

「アベル様はどうされるのですか?」

「俺は魔域に行って魔物の討伐をしてくる。ちょっと本気を出すつもりだから、危ないからついて来ない様に」


 イヤ、イヤ、イヤ、キミが本気を出すとかありえないから・・・・・・。

 魔域に居る魔物全滅させてくるつもりかな?

 Sクラスを含んだ数十万どころか数百万の討伐数になりそう。買取にどれだけの資金が必要になるか判らないし、供給過多で素材の値段が暴落したり、財政が破綻したりしそうだから止めて欲しいんだけど。

 うん。ユリィがそう言って必死に止めてるね。

 アベルの場合、冗談じゃなくて本気でそうなりそうだから怖いよ。


「そんな心配しなくても、ある程度魔域の魔物を間引いて来るだけだって」

「本当はアベルがSクラスの強力な魔物を多く倒してくれれば、国の安全にもつながるし、歓迎のハズなのに、どうしても不安になるのはなんでかな」


 それは確実に、アベルが私たちの予想の斜め上を余裕でぶっちぎるからだと思うよユリィ。

 とりあえず、止めても無駄みたいだから魔域に殲滅に行くアベルを見送る事にする。かわりに、遠見の魔法でしっかり監視させてもらう。

 ティリアに回収したサンダー・バッファローをギルドに持って行くのは後にしてもらって、私たちはまずは宮廷に戻る事にする。

 あてがわれた一室にみんなで集まって、アベルの様子を見守る事にする。見守るじゃなくて監視だね。

 何かあったらすぐに駆け付けさせてもらうから。

 それで何が何でも止めるからね。

 本気で命懸けになりそうだし、こちらの身も精神も持たないから、出来れば無茶な真似はしないで欲しいんだけど、望むだけムダかな?

 

 さて私たちが見守る中、魔域の中を飛び回るアベルは早速標的を見付けた模様。

 ヘルレイズ。SS+ランクの魔物。しかも何か10匹は居るんだけど?

 おかしくない? いくら魔域の中だからってSクラスの魔物がそんなに群れているとかありえなくない?

 しかも、魔域には行ったと思ったらすぐに遭遇するとかありえなくない?

 そんな私たちの疑問をよそにアベルは瞬殺。

 判ってた結果だけど呆気なさすぎない・・・・・・。


 今の私じゃあ、あの魔物を相手になら精々2匹までが限界。

 それもかなり激しい戦いを繰り広げて何とか倒せるかなって所、どうやってもあんな風に瞬殺なんて出来ない。

 こうして改めて戦ってる姿をみねと、本当に力の差を理解できるね。

 当然だけど、師匠だし。

 アベルと出会う前の私だったら、ヘルレイズは倒せなかった。

 それが出会ってまだ間もないのに、1人で倒せてしまえるまでに強くなったのだから驚き。

 アベルが考えたんじゃなくて、10万年前の転生者たち、前世でアベルと同じ異世界で暮らしていた人たちが残した修行法らしいけど、強くなるペーがおかしすぎて、自分でもチョット引くんだけど。


「また出た。今度はインフィニット・デスが8匹とかありえないよね」

「アベルって魔物ホイホイ?」


 何か強力な魔物を引き付けるフェロモンでも出しているとか?

 いくら魔域の中でも、活性化もしてないのにそんなに次から次へとSクラスの魔物の群と遭遇するとかありえないから。

 しかも、インフィニット・デスはES+ランクの魔物だよ。

 この中じゃあミランダしか倒せない魔物だし、そのミランダにしても8匹相手は無理だと思う。

 そんな魔物もアベルは瞬殺。

 正直、何をしたのかも判らなかった。何かしたのかなと思った時には8匹のインフィニット・デスは全滅してたし。

 で倒した回収したと思ったらまた来るし。

 今度の相手はカオティック・オーガの群。

 いや、どうしてオーガの最上位種のカオティック・オーガが群れているかな?

 カオティック・オーガは20メートルを超える巨体で、しかも自在に魔法を使いこなして、当然のように空も飛ぶし転移魔法まで使う。

 もうオーガとは別物と言って良い次元の怪物で、SSSランクの魔物。

 それがどう見ても100匹は居るんだけど?


「おかしいよね? 魔域に異常があったなんて話はなかったハズだよね。なのにどうして、こう次から次へとSクラスの魔物が出てくる訳?」


 非常識と言うか、ありえないハズの光景に頭を抱えたくなる。


「まあ、アベルが言った時点で、こうなる事は決まっていたと諦めるしかないね」


 カオティック・オーガも瞬殺したアベルに、もう呆れた溜息も出ない。


「本人は嫌がるだろうけど、転生のトラブルメーカーで、厄介事が向こうからやって来るタイプだから」

「一緒に居る以上、私たちも諦めるしかないよね」


 本当にどこから出て来るのかな? て言う次のSクラスの魔物がアベルに瞬殺されていく姿を見詰めながら、諦めた様に呆れてみせるユリィとケイに、私たちも同意するしかなかったよ。

 本当に、判っていたけどトンデモナイよねアベルは・・・・・・。



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