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「・・・・・・正直に言って、遺跡に同行した事を後悔しているよ」


 だろうな。俺自身。迂闊に遺跡探索なんて始めた事を後悔してるし。

 必要なのは判ってるし、純粋に趣味として楽しんでる面も確かにあるんだけど、ちょっとシャレにならない物のオンパレードは勘弁して欲しい。


「この程度なら、まだまだ生易しいレベルなんだけどな」

「この超広域殲滅兵器が?」


 ユグドラシルでの遺跡調査で、一番初めに訪れた遺跡の中に眠っていたのは、超広域殲滅兵器ガングリーブだ。

 因みに、超広域とあるが、どのくらいの範囲を殲滅するかと言えば、ネーゼリア全域をカバーする。つまりは星ひとつ丸々有効範囲に収めた殲滅兵器と言う事だ。

 なお、殲滅可能なのはA+ランクの魔物まで。

 Sクラス以上の魔物には通用しないらしいが、これは要するに、十万年以上前の、カグヤによる封印が成される前の際限なく魔物が溢れ出し続ける状況で、雑魚を殲滅して強敵との戦いに専念する為に造られたモノだろう。


「殲滅対象がA+ランクまでだからな。魔域の活性化の時などに有効な兵器ではあるけど、そこまでだからな」

「キミたちの判断基準が判らなくなってくるよ・・・・・・」


 この程度で驚かれていてもらっても困るんだけどな。

 これから先、遺跡の調査を続ければこんなのとは比べ物にならない危険物が眠っているのは確実なんだし。


「この程度の物なら驚くに値しないからな。10万年前の兵器はシャレにならない危険物のオンパレードだし」

「これから行く遺跡のどれかには、こんなのとは比べ物にならない危険物が眠っているのは確実だから、覚悟しておいた方が良いよ兄さん」


 俺もユリィも脅している訳ではなくて、単に事実をのべているだけなんだけどもシュトラの反応を見ていると面白くて、揶揄ってやりたくなってくるから困ったものだ。


「とりあえずはここの調査は終わりだけど、これはどうする? このくらいの兵器ならば持ち出して使っても良いと思うけど」

「確かに、これがあれば魔域の活性化が起きた時に被害を抑えられるし」

「こんなトンデモ兵器を持ちだして、平気だと判断出来てしまう感覚が理解不能なんだが・・・・・・」


 何かシュトラが俺とユリィを化け物でも見る目で見ているが、この兵器ならば別に持ち出して公表しても問題はない。


「これは対魔物用に特化した兵器だからな。人間を攻撃できないように設定されているし、戦争に使われる事は絶対にないから問題ないだろ」

「低ランクの冒険者の仕事を奪ってしまう可能性はあるけど」


 とは言っても、これを使うにも相当なエネルギーを必要とするし、費用対効果を考えると早々簡単に、気易く使える物でもない。


「攻撃範囲をユグドラシル国内だけに限定しても、一回の使用でSクラスの魔石10個分のエネルギーは必要だからな、早々気軽に使える物でもないさ。それこそ本当に、魔域の活性化時の切り札だな」


 因みに、最大範囲での攻撃にはジエンドクラスの魔石が必要だ。そんな訳で、搭載されている魔石のエネルギーが尽きたら、最大出力での攻撃は出来なくなる。

 10万年前ならともかく、今じゃあジエンドクラスの魔石なんて手に入れられないし。


「それでも、いざという時の備えとして、これ程頼りになるモノはないと思うよ」

「確かに、上手く使う場一度の攻撃で数億、或いは十億を超える魔物を一掃する事も可能だろう」


 いや、桁がおかしいと思うんだけど、つまりはそれが此方の、ユグドラシルでの魔域の活性化の規模と言う訳だ。

 うん。本気で俺が体験した活性化とはレベルが違うな。

 そんでもって確信たわ。

 そんな規模の活性化が此方では普通なんじゃ、この前、大規模な活性化が起きて魔物を相当数倒したからしばらくは起きる心配も無いとかそんな訳がない。

 侵略して来る向こう側の生態系が破綻するレベルの侵攻を続けているハズなのに、どうしてか魔物が無尽蔵に溢れたし続けていた十万年より以前からも明らかの様に、どれだけ魔物を倒そうが、それで魔物の侵攻が少しは弱まるとかそんな事は起こりえないと覚悟するべきだな。


「とりあえず、ひとつは持って帰るって事で良いだろう。どう使うかの判断はそちらに任せるし」

「判ったが、これは王位を継いで早々とんでもない案件を抱える事になりそうだ」


 どうかな? 結婚して王位を継ぐまでに最短でもまだ半年以上はあるだろうし、その間に父親の現国王が片付けてくれるかもよ。


「そちらはまあ頑張れとしか言えないな。それじゃ、調査も終わったし撤収」



 因みに今回のユグドラシルでの滞在先は、俺がユリィの正式な婚約者になった事もあって王宮になっている。

 こちらの動きが完全に筒抜けになっているのだけど、まあそれは仕方がないと諦めている。

 王宮に戻るとシュトラは結婚の準備の為に早々に立ち去る。

 本当は結婚と、その後の王位継承の為の準備に没頭したい所なんだろうけど、そこは諦めてもらうしかない。こちらの事情優先と言うより、次期王となるのだから知ってもらわないと困る。

 なお、原野ウであるユリィたちの父親には、シュトラがこれまで見てきた事はもう全て話してある。その上で好きにして良いとの事。

 王位継承早々にとんでもない厄介事と向き合わなければならなくなるのが確定の息子の様子を楽しんでいる模様なのでこちらはもう放置で。

 まあ、知った上ですぐにでも対応が必要だと判断したモノについては、即座い対応してもらってもいるのでこちらとしても頭が上がらない部分もあったりする。


 それはともかく、シュトラが自分の仕事に忙しく戻ったところで、俺の方も早速付ぎの遺跡の下見に行く。

 今回はシュトラの結婚式までこの国に居るのは確定なので、遺跡探索の方はそんなに急ぐ必要もないのだけど、出来れば早い内に終わらせてしまいたいとも思う。

 まあ30もあるのだから、1日1つずつ調査していっても、一カ月はかかるのも確定なんだけど・・・。

 それに、今回みたいに特に問題のない遺跡ならともかく、とんでもない危険物が眠っている遺跡なんかだと、終わった後の後始末の方が大変だったりするし、まあ、どうやっても三カ月はかかるのは確定と見て良い。

 だからこそ、下調べだけでもさっさと済ませておこうかなとか思っている。


 そんな訳で俺一人で早速、津具の遺跡のある場所に行く。

 今度の遺跡の場所は滞在先の王都から南に二千キロの地点。巨大な湖の下に埋もれている。

 この水没しているのもお馴染みだけど、十万年でここまで地形が変わるモノかと疑問に思わなくもない。最前線にあった要塞などの遺跡が、魔域に埋もれているのならまだ話は判るんだけど。

 まあ、考えても仕方がないのでさっさと遺跡に向かう。

 魔法の結界を張って湖の底に潜って行く。

 何時もの事ながら、この湖も信じられないくらいの透明度の高さだ。それでいて生命の息吹に溢れている。何か、五メートルはある大型の魚が数百匹の群で泳いでいるし。

 淡水魚であれほどデカいのが群をなしているとか何なのとか思う。て言うか、魔域でもないし魔物じゃなくて普通の魚なんだよな。

 興味が湧いたので一匹捕まえておく。

 そんな事をしながらも湖の底、水深五千メートルの地点に到着。

 遺跡の全容がハッキリと見える。今回は更に地中深くに埋もれてはいなかったようだ。

 それはともかく、問題は何の施設かだ。場所的にも、要塞や基地ではないだろうが、いや、油断できないな。また空中要塞の類の可能性もある。

 と言っても、見た感じではその可能性も低い。遺跡自体が精々縦横百メートル高さ二百メートルくらいの大きさしかない。

 どちらかと言うと高層ビルのような遺跡だが、はてさて、何の施設だったのやら?


 そんなのは入ってみればすぐに判るので、早速中に入る事にする。入口の様子もどこか高層マンションを思わせる造りなんだが、どうかな。

 オートロック式の自動ドアをを思わせる入り口のロックを開けて中に入る。

 当然だけど、その時に中に水が入ってこないようにするのも忘れない。

 でまあ、中に入ったは良いんだけども、入ってみても何の施設だったのかまるで判らない。見た感じだと本気で高層マンションのエントランスみたいなんだけど・・・・・・。

 イヤイヤ、他の街並みは全部綺麗に無くなったのに、マンションが一つだけポツンと残っているとかありえないから、と言うか、単なる集合住宅をワザワザ残す必要性も理由もない。


「本当に何の遺跡なんだ・・・・・・」


 手掛かりが何一つないので見当もつかない。

 とりあえず、エレベーターホールがあったのでそこに行ってみる。


「なんだこれ・・・・・・」


 地上階は良い、四十階まであるけどそのくらいは当然。問題は地下、いったいどれだけの階層があるんだ?

 いや違う。これってもしかして・・・。

 確認するためにエレベーターで最下層に向かう。

 高速エレベーターで10分近くかけて最下層に到着。そこに広がる光景にヤッパリと溜息を付く。


「ジオフロントかよ」


 今回の遺跡は、湖の底に沈んでビルではなくて、そこから地下に広がる巨大なジオフロントだった。



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