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「それでまあ、想定通り本気でシャレにならない危険物が眠ってたんだけどどうする?」


 あの後、調べてみた結果、俺の危惧が当たっていて、危険なのは遺跡その物なのだとハッキリと解った。

 判ったは良いが問題はどうするかだ。

 正直、アレはこのまま封印しておくに限る代物だ。

 それ以前に、十万年前の段階で封印するんじゃなくて破棄しておけよと言いたくなる。


「シャレにならない危険物だと判った上で、どうすると聞いて来るのもどうかと思うけど・・・」

「でも、あえて聞いて来ると言う事は、危険ではあるけどそれ程問題にはならないからではないでしょうか?」

「そうかも知れないけど、だったら詳しく話を聞かせてもらわないと、判断のしようもないよ」


 これまた正論の三連発が帰ってきた。


「危険度で言えばヒュペリオンよりもはるかに危険な代物。ただし、今の所は特に問題にはならない」

「意味が判らないんだけど・・・?」

「要するに、動かない様になってるからとりあえずの危険はないけど、動かしたらそれこそ世界中が大混乱に陥るレベルの代物て事」


 俺の説明にみんな顔を引き攣らせて一歩下がったのはまあ仕方ないだろう。


「そこまでと言われると、怖いけど見たくなってしまいますね」

「確かにね。どんなものが眠っているのか俄然興味が出て来た」


 そう言えばシオンたちはマリージアの遺跡でジエンドクラスの食材を見付けた後に仲間になったから、その前のベルゼリアとかその他のシャレにならないいくつかの遺跡について知らないんだっけ?

 ユリィたちから話は聞いているんじゃないかとも思うが・・・・・・。


「そうだろうなと覚悟はしていたけど、やっぱりとんでもない物が眠ってんだな」

「覚悟はしていましたけど、現実になるとやっぱり怖いですね」

「そうですか? 私は楽しみです。自分の生まれ育った国に一体どんな凄い物が、十万年も前から残されていたのか。考えただけでワクワクしまう」


 当然だけども、一番気にしていると言うか、はじめから何が眠っていたとしても行くつもりだったのはザッシュたちこの国出身の三人。

 なのだけども、ザッシャやサナと比べてレベリアのテンションが高いのは、まだ遺跡に眠っているものの危険性を理解しきれていないからだろう。

 まあ、その内そんなに無邪気には楽しめなくなるから覚悟しておくようにとでもいうべきか?


「それじゃあ、みんなで早速行くとしようか」


 微妙にまだ乗り気じゃないメンバーも居たけれども、問答無用で転移して強制連行。


「キミね。どうするって聞いて来た時から、こうなるんじゃないかって予想してたけどね。私たちはまだ行くって言ってなかったよね?」

「予想はしてましたけど、問答無用で連れて来られるんですね」


 何かミランダとアレッサが諦めたように深い溜息を付いている。

 いや、原因が俺だと言う自覚はちゃんとあるよ・・・・・・。


「それで、本命の危険物は何処にあるの? あのヒュペリオンを上回る危険物なんてそうそう無いハズだから楽しみなんだけど」

「ああ、危険物はこの遺跡自体だよ。高機動型戦闘要塞ヘカトンペイン。つまりこの遺跡自体がとんでもない戦闘力を持った兵器であり、動き出せばソロこそ世界を容易く滅ぼしかねない危険物なんだよ」


 そう言うと全員が完全に固まってしまった。

 何かまばたきもせずにこちらを凝視しているけど大丈夫か?

 まあその反応も当然だと思うがな。

 俺自身、この要塞の詳細を知った時には頭を抱えてのた打ち回った。

 50立方キロメートルと言うとんでもない大きさを誇るの要塞は、ヒュペリオンの主砲クラスの砲門を千以上も搭載した正に高機動殲滅兵器だ。

 ぶっちゃけ、この要塞の全砲門が一斉掃射なんてやらかせば、余裕でこの星、ネーゼリアは壊滅する。文字通り星を跡形も無く消し去る火力なのだ。、

 高機動要塞の名も伊達ではなく、この要塞は空中を飛ぶだけでなく、当然ながら宇宙空間でも使用可能で、しかもその最大速度はヒュペリオンと変わらない。

 こんな巨大な要塞を、そんな超高機動性を持たせてどうするんだと本気で突っ込みたくなった。

 更には転移機関までも搭載していて、これによって巨大要塞が戦闘中に敵の攻撃を転移で躱すなんて言う荒業も容易く出来るようになっている模様だし、敵陣のただ中に飛び込んで集中砲火を浴びせるんて戦法も自由自在。

 防御障壁の展開システムも超高性能で、百を超えるΩランクの魔物の一斉攻撃にすら耐えうる代物。

 そして、なによりも問題なのが、この要塞に組み込まれた動力システム。ヒュペリオンのモノがかわいく思える凶悪ぶりだ。

 カグヤ慣性の為に必要不可欠だった動力システム。その試作品である複合型魔道動力機関。

 それが、このヘカトンペインの動力だ。

 当然の事だけども、地球と同じ大きさを誇り、ネーゼリアの全ての魔域を封じる為の機関であるカグヤの動力源が、Ωランクの魔石ひとつで賄えるはずがない。

 カグヤの動力には、それこそ数十万、数千万を超えるのジエンドクラスの魔物の魔石が使われている。

 数限りない魔石を使いひとつの動力機関として運用する。それがどれ程困難であるかは想像に難くない。

 だけども、実際にネーゼリア全域を封印するためには、本当に数え切れない程の魔石の力を一つに結集して使わなければ不可能だ。更に言えば、ヒュペリオンの動力にも搭載されている魔素吸収機関。カグヤはそれによって世界中の魔域から魔素を集めている。その総量は膨大な量になり、当然ながらΩランクの魔石ひとつに収まるハズもない。

 つまりは、はじめから複数の魔石を使った動力機関が必要不可欠であり、その施策タイプの動力システムを搭載した試験運用の為の意味がこのヘカトンペインにはあるのだ。

 そして、このヘカトンペインの動力には千個のΩクラスの魔石が利用されている。

 つまり、単純にヒュペリオンの千倍の出力を誇ると言う事だ。

 そして、当然ながら魔素吸収システムも搭載されているので、動力は無限機関となる。


 なんて事を説明すると、当然だけどみんな真っ青になって震え出している。


「あの、危険物とかそんなレベルで済むモノじゃないと思うんですけど・・・・・・」

「確かに世界を亡ぼしかねないと言うより、確実に滅ぼすの確定の凶悪兵器ね」

「これは本当に、何を考えてここまで凶悪な兵器を残したんでしょう・・・?」

「ホントに、これは知りたくなかったよ・・・」

「これは確かに前代未聞の凶悪さだけど、ひょっとしたらこれよりさらに酷いモノがどこかに隠されてる可能性も否定できないのが怖すぎだよね」


 俺への避難ていうよりも、完全に愚痴の連発になってる。

 怨嗟の叫びとも言うはそのまま一通り続いて、ようやく少し落ち着いたのか根本的な疑問を訊ねてくる。


「それで、これのドコがとりあえずの危険性はないの?」


 直球ストレートでもっともな疑問。

 こんなもの、存在が知れたらそれだけで大混乱を引き起こすの確定だ。


「ああそれはね、この要塞、動力システムと起動デバイスがないから」

「「「はい?」」」


 どういう事だと一斉に首を傾げてみせるが、本当に単純な話だ。


「だから、この要塞は動力と起動デバイスがないんだよ。本体だけ此処に封印されて、取り外された二つは別の場所に隠されたみたいだな」


 そんな訳で、今のヘカトンペインはただの張りぼてに等しい。

 それでも、ザブ動力は残っているので、要塞として活用する事くらいは可能だが、実質性能の千分の一も出しきれない状態だ。

 もっとも、元となる性能がシャレにならないほど高すぎるので、千分の一の機能も使えなくても十分過ぎる程に高性能なんだけどな。

 流石に、このヘカトンペインは10万年前のチート転生者たちでも、封印するにあたって厳重に保険をかけて置かないとマズいと判断したらしい。

 同じ転生者しか中に入れないようにするロックの他に、動力システムと起動デバイスを別々の所に封印して、二つとも見付け出して揃えないと使えない様にして置いた訳だ。

 この分だと、二つを揃えても砂をに仕えない様に更なる仕掛けも施されているかも知れない。


 ・・・・・・正直、その方が助かる。

 本音を言えばそこまで厳重に封印するくらいなら破棄してしまっとけよと思わなくもない。

 だけどまあ、こうして厳重に封印しながらも残したと言う事は、このイズチの破壊用としての意味も含めて造られた最終兵器が、必要になる事態が起きる可能性もあると判断したからだろう。

 あるいは、自分たちはカグヤによる封印でイズチの破壊は必要ないと思いとどまったけれども、いずれはイズチの破壊が絶対に必要不可欠な状況に陥る可能性もあると考えたのかも知れない。


「はあ、成程そう言う事なのね。とりあえず良かったわ」

「コレの動力と起動デバイスは、むしろ絶対に見つからない方が良いですね」


 なんて考えていると、みんながどうやら驚きから立ち直ったみたいだ。

 それと、みんなは今のところ動かないのに安心しているようだけども、実は俺はその点については安心しきれてない。

 と言うか、動力と起動デバイスの二つがありそうな場所に心当たりがあったりするからだ。

 ベルゼリアの建国王である転生者が残した遺跡・・・・・・。

 何と言うかほぼ確実にその二つはソコにある気がして仕方がない。

 本当に、今回の件で更に行きたくなくなって来たんだが・・・・・・。

 まあ、もうカグヤに行くためには仕方がないと諦めるしかないと思うけど。

 とりあえず、今はこの遺跡、要塞をどうするかを考えるとしよう。




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