189
さて、当然だけども遺跡の中にあったものについては俺たちの間だけで秘匿。
これは徹底させてもらった。
俺としてはオタク文化をネーゼリアに持ち込むつもりは毛頭ない。
と言うか、みんなはあの星の数ほどのフィギュアやドールに引かなかったのだろうか?
どうにも、イマイチ理解しきれていないだけの気もしないでもないが・・・・・・。
まあ良い、遺跡にあったタイトルは必要な分は全てコピーして持ち出している。アレを全部制覇するとなると最低でも数百年は確実にかかるだろう。
良い暇つぶしのアイテムが手に入ったと思っておこう。
それとコレは完全に余談だけど、どうやらあの遺跡には相当数の転生者が訪れていたようだ。
発掘されたのがおよそ5万年程前で、それ以降、あの遺跡を訪れた転生者は優に千人を超えている模様。
それ故と言う訳でもないだろうけど、中には腐女子が残したと思われる同人誌系とか、他にも決してこの世界に残してはならない、広めてはならない系統のタイトルも相当数あった。
なお、それらはすべてみんなを遺跡に呼ぶ前にひとつ残らず隠しているので、みんなの目には止まっていない。ミランダをもってしても見付け出す事は不可能な所に隠したので、見破られる心配はないし、万が一にも拡散する惨事になる事もない。
本当に一人で事前に来るようにして置いて良かったと、心の底から思ったね・・・。
それと、腐った系統のタイトルを残していったかつての転生者に本気で殺意を抱いたよ・・・・・・。
よもやとは思うが腐教しようとしてた訳じゃないだろうな?
いや、それなら遺跡の中に隠されてはいないか・・・。多分、一緒に居た他の転生者に無理やりにでも止められたんだろうな。
その判断は正しいよ。誰とも知らないが、腐女子と一緒の時期に転生して哀れな犠牲者の人。本当に良く頑張って止めてくれたよ。
さてそんな訳で、、ココでの用事も一応無事に(?)済んだし、早速即時撤退と思ったところで、ヤッパリと言うか、当然というべきかGの群が魔域から出没した。
Sクラスの個体10匹に率いられたA・Bランク合わせて千匹ほどの大軍。
うん。確かにかなりの脅威だ。
だからか知らないけど、早速俺たちに討伐要請が来たのだけども、丁重に断らせてもらった。
「何故ですか?! この国が滅びようとしているのを見捨てるのですか?!!」
「国の存続すら危ぶまれる規模の脅威ではないだろう。むしろ、レジェンドクラスとSクラスからなる俺たちが出る方がおかしい。この規模の魔物の侵攻に、一々俺たちが出ていたんじゃあ後進が育たないからな」
俺たちが戦わないと判るといきり立って詰め寄って来るのでそう切り返しておく。
実際、この程度の魔物の軍勢なんて、竜騎士団をもってすれば容易く対処できる。
であれば俺の手を借りずにマズき自国の戦力で魔物の脅威に対抗すべきなのだから、俺が断るのはむしろ当然の事だ。
と言うかこのやり取り、前にもあった気がするのは気のせいか?
うん。多分気の所為だな・・・・・・。
「俺たちは確かに魔物の脅威を打ち払う責務がある。だけどそれと同時に、後に続く者を育てる責任もある。よってその目を積むようなマネは出来ない」
「本当に手に負えないのならともかく、何でもかんでも押し付けられたんじゃあ私たちも持たないしね」
ぶっちゃけ、俺なんかあまりにも圧倒的な力があり過ぎるから、本当ならあまり動くべきじゃないんだけども、いかんせんまだ13歳の新人なので、まだまだ動かないといけなかったりしてもどかしいと言うか、面倒くさい。
「判りました。こちらで対処させてもらいます・・・」
随分の不服そうに言い残して立ち去って行くけど、既に自分の立場がもう足元から崩れ落ちてるのに気付いてないのか?
「久しぶりにの稀に見るバカだったな」
「自分で自分の首を絞めているのにも、結局、最後まで気付かなかったものね」
国の方も何を考えてあんなのを交渉役に寄越したのか知らないが、報告を受けたら真っ青になるのは間違いない。その上でアレは即座にお役御免。即刻解雇の上で新しくこちらに人を寄越すだろう。
まあ、間違いなく王族が直接来るな。
て言うかそれ以外の人選がありえない。それ以前に、はじめから王族をよこしていれば余計な騒ぎにならずに済んだものを・・・。
「誠に申し訳ありません。こちらの不手際で皆さんの手を煩わせてしまいまして」
なんて話していたら一時間もしないでやってきた相手が土下座しそうな勢いで謝ってきた。
いや、判っていたけどあまりにも悲壮様子にこっちが引くんだけど・・・・・・。
「いや、アレについてはそっちでキチンと対処さえしてくれれば、俺たちは特に気にしないから。それよりキミは?」
「ありがとうございます。ご挨拶が遅れましたが、私は第三王女レクリシア・クリアムーランローラです。アベル様たちとの折衝役をさせて頂きます」
ホッとしたように挨拶をしてくるレクリシア姫。見た所は二十歳くらいだろうか?
やっぱりと言うより当然にして、ヤッパリ王族のそれも姫様が折衝役としてきた。それは良いのだけども、どうしても一つ気になるのは、どうして彼女が初めからこなかった?
「こちらもよろしく、とそれは良いんだけど、どうしてあんなのが折衝役に選ばれたんだ?」
あんな無能としか言いようのないバカがどうして来たのかが本気で気になる。
「みなさんにご不快な思いをさせてしまった事、本当に申し訳ありません。言い訳の様ですが、実はあの者は国から名を受けて皆様の元に派遣された訳ではないのです。元々、皆さまとの交渉は私が行う事が決まっていたのですが、どうしても抜けられない案件が急遽起きましてこちらに出向くのが遅くなってしまったのです。あの者はそれを良い事に、勝手に出向いたらしくて」
つまりは完全な独断専行だったと・・・。
多分、これも何時もの事だけども、俺がレジェンドクラスの超越者と言ったところで、所詮は十三歳の経験も浅い未熟なガキだと思って、良い様に言い包めて操ってやろうとか思っっていたんだろう。
そうすれば、レジェンドクラスの超越者にも一目置かれる優秀な人材と言う肩書が手に入ると、浅はかとかそんなレベルじゃないなホントに・・・。
「バカだな」
「本気で稀に見るバカね」
「お恥ずかしい限りですが、本当に救いようのないバカです」
目論見が甘いとかそんな次元の話じゃない。
例え成功していたとしても自分の首が物理的に飛んでいたのくらい判らなかったのか?
いや、大袈裟な話じゃなくて本当に、レジェンドクラスの超越者との交渉を国の許可も無く勝手に進めようとか犯罪以外の何でもないから。
と言うか、俺が気分を害したらどうなるかとかも考えなかったんだうな・・・。
「ですが、我が国の罪はあの者が愚かであったからでは済まされません。如何様な罰でもお受けする覚悟です」
そう言ってまた深々と頭を下げるレクリシア姫。
彼女の立場では当然なのだけども、こちらとしてはどうしたものかっていうのか正直な所。
「あそこまでバカな事をやらかしたんだから、当人を処罰してそれで終わりとも行かないのが困った所よね」
ミランダがこっそりとテレパシーでぼやいてみせる通り、バカをやらかしたのはあの名も知らない暴走貴族だが、その暴走の責任は国自体が背負う事になる。
「と言っても、俺としては特にアレ以外にどうこうて気はないんだけど」
「それはそうでしょうけど、そうもいかないのよ困った事に」
気取られない様にミランダとテレパシーで話しながら、さてどうしてものかと悩む。
まあ、一番妥当なのはあのバカを相応の罰に処する事で今回は不問に付すって事にするのだろう。それが一番妥当だ。
「まあ、国の要職にある者が暴走したのも、また、それを防げなかったのも事実な以上。相応の責任を取る必要があるのは事実だろうが、今回は、今後二度とあんな事が起きない様に、あの者を厳罰に処して見せしめとすると共に、再発防止のために徹底した処置を講じてもらう事で終わりにしよう」
と言うか、出来るだけ速やかにこの国を出るつもりだったのに、あのバカの所為で出られなくなっているから、その辺りの責任もキッチリと取ってもらわないと俺の気が済まない。
我ながらヒドイ事言ってるなとも思うけどな・・・・・・。
「そう言ってもらえると助かります」
そんなまた深々と頭を下げられたりすると、俺の良心が痛むんだけど・・・。
Gにトラウマを持ってしまって、この国から早々に立ち去りたいと思っているとか知られたらどんな顔をされるかとか思うと本気で心が痛むし・・・・・・。
とそんな事を考えていると、レクリシア姫の端末に通信が入る。
俺たちとの対談中なのだから、通常の通信は入らないように設定しているハズだし、そもそも見計らってかけて来るアホも居ないだろうから、ここで通信が入ると言う事は、緊急事態が発生してそれを伝えるための非常通信と考えていいだろう。
その予想通り、「失礼します」と断りを入れてから通信に出たレクリシア姫は顔を青ざめて、
「先刻魔物の討伐に向かった竜騎士団からの通信です。侵攻してきた魔物の殲滅に成功。しかし、その後で更にその数百倍の規模の魔物の襲撃を受け、自分たちの力では持ちこたえられないとの事です」
どうやら、結局逃げ出す事は出来ず。戦うしか無いようだ。




