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所用により、一週間ほど投稿が不確定になります。ご容赦ください。

 さて、実に充実した日々を送り、穏やかな旅を続けながらローレラントまで来る事が出来た。

 過程を飛ばし過ぎだ?

 確かにその通りだ。クレストではあの店を俺たちの拠点にすると宣言したので、阿鼻叫喚の大騒ぎになっている人たちも居たし、クレストの後に三つの国を通ってきて、内一つでは遺跡の探索もした。

 因みに、クレストの遺跡は何故か温泉施設だった。

 何故に温泉と本気で不思議に思ったが、遺跡内部に残されたメッセージによると、十万年前、この世界に転生した人々の思い出の地だったそうだ。

 戦いに明け暮れる日常の中で、穏やかで優しい時間を共に過ごした思い出の場所。その場所をずっと残しておきたかったんだそうだ。

 危険も何もなくて拍子抜けではなくて、10万年前の転生者たちの人間的な部分を垣間見れて、ホッとしたのが本音。


「さてと、これまでは久しぶりにのんびりできたけど、これまでの感じからするとそろそろ何かありそうだよな」

「ローレラントの遺跡の情報も無い訳?」

「無いな。何を基準に遺跡の情報を示したり示さなかったりしているのかが謎だよ」


 俺にとっては命綱に等しいこの10万年前の転生者が残した古文書だけども、何を基準に書く内容を選別したのかは本気で謎。

 この世界で生きて行きために必要な情報は揃っているのだけども、肝心なところで重要な情報が載っていない。まるで知りたければ自分で答を探し出してみせろと挑発しているようだ。


「まあ、どんな遺跡か入ってみれば判る事だし。とりあえずはその前に、思いっ切りこの国の料理を楽しもうか」

「遺跡探索は後回しなんですか?」

「うん。面倒に事になりそうな気がするから、まずは思う存分この国を楽しんでからにする」


 何が面倒って、この手の勘が良くあたる事より面倒な事はない。

 少なくても、クレストの温泉施設の様な平和な遺跡じゃない事は確実だろう。


「でも、遺跡として残っているのが軍事施設や研究所だけじゃなかったのは驚きですよね。思い出の温泉施設が残っていたのだから、他にも色々と思い出の違い籍として残されているかも知れませんし。ここもそうである可能性だってありますよ」


 確かに、他にもスキー場とか色々と思い出の地が残されていたりするかもしれないけど、ここにきて連続でとか都合良くはいかないだろう。


「温泉以外にどんな施設が残っているか、楽しみでもあるけどね」

「それは確かにそうですね。十万年前のケームセンターが残っていても面白そうですし、カラオケが残っていたら、当時のヒット曲を知ることも出来ますよ」


 サナの意見は元日本人らしいと思うが、確かにそれらが残っていたら本気で面白い。

 10万年前のゲーム。

 それに10万年前の歌、当時の人たちはどんな歌を聴いていたのだろう?

 転生者が相当数いた訳だし、彼らがアニソンやアイドルの名曲を流行らせていたりして・・・。


「そう言えば、これだけたくさん遺跡が残っているんですから、もっと当時の文化が残されていても良いと思うんですけど」

「まあ、音楽メモリーの1つや2つくらい残っていてもおかしくはないよな」


 ザッシュの言う事は最もで、何か意図的に当時の文化の証拠を残さない様にしている感じもする。

 俺的には、当時のドラマとか情報番組とかを録画したメモリーとかがあったら面白いと思うんだが、もう結構な数の遺跡を周っているのに、その手のお宝にはまだ巡り合えていない。


「要塞とかの拠点の遺跡なら、そこに配備されていた人たちの私物とかが残されていたりしても良いはずなんだけどね」


 まあ、封じられる前に基本的には私物の回収がされているだろうけど、何万、何十万人が拠点としていた要塞ともなれば、監修し忘れた私物がそれなりに残っていたりしてもおかしくないと思うんだが・・・。


「何なら、そう言う文化遺産が眠っている遺跡なら助かるんだがな」


 勿論、それはそれで面倒臭いだろう事は理解している。

 実際、現在では既に10万年前の様子などほとんど文献としても残されていない。

 歴史の転換期となった重要な時代である事は判っていても、当時の様子を知る術がほとんどないに等しいのだ。

 流石に10万年も前の詳細な歴史資料を残しておけるハズもなく、数千年程度ならともかく、数万年前に滅びた国となると、当時の詳細な情報を得るのも難しい中で、僅かな資料をもとに予測を組みあげて歴史を捜索している状態だ。ある意味で地球での考古学と同じ。

 そんな時代の詳細な文化資料が発見されれば、騒ぎにならないハズがない。

 特に研究者なんかは目の色を変えて来るだろう。

 商法の希少さを考えれば、その熱意は装機竜人の開発者たちの比ではないレベルになるのも確定。

 それはもう、狂気すら滲ませて資料をよこせと迫って来るだろう。

 そしてまあ、欲望のままに根こそぎ持って行こうとするのも目に見えている。

 と言うか、俺だってかなり興味があるので、仮に見つかったとして根こそぎ持って行かれたりしたら困る。仮に、万が一にもそんな真似をされたら問答無用で怒り出す。


「止めて、そんなのが出てきたら研究者が殺到して大混乱に陥った挙句、欲望のままに全部勝っ去ろうとするのに切れたキミが暴れ出すのまで確定じゃない」


 なんて考えてるのをまるで見透かしたようなミランダ。

 

「ああ、何かその光景が目に浮かびますね」

「グングニールを見付けた時よりもヒドイ事になるの確定ですか」


 実際、あの時はミランダが立ちまわってくれなかったら切れと大暴れしていたかもしれない。


「まあ、どうなるかは個々の遺跡に何が眠っているか次第だ。その上で、まずは観光を楽しもう」


 俺たちが訪れたちょうど今が、料理フェスタの前夜祭で王と中に様々な屋台が立ち並び、まさに美食の採点の様相を呈している。

 屋台と言っても侮るなかれ、この屋台の立ち並ぶお祭りも真剣な勝負なのだ。

 王都中に数万と立ち並ぶ屋台の中で特に売り上げの高かった屋台は、フェスタ本線への質条件が与えられ、料理人としての地位を盤石なものと出来るのだ。

 実際にこの祭りで、屋台から宮廷料理長にまで上り詰めたのが今のこの国の料理人のトップに君臨する人物だったりするのは有名だ。

 そんな訳で、ローレラントの王都ローレライについた俺たちは宿泊先のホテルにチェックアウトすると早速屋台巡りに繰り出したのだ。


「ホテルの本格的なのも良いけど、まずは屋台の味を楽しなくちゃ勿体ないわよね」


 まず手始めに食べるのは名物のピロシキにいた料理。ロニグレと言うらしい。中に包むモノ次第で自在に味を変える魔法の料理で、コンビニの中華まんの様にその中身は多彩で、甘くてもOKで飽きる事がない。

 ついで目を引くのはとりどりの海鮮鍋。

 こちらも種類は豊富で、味付けに具材の差、或いは切り身のまま絣身にしていれるかなど店によって具材をどう料理するかも千差万別で、まあまあ程度のモノから、極上の一品まで山の様な数がある。

 その中から、いかにして至高の一品を見付け出すかが問題で、この屋台を楽しむ最大の難所でもあり、最高の楽しみでもある。


「こういうのは初めてだけど楽しい」


 アグニは大はしゃぎだ。王女として生まれた彼女にしてみれば、こういう庶民の祭りは逆に新鮮にのか、単にローレラントの料理が生き行ったのか、凄い勢いで屋台を制覇していっている。


「良くアタリ・ハズレが解るよね」

「当然だよ。せっかくの食べ物を無駄にしている様な屋台なんて入りたくもない」


 どうやらアグニは料理、食べ物に対しては相当シビアなようだ。

 客寄せを無視して自分の勘の思うが儘に突き進むアグニに、強引に食べて行くように進めようとする命知らずも居るんだが、それに対する対応がものの見事に真っ二つの正反対。

 多少強引な客引きをしている屋台でも、味が良ければ大満足げなのに、食べるまでもなくダメだと判断した屋台はそのまま解体する勢いだ。


「まあ、こういう祭りじゃアタリ・ハズレがハッキリしているからな」


 野望に燃えて屋台を出している料理人の中には、一昨日来るんだなとしか言えないような料理人もどきもそれなりに居る。 

 祭りが進むにつれてそう言うバカは排除されていくんだが、中名はしぶとく生き残るのも居たりするから良い迷惑だ。


「その見極めもこの祭りの楽しみのひとつよ」


 とは言え、星の数ほどある屋台から自分のお気に入りを見付け出すのは困難にも程がある。

 魔塵の日にちにも限りがあるのだから、全部の屋台を周るなんて普通は物理的に不可能だし、そんな事をしたら金がいくらあっても足りやしない。

 

 俺たちなら、金もあるしいくらでも食べれるし、コネや権力もあるから、全部の屋台の料理を食べ比べるなんて事も出来るけれど、それは無粋に過ぎる。自分で至高の屋台を見付け出す為に四苦八苦するのが醍醐味なのだ。


「それにしても、本当に冬の寒さも吹き飛ばす熱気だよな」


 現在既に真冬を迎え、この王都ローレライですら、最低気温は氷点下60度にまでなるのに、寒さを全く感じさせないすさまじいまでの熱気が王都全体を覆っている。


「何を他人事みたいに、そんな事じゃ、自分の最高の屋台を見付け出せやしないわよ」

「それはつまらないな。俺に会った最高の料理人がこの中にいるかも知れないんだ。見付け出すのに本気を出さなきゃな」


 さて、この中で最も優れた料理人は誰か?

 屋台が立ち並ぶのは後1週間。その間に俺は最高の屋台を見付け出せるかな?



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