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「邪魔だ」


 小さな呟きと共に放たれた魔法は、数十匹に及ぶオーガをまとめて薙ぎ払う。

 オーガはBランクの魔物で、その討伐には少なくても対戦車ライフル以上の火力が必要とする。俺が今殲滅した数十匹もの群であっても、本来なら騎士団や重戦車大隊が駆り出されるレベルの脅威で、更に高位のAランクのレット・オーガやSランクのイビル・オーガが群を率いていた場合、討伐に出た騎士団や戦車大隊が殲滅してしまう程の、討伐にはそれこそ弾道ミサイルクラスの火力が必要となる程の脅威だ。

 それを魔法の一撃で容易く屠ってしまうのだから、我ながら良くここまで強くなったものだと思う。


 冗談のような話だけども、俺には前世の記憶がある。

 地球。二十一世紀中ごろの日本で大学生だった。専攻はロボット工学。二十歳まで生きていた記憶がある。それが気が付いたら、何時の間にかこの異世界に転生していた。

 転生した理由は一切不明。良くあるパターンの神様のミスで死んだお詫びに、チート付きでどこか別の世界に生まれ変わらせてあげるなんてやり取りも一切なかった。

 本当に、気が付いたらこの世界に生を受けていた。


 で、何で転生したかは判らなくても、生まれ変わったからには今度こそ天命を全うしたい。

 前世では二十歳の若さで呆気なく死んでしまったのだから、今度こそと思うのは当然。

 そんな訳でこの世界について調べられるだけ調べ周って分かったのは、この世界がネーゼリアと呼ばれる。地球とは全く異なる異世界だと言う事実。

 ファンタジーで定番の、剣と魔法の世界なのだけども、この世界は中世ヨーロッパ程度の文明で収まるようなレベルじゃなかった。

 正直、生前の日本の科学技術なんて目じゃない、SF映画の世界かと思う様な技術で溢れている。

 一例をあげれば、装機竜や装機人と呼ばれる巨大人型ロボットや、空中戦艦に空中要塞。或いは巨大な攻撃衛星に、果ては人工天体。

 他にも、広大なジオフロントや、自国内であれば好きな場所に瞬時に移動で来る、転移システムが構築されている国もある。

 まあ、剣と魔法の世界の癖に、超技術に溢れている世界観も割かしありふれていた気もするが、正直、ここまで来るとSFも真っ青なレベル。


 でだ。どうしてそんな超技術が必要かと言えば、冒頭で倒したオーガのような脅威が、魔物の脅威にこの世界は晒されているから。

 ある意味でこれも、ファンタジーな剣と魔法の世界の定番。

 なのだけども、この世界における魔物の脅威は、定番やテンプレで済ませられるレベルじゃなかった。

 さっき説明したように、ゴブリンやオークに次いで、ファンタジーでは定番のモンスター、魔物であるオーガを倒すのに、最低でも対戦車ライフルクラスの火力が必要なのはその典型だろう。

 ついでに、ゴブリンなら倒すのは拳銃程度で十分だけど、オークになると倒そうと思ったらアサルトライフルくらいの火器は絶対に必要。

 更に言うと、一匹や二匹程度ならアサルトライフルを持っていればまあ確実に仕留められるけど、オークは群れで行動する魔物で、最低でも百を超える群で襲ってくるから、実際に戦おうと思ったら戦車か機関銃を搭載した戦闘装甲車でも用意しておかないと確実にコッチがやられる。

 更に、Sクラス以上の魔物になると、一撃で都市一つ壊滅する程の力を持っていたりする。

 これは冗談でもなんでもなくて、例えばSSランクのこれまた定番のワイパーン。所謂飛竜とか呼ばれる魔物は、ブレスの一撃で直径十キロ近いクレータを生み出したりする。

 要するに、核兵器も真っ青な破壊力の攻撃を連発できるのだ。

 特撮の怪獣だって襲うはずの都市を一撃で消し飛ばすなんて馬鹿げた力は持ってない。もう宇宙怪獣とか何かかとか言いたくなるような非常識な脅威に晒され続けているのだから、それに対抗するために技術も進化していくのは当然で、結果、この世界は剣と魔法の世界なのに、ファンタジー系の定番の、中世ヨーロッパ程度の文化レベルの社会に成るハズもないと。

 まあこれも冷静に考えれば当然だろう。

 ただ、この世界はあくまで剣と魔法の世界。

 都市一つを消滅させるような凶悪な攻撃が出来るのは、何も魔物だけじゃない。

 修行して努力を重ねて、或いはゲームの定番みたいに魔物を倒しまくって経験値を稼いでレベルアップしていって、Sクラスの力を得られれば人間だって生身でそんな凶悪な魔物の戦えるようになる。

 例えば魔法の一撃でワイパーンを葬り去ったり、剣の一振りで山を斬り裂いたり。

 まあ、そんな凶悪な力も持てる訳だ。

 そして、そんな凶悪極まりない力が、魔物の脅威に晒され続けているこの世界には必要不可欠と。


 そうと判ってからはひたすら努力した。

 せっかく剣と魔法のファンタジー世界に転生したんだ。当然だけど色々とやってみたい。

 テンプレの転生無双は無理でも、魔法で自由自在に空を飛んだりとか、転移魔法で好きな所に一瞬で行ける様にとか、してみたい事はいくらでもある。 

 これが、前世の創作で良くある、ケームキャラクター転生とかならば、自分の育て上げた超強力なマイキャラで転生して、その日の内から無双状態とかもあったんだろうけど、残念ながら記憶を取り戻した当時の俺はひ弱な五歳児。しかも、転生チートを貰えた覚えもない。

 ついでに、俺が知る限りにおいて、前世にプレイしたゲームにも創作物にも、こんな凶悪な魔物の跋扈するネーゼリアなんて世界は登場しなかったし、この世界が所謂ゲームとか小説マンガなんかの世界じゃないのもほぼ確定。

 なんだけども、それを確かめるまでの間に、もしかしたらとステータ・スオープンとか色々と確かめてみたりしたのは、もう本当に出来る事なら抹消したい黒歴史だ。


 何はともあれ、そうやって五歳の時から努力した結果、手転生チートがあったのか、転生者特典で強くなり易かったのかは判らないけれども、十年たって十五歳となった今ではこの世界でもトップ・クラスの実力者になれた。

 その所為で色々と面倒臭い柵も増えたけど、それはもう仕方がないと諦めてる。


 今こんな所で、オーガの大軍を相手にしているのもある意味ではその所為。

 本当は今の俺の実力なら、オーガ程度のザコを相手にするなんてありえないのだけども、何と言うか弟子に懇願されて断りきれなかった・・・・・・。

 十五歳のガキの癖に弟子なんているのかとかの突っ込みは受け付けない。

 そもそも、この世界での成人は十五歳からだから、俺はもう成人している事になるし、さっきも言ったけれども俺はトップクラスの実力を持つので、おのずと弟子を取って好配の育成とかそう言う色々と面倒な仕事もしないといけなくなる。


「さて、可愛い弟子の頼みだからな。残念だけどお前らに手加減はしないよ」


 はじめから魔物相手に手加減なんかしないけどと自分で突っ込みながら宣言すると、オーガ相手に何とか互角の戦いをしていた弟子が満面の笑みを見せる。

 実は既にこれまでに何人も弟子を育ててきているし、これからも何人も育てていく事になるのは確定済み。

 でもそれも仕方がない、凶悪な魔物に対抗するためには、強い力を持った者が一人で多く必要なのだから。

 何者よりも自由で、誰からの指図も束縛も受けない立場にいる代わりの制約と思えば、自分の気に入った相手を弟子にとって育て上げるくらい何の問題もない。


 絶えず脅威に晒され続けているこのネーゼリアでは、強さは何よりも高い価値を、意味を持つ。

 例え孤児や奴隷の身の上であっても、Aランクの実力者となれば貴族、それも伯爵以上の上級貴族に国の方から望んで叙せられるし、それを断ったとしても実質、伯爵以上の貴族と同等の地位を得られる。さらにSクラス以上の実力者になれば、その権限は一国の王すらも超えるモノとなる。

 なんだ、結局は封建社会なのかとか思うだろうけど、この世界に民主主義とかの社会体制と言うか、国が成り立たなかったのには理由がある。あるんだけども説明すると長くなるのでひとまず置いておいて。


 つまり、そんな超実力主義の世界の中で、トップクラスの実力者である俺は、どんな国の意向にも従う必要のない、自分の好きに、自由にどんなことも決められる立場にあると言う事。

 どうしても逃れられない柵もあるけどね・・・。


 本当に、何時の間にこんな事になったんだろうと思わなくもないけど、そもそもの始まりは間違いなく、地球とは違って二つの月が輝く星空。その輝く月のひとつカグヤ。


人工惑星カグヤ。はるか昔にこのネーゼリアに現れた転生者によって造られた究極のオーバーテクノロジーの産物。その存在を知った時からかも知れない。




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