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「ご苦労さん。本当に良くついて来たな」

「それは、終わってから言うセリフじゃない・・・・・・」


 良くついて来たと感心するくらいなら、普通について行けるくらいの厳しさにしろと、うん。言いたい事は良く判るし、もっともでもあるけど、今回はそうもいかない。


「今回の修行を厳しくしたのは、そっちの為だって事くらいは判っているだろう」

「判ってはいるが、本気で死ぬかと思ったぞ・・・」


 まあ、この一週間本当の地獄を見た訳だからな。


「死ぬ訳ないだろう。次期国王を殺す訳がない。ちゃんと死なない様にしていたに決まっているだろ」

「それは何があっても死なない様にしていたと言うだけで、俺が死ぬ思いをしたのは変わらないだろ」


 それは確かにな。だけど、今回のにはキッチリとした理由がある。まあ、その辺は当人も理解しているだろう。だからこそ、死ぬほど辛くてもシッカリと最後まで逃げずに頑張ったのだ。

 逃げたら、目的のレイザラム製の髪飾りが手に入らないって理由もあっただろうけど。

 それ以外にも、義理の妹になるケイへの謝罪と言うかケジメに、次期国王としてレジェンドクラスの超越者の師事を受け、認められた箔を付けるとか、色々と今回シュトラを厳しく鍛えたのには理由があるのだ。


「地獄そのものの厳しさの理由も判っていたが、それでも我ながら良くついて行けた物だと思う」

「こちらの魔域の活性化はヒューマンの大陸とは桁が違うんだろう。この程度でねをあげている様じゃ、もしもの時に対応できないぞ」

「それも判っている」


 王家の使命は国と民を守る事。

 国を治める王こそが最前線で戦い続けるのがこの世界での基本だ。だからこそシュトラには王として国を護れるだけの力が必要になる。

 まあ、単に前線で戦う力だけがあっても意味がないのもまた当然で、指揮官として戦局を見極めて最善の戦略を指示していく采配も必要になる訳だけど。

 そちらの方は俺のこそまったくの素人。専門外だ。

 代わりに、シュトラの方は防衛都市で司令官に着いていたくらいなのだから、そちらの方は万全だろう。

 無能な振りをしていたと言っても、それはあくまで政治的な意味で、戦略的な意味では元から有能として知られていたと聞いている。


「だがな、百年以上も最前線の司令官を勤め上げて来たんだ。むしろ舐めてもらっては困る」

「だろうな」

 

 不敵なシュトラに逆に苦笑する。

 それこそ今更だったな。彼らは何万年、何十万年とこの地を守護して、魔物との戦いを続けて来たのだ。その程度の事なんか今更俺に言われるまでもないのだ。


「さて、こちらの都合に巻き込んでしまって悪かったが、無事に終わった事だし、いよいよ遺跡の調査をするのだろう?」

「当然そのつもりだよ」


 今更ながらぶっちゃけてしまえば、シュトラを鍛えたのは俺の気紛れではなくて、完全にユグドラシル王家の方の都合だ。

 それも無事に終わった事だし、いよいよ目的の遺跡の調査にいく訳だけども、シュトラが明らかに俺も連れて行けと訴えている。

 気持ちは判る。当然の反応だと思うが、本気でどうしたものか・・・・・・。

 遺跡の中にはそれこそ知られたらシャレにならないシロモノがいくらでもある。出来れば知られないに越した事はないんだけど、まあ、ヒューマンならともかく、エルフなら問題はないかとも思う。

 エルフにもバカな奴がいるのも確かだが、この王族なら特に問題はないだろう。

 て言うか、秘密を共有する共犯者が増えてくれた方が正直助かる。


「とりあえず、今まで通りにまずは俺が一人で調査して、問題ないならみんなも一緒にって形だな」

「ワザワザ、先に一人で調査に行っているのか?」

「ああ、遺跡にはとんでもないモノのオンパレードだからな。身が持たないってまずは俺が行って確かめて、みんなも入って大丈夫か確認することになったんだよ」


 因みに、なんだかんだでほとんどの遺跡にみんなも行っているように思いそうだけど、実際にはヒューマンの大陸にあった発掘済みの遺跡の内に、ほぼ半数は止めた方が良いと判断して、みんなは入っていなかったりする。

 ミランダでさえ、俺が止めておいた方が良いと言えば素直に引き下がるのだから、遺跡の中の危険物に対して既にトラウマ並みの恐怖心を覚えているのは間違いないだろう。


「そんな訳で、遺跡に興味があるなら連れて行くが、相応の覚悟をしておく事だな」


 覚悟どころで済むかどうかは謎だが、発狂されたりしたら困るので、それなりの心積もりはしておいてもらわないと。


「判った、これも次期国王の務めだ」


 まあそうだな、実際には転生者じゃないと入れないから、遺跡に何があるか知っていても意味がないんだけど、国内にどんな危険物が眠っているかも知らないでいるのは確かに危険だ。

 ・・・・・・どっかから転生者が出て来て、遺跡の中身を持ちだしていく可能性もゼロじゃないし。

 て言うか、遺跡の超兵器を使って世界征服とかバカな事を考える転生者が居ないとも限らないのがむしろ一番の問題なんだよな・・・・・・。

 実際、既に世界征服しようと化したバカの前例があったりする訳だし・・・。


「そう言う事、遺跡の中身は下手をすれば簡単に世界のバランスを崩してしまう危険物ばかりだからな」

「下手をすると、それで世界征服などと考えるバカも出て来るか」


 この世界で普通に暮らしていれば、世界征服なんて何の意味もないと真っ先に理解するはずなんだけど、どう言う訳か世界中の全ての物を自分のモノにするとか、そんな訳の判らない妄想に取付かれるバカも一定数出てきたりする。

 俺なら王なんて責任ばかりで自由のないジョブは絶対にゴメンなんだがな。


「その辺りもう組めて、シュトラには秘密を共有してもらう」

「了解。しかしそう聞くと、出来るだけ穏便な遺跡であって欲しいものだと思うよ」

「それは難しいと思うぞ」


 あまり過激な遺跡でない方が、確かに俺としても嬉しいんだけど、広大なユグドラシル国内にはいくつもの遺跡が眠っていて、発掘済みの遺跡だけでも30以上ある。

 それだけの数にもなると、即刻立ち入り禁止レベルのシャレにならない遺跡も複数個あるのは確定。

 と言うか、ほぼ確実にヒューマンの大陸にあった遺跡よりもヤバい物が眠っていると思うのは気のせいか?


「遺跡調査は明日から始める予定だから、時間を空けておくように」

「結婚の準備に王位継承の用意など、やらなければならない事が立て込んでいるんだがな」


 そのくらい知っているわ。そもそも、そのどちらにも出席するんだし。

 とりあえず、一番初めに行く遺跡が、ジョブレベルで済むのを祈る事だな

 本当に、俺としてもイキナリとんでもないのを引き当てたりすると心が折れるから、それこそ転生者が使ってた保養所とかそんなのから始まって欲しいものだ。

 まあ、本当にそんなのから始まってくれたとしても、いずれは核爆弾みたいなシャレにならない遺跡に行きあたるの確定なんだけどね・・・・・・。

 さて、エルフの国ユグドラシルでの遺跡探索を始めるとしようか。


 ・・・・・・本当に、何で俺こんな事してるんだろ?



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