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ミランダ視点、三回目です。

「驚いた。まさかあそこまで純粋な思いを秘めていたなんてね」


 正直に言えば、アベル程じゃあないけれども、私もニーナの告白には動揺していたりする。

 私自身の想いは、彼女ほど強く、純粋なものだろうか?

 どうしてもそんな風に考えてしまう。


「本当に、あそこまで直向きな思いを見せ付けられると、色々と考えてしまいますよね」


 そんな私の想いに同意するように、アレッサが苦笑しながら同意してくる。

 なんだかんだ言って、私はメンバーの中で彼女と一番気心が知れている。いつも冷静で、一歩引いた立場で周りを見ながらサポートする立ち位置を取りながら、必要な時にはシッカリと自分の意見を、意思を前に出す。参謀的な立ち位置で、アベルを始めメンバーのサポートを的確にする彼女は、一番付き合い易い。

 元々は演技のハズだったのに、何時の間にか私の地になってしまっている奔放な振る舞いにも、同時巣に普通に接してくれるしね。


「まあ、アベルと違って、彼女が修行の厳しさに逃げ出したんじゃない事くらい、はじめから解っていたし、アベルに好意を持っているのも判ってたけど」

「あそこまで純真な想いだとは・・・・・・」


 一人で、自分一人でアベルの隣に立つに相応しい強さを身に付けてもせる。その決意は並大抵のものじゃない。

 そして、彼女は順当にアベルの隣に立ち得るための力を身に付けていっている。

 確かに成長速度ではメリアたちの方が先だけども、アベルのもとで直接指導を受けている彼女たちと比べる方が間違っているし、それに、後一年と少しもすれば、ニーナはSクラスにまでなっているハズ。


「それに、本人が気づいているか判らないけど、十分過ぎるくらい異常な成長速度よね」

「ほんの3週間しかアベルさん直接指導を受けてないのに、わずか2年と少しでSクラスにまで至るんですからね。実際の所、むしろ私たちの方が立場がないですよ」


 アレッサが苦笑いするのも当然で、直接指導をずっと受けてきた彼女たちでも、Sクラスになるのには1年半はかったのに、ほんの3週間だけ教えを受けただけのハズのニーナが、2年程度でSランクになるのじゃあ立場がないだろう。

 アベル本人は特に気にも留めないだろうけど、周りの有象無象の戯言が今から聞こえてくるようだし、彼女たちとしては思うところも多いのは仕方がない。


「まあ、貴方たちは魔域の活性化も経験してるし、実戦経験では圧倒的に勝っているから、一年後彼女が仲間になった時に、実力では上を行っているのは確実だけど、そう言う問題でもないんでしょ?」

「そうですね。決意の重さの違いを見せつけられたと言うか、自分たちが今まで、甘えて来ただけなんじゃないかって考えてしまって・・・」


 実際の所は、勿論そんな事はない。

 それはずっと隣で一緒に彼女たちの頑張りを見て来たから判る。

 そもそも、アベルと一緒に居るのはそれだけで大変で、ただ甘えているだけじゃあすぐに脱落してしまう。

 更に言えば、魔域の活性化は人類にとって最悪の戦役で、例えSクラスであってもほんの少しの油断やミスで簡単に命を落としてしまう。

 そんな過酷な戦いを死線を彼女たちは乗り越えている。

 その事実が持つ意味は、彼女たちが思っているよりもはるかに大きい。

 逆に、ニーナはこれまで自分の力で頑張り続けて来たけれども、それ故に魔域の加活性化という本当の戦いを知らない。

 この意味は、或いはこれから先大きな違いとなって表れて来るかも知れない・・・・・・。


「貴方たちはアベルや私と一緒に魔域の活性化を乗り越えた。それは、決して誰かに甘えていては出来ないわ。あの戦いはそんなに甘いモノじゃない。だから、それを切り抜けた自分たちにもっと自信を持つ事ね」


 本当は、彼女たちが弱気になっている理由はもっと別の事。ニーナの余りにも純粋で純真な想いを目の当たりにして、自分たちの想いは彼女に比べてどうなのだろうと悩んでいる。

 正直、私としては悩むだけ無駄だと思っている。

 私だってその想いと自分の想いを思わず比べてしまうげど、結局は思いは人それぞれ。他人と比べてみても仕方がないと言う、ごく当たり前の結論に辿り着く。

 だけど、同時に悩まずにはいられない気持ちもわかる。アベルへの想い、その熱量の差を見せ付けられた気がするんだと思う。

 私は別に気にしないけれども、彼女たちはまだどうしても気にしないではいられないんだなと、素直にその若さに感心する。


「自信ですか、そうですね。アベルさんのあの修行にこれまでついて来たんです。その事を誇りに思って良いはずですしね」


 命の危機すら感じる程の修行を続けて来た自分たちと、自分なりの修行を続けて来たニーナ、その成長速度に変わりがないからこそ、焦らずにはいられないのも判る。

 それに、ニーナの方もどうしても焦ってしまっているのも・・・・・・。

 彼女の妹の様なノインが先にSクラスになっている。

 自分よりも先に高みに至った妹に、どうしても対抗意識が湧いてしまいそうになるのを必死で抑えている。

 それに、魔域の活性化やレジェンドクラスの魔物の襲撃、危険な戦いの最前線で常に戦い続けて来たアベルに、自分の出来る範囲で戦い続けて来ただけの自分がついて行けるのか?

 そんな不安を感じているのも手に取るように判る。

 ・・・・・・肝心のアベルは気付いてないけどね。

 まあ、正直な話、アベルの隣に立ち得る様になる。それ自体がもう不可能事に近いからね。


 ・・・私自身、アベルと対等に並び立つなんて不可能だと実感している。


 アベル本人は、私たちが傍にいる事で安心しているのが解る。

 それは私たちを信頼して、頼りにしていてくれている証拠。

 どれだけ絶大な力を持ち、この世界で五人しかいない絶対者だとしても、アベルはまだ13歳の子供でしかない。

 厳しい社会の仲を生き抜いていくためにはどうしても私たち大人の助けが必要だと、本人も理解しているからこそ、必要な時には私たちを頼ってきてくれる。

 互いに必要とし合える関係。どちらかが頼り切るだけの関係ではない。互いが必要とし合える関係を築けているのは素直に嬉しい。


「まあ、アベルに告白してしまった以上、共に並び歩いて行かないといけないと焦る気持ちもわかるから、中々自信を持てずにいるのも仕方がないかも知れないけどね」

「それは、確かにそうですね・・・・・・」


 嬉しいのだけども、それは共に並び歩く者だからこその事なのかとも思ってしもう。

 結局、私たちはニーナを含めて同じ悩みを抱えている。

 私たちは、これからもアベルの隣に居続けられるのか?

 隣に居られるだけの自分で言続けられるのか?

 当の本人に聞けば、一緒に居るのに資格とかそんなの関係ないと笑い飛ばすだろうし、確かにその通りだとも思うのだけど、どうしても考えてしまう。

 それだけ、アベルの居る高み、レジェンドクラスの頂は高く大き過ぎる。

 一番その頂に近いはずの私ですら、不安に感じてしまうのだから、彼女たちの心境は推して知るべき。


「それに、いくら悩んだって結局は、全部アベルが決める事なのだから、悩むだけムダね」


 私たちに出来る事は、周りの有象無象の戯言に取り乱したりしないように気をしっかり持っている事くらい。

 結局のところ、どう考えてもアベルがわしたちの告白を断るなんてありえないし、普通に受け入れて、ごく自然にこれまでの延長で私たちは恋人同士や、家族になると思う。

 そうなると判っているなら、相手に引け目を持つなんてそもそもが間違っている。相手も自分を必要としていてくれているんだと自信を持てばいいだけ。

 むしろ、周りにはまだどうするか決めかねているメンバーが何人もいるし、これからだっていくつもの出会いが待っている。そんな名が出アベルがどんな答えを出していくのかを見ていた方が楽しそう。

 そんな訳で、私はこれ以上この事について考えるのを止めた。

 


「次にお会いする時には、一緒に旅を出来るようになっていますね」

「ああ、楽しみにしてるよ」


 満面の笑みのに名に対して、アベルの方はまだ若干ぎこちない。

 今日でもうこの国を発つのに、アベルはまだニーナの想いにどう応えて良いのか判らない様子。

 まあ、私たちへの答えも保留状態みたいなものなんだから、ここで簡単に受けられたりしても困る。


「まあ、Sクラスになったニーナがこの国を手で行くんだから、その時は大騒ぎになりそうだけどな」


 ああ、それは確実にそうなるわね。

 まあ、行き先は判っているし、国を捨てたなんて騒ぎにはならないだろうけど、それまでに相当数の信奉者が出来ているのは確実だから、アベルへの怨嗟の声はそれは凄い事になりそう。

 一部、アベルを敵に回す勢いになるのを、この国がどう抑えるかは見物かも知れない。


「大丈夫ですよ。私はいずれアベルさんの元に行くつもりだって、はじめから王家に伝えてありますから、騒ぎが起きても国が責任を持って納めます」


 国に仕えるつもりは無いってはじめから伝えてあったと。

 その上で、この国で救済主と称されるまでの名声をほしいままにするんだから、アベルのもとに行くまでと合わせて復讐と言っていいのかも知れない。

 強かと言うか何と言うか・・・。

 とりあえず、彼女が私たちの元に来る時が楽しみになったのは事実。



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