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 料理フェスタも終わり、遺跡の探索も無事に終えた後、ローレラントを出る前にもう一つやる事があると俺は一人魔域に来ている。


「やっぱり何の反応もないか・・・」


 この前此処に来た時に会った異変。魔域の活性化の収束時に起きた出来事について、何かて篝になる情報は得られないかと、魔域の中心にまで来てみたが、結局なんの手掛かりも得られない。

 まあ、判っていた事ではある。マリージアでも、活性化が終わった後にも、その後に訪れた折にも一応魔域にまで確認しに行っていたが、何の反応も手掛かりになるモノも残されていなかった。

 ここにもあの後、活性化が終わってすぐ一度調査に来ているが、その時でさえ何の反応も見付けられなかったのだから、既に一年以上過ぎた今になって何かが解るとを思ってない。

 それでも、一応は調べておかないと気が済まないのだ。


「流石に、そう簡単には手掛かりはつかめないか」


 魔域の活性化に異変があったのは二回だけ、調べてみたが、他にあんな異変が起きた事はなかったそうだ。何故あんな異変が起きたのか? 

 共通するのは俺が参加していた事だが、流石にそれは関係ないだろう。

 恐らくは、カグヤの封印に対抗するための何かである事は確実なのだけども、ではどうやってカグヤの封印の裏を掻い潜って侵攻してこようとしているのか、その痕跡の欠片すらも見付けられない。

 まあ、そう上手くいくとは元々思ってはいなかったが・・・。

 実際に何かしらの痕跡が得られるとしたら、それは封印を掻い潜った侵攻が始まって以降だろうと思っている。

 現実問題として、封印の裏をかく、或いは封印を破るなどして侵攻始まる前に、その予兆を見付け出して対抗するのはほぼ不可能だ。

 そもそも、魔物を送り込んでくる侵略者たる異世界。

 その世界について何一つ情報を持ち得ていないのが現実なのだ。


 何故、この世界に侵攻して来るのか?

 どうやって異なる世界へと進行してきているのか?

 そもそも、どんな世界なのか?


 それらの疑問に対する一片の情報すら持ちていない。

 ただ侵攻を受けているから防衛する。その受け身の体制から脱しえない以上。相手がどんな手を打ってきたとしても受け身にならざるおえない。

 今更ながら、本当に良く今までもったよなと思う程に、この世界の情勢は悪い。

 だからこそ、俺たちの様な転生者が現れるのかも知れないが、実質問題として、転生者はこの世界を護る剣と盾にもなるが、同時にこの世界の破壊者にもなりかねない、ハッキリ言って諸刃の剣だ。

 転生者の引く起こした惨劇によって、世界が滅びかけた事も何度となくある。

 俺自身がそうならないように気を付けないとななんて、今更ながら考えながら、襲い掛かって来たSSSランクの魔物レシジルアビエスをアイン・ソフ・オウルで倒す。


「いい加減めんどくさくなってくるんだが、いくらなんでも多すぎないか?」


 今いるのは魔域の中心部なのだから、Sクラスの魔物が溢れているのも当然なんだが、それにしたって、さっきからいったい何十匹倒したか?

 魔域の活性化があってまだ一年半程度、一度完全に魔物が殲滅し尽された状況から、ここまでの数が既に魔域に揃っているのにも驚きだ。

 て言うか、あの活性化で魔物をひたすら殲滅しまくったから、しばらくは活性化の心配をしなくて良いくらい、侵略して来る向こう側の生態系も乱れているハズじゃなかったのか?

 その割には、変わらないどころかさらに激しさを増す侵攻が続いている気がするが・・・・・・・。

 まあ、十万年前までは今の比ではない数の魔物の侵攻が永遠と続いていながら、一向に魔物の数が減る様子を見せ中たのだから、そもそもどれだけの魔物を倒してもむこうの世界に何の痛手も与えられない可能性もあったりするんだけど・・・。

 とりあえず、用事も済んだしいい加減面倒なのでそろそろ退散する事にする。と言っても、今いる魔域の中心部では転移魔法が使えないので、使える所までまずは行かないといけないんだけども、当然ながらその途中でも魔物が襲ってくる。

 レジェンドクラスに至って、既にSクラスの魔物は脅威にならなくなっているのだけども、だからと言って油断できる相手じゃないし、上手く倒さないと周辺に結構な被害が出てしまう。

 特に、魔物の侵攻口となっているぺーと近くで下手な事をされると取り返しのつかない事態になってしまう可能性もあるので、慎重に倒さないといけない。

 その為、こちらの攻撃についても慎重にならざるおえない。

 下手に大きな魔法を使って、魔物を倒したは良いがあたりにも甚大な被害を出してしまったでは済まない。

 だけど、こちらにはそういう状況に対応するとっておきの武器がある。

 レイザラムで選定の儀を受けた時に出来た俺の剣。俺の太刀。

 アレはまさにこういう状況下での戦闘にピッタリの武器だ。

 アイテムボックスから取り出した太刀に魔力と闘気を纏わせる。すると刀身が魔力と闘気を吸収し輝き出す。

 同時にクリスタル・エイビスがブレスを放ってきたので無造作に太刀を振るって切り裂く。 

 瞬間。ブレスは切り裂かれるままに消滅する。

 これがレイザラム製の武器の力。使用者の魔力と闘気を吸収する事で絶大な力を発揮する。

 そのままクリスタル・アイビスの元に一気に距離を詰め、長い首をめがけて太刀を一閃する。

 すると太刀は容易く防御障壁を砕き、そのまま首を真っ二つに切り裂く。

 防御障壁を破るためだけの攻撃を必要とせず。一度で攻撃を本体まで届かせる事が出来る。それがこの太刀の最大の利点だ。

 同じ太刀をもう一振り持つか、鮎立で魔法などによる攻撃を知るなりすれば、さらに効率よく戦える。

 それに、これまでは基本的に魔法などによる遠距離戦闘。砲撃戦を主体として戦って来たが、やっぱり自分の手で強大な魔物を直接斬り裂いて倒す、近接戦闘には胸が躍るモノがある。


「はあぁぁぁぁぁぁぁっ」


 咆哮をあげながら太刀を全力で横薙ぎに一閃する。

 瞬間。たちから見えない斬撃と衝撃波が放たれて、俺の眼下一キロ先までいた魔物の尽くを切り裂き打ち倒す。

 もう十分な数の魔物を回収しているので、眼下の敵が一掃されてジャマがなくなったところで、倒した魔物の回収は諦めて一気に距離を稼ぐ。

 そして転移可能な場所まで辿り着くと、すぐに転移して王都ローレライに戻る。


「ふう。魔域の中が魔物で溢れているのは当然とはいえ、行く度にこれだと流石に面倒だな」 


 因みに転移先は流石に王都の中に直接じゃない。王都の手前の通用門の近く。ここからもう一度転移して王都の中に入っても良いんだけども、それ程手間な訳でもないし、キチンと入口を通って王都の中に入る。

 勿論。その前に太刀をしまっておくのは忘れない。抜身の太刀を持ったまま街に入るなんてバカなマネをするつもりは無い。て言うか、流石にそこまでマヌケでもウッカリでもないつもりだ。

 王都に入った後、ホテルに戻る前にまずは冒険者ギルドに向かう。そう言えば、何気にここの冒険者ギルドは行くのは初めてだったな。

 まあ、基本は防衛都市にあるギルドを使っているから、王都にあるギルドを使う機会自体がそうそう無いんだけど・・・。

 そんな事を考えている内に着いたギルドは、防衛都市にあるギルドに比べれば小さな建物で、まあこれも当然で、王都にある冒険者ギルドはいわゆる斡旋所のような役割を果たす場所で、必要な所に必要なだけの冒険者を振り分けるのが主な仕事になっている。

 だから、実際の所、俺みたいなのが突然現れること自体がありえない事で、俺がギルドに入った瞬間大騒ぎになったのは仕方がない事なのかも知れない・・・。

 そう言い聞かせながらも、あまりの騒ぎに若干へこんだりするんだが。


「討伐報酬の清算を頼む」

「はっはい。ギルドカードのご提示をお願いします」


 対応した受付嬢が若干テンパったままなのは仕方がないと諦めるしかないだろう。

 さらに精算額を見て「ひえっ」と悲鳴を上げて硬直したのも無視。

 ここで下手に声をかけると面倒な事になりそうな気がするから、なんとか自力で復活してもらうまで待つ事にする。

 一分経過。何かもの凄い勢いで冷や汗を流している気がする。

 三分経過。何やら、「落ち着け。落ち着いて冷静にと」繰り返し呟いている。

 五分経過。落ち着けと繰り返す事で自己暗示が手来たのか、比較的冷静さを取り戻せたらしく、今度は深呼吸を繰り返している。

 六分経過。どうやら落ち着いたらしく清算作業を始めたようだ。


「お待たせしました。清算が完了いたしました。討伐報酬はギルドカードへの振り込みでよろしいですか?」

「ああ、それで頼む。それと素材の買取も頼みたいんだが」


 冒険者ギルドで魔物の素材を買い取るのは当然なんだけども、俺の言葉に受付嬢は冷や汗を流す。


「ええっと、今清算された魔物の素材ですよね? 正直、魔石はともかく、解体込となると当ギルドではそれ以外の素材の買取は難しいかと」

「ああ、防衛都市に行かないと無理か」

「はい。ココではまず解体自体がムリですね」


 さっきも言ったが、王都の冒険者ギルドは人材派遣の為の拠点のような場所だ。しかも、そもそも魔域から離れた王都周辺に高ランクの魔物が現れる確率自体が少ない。

 よって、ここでは高ランクの魔物を買い取ること自体を想定してないのだ。より正確に言うのなら、Sクラスの数十メートルを超える巨大な魔物を解体するようなスペース自体が始めから無いし、解体するために設備も道具も、解体できる技術を持った者も居ない。

 各地の防衛に必要な人員を正確に割り当てるなど、その必要性と重要性は高いのだけども、冒険者ギルドにとって王都勤務は窓際で、防衛都市勤務が花形と言う訳だ。


「それじゃあ魔石の買取だけしてもらおうか」


 今まで気にも留めてなかったが、色々とあるんだなと思いながら俺はギルドを後にした。




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